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3.深セン〜広州列車の旅

 出口を出て駅前広場をそのまま進む、駅前には物乞いの子供がたむろしていると聞いていたが、そのような子供は全然見られない。当局の手入れがあったのだろうか。前方左手に見える建物が深セン火車駅の駅舎らしい。建物の方へ歩いて行くと入り口付近に広州行きの切符を売っているダフ屋らしき人がたむろしている。また広深鉄路の職員らしき制服を着た人も路上にテーブルを広げ切符を売っているようだ。ここで買っても良いのだが何か危なそうなので建物の中に入った。建物のなかに入ると2Fにこじんまりとした切符売り場があった。しかし、昼の時間なのでご飯を食べに事務所の中に入っているらしく人がいない。服務員の人が中の扉の向こうにいるかもしれなかったので、取りあえず、「らおぢぁー(すいません)」と声をかけると奥の方から女性の服務員の人が出てきた。「あー(何ですか)」「うぉーしぁんぐまいさんじゃおだおがんじゅうとんでぴゃお。かーいーぶーかーいー(広州東行きの切符を3枚買いたいのですが、出来ますか)」「かーいー(できます)だんし(ところで)・・・うにゃにゃにゃ(何言ってるのかわからない)」こちらが困った顔をすると時刻表を持ち出して、二つの列車を指さして中国語で説明してくれる。何を言っているのか全然わからなかったが、ゼスチャーから推測するにどうも先発の列車は広州には後につくがどちらの列車に乗りたいかと言っているらしい。後発で早く広州に着く方を指さして「うぉまいちゃーがでびゃう(こっちの列車の切符を買います)」と言うとわかったといった感じの顔をしてまた「うにゃにゃにゃ」とわからないことを言う。仕方がないのでメモを取りだして、欲しい切符の時刻と等級を書いて渡すと、まあいいやといった顔をしてコンピューターをぺこぺこと叩いて切符を発行してくれた。言葉が通じなくても切符くらいは買えるようである。ちょっと古い感じのコンピューターだが、座席予約がコンピューターで行われているのをみて驚いてしまった。オンラインで発券されているのだろうか。しかしあとで、広州から香港への切符の手配は出来るかと聞きに入ったら、広州へ行かないと予約は無理だと言われたので、その券売所割り当ての分だけをコンピューターで管理しているだけかもしれない。切符を手に入れたので3Fへのエスカレーターを上ると大きな切符売り場がある。そして左手に大きな待合室がある。深センの駅では改札口はホーム毎に設けられている。そして列車が入る20分前くらいにならないと改札を入ることは出来ない。また待合室からホームの様子は見ることが出来ない。つまらないので自分の乗るべき改札口を確認するとそのまま駅の中を探険することにした。駅の中には日本の駅のようにおみやげ物屋があり、キッチェな物をいっぱい売っているが、中でもファミコンのカセットの中国語版が売られているのには驚いてしまった。中国にまで進出するとはおそるべしファミコンである。売場はそれほど広くなくすぐに探険は終わってしまった。そんなことをしているうちにお腹が空いているのに気が付いた、そういえば朝から何も食べていない。同行者の一人が駅の売店で美味しそうなパンが売っていたと言うのでパンを買って食べることにした。そして次に別の売店でジュースを買うと売り子の女の子がくすくす笑って「にーめんしーりーべんれんまっ(あななたち日本人でしょ)」といわれたので「どぅぃ(そうです)」というと、「おかいあげ、ありがとうございました」と日本語を話した。ここに来る日本人は多いらしい。同行のうち一人がジュースにストローをつけてもらい、女の子から「ありがとございました」と言って渡された時に「さんきゅー」と言うと。女の子は大笑いしていた。確かに中国人からすれば変である。「ありがとう」や「しぇしぇ」ならわかるが、「さんきゅー」である。日本人なら「さんきゅー」という言葉がもう日本語として帰化してしまっているので変な感じはしないだろうが・・・。女の子にそれで笑ったのかどうか確認したかったが中国語でそんな複雑なことを聞けるわけもなく断念した。そうこうするうちに改札開始の時間がやってきた。改札の前には既に行列が出来ている。列車は全車座席指定のはずだからそんなに急いで改札を済ませる必要も無いはずだが中国の人は行列を作るのが好きなのだろうか。改札を通るとすぐにホームに降りる階段がある。階段を降りていくと列車がホームに停まっているのが見える。車両は白地に青のラインが入った車両で2階建てである。雑誌やテレビでよく見られる緑色の車両を予想していたがえらくきれいな車両で驚かされてしまう。各車両の入り口には号車をあらわす札が突き出されている。そして各車両のドアには服務員の人が立って切符を再確認した後に切符の一部を破いている。服務員は見えた限りでは全て女性であり、切符を受け取ると「にーはお」と、いってにこっと微笑んでくれた。日本で列車に乗るときにこのようなお出迎えをして貰うことはまずあり得ないのでとっても贅沢な気分になる。列車の扉は手動でこの服務員のお姉さん方が開け閉めしてくれる。我々の乗った車両は双蓋車と呼ばれる2階建ての車両で席は残念ながら1階席であった。席についてしばらくすると列車は発車した。発車時間までは3分ほど残していたがこの辺はいい加減である。深セン駅を出発した列車はしばらく広い駅の構内を走行する。窓からはディーゼル機関車が止まっているのが見える。以前は蒸気機関車があちこちで見られたが現在ではもう中国国内でも珍しくなっているという話だ。5分も走ると街中といった感じの風景は途切れ田園風景の中を列車は走るようになる。線路はよく整備されているらしくかなりの速度で快調に走行している。またレールの継ぎ目を通過する音がしないのでロングレールが敷設されているらしい。それはともかく斜め前の席では中国人のカップルがいちゃついていて目のやり場に困ってしまう。どこの国でもこういうカップルは存在するらしい。車内では頻繁に携帯電話の呼び出し音が響いている。そういえば香港や深センでも携帯電話の呼び出し音を耳にする。日本のそれよりも頻度が高い。中国では携帯電話が一般の電話よりも普及しているらしい。もっとも電話や携帯電話を個人で持つような人はかなりのお金持ちだという話だ。列車の中では中国風の音楽がBGMとして流されている。中国風で旅情をかきたれられてなかなか良い雰囲気であるが、現地の人にして見れば聞きたくない人も入るだろうから今一つの感じがするのではないだろうか。そんなこんなするうちに列車は快調に走り続け車窓に高い建物がちらちらと見えるようになってくるともう広州東駅である。列車は広州駅まで行くが国際列車が広州東駅発着になっているようなので、切符購入のため広州東駅で下車した。

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