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90年代オールスターは? 長束:では第2部は、まず90年代前半をリードした黄金世代のベストイレブンを選定してみましょうか。90年イタリアW杯で、若きゲームメーカー、ストイコヴィッチを中心にベスト8に残り、ユーゴサッカーは世界の注目を集めましたが、翌年からの戦争で国家が解体してしまいます。その91年にレッドスターがトヨタカップに勝ち、同じ世代が中心となってクロアチアが98年フランスW杯では初出場でいきなり3位に躍進したわけですね。
イッチと長いお付き合い 大塚:上の段落では「満場一致」だったためにサラッと流しちゃいましたが、長束さんは名古屋の方、ピクシーの地元ですよね。
長束:そうです。クロアチアに興味を持ち始めたのも、第1部で具体的なきっかけとしてキリンカップの話はしましたが、やはり隣国ユーゴのピクシーの活躍があったから、と言っていいと思います。日本では次期ユーゴ代表監督論も出ていますが、地元ではどうですか? 大塚:今年のキリンカップで引退する、というところまでは本人、連盟、一般世論のコンセンサスが出来ていますが、その前にピクシーを外して若返りを図る代表がW杯予選で大苦戦していますからね。まず6月のロシア戦を前に「ピクシーをピッチに戻せ」という声が高まるんじゃないでしょうか。 長束:去年の欧州選手権(EURO2000)を見ていても、確かに90分フルに走り回るスタミナはなくなりましたが、パスの切れや試合の流れを読む勘なんかは、まだまだ素晴らしいですよね。EURO直後の名古屋に帰って来てからの試合は特に良かったですよ。 大塚:僕は仕事で本人と会ったことがあるんですが、本当に花形を気取ったところが全然ない人格者ですし、今はまだ監督就任の可能性は薄いにしても、監督になればなったで慕われるんじゃないでしょうか。 長束:ユーゴ、そしてバルカンサッカーは個性派の集団ですから統率力が問われますよね。ピクシーの選手としての実績と品格からすれば、みながついて来る「兄貴分」になると思います。 大塚:シュケルが今度はJリーグで、という噂も出てきているそうですが? 長束:チームプレーと無縁なイメージが強いんで、ピクシーほどの人格者かどうか疑問だなあ(?)。もちろん話したわけではないので分かりませんけど。ただ、前回W杯の得点王としてクロアチアで英雄扱いされながらこの数年は英プレミアリーグでベンチが長く、苦労したみたいですね。先日クロアチア対ギリシアの親善試合で途中出場。背番号も15と重くなりました。ところが攻撃的MFとしてチャンスメーカーの役割をきちんと果たしていました。シュケルがチームプレーらしいことをやったのを僕は初めて見ました。 大塚:それは驚きですね。じゃあJリーグへ行っても中盤でやれるかも知れませんね。
長束:苦労ついでに言うと、昔はクロアチア代表と言えば、ブラジェヴィッチ前監督にしても、ボバン、シュケルにしてもトゥジュマン前政権べったりだったでしょう。独立したクロアチアの活躍が民族主義政権の期待にうまく合って、大変な英雄になったわけです。それが去年民主政権が誕生してからはマスコミや世論からメチャクチャ叩かれ始めました。その一番の矢面に立たされたのがシュケルなんです。兵役逃がれだの、右翼政党を作るの作らないの、女性問題だの、と。他のスター選手が引退していく中で、彼だけが代表に「固執」しているイメージがあるから余計に悪く言われるのかも知れません。 大塚:そうなるとちょっと可哀相ですね。年は33になりましたが、サッカーとゴールへの情熱が強いからこそプレーを続け、キャプテンとして若手を引っ張っているんだと思いたいです。ところで最近のJリーグでの旧ユーゴ圏の選手はどうですか?僕はスロヴェニア代表のデータを調べたんですが、左サイドバックのカーリッチなんかもG大阪にいたそうですね。現役ではミリノヴィッチが市原にいるようですが? 長束:ミリノヴィッチは活躍していますよ。不沈艦という言葉が似合うリベロです。G大阪、市原、浦和。それから広島も旧ユーゴ系のオーストラリア代表選手がいますよね。 大塚:代表では実績を上げられませんでしたが、マスロヴァル(ユーゴ)なんかは市原でとてもいいプレーをしていた覚えがあります。名古屋はピクシー、ビニッチの後が続きませんね。ピクシーが人脈作りをあまり真面目にやらなかったのかな。 