SSログ保管庫〜楽屋裏狂想曲・人気投票編〜
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雑記掲載SS保管庫  FORTUNE ARTERIAL sideshortstory「楽屋裏狂想曲〜鬼ごっこ〜」
「楽屋裏狂想曲〜鬼ごっこ〜」第零話(2008/10/26) 「楽屋裏狂想曲〜鬼ごっこ〜」第壱話(2008/10/28) 「楽屋裏狂想曲〜鬼ごっこ〜」第弐話(2008/11/02) 「楽屋裏狂想曲〜鬼ごっこ〜」第参話(2008/11/07) 「楽屋裏狂想曲〜鬼ごっこ〜」第四話(2008/11/14) 「楽屋裏狂想曲〜鬼ごっこ〜」第五話(2008/11/16) 「楽屋裏狂想曲〜鬼ごっこ〜」第六話(2008/11/27) 「楽屋裏狂想曲〜鬼ごっこ〜」第七話(2008/12/03) 「楽屋裏狂想曲〜鬼ごっこ〜」第八話(2008/12/06) 「楽屋裏狂想曲〜鬼ごっこ〜」第九話(2008/12/15) 「楽屋裏狂想曲〜鬼ごっこ〜」第九話・幕間編(2008/12/19) 「楽屋裏狂想曲〜鬼ごっこ〜」第拾話(2009/01/11)
・FORTUNE ARTERIAL sideshortstory           「楽屋裏狂想曲〜鬼ごっこ〜」第零話 「ねぇ、こーへー」 「なんですか、かなでさん」 「そろそろわたしの出番だと思わない?」  いつものお茶会の席でかなでさんのいつもの発言。  ・・・いつもの発言って思う辺り俺もあきらめがついてきたのかな。 「最近わたしの出番ないでしょ? だからそろそろかなぁって思うわけなの。  ドラマ3巻もあまり出番なかったし」 「それはお姉ちゃんが寮長じゃないのに寮に戻ったからでしょう?」 「だってぇ、台本だとそうなってるんだもん。それに台本無くても寮の  テレビの故障は一大事だよ!!」 「だから台本なんて無い・・・あ、ドラマCDならあるのか」 「それでね、こーへー。テレビも直ったことだし、わたしの出番♪」 「そうは言われても俺にはどうすることもできないですよ」  俺の返事を予想してたのか、かなでさんはどこからともなく何かの  書類らしき物を持ち出した。 「だから、わたしが企画を考えちゃいました!」  なんだか嫌な予感がする。 「お茶会主催の鬼ごっこです!」 「鬼ごっこ・・・」  それまで黙ってお茶を飲んでいた紅瀬さんが反応する。 「そう、鬼ごっこ。きりきりと伽耶にゃんにはおなじみだよね」  ここに伽耶さんがいたら絶対ツッコミが入ってるだろうな。 「それに、わたし知ってるんだよ? 最近きりきりがこーへーと鬼ごっこしたこと」 「紅瀬さんと孝平が?」  成り行きを見守っていた瑛里華が反応する。 「どういう事かしら、孝平?」 「えりりん、詳しくはこれこれだよ♪」 「いや、かなでさん。これとこれって言ってもわかるわけ・・・」 「なるほど・・・紅瀬さんが犯人ね」 「わかったのか!」  なんでこれだけでわかるんだ? 「あら、犯人だなんて言わないでくれるかしら? ただの遊びじゃない」 「遊びでそんなご褒美を出すのかしら?」 「別に良いじゃない」 「・・・」 「・・・」  紅瀬さんと瑛里華の間の空気が張りつめる。 「でも、お姉ちゃん。まだ鬼ごっこの話の第3話が掲載されてないよ?」 「私と支倉君のプライベートの出来事を公開する必要は無いわ。  それに・・・公開できるような話じゃないもの」  張りつめた空気を和ませるはずの陽菜の質問は紅瀬さんの答えで  余計に空気が張りつめる。 「・・・あ。あの、お茶のおかわり煎れますね」  今まで話に入れなかった白ちゃんが場を和ませてくれた気がした。 「まぁ、第3話でナニがあったかはわたしにはもう関係ないんだ」  かなでさん、発音がちょっとおかしいです。 「過去に会ったことより未来を見据えないとね」 「かなでさん・・・」  前向きな発言に何故か救われた気がする。 「だから、鬼ごっこしよ♪」 「・・・」  持ち上げられて落とされるってこう言うことなのかな。 「ルールは同じ、こーへーを捕まえた人は一晩こーへーを好きにしていいの。  逆の場合はこーへーに好きにされちゃうの」 「またそのルールなんですかっ!」  思わずつっこむ。 「そんなルールをみんなが飲む訳無いじゃないですか!」  そう言って俺はみんなを見回すと・・・ 「孝平を一晩好きにして良い・・・ふふふっ、孝平が誰の物かはっきりさせるには  良いわね、みんなにも孝平自身にも」  え、瑛里華さん? 何か恐ろしい事仰ってませんか? 「支倉先輩と一晩一緒に・・・私、私は・・・ぽっ」  白ちゃん? お願いだから流されないで 「そうね、また好きに出来るのなら、今度はあれが良いかしら」  紅瀬さん・・・またって・・・ 「私は別に孝平くんに好きにされても構わないけどな」  陽菜、その理性を吹き飛ばしそうになる発言は、控えてください。 「ひなちゃんを好きになんてさせない。  だってわたしがこーへーを好きにするんだもん!」  かなでさん・・・俺はいつも好き勝手にいじられてますからこれ以上は  勘弁してください・・・ 「って、みんなやる気?」 「孝平がどうしてもっていうなら私は構わないわ」 「支倉先輩と一晩一緒・・・」 「支倉君、今度は捕まえてみせるわ」 「孝平くん・・・うん、私が捕まえてみせる」 「こーへー、覚悟はいい?」 「あの、俺の拒否権は?」 「なし!」  5人とも返事は同じだった。 「それじゃぁ今度の休みの日にお茶会杯争奪こーへーを捕まえろ鬼ごっこ  開催します!」 「おー!」 「・・・」  今度の休み、何処に逃げてやり過ごそうか真剣に考え始める俺だった。
・FORTUNE ARTERIAL sideshortstory           「楽屋裏狂想曲〜鬼ごっこ〜」第壱話  日曜の朝、俺は寮の前の広場に呼ばれた。  正直行きたくは無いのだけど、勝手に始められていきなり捕まるよりは  ちゃんと逃げた方が良いと判断し、俺はスタート地点へと赴いた。 「というわけで、お茶会主催の鬼ごっこを開催しまーす!」  かなでさんの宣言から鬼ごっこの開会式は始まった。  改めてメンバーを見回す。  みんな体操服姿でやるき満々だ。  瑛里華に白ちゃん、紅瀬さんに陽菜にかなでさん。 「・・・で、なんで伽耶さんがいるんですか?」 「支倉、こんな楽しい遊びにあたしを誘わないつもりだったのか?」 「・・・いえ」 「なら良いではないか」 「そうそう、俺がいたってなんの問題もないよね」 「って、伊織先輩!」  いつの間にかジャージ姿の伊織先輩が現れた。 「支倉君、こんな楽しい遊びに誘ってくれないなんてひどいじゃないか?」 「・・・」  やっぱりこの二人は間違いなく親子だな、と改めて実感した瞬間だった。 「さて、ルールの説明をしよう」 「・・・東儀先輩」  いつの間にか東儀先輩までもか参加していた。 「安心しろ、支倉。俺は審判だ」 「はぁ・・・」  いろんな意味で安心できそうで、出来なさそうな審判だな。 「ルールは支倉を捕まえた者が支倉を好きに出来る、以上だったが支倉の  提案があったのでルールを追加する」  東儀先輩の横にかなでさんが立つ。 「こーへーにも攻撃できる手段が無いと平等じゃないからね、わたし達は  みんなこれをつけまーす」  そう言ってかなでさんが袋から取り出した物は・・・ 「ねこみみ?」 「そう、可愛いカチューシャです♪  以前にもつけてもらったやつだよ♪」  以前っていつの話だ・・・ 「このカチューシャははちまきと同じで取られたらこーへーを捕まえる事が  出来なくなるから注意してね」  そう言うとかなでさんはカチューシャを配っていく。  配られた人から順に頭につけていく。  俺はそれを黙って眺めていた、もはやどこにどうつっこむべきか考える事を  放棄した・・・ 「ねぇ、孝平。似合う?」  俺の目の前でくるっと一回転する瑛里華。  金色の髪に合わせられた金色の猫耳。ブルマの後ろからは猫のしっぽまで  生えてる徹底的な猫少女化だった。 「ねぇ、孝平? 私に捕まっちゃいなさいよ」 「瑛里華?」 「しっ、声が大きい」 「・・・」 「私なら1日デートだけだから、安心でしょう? だから私に捕まりなさいよ?」  そう言うと俺の目の前から去っていった。 「1日デートか・・・」  一番無難っぽいな。  そう思ったとき白ちゃんが長い白い耳を揺らしながらやってきた。 「支倉先輩、おかしくありませんか?」 「いや、可愛いけど、それって不利じゃない?」  白ちゃんがつけているのはうさぎの耳のカチューシャ。  このカチューシャが取られると俺を捕まえることが出来ないルール。  だから大きいウサ耳は不利に思える。 「私は支倉先輩が可愛いって言ってくれたうさぎさんの耳で、支倉先輩を  捕まえて見せます! お互いがんばりましょう!」  なんだか白ちゃんに捕まるのが一番良い気がしてきた。  その時視線を感じた、その方向を見ると紅瀬さんがこちらを見ていた。  黒い猫耳のカチューシャをした紅瀬さんと目が合うと、少しむっとした表情に  なった。頬が赤いのは、恥ずかしいからだろうか? 「紅瀬さん?」 「支倉君は、人気者よね」 「あの?」 「この前の夜のこと、忘れたとは言わせないわよ?」  いや、この前の夜って何のこと? 「私は鬼を追うのは得意なの、覚悟しておきなさい」 「ふぅ」 「お疲れさま、孝平くん」 「陽菜・・・」  数少ない良心の陽菜、そんな陽菜の頭にも猫の耳が生えていた。 「大変だろうけど、がんばってね、孝平くん」 「あぁ・・・」 「でね、出来ればだけどね・・・その・・・私に捕まって欲しいな」 「陽菜?」 「え? ううん、なんでもない。お互いがんばろうね」 「時に支倉」 「何ですか、伽耶・・・にゃん?」  俺は思わずそう呼んでしまう。 「伽耶にゃん言うな!」 「すみません、口が勝手に・・・」 「・・・まぁ、良い。支倉、あたしから逃げられるとは思うなよ?」 「はぁ・・・」 「あたしが捕まえたらこの前の夜と・・・その、同じ事を頼むぞ」  そう言うと顔を真っ赤にして去っていった。 「・・・だからこの前の夜って一体なに?」 「こーへー、風紀シール!」 「うわ、いきなりなんですか?」 「だから何度言えばわかるの?」 「何がですか?」 「こーへーがしっかりしてないからわたしがまたあのロリっ娘に順番  越されちゃうんだよ?」 