実はこういうことを中学2年でやり始めたのには大きな理由というかすごい人物の影響があります。元T-SquareのA.Sax奏者宮崎隆睦さんです。宮崎さんは僕の1つ上の先輩で、中学2年生(僕が中学1年生のとき)のときにはすでに渡辺貞夫さんのアルバムを完全コピーしてクラブのときによく練習されていました。それはそれはすさまじい状況ですよ。大量のテープを持ってきてウォークマンで聴きながら次から次へと吹きまくっているんですから。そんなこんなでトロンボーンでもこんな風に練習したい、誰かいないのか...。いた。
それが向井さんだったわけです。宮崎さんは数年後クラブをやめて自分の音楽道につき進んでいくことになります。
とまぁ、こんな感じでいろいろ聴いていきコピーをしたりバンドの中での譜面を練習していきますが、基本練習と呼ばれるものはほとんどやらなかったですね。「ロングトーン?そんなしんどいことやってられへんわ」「リップスラー?なんやそれ」みたいな感じでした。そういうときに、またしても劇的な出会いがあったのです。ジャンジャジャーン
向井さんと直接お話する機会が訪れたのです。神戸の木馬というジャズ喫茶にエルビンジョーンズが来る、フロントに向井さんがいると聴き、そのライブを聴きにいったのです。ライブのあと向井さんに「サインください」と話し掛けると、「君もトロンボーンを吹いてるの?」と向井さん。そのときの会話の様子は
むか「君もトロンボーン吹いてるの?」
コロ「はっはい」
むか「そうか、がんばってね」
コロ「向井さんのようにふけるようになるにはどんな練習をしたらいいですか」
むか「トロンボーンはね、ロングトーンとタンギングの練習だけしてたら大丈夫。やっぱりこれが1番だね」
コロ「えっ、それだけですか?」
むか「そう、これだけ。これができたらどんな曲でも吹けるよ。でもね、本当に大切なのはハートだよ。これがだめなやつの音楽はどんなに上手でも絶対にだめだ
ね。」コロ:ここで大感激するむか「君もがんばってね」といって手を差し伸べてくださる。
コロ「あっありがとうございました!」
いや〜〜感激しましたよ。向井さんのほうから手を差し出してくださったときは正直びびりました。とても素敵な方でした。
とまぁ、こんなことがあってロングトーン、タンギングをきちんと練習に組み入れるようになりました。雑誌で向井さんがアーバン金管教本を昔やった、という記事を見てアーバンを購入、それを使った練習をはじめました。独学とはいえ、こうした基本練習を毎日やっているととても調子もいいですし、加えて音色が豊かになっていくのが実感できました。高校生になった頃です。(この頃から毎月ジャズライフを購入するようになりそれは2001年7月のジャズライフ休刊まで続く。2001年12月復刊。おめでとうございます。)
高校生入学前後ぐらいからいわゆるモダンジャズに傾倒していくようになります。それまでは、フュージョン、ビッグバンドものはずっと聴いていましたが、ビバっプ以降のモダンジャズは大嫌いでした。なぜかというと「ジャズは難しいもんだ」っていういい方を評論家の先生方がするからなのです。「そんな難しいことしたくないっちゅうねん」というのが僕の考えだったわけです。
その頃向井さんの初期のアルバムである、「フェイバリット・タイム」に出会いました。当時向井さんのラテンフュージョンしか知らなかった僕は、
「どうやってこんなスタンダードをやっているんやろ」と不思議でした。1曲目を聴いて
「うわっモダンジャズや!」と身構えましたが、
「かっこえ〜なぁ〜」となり
「向井さんやったらこういう編成もかっこええなぁ。さすが向井さんやなぁ。」なんて思っていました。
それからは、いろいろ聴きました。そして現在にいたります。学生時代はよくコピーをしました。前述した向井さんの「フェイバリット・タイム」に収録されている「枯葉」、「ステラ・バイ・スターライト」は向井さんのテープをかけ一緒に吹いたものを録音して聴いて完全に吹けるようになるまで何度も吹いてました。
は〜〜ぁ、長い話や...。
これまでの話をまとめると、
ホーンセクションのフレイズ練習
↓
フュージョン系のコピー
↓
ようやく基本練習をしだす。
↓
4ビート系を含めた幅広いコピー
という練習をしていたということです。これだけのことを説明するのになんて長い話を書いてしまったんだ。ここまでお読みいただいた方がおられましたら心よりお礼申し上げます。