長束:シュケルが来たら面白いかも知れませんが、名古屋は「W杯得点王」の肩書きではリネカーで痛い目に会っていますからねえ。複雑です。 大塚:ともあれ、「イッチ」の付く名字の選手と、まだまだ日本サッカーは長いお付き合いが続きそうですね。僕もこれからはJリーグの情報をもっと追いかけるようにしますよ。 2003年のドリームチーム 大塚:来年はいよいよW杯ですね。W杯予選は旧ユーゴ圏5カ国ではマケドニア、ボスニアが残念ながら本選出場は難しい状態ですが、クロアチア、ユーゴ、スロヴェニアにはグループ2位以上の可能性が残されています。ちょっと3代表の現状の情報交換も含めてそれでは第2部の「目玉」(?)の、次世代ドリームチーム勝手に選定、をやってみましょうか。
大塚:OKです。で、最初にまな板に乗せたいのがスロヴェニアのエース、ザホヴィッチです。90年イタリアW杯でベンチ入りした最年少のボクシッチ(クロアチア)が70年生まれで、71年生まれのザホヴィッチは、ブレイクするのが遅かったにしてもほぼ黄金世代と同じですね。ただ今の3代表の中でも一番注目していい選手だと思っています。 長束:日本のテレビでは西沢がいるんでエスパニョールの試合はよく放送するんですが、バレンシアの試合はあまりないんですよ。ただ試合途中から出てくると、1・5列目みたいなところからガンガン突っ込んでくるタイプのようですね。 大塚:足の速さよりはテクニックとコース取りの上手さで相手DFをかわすタイプなんでしょうね。代表ではトップ下ですが、CKあり、FKあり、ゴール前にももちろん突っ込んでくる、という目立ち方で、ハジ(ルーマニア)、ストイチコフ(ブルガリア)、そしてピクシーら「バルカンのお山の大将」に近いイメージです。スロヴェニアはスピードはありますが、他の選手がおとなしい、整然としたサッカーをやるので余計に目立っています。 長束:カタネツ監督と同じく、ザホヴィッチも一時パルティザン・ベオグラードに在籍していたんでしょう。監督にとっては可愛いんじゃないですかね。クロアチアはバラバン、ラパイッチがブレイクまでは行っていませんから、ザホヴィッチをトップ下にして、FWはユーゴの2人、ケジュマンとミロシェヴィッチではどうでしょう。 大塚:得点力がないのはユーゴも同じです。ただ明らかにピクシー不在がたたっていますね。ケジュマンはパルティザンにいた頃はドリブルで駆け上がる選手だったと思いますが、オランダ・PSVアイントホーフェンでは「待つ」タイプの得点屋として成功しているみたいですね。 長束:ミロシェヴィッチはEURO2000では活躍しましたし、今のユーゴで貴重な点取り屋なのは間違いないと思いますが、ちょっと好不調の波が激しい選手ですね。 大塚:うん、EUROでも5得点は上げましたが、ゴール前に足を出したらボールに当たった、みたいなゴールが結構ありました。伊パルマの試合を見ていてもやっぱり「待つ」タイプで、間違ってもミドルシュートを美しく決める選手ではありませんね。ところが今のユーゴ代表はパサーがいないので、ケジュマン、ミロシェヴィッチとも中盤に下がってしまいます。数の優位でいい形を作ると、ゴール前に誰もいない、の繰り返し。早く代表のユニフォームで活躍するケジュマンも見てみたいんですが。 長束:黄金世代ではいい右のウインガーがいませんでしたが、僕のイチ押しはサリハミジッチ(ボスニア)です。国家代表で大舞台に立つ機会は少ないでしょうけど、独バイエルンではサイドからチャンスを作るだけでなく、ここぞという時に得点を決めてくれますからね。バイエルンがチャンピオンズリーグで優勝すれば、今年のトヨタカップでも活躍することと思います。
大塚:僕の推しも実は右ウインガーなんです。トルコのフェネルバフチェでやってるラゼティッチ(ユーゴ)です。苦戦続きの代表の中で、一人運動量と足の速さで目立っています。司令塔不在の中、彼だけが右サイドからチャンスを作れる選手という感じですね。オビリッチ・ベオグラードからトルコへ、と出世の表街道を外れているのも面白いところです。 長束:僕もトルコで彼のプレーは見ました。サリハミジッチもラゼティッチも左サイドに入るユーティリティーぶりを見せていますから、ウインガーは左右にこだわらずこの2人で確定ですか。 大塚:パサーは、クロアチアでは今もプロシネチュキですか。 長束:そうです。彼はブラジェヴィッチ前監督とソリが合わなかったので、ヨジッチ現監督になってからかえって期待されている感じですね。