「いや、そればかりは俺のせいじゃないんですけど」 「むー、こーなったらこーへーを捕まえて一晩お姉ちゃんに甘えさせるんだ!  だから、これで勝ったと思うなよー!」 「ふぅ」  口を開けるとため息しか出てこない。 「大変だね〜、もてる男は辛いよ、かな?」 「伊織先輩・・・もやっぱり参加する気なんですね」 「あぁ」  そう言うと伊織先輩は頭につけているカチューシャに手をあてる。  女性陣とちがって、そこにはちっちゃな茶色の耳が。 「・・・たぬき?」 「俺は猫にはなれないよ、だって俺はタチだからね」 「意味が解らないんですけど・・・」 「良いんだよ、支倉君。俺が捕まえたら教えてあ・げ・る、からさ♪」  ぞーっと背筋に冷たい物が走った。 「修智館学院の女生徒が望む関係を見せつけてあげようじゃないか!」  俺は身の危険を感じ、伊織先輩と距離を開ける。  伊織先輩が追ってくるかと思ったが、何故か固まっていた。 「ねぇ、紅瀬さん。最初に倒す相手って決まったかしら?」 「えぇ、私はもう決めてるわ」 「ほぉ、桐葉もか。奇遇だな、あたしも今決まったところだよ」 「そうだね、わたしも先にしなくちゃいけないことができた所だよ」 「お、お姉ちゃん・・・私もがんばる!」 「わわ、私だって支倉先輩の為ですから!」 「おい、ちょっとまて、なんでみんな俺の方をにらむんだ?」 「ふふふっ、兄さん。覚悟は良いかしら?」 「・・・これ、鬼ごっこだよな」 「支倉、そろそろ鬼が逃げる時間だ」  そう言って近づいてきた東儀先輩が持っている資料が目に入った。  その資料のタイトルには「ばとるろわいやる鬼ごっこ」と書いてあるような  気がする。 「・・・俺、逃げて良いですか?」 「当たり前だろう、鬼ごっこなのだからな」 「・・・」  俺は無事今日という日を乗り越える事ができるのだろうか?  思わず見上げた秋の空は何処までも澄んでいて、そして高かった・・・
・FORTUNE ARTERIAL sideshortstory           「楽屋裏狂想曲〜鬼ごっこ〜」第弐話 ANOTHER VIEW 瑛里華 「ともかく兄さんより孝平を捕まえれば言い訳よね」  兄さんが孝平を捕まえるのが考える中で一番最悪のパターンだ。  他の人に捕まるのも最悪だけどね・・・ 「結局は私が捕まえれば問題無いのよ、だから孝平・・・あら?」  孝平がいた場所には征一郎さんしかいない。 「孝平?」 「支倉ならスタートした」 「え、いつのまに?」 「スタートの合図はしたのだが、誰も気にしてなかったようだ」 「しまった、逃げる方向を見逃したわ」  これは致命的だった。修智館学院の敷地は広大だ。  最初に逃げた方向だけでも解れば事は有利に進めることができる。 「ねぇ、白。孝平がどっちに逃げたか見た?」 「ごめんなさい、私も見ていませんでした・・・」 「謝らなくて良いのよ、白」  参ったわね・・・  回りにヒントが無いかを見回してみる。 「桐葉よ、まずは伊織を狩るとするか」 「そうね、千堂君を押さえれば後は楽ですものね」  母様と紅瀬さんは兄さんを押さえるつもりのようだ。  それはこっちとしても好都合。だけど兄さんを押さえた後の最大の  驚異よね。対策、立てた方がいいわね・・・ 「お姉ちゃん、孝平くんどこにいったんだろうね?」 「だいじょうぶ、こーへーの隠れるところなんてお姉ちゃんにはお見通しだよ!」  幼い頃遊んでたという悠木姉妹。  孝平がどこかに隠れてたとしたらそれを見つけるには過去の経験がかなり  有利ね・・・ 「瑛里華先輩・・・」 「大丈夫よ、白。私たちで孝平を救いましょう!」 「はい、私がんばります!」  胸の前で両手にぎゅっと力を入れる。  気合いが入ってる仕草も白だと可愛いく見える。  なんだか力が良い加減に抜けた気がする。 「よし、絶対孝平を救いましょうね!」 「はい!」 「・・・鬼ごっこのはずなんだけどなぁ」  兄さんの声は無視しておくことにした。 「それではまもなく追いかける方のスタートの時間だ。  各員用意はよろしいか?」  征一郎さんの言葉に緊張が走る。 「その前に・・・」  そう言うと征一郎さんは兄さんと紅瀬さんと母様を呼ぶ。 ANOTHER VIEW ... 「鬼ごっこの際、力を押さえていただきたい」 「何故だ? 全力で当たるのが礼儀であろう?」 「今回は一般人も参加されております。一般人相手に伽耶様が  全力を出されたら勝ちが確実です」 「たしかにな」 「勝ちが決まったゲームは、面白く無いと思われます」 「・・・そうだな、今回は人としての力で支倉を捕まえるとしよう」 「ありがとうございます」 「ねぇ、支倉君を捕まえるときは人の力ならいいのよね?」 「あぁ」 「なら、千堂君を狩るときは全力でもいいのよね」 「ちょ、紅瀬さん、それは」 「あぁ、構わない」 「おい、征!」 「征一郎のお墨付きだ、伊織。覚悟をしておくがよいぞ」 ANOTHER VIEW 瑛里華 「それでは準備は良いか。ではスタートだ」 「はっ!」 「え?」  兄さんはどこからともなく取り出した何かを地面に叩きつける。  ぼんっ! 「け、煙が」 「それでは皆の衆、がんばりたまえ。アディオス!」 「そうはいくか、桐葉」 「えぇ、行くわよ!」  煙がはれたとき、そこに兄さんと母様と紅瀬さんはいなかった。 「白、私たちも行くわよ!」 「はい、でも何処へ行けばいいのでしょうか?」 「そうね・・・孝平の行動範囲を一つずつ当たっていくしかないわね。  まずは監督生室に行くわよ!」 「はい!」 ANOTHER VIEW 悠木かなで 「お姉ちゃん、私たちも行こう!」 「まって、ひなちゃん。私たちは寮で一休みしよ」 「え?」 「こーへーも馬鹿じゃないよ、今から探しても絶対見つからないよ。  だからね、こーへーが疲れて帰ってくるところを捕まえるの」 「寮に帰ってくるのかな?」 「裏の裏をかいて自分の部屋に絶対帰ってくる、私の推理は間違ってないのだ!」 「うん、たしかにそうかもしれないね」 「だから、こーへーの部屋の真上で張り込もう!」 ANOTHER VIEW END  こうして始まったバトルロワイヤル鬼ごっこ隠れんぼ。  ・・・タイトルが長くなってるのが気になるけど、今は逃げ隠れて生き延びるのが  最重要事項だ。  まずは俺は事前に調べていた場所へ向かうことにした・・・
・FORTUNE ARTERIAL sideshortstory           「楽屋裏狂想曲〜鬼ごっこ〜」第参話 ANOTHER VIEW 瑛里華 「瑛里華先輩、待ってくださ〜い」 「遅いわよ、白!」  一緒に走り出した白はすぐに遅れ始める。  ・・・あら? 私なんで白と一緒にいるのかしら。  今さらながらに考えてしまう。  この鬼ごっこ、別にチームプレイじゃないはずだったけど・・・ 「瑛里華先輩、お待たせしました」 「え、えぇ。それじゃぁ監督生室の中に入りましょう」 「はい!」  まぁ、一人より二人の方が何かと便利だし、これでもいいかな。 「孝平、覚悟!・・・って、誰もいないわね」  1階の倉庫を見てから2階にあがる。  しかしそこには誰もいなかった。 「支倉先輩、いませんね」 「役員だからここに隠れてると思ったのだけど、はずれみたいね」 「何処に行かれたのでしょう?」  孝平が他に行きそうな場所・・・  ・・・ 「もぅ、こうなったら全部探すわよ。本敷地の建物全て行くわ!」 「は、はい!」  人があまりこない、本敷地は隠れるのにうってつけのはず。  私の勘は、孝平がここにいると言っていた。 「あら、千堂さんに東儀さん、こんにちは」 「あ、シスター、こんにちは」 「あの、シスター。支倉先輩見かけませんでしたか?」 「支倉君? 今日は見かけてないですけど、何かあったのですか?」 「いえ、ちょっと探しているだけです。それではシスター、失礼します。  白、行くわよ」 「はい、それではシスター、失礼致します」 「・・・あの耳飾りは一体何の意味があるのかしら?」 「はい・・・えぇ・・・そうですか、ありがとうございます」 「どうだった、白」 「司書さん、今日は誰も見かけてないそうです。」 「ここもはずれか・・・もぅ、孝平ったら何処に隠れたのよ!」  まったく、私に捕まれば何の問題も無いのに!  ・・・なんだか腹が立ってきたわね。 「ふふっ、孝平。絶対私の手で捕まえてみせるわ」 「え、瑛里華先輩・・・」  何故か隣で白が震えてるようだったけど、今の私にはそのことは  気にならなかった。 ANOTHER VIEW 陽菜 「ねぇ、お姉ちゃん。本当にいいの?」 「いいのいいの、絶対こーへーはここに現れるんだから」  孝平くんの部屋にベランダ経由で進入した私たち。  お姉ちゃんはすぐに孝平くんのベットに飛び込んだ。 「んー、こーへーの匂いだぁ・・・」  孝平くんの匂い・・・どんな匂いなんだろう? 「ほら、ひなちゃんも一緒に寝よ♪」 「寝ようって、孝平くんを探さないの?」 「大丈夫だって、犯人は必ず犯行現場に帰ってくるものなんだから」  ここは犯行現場じゃないと思うんだけど・・・ 「ほら、ひなちゃんも」 「お姉ちゃん、腕ひっぱらないで・・・きゃっ」  バランスを崩して孝平くんのベットに倒れ込んでしまった。 「・・・どう、ひなちゃん」 「ん・・・孝平くんの匂いがする」  男の子の匂いっていうのかな、よくわからないけど・・・  なんだか孝平くんがすぐそばにいてくれてるような気がする。 「もぅ、こーへーったらこんな美人姉妹が探してるっていうのに  帰ってこないだなんて、風紀シールでお仕置きだぞ?」 「別に私は美人じゃないと思うけど」 「そんなことはない!! ひなちゃんは私のヨメだから美人なのだ!」  お姉ちゃんが言うと本当にそんな感じもしてきてしまう。 「ありがとう、お姉ちゃん」 「うんうん、それでこそ私のヨメだ!」 「・・・来ないね」 「うん、来ないね」 「・・・ひなちゃんは何やってるの?」 「アイロンかけてるんだよ」  手持ちぶさただった私は、部屋からアイロンを持ってきて孝平くんの  洗濯物を綺麗にしていた。 「それは見ればわかるけど、何で今?」 「そうだね、取り込んだ洗濯物がそのままおいてあったから、かな」 「さすがは私のヨメ! 気配り万全♪」 「・・・よしっと。