GPSでフライト記録

ページ作成 : 2001/5/5
最終更新 : 2002/4/5




 自分のフライトを記録できたら、と思ったことはありませんか。

 ログブックをつけている人も多いと思いますが、多くの場合 数値的なフライトのデータ記録として書けるのは、バリオから読み取った数値(最大獲得高度や最大ゲイン)ぐらいしかありません。
 フライトの軌跡自体をデータにするためには... そう、GPSを利用すればいいですよね。

 ほとんど全てのハンディGPSには、自分の移動した軌跡を記録する機能(トラックログ)がありますから、後で軌跡を見ることが可能です。しかしハンディGPSの液晶画面は小さいし、軌跡だけ再生しても面白いものではありません。そこでこのトラックログをパソコンに転送してやります。そうすることにより、様々な応用が可能になるのです。
 今回はGPSとパソコンを利用した3次元のフライト記録について、私が利用しているものを書いてみようと思います。

 まず、必要なのものが三つあります。

 ひとつはパソコンです。(このページを見ているということは、多分パソコンは持っているかと思います。) さらにRS-232Cシリアルポートを備えた、Windows 95/98/2000/Me/XP搭載DOS-V機であることが条件です。
 ただし、最近のノートパソコンにはRS-232Cシリアルポートを備えてない機種も多いです。USB−シリアル変換の機器を使う手もありますが、動作しない場合もあるようです。そんな場合はPCカードスロットに挿して使えるコンパクトフラッシュ型のRS-232Cカードがいいかも知れません。 → RATOCのRS-232C CFカード:http://www.ratocsystems.com/products/subpage/cf60.html


 ふたつめがハンディGPSです。
 パラグライダーで使われているハンディGPSのほとんどが、米国GARMIN社の製品だと思います。その中でもいろいろな機種がありますが、私は eTrex-Summit を使っています。GPSとしての測位機能の他に、バリオと同じように気圧高度計が内蔵されているので的確な高度情報が取得できる… ハズです。 (パラグライダーで使われているGARMIN製ハンディGPSの中で、気圧高度計を内蔵しているのは 2002年3月現在、eTrex Summit と Vista の2機種のみのようです。)
 Summit 以外でも、GPS測位の高度情報が記録できる機種(eTrex系、eMap系)ならこれから述べる3次元のフライト記録が可能だとは思いますが、持ってないので確認していません。(^^;

 eTrex-Summitは3000点のトラックログが記録できます。記録可能な時間は状況により異なるので一概には言えませんが、パラグライダーのフライトで使用した場合、だいたい2時間程度のフライト軌跡が記録できる感じです。(SAVE機能を使用して圧縮すればもっと記録できるとは思いますが、データが間引きされるうえに日付時刻データが失われるので、お勧めできません。)

 なおGPSとパソコンとの接続には、別途専用ケーブルも必要ですので、同時に購入しておくのがベストです。

 GARMIN社製GPSの購入方法については、インターネットでの通販が安くて便利です。
 → RIGHT STUFF: http://www.soaring.co.jp/index.htm
 → 楽天市場 IDA ON−LINE: http://www.rakuten.co.jp/ida-online/index.html
 → いいよねっとオンラインショップ: http://www.iiyo.net/index.htm


 三つめがパソコンで使うソフトです。
 私は以下のソフトを使っています。

●カシミール
 3D風景を作成したり、地図を表示したり、GPSのトラックログも表示できる超多機能なフリーソフトです。ただし使用するには元となる地図データが必要になります。今までは国土地理院が刊行する数値地図50mメッシュ(標高)CD-ROM (\7500) を購入するのが一般的な方法でしたが、それよりも平成14年3月30日に発売された、カシミールの作者 DAN杉本さんによる書籍「カシミール3D入門」を購入し、それに添付されているCD-ROM内の標高データを使うのがお勧めです。
 それともうひとつ、インターネット常時接続(ADSL等)の人にお勧めな、オンライン地図サービスがあります。これは山旅倶楽部が提供しているもので、1年間2800円の会員登録をすることにより、国土地理院の1/25000や1/50000相当のカラー地図がダウンロードし放題になります。これらには50mメッシュ相当の標高データも付くので、他にCD-ROM類を購入する必要はありません。
 → カシミール3D / 風景CGと地図とGPSのページ: http://www.kashmir3d.com/

●フライト ビューア
 eTrex-Summitからダウンロードしたデータを3Dで軌跡表示したり、3D再生できるシェアウェア。パソコンの画面上に自分のフライトを動画で再生します。ハンググライダー、パラグライダーどちらでも使えます。
 → FlightView ハンググライダー フライト ビューア: http://www.vector.co.jp/soft/win95/home/se154028.html



 さて、必要なものは以上です。 では実際に各ソフトでの表示結果を見てみましょう。



 カシミールで表示

カシミール画面
 カシミールで国土地理院の50mメッシュ数値地図を読み込むと、標高に応じた色分け地図が表示できます。(このときCD-ROMから直接読み込まずに、カシミールのヘルプにあるように ハードディスクに圧縮して利用した方が描画が早いです。)

