ふりーはーとメールマガジン ================================== 2001/09/23
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[ふりーはーとのメッセージ]

● 写楽の一枚(前編)

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 浮世絵(版画)を数枚所有している。
 もちろん,初刷りとか,そういった類のものではない。
 それだと,数十万から数百万,有名な図柄で状態が良いと一千万円を超えるものもあるというが,版画の価格としては破格である。
 明治時期には,陶磁器や漆器の包装紙がわりに反故(ほご)として扱われたこともあるというが勿体ないことをしたものである。
 私の手元にあるのは,復刻版(当時の技術を復元して刷ったもの)である。
 数軒の版元が現在もある。

 浮世絵は,原画を描く絵師,櫻の板にその絵を彫りつける彫師(多色刷りの場合は色版毎にその枚数,彫る。),その版木に絵の具をのせ馬楝(ばれん)(紙を重ねて作った当皮という皿形の凹みの中に心を入れて竹の皮で包んだもの)で和紙に刷る刷師,それに彼らを差配する総合プロデューサとしての版元,彼らの合作で出来上がる。
 肉筆浮世絵(絵画として一枚の書ききり)もあるが,ここでは別物とする。

 歌麿,広重,北斎等,浮世絵に名を残す絵師達は多い。
 そんな浮世絵師たちの中で写楽は特別に謎が多いとされ,話題にされることが多い。
 1794年(寛政6年)5月から翌年1月までの短期間に140数枚の役者絵,相撲絵等(題材役者名等は,私のホーム頁
http://www.pluto.dti.ne.jp/~wada/j1.htm
に掲載している。)を描いている。
 その浮世絵は版元耕書堂(蔦屋重三郎)から出版された。
 彼にまつわるは文献は少なく「浮世絵類考」だけと言っても過言ではない(他には十遍舎一九の黄表紙に凧絵が描かれている。)とされているが出版されたものでなく,写本として流布したため書き加え,改竄が多くの異本が多数存在する。もっとも写楽出現前にこの「浮世絵類考」は大田南畝に原撰したものである。
 その「浮世絵類考」の写楽の項に共通して曰く「歌舞伎役者の似顔を写せしが,余りに真を画かんとてあらぬさまにかきなせしかば,長く世に行われず一両年にて止む(歌舞伎役者の似顔を描いたですがね,マジ本気で真に迫った描き方をしようとしちゃってデフォルメが過ぎたんで世間には長くは認められることにはならず1,2年で活動は終わっちまった。)」(これは,写楽の作画期から十年近く経て追記されたものとみられている。元の南畝の類考が書かれたのは写楽の作画期以前であったため当然記載はない。)とある。
 この文献とて,後世の研究者等による追記部分が異なったりして信憑性が問われるものとされている。
 さて,写楽が誰かいうことであるが,「浮世絵類考」の一部に記載のある「阿波の能楽者斉藤十郎兵衛」とする説が有力であるが,その裏付けとなるとなかなか決定打がなかった。
 そこで,いわゆる写楽探しがプロアマ取り混ぜて百花繚乱の諸説,言い換えればロマンを産むこととあい成った次第である。
 10人の研究者が居れば,十色の説を吐く結果となり,何十人もの写楽別人説が唱えらている。

 その絵の特異性,出版期間が短かかったこと,彼にまつわる文献がほとんどないことが彼をして謎の絵師としてもてはやされる所以であろう。

 小生も物好きであるから,本屋で「**写楽**」と言う本があれば,中身も見ずに買い漁っていたら,小説,研究書,図録取り混ぜて,とうに20冊を超えてしまった。
 例によってまったく整理せずにいるので散逸してしまい,今この駄文を草するにあたっても,手元に参考となるものがほとんどなく,申し訳ないが,うろ覚えで済まさせてもらっている。
 もちろん,小生は,ここで写楽が誰々であるとの説を唱えようとしているわけではないので詳細を必要としない。

 現代においても,木版画の版元さんがあり,写楽の役者絵等が美しく復刻されていることは,上に書いたとおりだ。
 そんな版元の中に「アダチ版画研究所」(70年にわたって浮世絵の技法を研究されているそうだ。)があり,雑誌など書籍で使われる復刻版は,アダチ版が多いようである。
 小生所有の写楽絵は二枚きりだが残念ながら,そのアダチ版ではない。
 一枚は「三世大谷鬼次の奴江戸兵衛」(あの余りに有名な,胸とも思える辺りから両の手を突き出し開いた,寄り目の鬼次である。)。
 いま一枚は,「二世板東三津五郎の石井源蔵」である。
 あまり馴染みがないかもしれぬが,この一枚について書く。

----------------以下次号につづく。

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後記:もたもた書いていたら紙数が尽きた。ンな莫迦なことはないが,容赦されたい。
秋の彼岸である。いつも思うのだが,あの彼岸花(曼珠沙華ともいう。)はどうやって,彼岸を感知して咲くのであろう。櫻の開花予想なるものが毎年あるが,彼岸花の開花予想はせずともずれたためしがない。不思議でしかたがない。   ワダ

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