これでお終い」  最後のハンカチにアイロンをかけて綺麗に畳んでしまう。 「ねぇ、お姉ちゃんの洗濯物も・・・」  アイロンかけようか? と思ったんだけど・・・ 「すーすー」 「もぅ、お姉ちゃんったら・・・」  孝平くんのベットの上で丸くなって眠っていた。 「なんだかひなたぼっこしてる猫さんみたい」  頭に猫のカチューシャをつけてるから、本当に猫さんみたいに見える。 「気持ちよさそうだな」  孝平くんのベットの上。  孝平くんの匂いに包まれて・・・ 「ちょっと、ちょっとだけだよ」  ベットに上半身だけを預ける。 「・・・気持ちいいな」  孝平くんの匂いに包まれていく私は、そのまま眠りに落ちていった。 ANOTHER VIEW 桐葉  私たちは森の中を走り抜ける。 「・・・」 「どうした? 桐葉」  前を走る伽耶が声をかけてくる。 「なんでもないわ、ただ、にも同じような事をしたような気がしただけ」 「昔は良く鬼ごっこをしたからな」  伽耶が懐かしそうな、そんな顔をする。  私はその表情を見て心が温かくなる。  欲しかった親友の笑顔、それが今ここにある。  そして伽耶も欲しかった家族、それも今ここにある。 「桐葉、急ぐぞ。支倉が見つかる前に伊織を捕まえておかねばな」 「えぇ」  森の中、小さな痕跡を見逃さず千堂君を追いかける。 「・・・」  私はその異変にすぐに気付いた。  確かにわかりにくい痕跡だと思う、でもそれは見つけて欲しいと主張している。 「可愛いわね、彼も」  母親に追いかけてきて欲しい、そんな気持ちが無意識の内に出ているのだろう。  そしてそれを追う伽耶も、とても楽しそうだった。 「これも親子の形、なのかしらね」 「何か言ったか?」  なら、私はこの親子の触れ合いの邪魔になる。 「ねぇ、伽耶。作戦があるのだけど、いいかしら?」 「うむ、聞こう」 「伽耶はこのまま千堂君を追いかけて。別に捕まえなくてもいいわ」 「捕まえなくてもいい?」 「えぇ、千堂君が支倉君を捕まえるのが一番最悪のパターンよ。  それをけん制するだけでいいの」 「桐葉はどうするんだ?」 「私は支倉君を確保するわ。もちろん、確保するだけで捕まえない」  私はあらかじめ用意しておいたロープを伽耶に見せる。 「お互い目的が達成できたら、二人で支倉君を捕まえましょう」 「二人で伊織を追いかけるのは駄目なのか?」  少しだけ伽耶が寂しそうな顔をする。 「私もそうしたいのだけど、もし千堂君の逃げる先に支倉君がいたら  どうなるかしら?」 「・・・確かに、そこでゲームが終わって終うのが一番面白くないな」 「だから、伽耶は思いっきり千堂君を追いつめてちょうだい」 「よし、わかった。桐葉も頼むぞ!」  私は足を止める。  伽耶は足を止めず、そのまま走って行く。 「ふぅ・・・手の掛かる親子ね」  似たもの親子ね、と口に出したら二人そろって否定するだろう。  その時の様子を思うと、口が綻ぶ。 「今度、言ってみようかしら」  さて、と。  私は支倉君を確保しないといけないわね。  まずは猫耳のヘアバンドをはずす、これで私は支倉君を捕まえることが  出来ても勝利にはならない。それを逆手に取って、確保するのだ。 「ふふっ、支倉君。覚悟はいいかしら?」  誰もいない森の中で支倉君に宣戦布告する。  支倉君を捕まえに行こうとして、私は気付いた。 「・・・どこから探せばいいのかしら」
・FORTUNE ARTERIAL sideshortstory           「楽屋裏狂想曲〜鬼ごっこ〜」第四話 ANOTHER VIEW 白  はぁはぁ・・・ 「大丈夫? 白」 「は、はい・・・ちょっと休めば大丈夫です」  支倉先輩を追いかける鬼ごっこ、最初に見失ってからずっと探して  いるのですけど、全然見つかりません。  瑛里華先輩と旧敷地内を一緒に走り回ってる内に私は疲れで動けなく  なってしまいました。  こんな事になるのでしたら、もう少し身体を鍛えておくべきでした。  このままでは瑛里華先輩に迷惑をかけてしまいます。 「あの! 瑛里華先輩!」 「なに、白」 「私のことは良いですから、瑛里華先輩は支倉先輩を探しに行ってください!」 「白?」 「私は瑛里華先輩の足手まといです。だから置いて行ってください」 「誰が足手まといだなんて言ったかしら?」 「でも」 「私が白と組んでるのは私が選んだからよ。だから一緒に孝平を捕まえましょう」  瑛里華先輩・・・ 「孝平を魔の手から救えるのは私たちだけよ!」  ・・・魔の手?  その時瑛里華先輩は私の両肩に手を置いて・・というより思いっきり掴まれた。 「ひゃぅ」 「いい、白。母様や紅瀬さんに捕まったら孝平の命(貞操)は危ないわ。  悠木先輩に捕まったら何されるかわからないし、何より兄さんに捕まるのが  一番危険なの!」 「は、はい!」 「だから私たちで孝平を救うのよ、いい?」 「は、はいっ!」  魔の手の意味がよくわかりませんが、私たちで支倉先輩をお救いしなくては  いけないことははっきりと判りました。 「でも、その前に一休みしましょうか。白、ランチしながら午後の作戦会議よ!」 「わかりました!」  もうすぐお昼の時間です。 「支倉先輩はお昼ご飯どうされるのでしょうか・・・」 ANOTHER VIEW 陽菜 「あ、千堂さんに東儀さん」  お腹がすいたからご飯にしよう! ってお姉ちゃんに誘われてきた食堂で  千堂さんと東儀さんが一緒に食事をしていた。 「あら、あなた達も食事なの?」 「そーだよ、えりりん。せっかくだから一緒に食べよ♪」  お姉ちゃんは返事を待たずに同じテーブルについた。 「ほら、ひなちゃんも」 「あの、一緒に食べてもいい?」 「いいわよ、今はお休み中だから」 「はい、是非ご一緒させてください」 「そっかぁ、えりりんたちもこーへーを見つけられなかったんだね」 「寮長もですか・・・一体孝平は何処に隠れたのかしら」 「そうだよね、こんな美人がそろって追いかけてるのに逃げるだなんて  風上にも置けないよね」 「そうそう、早く私に捕まった方が楽なのにね」  意気投合してるお姉ちゃんと千堂さん。 「それよりも支倉先輩がちゃんと食事をしてるかどうかが心配です」 「東儀さんもそう思う?」 「悠木先輩もですか?」 「うん、孝平くんって忙しくなると食事に気を遣わないでしょう?  だから心配なの。生徒会でもそうでしょう?」 「はい、私も心配です」 「お昼休憩の時間がちゃんとあれば良かったのにね」 「支倉先輩・・・」 「あれ? きりきりだ! おーい!」 「・・・みんなそろってお茶会かしら?」 「そう言うわけじゃないけど・・・紅瀬さんも一緒に食べない?」 「遠慮するわ」 「なっ」  紅瀬さんの返事に言葉を失う千堂さん。 「そ、それよりも母様は?」 「さぁ? なんで敵に情報を送らないと行けないのかしら?」 「っ!」 「きりきり、クール!」 「・・・もう行ってもいいかしら?」 「ど、どうやら紅瀬さんとはここで決着をつけないといけないようね、ふふふっ」 「うどんが冷めるわ。後にして」 「私はうどん以下なの!?」 「えぇ」  一触即発の千堂さんと紅瀬さん。 「・・・あれ? 紅瀬さんは耳飾りどうしたの?」  鬼ごっこに参加してる証の耳飾りが紅瀬さんの頭にはなかった。 「無いわ」 「あら、そうだったの。紅瀬さん、残念だったわね」 「そう、それじゃぁ」  紅瀬さんは離れたテーブルに座って食事を取り始めた。 「きっと兄さんが取ったのね、よしっ! 一人脱落!」  そう言って笑う千堂さん。  ・・・その雰囲気に飲まれて私は何も言えなかったけど。  ただ、恥ずかしいからはずしてるだけじゃないのかな?  自分の頭に今もある耳の髪飾りを触りながら、私はそう思った・・・ ANOTHER VIEW 伽耶  森の中、伊織を追う。  かすかな痕跡を見逃さず、確実に追い込む。 「ふっ、たわいもないな」  逃げるならもう少し綺麗に痕跡を消さねば駄目だぞ、伊織。  ごまかした後も見受けられるが、まだまだだな。 「まったく、まだまだ子供だな」 「ん?」  足下の痕跡が急に途絶えた。  あたしは注意深く探る、そしてすぐに見つけた。  伊織が通った後を、それは木の上だった。 「枝伝いに動いて痕跡を消したつもりか?」  まだまだ未熟だな。  あたしは木の枝を確認しながら走り出そうとして・・・ 「な!」  つまずいて転んでしまう。 「っぅ・・・なんだ?」  何かに足をとられたようだ。  足下を確認してみるとそこには丈夫な草で編んだ輪があった。 「・・・伊織の仕業か。本当に子供だましだな」  立ち上がり服に付いた土や葉を落とす。 「・・・」  無言で足下に注意しながら、あたしは走りだした。  また、痕跡が途絶えた。  そして同じように枝に痕跡を見つける。 「ふっ」  今度は足下に注意する、そこには同じように草で編んだ輪が隠されていた。  先ほどより数が多い。 「同じ手を使うとは、まだまだ子供だな」  あたしは草の輪を飛び越えて、着地・・・ 「にゃぁぁぁぁ!」  落とし穴のそこに着地した。 「・・・」  飛び越えることを想定して落とし穴を掘っていたか・・・ 「ふっ・・・ふふふっ・・・伊織・・・殺す」  ここまであたしを虚仮にした代償、払ってもらおうぞ! ANOTHER VIEW END 「・・・」  俺は息を潜めて様子を探る。  まだ誰も近くまで来た様子はない。 「どうやら午前中は乗り切れたようだな・・・」  俺は事前に用意してた固形ブロック状の栄養食を口にする。  なんとか午前中は隠れ通したけど、逆にここが午後に探される可能性がある。  だから、みんなが午前に探した場所に俺は移動しなくてはいけない。  だが、午前中に何処を探されたかは、俺にはわからない。 「どうしたものか・・・」  もう一つ、固形ブロックの栄養食を口に入れる。 「なんで、こんな事になってるんだろうな」  ・・・今は考えるのをやめよう、無事今日を生き残る事を考えよう。
