| 10th |
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| 【 cocoa 】 |
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| 泡立て器。これが無い人はココアを飲まない方がいい。いや、飲んではいけないと言ってもいいか。 |
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| その昔、私もココアをお湯で溶いていた。なんとなく粉っぽくて、やはり自分で作るとこんなもんか、と |
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| 思っていた。どこかの店で飲んだああいうココアは、家では飲めないと諦めてもいた。ところが。 |
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| 「・・・てしまいます。でもこうして泡立てて空気を含ませると、とても滑らかな口当たりになるんです。」 |
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| TVからの声に釘付け。―― なに。泡立てる? そして喫茶店のオーナーらしき人は最後に言った。 |
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| 「よく練って、よく泡立てる。こうやって手間をかけてやると、美味しいココアになるんです。」 |
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| 純ココアと砂糖、少量の牛乳を鍋に入れる。泡立て器を片手に火の前に立つ。そして鍋を弱火にかけ |
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| 泡立て器で練る。ひたすら練る。ここでは木べらを使ってもよいのだが、ココアが大量にくっつくのが |
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| 許せないので泡立て器を使うところが、ビンボー症の私流。ペースト状になるまでよく練ってあげれば |
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| 口当たりのよいココアはもう貴方のもの。ただし、焦がしてしまうと何もかも水の泡なので要注意。 |
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| ツヤツヤと光るまで練ったら牛乳を少しずつ、温めながら入れていく。この時、また泡立て器の出番。 |
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| 混ぜる。必死に混ぜる。生クリームをホイップするようにではなく、泡立て器を鍋の底に当てて手早く |
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| 円を描くようにする。これでも十分に空気を含ませることができる。あとは、牛乳を沸騰させないこと。 |
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| せっかくのココアの香りが飛んでしまうのだ。そして一滴もこぼさぬように鍋から冷めにくいカップへ。 |
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| いくらかの手間と愛情を注ぎつつ作れば、香り豊かでコクがあるココアを飲むことができると知った。 |
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| そして今日も、そのココアを片手に過ごす時間を持つ。―― ささやかな幸せ。 |
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| 12 Apr 2001 |
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