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BLUES&BALLADS IN THE NIGHT / JUNIOR MANCE - Paddle Wheel国内盤 キングレコード KICJ -341 1998年5月22日発売

@Whisper Not (Benny Golson) AEmily (Johnny Mercer,Johnne Mandel) BLonely Avenue (Doc Pomus)
CWhat A Difference A Day Made (Stanley Adams,Maria Grever)DAutumn Leaves (Joseph Kosma)
EGeorgia On My Mind (Hoagy Carmichael) FJubilation (Julian Mance)

Recorded Live at Lexington Hall Turuoka Feb.28.1998
Produced by Yoichi Nakano
Recoeding Engineer Hiroyuki Tsuji

Junior Mance - piano / Calvin Hill - bass / Akira Tana - drums

マンスの新作というだけで触手が動く方には説明不要なことなのですが、彼のピアノは実にアーシーでファンキーでソウルフルで、
黒光りする汗がしたたる様子がうかぶくらい入魂の演奏をします。しかも曲の展開が常にドラマチックなのです。
お馴染みの大スタンダードも、彼の手に掛かるとつかみの部分から自分の懐に取り込んでしまうのが得意。
マンス流儀に崩して入る導入部、まったく違う曲のような貌をしてさりげなく出るお馴染みのメロディ、そういうのが彼の得意技。
曲の中間部でも、絶妙のタイミングでストップをいれてみたり、聴いてる方を手のひらであやすかのような展開はハマると快感になります。
特にこのアルバムはライヴということもあって、リズム隊にもたっぷりソロを廻し、マンスならではの曲構成の綾が楽しめるのです。

演奏のダイナミック・レンジもワイドで、ささやくようなタッチのつま弾きから、一気にマックスまで鍵盤を叩きまくる奏法は胸のすく思いがします。
日系のプレーヤー、アキラ・タナのドラミングもマンスのそういうニュアンスによくマッチングしています。
最初はこのどっすんばったんしたドラムワークが馴染まないかも知れませんが、馴染んでくるとこれしかないって気持ちになるから不思議。

ネタ自体も良い@は彼の手に掛かってまた別な魅力を引き出されたようです。アートブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ等、あまたの名演を差し置いて心に残る演奏に。
この曲を頭に持ってきたのはニクイぞと、一人でにんまりしました。
ドク・ポーマス作曲のブルースBは12分という長尺さを感じさせない、ホットなブルースに変身。
脱線を許して貰えれば、この"Lonely Avenue"のカヴァーで私が大好きなのがLOS LOBOSによるもの。
'91年に亡くなったドク・ポーマスを偲んで、ボブ・ディランやショーン・コルヴィン、B.B.キング等と共に'95年に制作されたアルバムに収録されていますが、
ロス・ロボスによる骨太なサウンドが印象的でした。
マンスがドクの曲をやるというのも、ブルージーな彼の嗜好を偲ばせます。

スタンダード中のスタンダード、Dも彼の手に掛かるとピアニシモからフォルテシモまでダイナミズムをフルに活かした生命力溢れる曲に。
この曲でのアキラ・タナのドラミングがとってもタイト。これこそがレギュラー・バンドの良さでしょうね。
マンスのアドリヴも次々と閃きがほとばしるようで、グイグイと引き込まれていくうちあっという間の12分。

このアルバムで唯一の彼のオリジナルF、曲自体はスピーディーな展開を見せるのですが、彼の持ち味であるゴスペル・フィーリングに溢れた
身も心も熱くなる演奏はアルバムを締めくくるのにふさわしい感じがします。
特にベースソロが終わって、ドラムのソロへとつながるあたりと、エンディングには一大交響曲の最終楽章を聴いてるような錯覚を。

ジュニア・マンス、いわゆる灰汁 (あく) の強い人なので万人向きではないのですが、好きになったら地獄の果てまでついてくわ、といやつです。

--b.b. June 25.1998