・FORTUNE ARTERIAL sideshortstory           「楽屋裏狂想曲〜鬼ごっこ〜」第五話  泉の上を通ってくる風は冷たい。 「隠れる場所、失敗したかもな」  鬼ごっこが始まった直後、俺はルートを悟られないよう寄り道や  大回りをしつつ、ここ千年泉にたどり着いた。  珠津の人にとって特別な意味を持つ千年泉、だからこそ白ちゃんや昔から  ここに住んでいた紅瀬さんは逆にここを思いつかないだろう。  瑛里華は知識として知っていても来たことがない可能性もある。  かなでさんや陽菜は・・・昔一緒に来たことあるけど、かなでさんなら  たぶん思いつかないだろう。 一番危険なのは陽菜かな。  伽耶さんと会長は・・・あの思考回路だと何処に隠れても無駄だと思う。  そう分析してみる。  ここに来ない可能性があるのは3人、でも参加者の半分だ。  それだけでもかなり安全だと思った。  学院側からきて、泉を大回りした対岸の位置に隠れてる。  だから、いざって時に逃げることが出来る良好な場所、だが・・・ 「寒い」  午前中だけでも隠れ通せたのだから、寒いのも我慢しなくちゃな。  俺は立ち上がって身体を解し始める。  見つからなかったからといって、ここにいるのは危険すぎる。  午後ここに誰かが来る可能性があるからだ。 「みんなが午前中何処に探しに行ったかが判れば楽なんだけどな」  一度探した場所にもう一度来ることはそうそうないからだ。 「自室、辺りがが安全かなぁ・・・」 「あ、こーへー発見!」 「え?」  声の方をみると、泉の対岸にかなでさんと陽菜が見えた。 「やっぱりここにいたんだね、孝平くん」 「よーし、いまから行くからそこを動くなー!」  俺は想定してたルートからの襲撃に対して、想定した逃げ道を走り出す。  泉の対岸からこっちまでそう距離はないが、あの二人を引き離すくらいの  距離は稼げるはずだ。 「まてー、こーへー、逮捕するー!」 「俺は犯人じゃないですって!」  思わず返事しつつ、森の中を走り抜ける。  ・・・だんだん追ってくる声が小さくなり、聞こえなくなった。 「ふぅ・・・」  一息いれる。紅珠の破片とはいえ、それを飲んでいる俺は人よりほんの少しだけ  吸血鬼に近い。大して変わらないが、そのほんの少しの差がかなでさんと陽菜を  振り切るのに役立った訳だが・・・ 「まずいな、一度でも見つかると逃げ切れる自信が無いな」  どうしたものか・・・  がさっ。  突然背後から音が聞こえた。 「っ!」  慌てて振り向くと、会長がこちらに向かって走ってくる。 「まずい!」  俺は慌てて逃げようと思ったが、会長は一瞬にして俺の前に立つ。 「やぁ、支倉君。まだ捕まってなかったんだね」 「・・・」  吸血鬼の会長と、吸血鬼にほんの少しだけ近づいた俺。  その差はさっきのかなでさんと陽菜との差と比べ物にならないほど離れている。  ここまでか・・・ 「結構結構、がんばりたまえ。後で俺が捕まえに行くからそれまで頑張って」 「・・・は?」 「それじゃぁ、アディオス!」  そう言うと会長は全力で俺の前から去っていった。 「・・・?」  何故俺を目の前にして捕まえない? 何か意味があるのか?  がさっ。  また音が聞こえる。  その方向を見ると、伽耶さんが向かってきた。 「支倉か、伊織を見なかったか?」 「会長なら今さっきあっちの方へ全力で走っていきましたが・・・」 「礼を言う、ではまたな」  伽耶さんは会長が去った方へ全力で駆けていった。 「・・・いったい何なんだ?」  捕まらなかったのは良いのだが、何故か釈然としなかった。 「孝平、みーつけたっ!」  森の中を隠れるように移動してた俺は、背後から瑛里華の声に驚く。 「ふふふっ、やっと見つけたわ、孝平。さぁ、私に捕まっちゃいなさい!」  俺はその声を背に全力で走る。 「往生際が悪いわよ、孝平! 私に捕まった方が身のためよ!」  確かにそうは思うけど、瑛里華の笑いを見た瞬間、本能が逃げることを選んだ。 「待ちなさい!」  瑛里華も俺を追ってくる。 「うわっ!」  足を何かにひっかけたらしく、俺は転倒する。 「っ、たた。何だ?」  足元を見ると、草の先端が結ばれており、輪になっている。  それに足がはまり転んだようだ。 「ふふふっ、自分の仕掛けた罠にはまるなんて、孝平も間抜けよね」  少し離れた場所から瑛里華が歩いて迫ってくる。 「ちょっと見ればこんなのすぐにわかるじゃない」  そういって軽く跳躍する瑛里華。 「えっ、えーーーっ!」  そして着地しようとした瑛里華はそのまま地面の中に消えていった。 「瑛里華先輩!」  いつの間にか後ろから追いついてきた白ちゃんが心配そうに穴に近づく。  カラン・・・  その時上の方から何か乾いた音がした。  そして何かが穴の中に落ちていく。  ガンッ! 「・・・痛そうな音だよな」  俺の見間違えじゃなければ、あれはタライだ。  なんでこんな所にタライがあって、それが落とし穴に落ちていったのか  理解できない。 「瑛里華先輩! 返事をしてください! 死なないでください!!」  白ちゃんの問いかけに返事が無い瑛里華。 「・・・たく」  俺は注意しながら穴の方へと近づいていく。 「支倉先輩、瑛里華先輩が!」 「大丈夫だよ、白ちゃん」  俺は穴の中を覗く、そんなに深くない穴の中で、タライと一緒に瑛里華が  倒れていた。  瑛里華を引き上げて横にする。  タライで頭を打ったようだが、見た感じ怪我はなさそうだ。 「白ちゃん、後はお願いできるかな?」 「はい、お任せください」 「悪いね、見逃してもらっちゃって」 「・・・そうでした、私も支倉先輩をお救いしなくてはいけないんでした」 「救う?」 「はい、瑛里華先輩が仰ってました。魔の手から支倉先輩をお救いするって」  一番の魔の手が瑛里華だと思うんだが、それは気のせいだろうか? 「瑛里華が目を覚ましたら様子を見て、おかしかったら寮へ帰るんだ。  白ちゃん、お願いね」 「はい、支倉先輩もお気をつけて」  後ろ髪引かれながらも、俺はこの場を逃げ出した。 「しかし、あんな罠誰が作ったんだ・・・って心当たりは一人しかいないな」 ANOTHER VIEW 白 「ん・・・」 「瑛里華先輩、だいじょうぶですか?」 「うぅ・・・白?」  ゆっくりと上半身を起こした瑛里華先輩は回りを見回しています。 「・・・孝平は?」 「ごめんなさい、逃げられちゃいました」 「そう・・・私が足を引っ張っちゃったわね、ごめんなさい、白」 「いえ、良いんです。それよりもお体の調子はどうですか?」 「だいじょうぶ、ちょっと頭が痛いけど・・・」  瑛里華先輩はすぐ横に落ちている大きなタライを見て硬直されました。 「瑛里華先輩?」 「・・・ふ、ふふふっ、孝平ったらお茶目さんなんだから。  こんなトラップにご丁寧に金タライまで用意して、ふふふふふふふ・・・」 「あわわ、瑛里華先輩・・・」  支倉先輩は瑛里華先輩の様子がおかしいようでしたら、一度寮に戻ることを  勧めてくださいました。  今の瑛里華先輩の様子は、その・・・やっぱり変です。 「あ、あの、瑛里華先輩。一度寮に戻ってお怪我を治療すべきかと思います」 「だいじょうぶよ、白」 「ひゃぅ!」 「ねぇ、白。孝平はどっちに逃げたかしら?」  わ、私は身体が震えるのを押さえ込みながら、支倉先輩が逃げた方向を  指さしました。 「そう、それじゃぁ行きましょうか、白」 「は、はいっ!」 「孝平、もう手加減なんてしてあげないわ。私が捕まえたら1日中、覚悟を  してもらうわよ、ふふふふふふふふっ」  支倉先輩、申し訳ありません。私では瑛里華先輩を止められません。  今の私には支倉先輩のご無事をお祈りするしか出来ませんでした・・・
・FORTUNE ARTERIAL sideshortstory           「楽屋裏狂想曲〜鬼ごっこ〜」第六話 「あと・・・どれくらい逃げ切れれば・・・いいんだよっ!」  荒い呼吸を整えようとするが、なかなか落ち着かない。  修智館学院の裏の山に逃げ込んだ鬼ごっこ、さっきも危うくかなでさんに  つかまりそうになり、全力で逃げてきた所だった。 「はぁはぁ・・・このままじゃ時間の問題だ」  どうすればいい? 覚悟を決めるべきか? 「・・・よし、移動するか」  すでに何度か発見されては逃げての繰り返し。  もうここも危険だろう。 「人を隠すには人の中、もうそろそろ寮に逃げ込もうか・・・」  時間が残り僅かなら自室で籠城するのも良いかもしれない。  そう思い山を下りようと歩き出した瞬間。 「なっ?」  足下を何かにすくわれて、そして視界が上下逆に入れ替わる。 「・・・なんでこんな罠があるんだよっ!」  どうやら足下にあった罠にかかり、ロープで足から宙づりにされたようだ。 「ったく、ほどけるかな」  俺は足下のロープをなんとかほどこうとした。  その時視界に見慣れた姿が目に入る。 「孝平、やっと見つけた。もう逃がさないわよ」 「は、支倉先輩が宙づりに!」  瑛里華と白ちゃんのコンビだった。 「自分の仕掛けた罠にかかるなんて、本当に孝平も間抜けよね」 「いや、俺こんな罠しかけてないんですけど・・・それよりも瑛里華、危険だから  こっちに近づくな」 「何言ってるのよ、近づかないと捕まえられないじゃない」  そういって注意深くこちらに近づいてくる瑛里華。 「もう落とし穴になんて落ちないわよ、それにここに穴があるのわかるもの」  瑛里華の前に、不自然な落ち葉の集まりがあった。 「瑛里華、来るな!」 「いやよ、孝平を捕まえるんですから!」  そう言うと瑛里華は落とし穴を飛び越えて・・・ 「え? きゃっ!」 「瑛里華先輩!」  着地した場所にあった本当の落とし穴に落ちた。  今度の落とし穴は浅いのか、宙づりの俺からは穴の中の瑛里華の様子が見える。 「・・・」  無言で肩をふるわせている瑛里華。  その時落とし穴の上の方に用意してあった物が落下を開始する。 「二度も同じ手をっ!」  渾身の力で瑛里華はタライをはじき返す。 「・・・てか、なんであんなにタライは遠くに飛んでいくんだろう」  はじかれたタライは俺の視界に見える範囲には無かった。 「ふふふっ・・・孝平、覚悟は良いかしら?」  そう言うと瑛里華は落とし穴の縁に手をかけて穴から出ようとした。  ガンッ!  その瞬間、2個目のタライが瑛里華の頭に直撃した。 「きゅぅ・・・」 「瑛里華先輩、しっかりしてください!」  タライに頭をぶつけて気絶してるらしい瑛里華。  ロープで宙づりにされてる俺。  あわてふためく白ちゃん。 「鬼ごっこ・・・だったよな、これ」  瑛里華を落とし穴から救出し、白ちゃんにまかせてから俺はまた逃げ出した。  正直、今の瑛里華の相手は怖くて出来ない。 