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早くも始まりつつあるお決まりのコース
朝のある情報番組によると、『ウラBTTB』が、100万枚に到達する勢いだそうだ。インストルメンタルとして、一位に輝いたのは、『energy
flow』がはじめてだそうな。うーむ、せいぜいピアノ・ソロとして初ぐらいに思ってたけど、そんな異例な現象だったのか。ブームも今がちょうど折り返し地点で、そんなに売れてるなら買ってみよう的な人達へ購買層が移行する頃だ。レコード・セールスが、そのような主体的な選択の意思のない購買層へとタッチすると同時にブームの質も堕落し始める。いつものことだ。そして、嗅覚鋭いメディアが触手を伸ばし、奇妙な自律運動を開始する。
僕が観たその朝の情報番組も、手回しのいいことにイージー・リスニングやニューエイジのアルバムやら写真集やら絵本などが用意され、巷にあふれる「癒しグッズ」の中に『ウラBTTB』も組み込まれ、うもれるという始末。テレビ人達の相変わらずなんとも手際のいいことよ(TT)視聴者のニーズをいち早く察知して、適当な企画を提供するってか。あとは、坂本龍一の「ぎりぎりの共生系」の厳しさも削ぎ落とされ、紋切り型の「癒しブーム」に溶解していくまでよ。
ブーム折り返し地点の購買者の頭脳にはしっかり、朝の情報番組式の紋切り型が刻まれるだろう。それは聴覚に対しても支配的に働くので、もう彼らの心まで作曲者の狙いが届かないかもしれない。これが90年代以降、高度資本主義社会の一角を担う音楽産業と商業メディアの前代未聞の発達がもたらしたブーム堕落のおきまりのコースだ。『energy
flow』のヒットの序章においては、業界予測不可能の痛快事であったものも、今やこの貪欲なシステムは、早くもあんぐりと丸々飲み込もうとしている。恐るべし。宇多田ヒカルもそやったなぁ〜。
ごめんね、教授とばかりに無理矢理につけられたっぽい『ウラBTTB』というタイトルが幸いして、折り返し地点の購買者が「オモテ」までたどり着いてくれると面白いな。もっとも「オモテ」のコアにたどり着く前に、朝の情報番組式の紋切り型に体力を奪われてしまいそうな気もする。たぶん、そうなるな(TT)でも、日本のリスナーの耳が、そろそろ業界を裏切る形で新しい方向へ移行しはじめているんだなとわかった点は、収穫だったね。次ぎの10年へむけての解体・再編は始まるだろうか。
ともかく、今、坂本龍一は、彼自身のたえうるぎりぎりのところで頑張ってるんだと思う。diaryなんかみてもそう思う。それを「サッチー論争」と同じ位階で扱うのは、あまりに情けないよね。
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