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5.広州での宿探し

さて、切符も買えたので次は広州での宿探しである。駅の中には広州のホテルの案内書が机を並べていたが、見たところ5つ星のホテルの案内所しかない。5つ星のホテルは設備はとても良いのだが、概ね高いのでそこで今日の宿を確保するのはやめておくことにした。ところが同行の同僚は「あそこに案内所がある。あそこで今日の宿を確保しよう。」と、言いながら必死な目で私を説得している。よっぽど今日泊まるところが決まっていないという状況が不安らしい。広州は以前に一度来たことがあり泊まるところのあてがあったので同僚の必死の願いを却下し、そのままそこへ直行する事にした。目指すは「広東迎賓館」である。4つ星でありながら結構設備の良いのホテルで部屋の設備は日本の一流シティホテルと同じくらい。その割には、1泊4人部屋で540元(約1万円)3人で割って1人3000円強であるから、日本人の感覚では安い。と行っても中国人にしてみれば1万円といえば公務員の1ヶ月分の給料にあたるから、高級ホテルの部類に入る。広州市内には縦横無尽にバスの路線があり頻繁に走っているが、路線が今一つわからなかったのでタクシーで移動することにした。いつものごとく行き先を紙に書いて「ぞーぢょーりー(ここに行って)」と運ちゃんに告げる。運ちゃんはわかったという顔をして車を発進させた。広州のタクシーはVWかシャレードである。この2種類の車が比較的早くから中国国内での自動車の生産を行っているかららしい。このタクシーに乗るのは結構デンジャラスである。中国の大都市の交通は概ねルールもへったくれもない状態である。交通ルールという物が存在しないのかもしれない。大阪のドライバーもびっくりの運転がまかり通る。なんせ、ノーマルな人がほとんどルーレット族のような運転をするのだ。その上、市内は慢性的な交通渋滞である。広州のドライバーは渋滞するとクラクションをならす。さらに、とんでもなく荷物を積んだバイクなんかがごちゃごちゃと走っている。よく転ばないなぁと思っていたら、道の途中で道路に魚をぶちまけているバイクが交通を遮断していた。道にぶちまけられた魚は突然の出来事にただぴちぴちと跳ねている。その横でバイクの運転手とおぼしき人が途方に暮れていた。タクシーはそのような障害物を危なっかしく、すいすい避けて結構なスピードで走っていく。すごい運転テクニックである。足に力が入って食傷気味になってきた頃に目的地のホテルに到着した。ホテルに着くとポーターがすぐに荷物を持ってくれる。チップを渡そうとすると「めいよー(もらえない)」と中国語で言われた。後でわかったのだがこのポーターさんは日本語の簡単な言葉は使える・・・・ということはどうも中国人と間違えられたらしい。とりあえずそのままフロントに直行するとフロントには見覚えのあるかわいらしいお姉さんが立っていた。「うぉーやおさんがれんだふぁんつ。かーいーぶーかーい(3人部屋がほしいんだけれど、できる?と言ったつもり)」おねえさんは「?????」と言った顔をしている。自分の発音が悪いと思ったので紙に書いて渡すとしばらく考え込んだ後、「かーいー(できます)」と不思議そうな納得のいかないような顔をしながら答えてくれた。後からわかったが部屋を表す単語「房間(ふぁんじぇん)」を、家の建物を表す「房子(ふぁんつ)」とを間違えて使っていた。「3人用の建物をがほしいんだけれど」なんて聞かれたからびっくりした顔をしていたわけだ。身分証明書の提示(中国では宿泊するときには身分証明書の提示が必要)をしたときに「ははーん」と言う顔をして隣にいた他の服務員さんに「りーべんれん(日本人だ)」と言っていた。そして、「Can you speak English?」と聞いてきた。「Yes, but a little.」と返して値段とかの話は英語ですることが出来た。かなり流暢な英語を操る。中国語しか通じない環境の中で英語を話してくれる人がいるとほっとする。だんだん英語がネイティブな言葉の様な錯覚を覚える。あくまでも錯覚だが。もし、ホテルにバンガローやコンドミニアムなんて設備があったらそこに通されたのだろうか。つたない英語で宿泊の交渉を進めると宿泊料は540元と思っていたのに1000元も払えと言う。最近インフレがひどいと聞いていたので値上がりしたのかと納得してそのまま払った。とにかく手続きは無事に終わりポーターの人が荷物を持って部屋に案内してくれた。部屋はキングベットが4台ゆったりと置いてある大きな部屋である。風呂や洗面台も大きくてちゃんとお湯も出る。飲用のお湯は服務員の人に頼むと魔法瓶に入れて持ってきてくれるのだ。値段の事を考えなくても(値段の割にとか抜きで)十分豪華である。ルームサービスはジャスミンティーのティーバックが置いてあった。これはどうも無料らしい。他にウイスキーとか清涼飲料水などが入れてある冷蔵庫があるのは日本のホテルと同じである。

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