「もうこうなったら寮の部屋で籠城しよう、それで逃げ切るしかない」  一刻も早く山から逃げ出そうとした俺は・・・ 「うわっ!」  突然襲いかかってきたネットに絡め取られ、そのまま地面に転んでしまった。  自分の状態を確認するより早く、転んだ俺の真上を何かが通り過ぎていく。 「しつこいぞ! いい加減諦めろって!」 「伊織、待て!」 「・・・」  なんだか無性にこのままここに転がっていたくなった。  罠にかからないよう注意深く進んで、やっと旧敷地の裏手にたどり着いた。 「ふぅ、さすがに学園敷地の中に罠はないだろうな・・・ん?」  森の出口の所まで来たとき、そこに人が倒れてた。 「ん・・・」  眠っていた紅瀬さんが起きたようだ。 「ったく、俺もまだまだだよな」  強制睡眠で倒れてた紅瀬さんを、山の中腹にある草原へと運び、目が覚めるまで  そばにいる。捕まる危険を犯してまでだ。  そうしなければいけない理由なんて無い。  ただ、あの場に放っておく事は出来なかったから。 「紅瀬さん、目が覚めた?」 「え・・・っっっ!」  突然状態を起こす紅瀬さん。 「っ!」  おでことおでこが勢いよくぶつかった。  二人でその場でおでこを押さえてうずくまる。 「っ、たたた・・・紅瀬さん、大丈夫?」 「え、えぇ・・・貴方は?」 「なんとか大丈夫そうだ」 「それよりもなんで支倉君がここに、私と一緒にいるの?」 「倒れてる紅瀬さんを見つけたから運んだんだよ」  経緯を簡単に説明する。 「貴方、馬鹿?」 「かもな」  酷い言われようだ。けど、そうだから言い返せない。 「私に捕まるって事を考えなかったの?」 「そういえばそうだったな」  考えなかった訳じゃない、ただ、それ以上に大事な事があっただけだ。 「・・・ふぅ、これじゃぁ私は貴方を捕まえられないじゃない」 「え?」 「ここで貴方を捕まえれば、私は恥をかくことになるわ」 「そう、なのか?」 「えぇ、それとも支倉君は私に捕まりたいのかしら?」 「捕まったのなら諦めるけど、自分からは捕まりにはいかない」  それでは勝負にならないから。 「ふふっ、早くお逃げなさい」 「ありがとう、紅瀬さん!」  運が良くこの時間まで逃げ切れた。  日没まであと僅か、なんとかなりそうだ。 ANOTHER VIEW 桐葉  走っていく彼を見送る。 「いいチャンスだったのにね、伽耶になんて言い訳しようかしら」  手を伸ばせばふれられるところにいるのに、見逃してしまった。  それは支倉君がとった行動にたいする、私のお礼。  あの時捕まえたら、確かに勝負には勝てたかもしれない。  でもそれは義にか欠ける行為。 「ふふっ、私にまだこんなにも心が残ってるなんて思ってもなかったわ。  それも支倉君のおかげかしら」  私は立ち上がり、身体に付いた草の葉を落とす。 「でも、それはそれ。支倉君を捕まえないとね」
・FORTUNE ARTERIAL sideshortstory           「楽屋裏狂想曲〜鬼ごっこ〜」第七話 「誰もいない・・・な?」  旧敷地を抜け白鳳寮へとなんとか帰ってきた俺は周囲を確認しながら  寮の中に戻った。 「まさか寮に戻ってるとは思わないだろうな」  寮の部屋は隠れるに打って付けだ、その反面見つかったときの逃げ道が  無いのが問題だ、が。 「もうすぐ日が暮れる、それまで籠城すれば俺の勝ちだ」  本当は逃げやすい場所に隠れるべきなのだろう。  だが、1日中逃げ回った俺の体力が限界だった。 「みんなも疲れて諦めてくれればいいんだけどな・・・」  ふと、追ってくるみんなの顔を思い浮かべる。 「・・・」  だめだ、この面々で疲れて諦めるかもしれないのは陽菜と白ちゃんだけだ。  他のみんなは元気いっぱいに追ってくるだろうな。  ドア越しに中の様子をうかがう。 「気配は無い・・・って、自分の部屋に入るのになんでこんなこと  しなくちゃいけないんだよな」  そう言いながらも中の様子をうかがいながら、部屋へと入る。  そしてすぐに扉の鍵をしめる。 「ふぅ、これで安心だな・・・ん?」  出かける前に取り込んでおいた俺の洗濯物が丁寧に畳まれているのに気付いた。 「陽菜か? でもそんな時間なんてなかったはず」  確かに鬼ごっこが始まる前は取り込んだだけの洗濯物。  それが畳まれているということは。 「すでにここは捜索済みってことだな」  捜索済み、ということはもうここには探しに来ないということ。 「ふぅ、これで一安心だな」  俺はそのままベットに仰向けに倒れ込む。 「なんだか寒いな」  カーテンを開けると、ベランダへ通じるドアがあいていた。 「ドアが開いてれば寒いのは当たり前だよな・・・ん?」  なんでドアが開けっ放しなんだ?  考えられる要因はただ一つ。つい最近、それも本当につい最近に誰かが  このドアを開けたからだろう。 「あー、こーへー発見!」 「やっぱり最後にはここに戻ってきたんだね」  階上から二人の声が聞こえた。 「疲れた孝平くんは戻ってくると思ってたよ」  くっ、陽菜に読まれてたか。 「だから私は朝から待ってたんだよ。私ってすごい」 「・・・かなでさん午後裏山にいたでしょう?」 「あー、あれはね、午後のお散歩だよ」  散歩って言うわりに本気で俺を追ってたような気がするんですけど・・・ 「それよりもこーへー、逮捕だー!」  しまった、逃げないと。 「こーへー、逃げ・・・えっ?」 「お姉ちゃん!」  かなでさんが非常梯子を踏み外す。 「くっ!」  俺はとっさにかなでさんを部屋の中に引き寄せる。 「っ!」 「お姉ちゃん!」  慌てて陽菜も降りてくる。 「お姉ちゃん! 孝平くん!」  かなでさんは俺の腕の中で目をぎゅっとつぶっている。 「大丈夫だ、陽菜。俺もかなでさんも無事だ」 「よかったぁ」  その場にへたりこむ陽菜。 「・・・こーへー?」 「かなでさん」  俺はかなでさんの目をしっかりと見てから。  頭を軽くたたく。 「え?」 「かなでさん、危険なことしちゃ駄目でしょう!」 「こーへー?」 「陽菜が悲しみますし・・・俺だって悲しみます」 「・・・うん、ごめんなさい」 「・・・ふぅ、でも無事で良かった」  俺はそっとかなでさんの頭をなでる。 「孝平くん・・・お姉ちゃん・・・」  陽菜がそっと俺達二人を抱きしめる。 「ねぇ、こーへー。あのね、感動しそうな場面で悪いんだけどね」 「なんですか、かなでさん」  俺は頭をなでている手を止める。  この耳飾りが頭をなでるのに邪魔だけど、かなでさんには似合ってるなと  想いながら・・・ん? 耳飾り? 「こーへー、捕まえた」 「・・・」 「私もだよ、孝平くん、捕まえた」  ・  ・  ・ 「しまったぁ!」  こうして鬼ごっこは幕を閉じることになった。  陽が暮れるまで僅かな時間。  寮の中庭にみんな集まってきた。 「どうだ! 今回は私の勝ちだよ♪  ドラマCDの順番もキャラ紹介の順番も関係人気投票も順位も関係ない  私が一等賞、びくとりー!」 「お姉ちゃんったら」  俺の背中に捕まったままのかなでさんはご機嫌だった。 「寮長に負けちゃったわね」 「残念です・・・」  瑛里華と白ちゃんのコンビが残念そうにしている。 「まったく、伊織の妨害さえ無ければあたしが勝っていたものを」  ゲームに負けたのが悔しそうな伽耶さん。 「・・・あれ、紅瀬さんと会長は?」 「兄さんなら知らないわ」 「桐葉? そういえば何処に行ったのだ?」 「私ならここよ」  いつの間にか俺の後ろから紅瀬さんが近づいてきていた。 「最初に捕まえたのは寮長だったのね、ふふっ」  残念そうに・・・ではなく、微笑みながら紅瀬さんは近づいてくる。 「そうだよ、きりきり。私とひなちゃんとで捕まえたんだよ♪」 「伽耶、こっちにいらっしゃい」 「スルーされた!」  かなでさんをスルーした紅瀬さんは伽耶さんを呼び寄せた。  紅瀬さんは何かを取り出し、それを頭につける。  それは耳飾りのカチューシャ。 「伽耶、手を」 「あ、あぁ・・・」  伽耶さんの手を取った紅瀬さんは俺の腕を一緒に掴む。 「支倉君、捕まえた」 「なにーーーーーーーー!」  かなでさんが驚きの声をあげる。 「な、どういうことだ?」 「あら、鬼ごっこは支倉君を捕まえればいいんでしょう?」 「あぁ」  いつの間にか近くに来ていた東儀先輩が答える。 「最初の一人だけが、勝ちっていうルール、私は聴いてないわ」 「そうだな、俺も悠木からその話は聞いてない」 「だから、これで私も伽耶も支倉君を捕まえたことになる、間違いないわね」 「そうだな」 「なにーーーーーーーーーーー!」  再び上がるかなでさんの驚きの声。 「寮長・・・私たち4人のフィギュアが発売されても原型さえ発表されてない。  詰めが甘いわね」  フィギュアって何の話だよ・・・ 「そう言うことなら白、私たちも行くわよ!」 「は、はい! 支倉先輩、捕まえます!」 「ちょっとまて瑛里華、白ちゃん!」 「いやよっ♪」  こうして鬼ごっこは本当に幕が下りた。 「そう言うことなら俺も」 「駄目だ、伊織」 「征、なんでだよ」 「もう陽が暮れた」 「そっかぁ・・・ま、楽しめたから良しとするか」
