審美歯科の基礎
歯科における審美性
文化的、社会的背景
審美歯科の歴史でみてきたように、歯科的審美性は、時代、文化、社会、さらには宗教とも関わっています。
古代フェニキアにおいて前歯にエメラルドのインレーを入れていることがある意味で審美的と考えられていた時代もあります。「お歯黒」などもその時代においては美しい女性の象徴とされていました。

日本においても一時代前、前歯に金のかぶせ物をするのがステータスのシンボルであった時代があります。これは「開面金冠」と呼ばれるもので、今では歯科大学でも作り方は教えていません。しかし未だに何十年も前に装着された開面金冠をみることがあります。

歯列不正に対する見方にも社会的背景が関与しているとの考えもあります。いわゆる八重歯について、日本においてはある面「可愛い」との見方もあります。現代においては意識が変わってきたとはいえ、未だテレビに出演するアイドルやスポーツ選手でも歯並びの悪い方を見受けます。これは日本人の意識の中では歯並びが悪いことは、許容範囲であることを物語っているのではないでしょうか。ところが欧米においては「白い歯、きれいな歯並び」にはこだわりを持った人の割合は日本人よりはるかに多いようです。こうした違いは背景にある文化の違いなのでしょうか。
歯科における普遍的審美性

「明眸皓歯」という言葉があります。これは非業の死を遂げた楊貴妃をしのんで、唐の詩人・杜甫が作った詩から生まれた言葉です。これは美女の形容で、澄んだひとみと白い歯の意味します。こうした言葉からも白い歯が美貌の象徴であることがわかります。白くきれいな歯に審美性を感じたのは古今東西をを問わないと思われます。
審美歯科の目的
現代において歯を美しく見せる目的は何なのでしょうか。言い換えれば審美歯科の目指すものは何なのでしょうか。
医学の目的の根幹は、病気を治すことです。それに加えて健康を維持することも大きな目的です。現代ではさらに”QOL”(Quolity Of Life;日常生活の質)の向上が求められます。例えば 乳癌の手術において、広汎に乳房をを切除してしまえば、手術の成功率は高まるかもしれません。しかし女性としての美しさが犠牲となります。患者さんのQOL(日常生活の質)を考えた場合切除範囲を狭める努力をしなければなりません。
歯科においてもそれは同じです。「痛みがとれる」「ものが咬める」といった目的の先にはさらなるQOLの向上が求められます。それは美しい歯を持つことにより、自分自身に自信を持てる様にすることです。
「審美歯科の目指しているものは、出来る限り耐久性のある素材で美しい歯を作ること、患者のコンプレックスをとり除き、精神的満足感を与ええることである。審美歯科治療は予防を行いながら、患者の精神的手助けをすること、患者の継続的なケアを含めて、必要な治療を続けることなのである。」(審美歯科に強くなる本;クインテッセンス出版)と坂本洋介先生は述べています。
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