Miles Davis page2 / back / Jazz Giants top page Jazz PEOPLE index mail to bluesboy

クールの誕生 / BIRTH OF THE COOL (コンプリート盤) Capitol 国内盤 TOCJ-6200 1998年6月24日発売

THE STUDIO SESSIONS
1.MOVE 2.JERU 3.MOON DREAMS 4.VENUS DE MILO 5.BUDO 6.DECEPTION 7.GODCHILD 8.BOPLICITY 9.ROCKER
10.ISRAEL 11.ROUGE 12.DARN THAT DREAM
THE LIVE SESSIONS
13.BIRTH OF THE COOL THEME 14.SYMPHONY SID INTRODUCTION 15.MOVE 16.WHY DO I LOVE YOU 17.GODCHILD
18.SYMPHONY SID INTRODUCTION 19.S'LL VOUS PLAIT 20.MOON DREAMS 21.BUDO(HALLUCINATION)
22.DARN THAT DREAM 23.MOVE 24.MOON DREAMS 25.BUDO(HALLUCINATION)
1948-1950年録音

Miles davis - tp / Kai Winding,J.J.Johnson&Mike Zwerin - tb /Junior Collins&Sandy Siegelsten - french horn / Bill Barber - tuba / Lee Konitz - as
Gerry Mulligan - bariton sax / Al Haig&John Lewis - piano / Joe Shulman,Nelson Boyd&Al Mackibbon - bass /Max Roach&Kenny Clarke - dms / Kenny Hagood - vo

ビバップ全盛時代に、もう個々にアドリブを吹くだけではつまなくなったんだ、とこの九重奏団を結成したマイルス。
時に22才の彼は、その一年前にギル・エバンスと出会い編曲というものに大きく触発されてたらしい。
このギルとのコラボレーションは後に「アランフェス協奏曲」で見事に開花するわけですが、この作品でマイルスは自分の目指す、
統制のとれた繊細なジャズ、というものの感触を掴んだのだと思います。

言ってみれば何の変哲もない、アレンジされたジャズだというだけなのに、歴史的名盤?
それはやはりこの時代にこれだけのことをやってのけたことと、その完成度の高さから、今聴いても決して古くさい音ではないということ。
見事に統制のとれたアンサンブルの中で繰り出される各人のソロは充分に躍動感もあるし、表現力もある。
計算された音楽にありがちなスコアをなぞっただけというのと違い、スリリングですらあります。

今回のコンプリート化に際して、別な形で世に出ていたライヴ音源と、世界初出の音源を含み全25曲というファンには涙の内容で登場しました。
音も最新の技術によって非常にクリアになっており、エアチェック音源しかなかったライヴ・トラックにいたっては、スタジオ吹き込みの音色に近づけるという努力までされた。
既発の「クールの誕生」を持っている方もこれを買い直すことをお薦めしたいです。
とはいえ、ジャケットのデザインも一新された今回のアルバムはもう一枚の「クールの誕生」と受け止めました。
ですから長年親しんできたオリジナル・ジャケットの方、例え音は悪く曲数が元のままであっても残して置いて欲しいと願う所存です。

なにはともあれ現状に満足せず、常に新しい者を追求するマイルスの基本姿勢はすでにこの時期表出していたことが手応えとして判る作品です。
ジャズのスタイルの変遷に興味のある方は必聴の一枚といえます。

b.b. June 28,1998