・FORTUNE ARTERIAL sideshortstory           「楽屋裏狂想曲〜鬼ごっこ〜」第八話  何はともあれ激動の1日はこうして終わりを告げた。  結果会長以外の全員に捕まったことにされた俺だったが、俺の1日占有権の  発動はすぐにという訳じゃない。 「はぁ、疲れた」  部屋に戻ってゆっくりと身体を休めたいな。それから何か腹にいれたら今日は  早めに寝るとするか。  俺は部屋に戻ろうとしたその時、伽耶さんが皆を集めた。 「今日はご苦労だったな、それでは宴に参ろう」 「はい? 宴?」 「なんだ、征一郎。説明してなかったのか?」 「はっ、ゲームが終わってからで良いかと思いまして。  伽耶様が宴の用意をしてくださった。許可は取ってあるので皆ふるって  参加していただきたい。」 「東儀先輩、許可って何ですか?」  陽菜が訪ねる。 「あぁ、今夜の外泊許可だ」 「いつの間に・・・」  東儀先輩の手際の良さはいつ見ても鮮やかだった。 「では行くぞ、桐葉」 「はいはい、わかったわよ、伽耶にゃん」 「伽耶にゃん言うな!」  こうしてみんなで千堂邸へ行くことになった。 「まだ1日は終わりそうに無い、か・・・」 かなで:はーい、みんなグラス行き渡った?     それじゃぁみんなのお姉ちゃんこと、悠木かなでが音頭をとりまーす!    「かんぱーい!」 瑛里華:これ美味しいわね。白も食べなさいよ 白  :はい、いただきます。 かなで:さっすが料理の鉄人だよね〜 伊織 :俺が苦労して引き抜いてきた甲斐があったよ かなで:いおりん偉い! 征一郎:他の仕事もこのときの情熱を持ってくれれば良いのだがな 伽耶 :桐葉・・・ 桐葉 :何かしら? 伽耶 :・・・いや、何でもない。美味いか? 桐葉 :えぇ、美味しいわよ。 陽菜 :紅瀬さんの鍋の中、真っ赤・・・ 伊織 :さて、それじゃぁ始めようか。     修智館学院出張・・・ かなで:うわぁぁぁん、またいおりんに騙されるぅー 伊織 :最後まで言わせてくれよぉ! かなで:いおりんにたぶらかされる〜 伊織 :ちょ、だから無いこと無いこと言わないでよぉ! 征一郎:あの二人は放っておいて本題に入ろう。 かなで:うわぁぁん、いおりんと一緒にされたぁぁ! 伊織 :嘘泣きはやめてくれよぉ! 瑛里華:・・・ 孝平 :本題? 征一郎:あぁ、長編の場合、いつも行われてる楽屋裏だそうだ。 陽菜 :楽屋裏って、今回長編自体も楽屋裏だよね。 白  :楽屋裏の楽屋裏って事は、表なんでしょうか? 征一郎:深く気にすることはない。     どうせ作者も何も考えてないだろうからな。 孝平 :なんだか涙が出てきそうな言葉ですよね・・・ かなで:きっかけはね〜 孝平 :ってまだ誰も質問してないですって! かなで:いいのいいの、伽耶にゃんときりきりが楽しそうな事を     したって聴いたの。 瑛里華:このまえ寮長が話してたこれこれの事ね かなで:そうそう、楽しそうだから私もこーへーを自由にしたかったの。 孝平 :それが本音ですか・・・ かなで:だからみんなで鬼ごっこ、それがこの企画だよ♪ 陽菜 :そういえば、気付いたときはみんなチーム組んでたよね。 白  :私一人じゃおろおろするばかりで何も出来なかったと思います。 瑛里華:そんなことはないわよ、白だってやればできるんだから。 桐葉 :チーム分け、どうせその方が楽だからじゃないのかしら? 伽耶 :確かに、その方が追いつめやすいからな。 桐葉 :それもあるけど、楽なのは作者よね。 孝平 :またずばっと斬りますね・・・ 征一郎:資料によると、各話公開の後の反応を見て結果が変動するという     仕掛けを試した実験的な話でもあったそうだ。 瑛里華:それじゃぁ最初の段階では誰が捕まえられるかは全然決まって     なかったって言うこと? 征一郎:そうなるな 伊織 :でも、オチは最初から決まってたらしいね。     だから征も最初のルール説明で、支倉君を捕まえた者が自由に出来る     としか言ってないんだよな。 征一郎:あぁ、悠木から渡されたルールにそう書いてあった。 かなで:うぅ・・・そこさえ見落としてなかったら私とひなちゃんとでこーへーを     一晩寝かせないことも出来たのに、しくしく。 孝平 :かなでさん、そこはかとなく危険な台詞言わないでください! かなで:もしかして、ちょっとえっちな事を・・・ 孝平 :考えてませんから かなで:なにーーーーーーー! 伊織 :今回俺が仕掛けた罠だけど、アイデアは一般生徒の意見を採り入れたんだ。     特にこの匿名希望の生徒の案は面白かったから積極的に     仕掛けてしまったよ。 伽耶 :ほほぉ・・・あの落とし穴はこの生徒の仕業か・・・ 瑛里華:ふふふっ、この生徒さんの意見だったのね・・・ 伊織 :そう言うこと、だから俺は無実なんだよ。わかる? 瑛里華:それで逃げれると思ったのかしら、兄さん? 伊織 :ちょ、瑛里華? なんで目が紅いのかな? 伽耶 :瑛里華、こやつをどう始末つけようかのぉ? 伊織 :はっ、いつのまに背後に!? 瑛里華:とりあえず、星にしちゃいましょう、母様 伽耶 :そうだな 伊織 :ふ、二人とも落ち着いて! 征! 助け・・・ってなんで部屋の扉を     開けてるんだよ!? 征一郎:聞きたいか? 伊織 :いや、聞いたらその通りになりそうだからやめとく 瑛里華:聞かなくてもその通り、よ!! 伊織 :あーれー 伽耶 :瑛里華もなかなかやるものだな 征一郎:では、楽屋裏に届いたメッセージを厳選して公開していこうと思う。 孝平 :いつの間に? 征一郎:なお、諸般の事情により全て匿名とさせていただく。     問題がある場合は生徒会まで一報いただきたい、すぐに対処しよう。 瑛里華:じゃぁ私から読むわね。えっと・・・    「タライは!? タライは!? と思わず。瑛里華様に温存ですよねきっと」     ・・・ 白  :え、瑛里華先輩? 瑛里華:ふふっ、ふふふふふっ、このメッセージが元凶なのね。     誰かしらね、兄さんにこんな事吹き込んだの? 白  :あわわ、瑛里華先輩が・・・ 孝平 :全て匿名ってこういう意味だったのか・・・ 白  :えっと・・え? これを読むんですか?    「並み居る障害を蹴散らしながら孝平を捕獲&折檻するのですね」 瑛里華:・・・私をなんだと思ってるのかしら? 孝平 :突撃副会長だろう? 瑛里華:ちょっとショックかも・・・ 桐葉 :私も読まなくちゃ行けないの? キムチうどんが冷めるからパス 孝平 :・・・ 陽菜 :それじゃぁ私が代わりに読むね、えっと・・・    「さぁ、誰が最初に押し倒したでしょう?」     お、押し倒してなんかいない、と思うよ・・・ かなで:そうそう、私は落ちただけだもん 桐葉 :そうね、オチただけだものね。匿名さんのメッセージ    「完全自虐型かなでさんでした。よかったよかった。     と、思いきやなんというオチwww」 かなで:完全自虐型ってなによー! 桐葉 :「最後の桐葉の一言がひでぇwww」 かなで:そうだよ。きりきり〜、私はガレージキットならすんごいの     あるんだよ! 桐葉 :私のは普通に販売されてるから、それでいいわ。 かなで:うぅ・・・私の原型まだなのー!! 白  :では、次は私が。    「誰かにはわざと捕まりたい私は」     誰に捕まりたいんでしょうね? 孝平 :ゲームは真剣勝負だから、それは駄目だと思うな。 瑛里華:確かにそうかもしれないけど、そのせいでこんなに苦労するのもね。 孝平 :じゃぁ次は俺が。    「孝平はこの後、夜も頑張らないといけなくなりそうですねww」     って何書いてるんですか! 全員 :・・・ 孝平 :なにみんな黙ってるんですか! この沈黙、怖いんですけど・・・ かなで:えっとぉ・・・    「#全員に同時に捕まえられるというオチが一番高そう(ぉ」     認めたくないけどそうなっちゃった。     うぅ、ちゃんとルールを厳格にしておくべきだった。 征一郎:こういうメッセージもあるぞ。    「孝平に『つかまえられた』あの人は無効、というルールだったら、     また大騒ぎしそうだな、なんて思ったり。」 かなで:なにーーーーー!     そのルールだと私、失格!?     ふぅ、良かったぁ、ルール甘くて。 桐葉 :自分で言ってちゃ世話無いわね。 伽耶 :せっかくだ、あたしも読んでみるか。どれどれ・・・    「結局勝ったのは…誰だろう(笑)」     なんだ、そんなこともわからないのか?     あたしに決まっておるだろう。 かなで:伽耶にゃんは私より後だったじゃない! 伽耶 :伽耶にゃん呼ぶなと言うておるだろう! かなで:勝ちは私なの 陽菜 :お姉ちゃん・・・ 瑛里華:大丈夫よ、悠木さん。だってね・・・    「もちろんこのあと、負けた側を好きにする展開があるんですよね?」 孝平 :なっ! 瑛里華:はっきりしていることは、孝平が負けたことよ。     だからね、孝平。覚悟してね♪ 白  :私もよろしくお願いいたします、支倉先輩。 桐葉 :ふふっ 伽耶 :支倉には何をしてもらおうか、楽しみだな。 陽菜 :孝平くん・・・ごめんね、私も楽しみかな。 かなで:むー、私が最初にこーへーを甘やかして寝かせないんだから! 孝平 :どさくさに紛れて危険なこと言わないでください!! 征一郎:最後に今回の企画をバックアップしてくださった生徒皆様に御礼     申し上げる。 瑛里華:雑記さいと FiRSTRoN Faxiaさん     World without Borders〜国境なき世界〜 紙飛行機さん 白  :ひーくんの庭 ひーくんさん     まったり空間 マクさん 桐葉 :気ままな場所 福hideさん     M-A-T別館 ふみぃさん 伽耶 :あたしもか? ・・・まぁ、良いか。     Sketches and company ブタベストさん かなで:なんで私の出番がここでも伽耶にゃんより後なの!? 陽菜 :ふぉーびぃでゅんふるーつほーむぺーじ TMくん     宇宙の星の片隅から 朝霧玲一さん 孝平 :読んでくださった皆様、ありがとうございました! かなで:え? これで終わり? 私の分は?  宴も終わりを告げる時間。 「ねぇ、みんな。一緒にお風呂入らない?」 「お風呂?」 「えぇ、この屋敷は温泉ひいてあるのよ。みんなで入らない?」 「温泉? いいねー、はいろっ!」 「温泉か・・・疲れを温泉で取りたいな。」  俺もはいるかな。 「ふふっ、支倉君は一緒に入りたいのかしら?」 「え?」  紅瀬さんの言葉にみんな驚きの声をあげる。 「普通の家のお風呂が、男女別に分かれてると思う?」  そりゃ普通の家じゃ分かれてはいないだろう。 「それを知ってて一緒に入りたいだなんて・・・支倉君」 「は、はい!」 「・・・良いわよ」 「え゛?」 「私は構わないって言ったのよ」 「えっと・・・」 「それ以上を女の口から言わせるつもり?」  いや、言わせるも何も・・・ 「わ、私も孝平なら構わないわよ」 「は、支倉先輩とご一緒ですか?」 「孝平くんが望むなら私も・・・いい、かな。ちょっと恥ずかしいけど」 「そ、そうか。あたしと一緒に入りたいというのなら特別に許可してやるぞ」 「本当なら風紀シールだけど、ここは学院じゃないから見逃してあげる。  その代わり、こーへーの背中流してあげるね」 「ちょ、ちょっとまって! それはまずいですって!」 「気にするな、あたしが許可するぞ。では皆の者、参ろうか」 「おー!」  俺は伽耶さんに引きずられていく。  長い1日は終わったはずなのに、まだまだ続きそうだった・・・ 「いいのかい、征」 「伽耶様がお決めになったことだ」 「白ちゃんも一緒だったぞ?」 「・・・伽耶様がいらっしゃる。  それに瑛里華も居るのだから心配もいらないだろう。  なにより白が自分の意志で決めたことだ。俺がどうこうする理由はない」 「そうかい? ならあとは支倉君の騎士道精神次第だな」 「・・・」 「まだまだ楽しい1日は終わりそうにないな」 「伊織、何をするつもりだ?」 「そりゃ面白そうだから見に・・・」 「伊織、話がある。ちょっとこっちに来てもらおうか」 「せ、征! 頭を掴むなって、俺はこれから大事な用事が!」 「いいから俺と一緒に来い」 「そんな〜」