ただスピードには乏しい。去年の国内最優秀選手、ビエリッツァやハイドゥクの司令塔イヴァン・レコ辺りが後進としては期待出来ます。でもユーゴのカップ戦で決勝ゴールを上 げた、イリッチは面白いんじゃないですか? 大塚:パルティザンはショートパスで組み立てるのが得意みたいで、イリッチは貴重な司令塔ですね。ニックネームが「マーリ(ちび)」と言うんですが、本当にちょっと小柄なようです。でも敏捷で、カップ戦もレッドスターのDFが甘かったのはありますが、パスを受けてサッとGK前に進むとすかさず左足でゴールの隅に決めていましたね。まだ代表経験はゼロに等しいんですが、大試合で実績が積み重なると大化けするかも知れません。 長束:ポスト・ピクシーの期待を込めて、イリッチを真ん中に置きましょうか。 大塚:ここから後ろはもうクロアチアに任せますよ。プレミアリーグに移籍が噂されるレッドスターのブニェフチェヴィッチなんかにしても、「セルビアのベッケンバウアー」とか書かれたらしいですが、まだまだ。 長束:ドゥリャイはどうですか?結構評判になっているようですが? 大塚:代表ではスイス戦で中盤の底をやりましたが、自分の位置が分からずウロウロしていました。 長束:クロアチアのボランチではビシュチャンを推します。今年ディナモから英リヴァプールに移籍したんですが、イリッチとは対照的に190センチの大型選手で、中盤、ディフェンスならどこでもこなせる器用さとダイナミックなプレーが持ち味です。まだリヴァプールでレギュラー定着までは行かないんですが、テクニックもキック力も素晴らしいですよ。
大塚:トゥドールはどうでしょう?一時はポカが多いとも言われましたが? 長束:足が速いアタッカーに振り切られる時もありますが、最近はプレーに自信がみなぎってますね。伊ユヴェントゥスでもレギュラーです。セットプレーで彼のヘディングは大きな武器ですよ。右に入れるとしたらロベルト・コヴァチですね。彼はベルリン生まれでして、ドイツだけでキャリアを築いた選手です。代表やクラブではボランチとして使われることがありますが本職はストッパーで、独レヴァークーゼンでも高い評価を得ています。 大塚:長束さんの掲示板に時々出て来る、コヴァチ兄弟、ですね。 長束:ええ、兄のニコも中盤ならどこでもこなせる選手で、来季は兄弟でバイエルン移籍、の話もほぼ決まりのようです。 大塚:GKもユーゴはダメですね。代表レギュラーのコツィッチは立ってるだけ。パルティザンのラダコヴィッチが今後代表でどの位やれるか、ですが、ハイドゥクのプレティコサ(クロアチア)に譲ります。 長束:若さからか大舞台ではプレーに波がありますが、近距離のシュートに抜群の反応を見せるGKです。何か後半はクロアチアが取り過ぎちゃったかも知れませんが、クロアチア5、ユーゴ4、ザホヴィッチとサリハミジッチで、ちょうど上で入らなかったスロヴェニアとボスニアも入りましたから良しとしましょうか。 大塚:今の話でクロアチア代表の戦い方も何となく見えて来ました。理論的には3代表とも予選で全滅、の可能性はありますが、グループ1ではスロヴェニアとユーゴの熾烈な2位争いが続きます。グループ6のクロアチアは重要なスコットランド、ベルギー戦が9月以降なんですね。 長束:予選の最後まで目が離せません。出来たら5カ国のうち2つは日本/韓国に行ってほしいですね。 大塚:第1部、第2部と楽しいお話をどうも有難うございました。また遠くない将来、両HPの相互乗り入れ企画のアイディアを練ってみましょう。今後ともよろしくお願いします。 長束:こちらこそよろしくお願いします。 第1部 クロアチアの歩き方 へリンク (対談:2001年5月上旬、出稿:2001年6月中旬) Zabranjena je svaka upotreba/uporaba slika bez ovlascenja/ovlastenja. Prepovedna je vsaka uporaba slik brez pooblascenja. Hvala za suradnju/sodelovanje/saradnju: CRONOGOMET(Suker), Sloveniansoccer.com(Zahovic), ケジュマン公式サイト(Kezman) |
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