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II'M OLD FASHIONED / BARRY HARRIS - ALFA 国内盤 アルファ・ミュージック ALCB -3930 1998年6月24日発売

@Just One Of Those Things (Cole Porter) AI'll Walk Alone (Sammy Cahn,Jule Styne) BAutumn In New York (Vernon Duke)
CI'm Old Fashioned (Johnny Mercer,Jerome Kern) DI'll Keep Loving You (Bud Powell)
EAll God's Chillun Got Rhythm (Gus Kahn,Walter Jurmann,Bronislau Kaper) F I Wated For You (Gilbert Fuller,Dizzy Gillespie)
GPretty Mama (Barry Harris) HIf I Had But One Dream <For Reverend John Garcia Gensel> (Barry Harris)

Recorded at Clinton Studio B in New York Aip.24.1998
Produced by Satoshi Hirano & Kyoko Akikawa
Recoeding Engineer Troy Halderson
Junior Mance - piano / George Mraz - bass / Leroy Williams - drums

正当派中の正当派というと、何の?と聞かれそうですが、それにはもちろん、ビバップの!と答えたい。
ケニー・ドリュー、レイ・ブライアントといったバップ期に最盛力を誇ったピアニストの一人なんですが、何故か上記の人たちほどの人気と評価を得ていない気がする。
あまりに実直で地味なイメージが目立つ機会を少なくしてきたのだろうか。
決定的なヒット作がなかったせいもあるけど、メディア映えする方にすべての流れがいくせいか。

吹き込み時 69才のハリス、ジャズ界の女神、天使、といわれたニカ婦人の援助にも助けられ黙々と演奏活動と教育活動を続けてきた人。
瀧口大由記氏のライナーによれば、ハリスのワークショップ運動が資金枯渇で窮地に立っているらしい。
理念、信念のあるところ少数の人は集うけれど、資金は集まりにくいという典型か。
アフリカン・アメリカンには、ジャズこそが伝統ある固有の音楽という理念を教えるその活動、彼の教え子達36人が、この作品にもBとHにコーラスで参加しています。

正当派中の正当派ゆえにここには、斬新な解釈はない。
しかし、それが無いが故に安心して聴ける「いつものやつ」がしっかりあるのです。SAME OLD THINGってやつ。
私は懐古趣味や主義はないのですが、それでもこの音を聴くと心底くつろぐし、安らぐのです。
それは若かった頃の自分が蘇るとかではなく、いいものは何時の時代でも存在感があるという、ごく当たり前のことでだと思います。
おそらく今、この時代の若い人が聴いても、これいいなぁと感じると思う、定番の魅力かな。

耳にする環境も様々でしょうけど、ちょっと洒落たお店でこんなBGMがかかっていたら、きっとその店のイメージがグレードアップするだろうなという音です。
曲によってはDやFのような、スティープル・チェイスでのデューク・ジョーダン風の、耽美的なアプローチの曲もあるのですが、
EやGのような彼本来の持ち味の曲にはさまって登場すると不思議と違和感もなく、全体的にソフトな仕上げを狙ったのかなという気がします。

何にしても、彼の演奏スタイルや作風には派手さがないので、まさに玄人受け一筋。
それだけに、ハリスが好きという人は色々聴いたあげくに彼の良さを熟知してる人、という印象を与えると思います。
締めくくりのHは教え子達のコーラスに包まれてハリスのピアノが訥々と唱います。
すみのすみまで心休まるひとときです。

--b.b. June 25.1998