12月15日 ・FORTUNE ARTERIAL sideshortstory           「楽屋裏狂想曲〜鬼ごっこ〜」第九話  俺は伽耶さんに引きずられていく。  長い1日は終わったはずなのに、まだまだ続きそうだった・・・  って、このまま続くのはいろんな意味でまずいだろ!  伽耶さんに引きずられながらこの危機的状況を抜け出す方法を考える。  このままだとみんなと温泉に入ることになってしまう。 「・・・」  客観的に見ればこれはとても美味しい状況の用な気がしてきた。  修智館学院の美女達に囲まれて温泉なんて、願っても敵わない状況だ。  ただ、状況が危険すぎる。  例え水着着用であっても、普段と違う彼女たちを前にして俺が冷静で  居られる自信が無い。  俺自身が我慢しても、反応してしまうところは反応してしまうだろう。  それは自然な事だけど、この状況では死ぬほど恥ずかしい。  一体どうすればいいんだ?  こうなったらむちゃくちゃな理由でも紅瀬さんの用に屁理屈でも・・・  ・・・ 「ちょっと待ってください、伽耶さん」 「なんだ?」  この手は危険かもしれない、一歩間違えれば自滅するだろう。  だが、今を切り抜けるためには危険な賭でもそうするしかない! 「みんなと温泉入るのは嫌じゃないんですけど・・・その  恥ずかしいんですけど」 「男が恥ずかしがってどうするのよ?」 「千堂さんはさすがよね、伊達に一度見られてないわよね」 「なっ!」  そういえば会長にはめられて女湯に入ったことあったっけ。  あの時瑛里華の・・・ 「こ・う・へ・い? 今思い浮かべようとした映像、忘れなさい?」 「は、はい!」  瑛里華の目が紅く光ってた気がした、そんな瑛里華が視線を逸らす。 「あんな記憶よりも今ならちゃんとした場所で・・・いいわよ」 「・・・」 「はいはい、えりりんもこーへーもそこまで。  今はこーへーと温泉入りに行く所なんだから問い詰めは後にしよ♪」  問いつめだったんですか・・・ 「かなでさん、一つ聞きたいんですけどいいですか?」 「なぁに? 今さら温泉嫌だなんていうのは無しだよ」 「それは諦めました、それでこの温泉への誘いは、誰の権利を行使して  いるんですか?」 「え?」  みんな一斉に驚く。 「俺を1日自由にする権利なんですよね、これって」  みんなが考え込む。 ANOTHER VIEW 瑛里華  孝平を自由にする権利の行使?  今つかっちゃったら明日の夜までよね、今夜はみんなここにいるわけだし  そうなったら二人っきりの夜は・・・ ANOTHER VIEW 白  支倉先輩と一緒にいられる権利・・・  わわ、私はまだ一緒にしたいことをちゃんと考えていません。  せっかくなのですからちゃんと考えてからが良いです・・・ ANOTHER VIEW 桐葉  支倉君もやるわね、ここでこの話を持ち出すなんて。  ここで権利を主張しても二人っきりになるのは難しいわね。  上手いやり方ね、でも。ふふふっ・・・ ANOTHER VIEW 伽耶  む。  せっかく二人でのんびり過ごそうかと思ったのだが、今の状態では  それも無理そうだな、他の者の出方を伺うとするか。 ANOTHER VIEW かなで  ちょっとなんでここでも伽耶にゃんより後なのよ〜  って、そんなことより、こーへーを独占しようとしてもみんなここに  いるし・・・甘やかせるならやっぱり二人っきりが良いよね。 ANOTHER VIEW 陽菜  孝平くんと二人だけのお風呂かぁ・・・あの入浴剤がいいかなぁ。  でも今日は準備してきていないし。  んー、どうすればいいのかなぁ。 ANOTHER VIEW END  よし、この賭、勝ったな。  心の中でガッツポーズを取る。 「というわけで今夜はみんなでゆっくり疲れをとってくるといいよ」 「そうね、支倉君はみんなと一緒なのが恥ずかしいのよね」 「え、ま、まぁ・・・」  紅瀬さんが微笑みながらそう聞いてくる。  その微笑みに嫌な予感がする。そう、あの微笑みは鬼ごっこ最後の時と  一緒の微笑みだったからだ。 「つまり、みんなとだと恥ずかしい、それは二人っきりが良いって事よね」 「え?」  紅瀬さんのその一言にみんな一斉に俺の顔をみる。  そして次の瞬間、みんな頬を赤らめて視線を逸らす。 「私は支倉君を独占する権利、今は使わないわ」  紅瀬さん、いつの間にか俺を自由にするから独占に変わってるんですけど。 「そ、そうね。私もまた今度にするわ」 「私も、明日はローレルリングで忙しいので他の日にします」 「そうだね、こーへーとのお風呂はまた今度にするね。  今日はみんなと入りたいし」 「うん、私もちゃんと準備してからにするね」 「どうやら今宵は誰も権利を行使しないようだな」 「伽耶が権利を行使するの?」 「あたしも今夜はやめておく。月が綺麗な夜が良いからな」  月が綺麗な夜って、どういう意味ですかとは怖くて聞けなかった。 「それじゃぁ孝平、私たちみんなで温泉に入ってくるわね」 「支倉先輩、お先にいただきます」 「また今度の機会楽しみにしてるわ」 「こーへー、覗きたかったら私一人の時だけにしてね」 「お断りします」 「なにーーーーって言うかなんで私だけ即答なのーーー!」 「ふふっ、お姉ちゃんったら。孝平くん、今度良い入浴剤用意しておくね。  あ、でも温泉なら入浴剤なんていらないね」 「では参るか。支倉は後でゆっくりと入ると良い」  そう言い残してみんな温泉へと向かっていった。  当面の危機を脱出する事に成功した、そう言う意味ではこの賭は勝ちだった。  もし誰かに「私と一緒は嫌ですか?」と聞かれたら負けだっただろう。  でも・・・ 「なんかとんでもないことになってないか?」  そんな気がした。
12月19日 ・FORTUNE ARTERIAL sideshortstory           「楽屋裏狂想曲〜鬼ごっこ〜」第九話・幕間編 桐葉 :ねぇ、一つ気になったんだけど。 伽耶 :どうした、桐葉? 桐葉 :この後みんなで温泉に入るのよね。 瑛里華:何か問題でもあるの? かなで:もしかして恥ずかしいとか? 白  :私はちょっと恥ずかしいです・・・ 陽菜 :私も、かな。 桐葉 :そんなことよりも、この次の話だけど。 かなで:うんうん 桐葉 :支倉君が居ない第十話は、誰が主役になるのかしら? 全員 :え? 桐葉 :だってそうでしょう? お話は誰かの一人称で書かれる物。     ということは次の第十話では主役になるという事よ。 瑛里華:確かに、弐話以降孝平がいないときはみんなの視点別で     書かれてたけど・・・ 白  :今回もそうなるんじゃないんですか? 陽菜 :でも、みんな順番で書くとお話が長くなっちゃって温泉で     のぼせちゃうよ? かなで:ふっふっふっ、とうとうこの私の時代がやってきたのだ! 陽菜 :お姉ちゃん? かなで:耐えること数日、やっと私のフィギュアの原型も     発売日も発表された、今ノリに乗ってる私の時代がきたーーー! 伽耶 :ふむ・・・なら主役はお主に譲ろう。 かなで:え? 伽耶にゃん今なんていった? 伽耶 :伽耶にゃんはやめろと言うておろうに・・・こほん。     私は次の話の主役は降りると言ったのだ。 桐葉 :私も遠慮しておくわ。 瑛里華:紅瀬さん、それに母様も? かなで:やったー、それじゃぁひなちゃんとWヒロイン出来るね♪ 陽菜 :私は主役なんて出来ないよ? かなで:大丈夫、だってひなちゃんは私のヨメだから! 陽菜 :もぅ、お姉ちゃんったら。 白  :でも、どうして伽耶様と紅瀬先輩は辞退されたのでしょうか? 瑛里華:面倒臭いだけじゃないかしら? 伽耶 :そうではない、真打ちは最後に登場するものだからな。     今はあたしの出番ではないということだ。 桐葉 :それに、主役になると読者に自分の気持ちが知られてしまうじゃない。 かなで:え? 桐葉 :今夜は疲れたの、だから私はゆっくりしたいだけ。     だから面倒事を抱え込む気は無いわ。 かなで:え、え?? 瑛里華:そうね、ここで運を使っちゃうと今後に響きそうだし。 かなで:えーーー? 白  :私は主役なんてとんでもないです、ですから悠木先輩にお譲りします。 陽菜 :私も、かな。お姉ちゃん頑張ってね。 桐葉 :がんばって主役をやって、みんなに読まれなさいね。 かなで:なにーーーーー!     読まれるのはお姉ちゃんちょっとだけ恥ずかしい・・・じゃなくって。     この後の個別ルートに入れなくなっちゃうのはだめーーー! 瑛里華:個別ルートって(汗) かなで:むぅ、こうなったら十話のヒロインの座をかけて勝負だ! 桐葉 :私は疲れてるの、第一そんな時間も無いでしょう? 伽耶 :桐葉、行くぞ 桐葉 :えぇ。それじゃぁお先に。 瑛里華:あ、まってよ〜、私も行くわ。 白  :わ、私もお供させてください! 陽菜 :お姉ちゃんも行こうよ かなで:ちょっとまって、このままだと私の貞操が!     ・・・そうだ、誰がメインヒロインかは読者が決めてくれれば     いいんだよ♪     そういう訳でみんな早く希望を教えてね♪