 さらに、

  • 国土地理院が試験公開している地形図閲覧システム(パソコン画面上での私的な閲覧に限り、インターネットで1/25000の地形図が利用できる。ただし白黒。)
  • 日本地図センターより販売されている数値地図25000(地図画像)CD-ROMや数値地図50000(地図画像)CD-ROM
 のいずれかを利用することにより、数値地図の標高データと一緒に地形図を表示させることができます。
 なお「カシミール3D入門」を購入した場合または山旅倶楽部のオンライン地図を使用ている場合は、最初からこのような標高データと一緒になった地形図を表示することができます。

 カシミールにはGARMIN製GPSからのダウンロード機能があり、パソコンと接続したGPSから直接フライト軌跡(トラックログ)の表示が可能です。クロカンに出た場合など、後日の飛行経路解析に最適だと思います。
 クロカンに出る資格も技術も度胸もない私は普通のフライトで使ってますが、ただフライト軌跡を表示するだけでも充分楽しめます。

 高度勾配に応じたトラックログの色分け表示が可能ですので、例えば上昇は赤、シンクは青なんて設定をすると、どこにサーマルが発生していてどのようにセンタリングしていったかが把握できます。
 特に高度50mから上げ直してトップアウトしたなんて場合、自分のセンタリングの軌跡を眺めて悦に入るのも楽しいと思います。

 それとカシミールは3D CGを描画できますので、いろいろな視点からのフライト軌跡の表示が可能です。
 左下の表示例のように視点をランディング付近に置いて山を見上げるように描画したり、右下のようにテイクオフから空を見上げたような構図にすることも簡単です。
 カシミールの操作方法については、「カシミール3D入門」という書籍をご覧になることをお勧めします。

カシバード画像1 カシバード画像2




 フライト ビューアで表示

 ハンググライダーパイロットの方が製作したソフトだけあって、フライトの解析にもってこいのソフトです。現在のバージョンは eTrex-Summit との接続に特化しています。
 GPSからのトラックログのダウンロード時に不要な部分をカットする機能があり、GPSのトラックログの中からフライト部分のみを自動的に切り出すことができます。
 そのデータを元に、3D空間でのフライトをリアルタイムに再現します。 初めて見たとき、そのリアルな動きに感動でした。

Flight Track View
 では実際の画面を見てみましょう。まずは「Flight Track View」から。

 これはフライト軌跡を3次元のワイヤーフレームで表示させるものです。 普通の再生の他、2倍速や5倍速での再生も可能です。
 また、マウスで自由に視点を変えて軌跡を観察することができます。

 フライト軌跡は上昇率に応じて色分けがされていますので、どこでサーマルにヒットしてどこで外しているかが一目瞭然です。
 再生しながら見ていると、「ああ、なんでここで左にターンしないんだよーっ」とか、「こっちにサーマルがあるのになあ…」などと呟いてしまいます。(笑)

 ワイヤーフレームなので背景の景色は有りませんが、そのぶん動作は軽いので、ロースペックなノートパソコンでも充分使えます。

 友人にGPSのデータをメールで送って自慢したり、また逆にデータをもらって飛び方(どのようにセンタリングしていったかなど)を参考にするのもいいですね。 また、インストラクターに見せて分析してもらうのも有効かと思います。


Flight Video View
 次に「Flight Video View」について。

 これはWindowsの Direct3D を使用して、CGムービー風にフライトの様子を再現できます。自機の種類は、ハンググライダー/パラグライダーのどちらかより選ぶことができます。

 優れモノなのが、視点を変えて再生できること。後ろから自分の機体を追いかける視点での”Chase”や、下方から見上げた状態の”Under”など、いくつかが選べて、ズームインorアウトも可能です。

 50mメッシュ数値地図から地形データを作成できますので、ちょっと大まかな表示になりますが実際の山並みが再現されて、臨場感抜群です。

 一日 飛び終わり家に帰ってから、テーブルの上に置いたノートパソコンで自分のフライトを再生します。 画面にはセンタリングをする自分の機体が...  それを眺めながら飲む酒は、格別なのです。(^^;;


 それ以外にもフライトビューアでは右下の図のように、バログラフ風に高度や上昇・下降率の推移をグラフ表示することもできます。
 ただし上昇・下降率については、元となるGPSトラックログの測定間隔がバリオほど短くないためか、実際にバリオで見たものよりも小さい(つまり、ある程度平均化された)値になるようです。 さすがにこの点は、本職の機器(バリオ)には敵わないのかな、と思います。

Flight Analisys




 3次元でのフライトログを記録する場合、水平面上の位置の他に、高度データが必要となります。
 従来の場合、緯度経度(水平面上の位置)はGPS、高度はバログラフ機能付きのバリオでそれぞれ記録し、あとでパソコンで合成するというやりかたが主流でした。しかしバログラフ機能付きのバリオは高価であるため、なかなか手が出ない人が多かったと思います。

 そこに高度が記録できるハンディGPSが登場し、しかもそれが3万円程度で入手できるようになって、手軽に3次元ログを楽しめるようになったのではと思います。

 皆さんも試してみてはいかがでしょうか。



 このページの画像は、国土地理院刊行の数値地図50mメッシュ(標高)を使用して作成しました。(使用図幅名:543945)



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