1月11日 ・FORTUNE ARTERIAL sideshortstory           「楽屋裏狂想曲〜鬼ごっこ〜」第拾話 「・・・ここはどこだ?」  目が覚めたら、見慣れない天井。 「・・・あぁ、伽耶さんの家か」  頭がだんだん覚醒してくる。  どうやら俺は少し眠ってしまってたようだ。  鬼ごっこに誘われ・・・ 「いや、誘われた記憶は無いんだけどな」  鬼ごっこに巻き込まれ、逃げ回って、最後に捕まって、そのあと伽耶さんの  家で食事に招待されて、温泉に連行される直前に逃げ出して。  あてがわれた部屋に戻った所までは思い出せた。 「・・・ふぅ」  疲れが一気に出たからか、糸が切れるように倒れて眠ってしまったのだろう。  手元の時計を見る、もう日付が変わっていた。 「俺も温泉に入るか」  温泉への入り口の扉をそっとあけて中を伺う。  広い脱衣所には誰の気配もないし、誰かの着替えが残されていることもない。 「よし、だいじょうぶだな」  ここで誰かと出会ってしまう、そんなお約束が現実に起こりうるメンバーの  中で生活してるといろいろと苦労してしまう。  着ている物を脱ぎ捨てタオルを持って浴室への扉をそっとあける。  中・・・いや、露天風呂なので外か、そこには誰もいない。  俺は安心して外にでた。  洗い場で身体を洗ってから温泉に浸かる。 「ふぅ〜」  身体がぽかぽかしてくる、空を見上げると一面の星と、明るい月が浮かんでいる。 「こういうのってなんかいいなぁ」  寮の大浴場は地下で窓が無い、部屋に備え付けのユニットバスにも無論窓は無い。  そしてなにより足が伸ばせない。  こう、全身を伸ばして湯に浸かる、この気持ちよさ。 「やっぱり温泉っていいなぁ」  ガラッ。 「ん?」  扉が開く音がする。脱衣所の方を見ても湯気が多く見通せない。 「誰か居るの?」 「その声は、かなでさん?」 「こーへー?」 「ちょ、ちょっとまってください、俺が入ってるんですよ?」 「こーへー、目をつぶって!」 「え?」 「早くっ!」  俺は言われたとおりに目を閉じる。目を開けていても湯気が多くて見えない  だろうけど、だからといって見て言いという訳ではない。  ちゃぷん。  誰かが温泉に入る音が聞こえた、目を閉じているせいかその音はやけに  はっきりと聞こえる。 「か、かなでさん?」 「こーへー、まだ目を閉じていて」  かなでさんが近づいてくるのがお湯の揺れでわかる。 「こーへー・・・」  俺はごくっ、と思わず唾を飲み込む。  かなでさんの手が俺の頬に触れる・・・ 「よし、これでおっけー!」 「・・・はい?」  俺は思わず目を開ける、しかし何も見えない。 「これは?」  手で顔に触れると、そこには大きな眼鏡、サングラスがかけられているのが  わかった。  普通のサングラスは光を適度に遮る物だが、これは・・・ 「何にも見えないんですけど・・・」 「こーへーはそのままで居てね、みんなー、準備おっけーだよ!」 「なに?」  みんな? ってどういう事だ?  ・・・って考えるまでも無いよな、この展開。 「やっほー、孝平。今日は星が綺麗よね」  目線を上に向けるとサングラスの隙間から小さな夜空が見えた。 「支倉先輩、お待たせしました」  いや、別に待ってないんですけど。 「孝平くんと一緒に入れて嬉しいな、よろしくね」  嬉しいのは良いんですけど、何をよろしくなのでしょうか? 「やはり今宵は月が綺麗だな、そう思わぬか?」  ですから見えないんですって 「悠木先輩、そのサングラスだけど・・・」 「うん、こんなこともあろうかと、こーへーの部屋にあったのを確保したのだ。  私ってすごいでしょう?」 「それってここでの話じゃないわよ?」 「へ?」 「他の作品の小道具を持って来てもいいのかしら?」 「・・・そ、その作品の小道具って言ってないから問題無しっ!」 「その額の汗は何かしら?」  そのやりとりを俺はただ聞き流していた。  この黒く塗りつぶされた遮光性の高い 「孝平、それ以上は考えちゃ駄目よ?」 「・・・はい」 「それで、どういうことなんでしょうか?」  俺は湯の中で正座をし、見えないみんなに問いただした。 「話すと長くなるんだよ、のぼせちゃってもいい?」 「それはまずいですけど・・・」 「それじゃぁねぇ、理由だけど」 「話すんですか!」 「理由も何も、みんなで温泉に入りたかっただけよ」  瑛里華の答えが全てを語っていた。 「それとも支倉君は、私たちとでは嫌なのかしら?」  そういって俺の横に移動してくる紅瀬さん。  その手がそっと俺の太股を撫でる。 「っ!」 「ちょっと紅瀬さん、何をしてるの?」 「別に、何もしてないわよね、支倉君」 「・・・」  俺は紅瀬さんから一歩離れるとみんなに背中を向けた。 「支倉先輩?」 「ここまでが俺の譲歩です」 「男らしいといべきか、女々しいというべきか・・・こう言うときはなんと  言えばよいのか、桐葉?」 「へたれ、ね」  ぐさっ、とその言葉が俺の胸を貫いた。 「紅瀬さん、孝平くんだっていろいろとあるんだらから、ね」 「そうね、いろいろとあって大変よね」  そうさせたのは何方様でしょうか? 思わず言い返したくなる。 「いやぁ、さっきも入ったけど良い湯だにゃぁ」 「でも湯気が先ほどより多くて回りがよく見えないです」  白ちゃんが指摘するとおり、湯気が多く視界が悪くなっている。  とはいっても俺には何も見えないが・・・ 「大丈夫だよ、白ちゃん。きっとDVDになったら湯気が薄くなってるよ」 「DVD、ですか?」 「ブルーレイでもいいよ♪」 「は、はぁ・・・」 「何の話してるのよ・・・」  瑛里華の呆れる声に俺も思わず同調する。っていうか、DVD化って  なんだ? 「そうそう、悠木さん。この前の収録はお疲れ様」 「千堂さんもお疲れ様」 「うんうん、このまえドラマCD5巻の収録終わったんだよね、みんな  お疲れ様〜!」 「そういえば、5巻で悠木先輩も告白してたわね」 「え? きりきり、何をいってるのかな?」 「あの場には私は居なかったけど、台本は全部読んだもの、間違いないわ」 「えっとぉ、あれは、そのぉ・・・」 「悠木先輩、お顔が真っ赤です。湯当たりされる前に上がった方がいいですよ?」 「あ、うん、ありがとう白ちゃん。まだ大丈夫だから」 「伽耶も嬉しそうだったわね、伊織君との関係が改善されて」 「あれはだな、その・・・うむ」 「まったく、兄さんも天の邪鬼よね」 「そう言わないでやってくれ、瑛里華。あれもまだ子供なのだから」 「伽耶にかかればみんな永遠に子供よね。伽耶も含めて」 「桐葉、余計なことを言わんでよい!」  なんとなく、俺がここにいる意味が無くなってきたような気がしてきた。 「ねぇ、ひなちゃん」 「なに、お姉ちゃん?」 「もしかして、また胸、おっきくなった?」 「え?」 「もしかして、こーへーに揉んでもらった?」 「やだ、お姉ちゃん!」 「悔しいなぁ、ヨメの胸は私の物なのにぃ」 「あんっ、お姉ちゃん揉まないで」  悩ましげな陽菜の悲鳴に俺は・・・ただ我慢するだけだった。 「いつもどういうふうに揉まれてるのかにゃ?」 「やん、い、いつもじゃないもん」  その陽菜の言葉に、俺の背中に一斉に視線が刺さってくるのを感じる。 「やっぱり支倉先輩は大きい方が好きなんでしょうか」  白ちゃんの悲しそうな声が聞こえてくる。 「そ、そんなことはなかろうな、支倉?」  伽耶さんも少し動揺した声。 「別に胸の大きさなんて関係ないわよ」  紅瀬さんの声に俺の背中に刺さる視線が消えて無くなる。 「子供が産まれた時に授乳する器官なのだから、それさえ果たせれば  大きさなんて関係ないわ」 「紅瀬さんがそれを言っても説得力無いわよね・・・」 「あら、千堂さんの胸はただの飾りなのかしら?」 「そんなわけないでしょ!」 「私の胸は飾りよ、子供産めないのだから」 「・・・」  紅瀬さんの言葉に沈黙が降りる。 「紅瀬さん・・・」 「だから、私の胸は、支倉君専用の飾りよ」 「・・・」  今、凄く魅力的な言葉が聞こえてきた・・・けど気のせいにしておこう。  背中に刺さるみんなの視線が痛すぎます。 「ふぅ、そろそろ上がらないと湯当たりしちゃうわね」 「そうだね、えりりん・・・あれ、ひなちゃんどうしたの?」 「もう、終わりかなって思ったら寂しくなっちゃった」 「終わり、ですか?」 「孝平くんは大変だったと思うけど、鬼ごっこすごく楽しかったの。  それがもう終わっちゃうって思ったら、ちょっと寂しくなっちゃったかな」 「・・・」  確かに鬼ごっこは大変だった。  けど、今思い返してみるとどれも楽しい事ばかりだった。  ・・・と思う。 「何、案ずることはない」 「伽耶さん?」 「また行えば良いではないか」 「・・・はい?」  思わず俺は声を出してしまった。 「別に今回限りの趣向という訳ではなかろう?」 「そうだね、伽耶にゃん良いこと言った!」 「伽耶にゃん言うなといつも言っておるだろうに!!」 「・・・そうね、今回は決着を完全につけれなかったのだから、次こそは  決着をつけるべきよね、紅瀬さん?」 「私は別に構わないわ」 「あら、面倒だわって今回は言わないのね」 「支倉君がかかってるんですもの」 「・・・」 「孝平! 次こそは私が勝つわよ、いい?」 「支倉先輩、次もがんばります!」 「今度は逃がさないわよ?」 「孝平くん、私の初恋は継続中、だよ」 「さすがひなちゃん良いこと言う、さっすが私のヨメ!  でねでね、こーへー、私だって継続ちゅうだぞ!」 「あたしを変えた責任、最後まで果たすのだぞ?」 「はは、はははは・・・」  俺はその宣戦布告を聞きながら、湯に沈んでいく。 「ちょっと孝平! どうしたの?」 「これは湯当たりね」 「きりきり、そんな冷静に! こーへーしっかり!!」 「孝平くん!!」 「支倉先輩!」  薄れゆく意識のなかで、鬼ごっこが本当に終わったのを感じた。 「こーなったらこーへーに人工呼吸を!」 「支倉先輩に人工呼吸? はわわ」 「こう言うときは胸を思いっきり押すのよね」 「私、孝平くんなら良いよ」 「何、問題はなかろう。いざとなったら眷属にすればよい」 「母様それは駄目よ! 今はまず孝平を」 「大丈夫だから・・・」  おちおち意識も失っていられない、そう思いながらみんなの顔を見渡して  サングラスが外されていることに今さらながらに気付く。  そこには大量の肌色とほんの少しのピンク色と・・・ 「ぶっ!」 「きゃぁ、孝平!!」  俺は大量の鼻血とともに今度こそ意識を失った・・・  こうして第1回鬼ごっこは完全に幕を閉じた。 「って、第1回目ってそんな話俺は聞いてないぞ?」
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