カメラの基礎(1) 一眼レフのしくみ



  空撮をするにはパラグライダー操縦の技能はもちろんですが、カメラについての知識もある程度あった方が便利かと思います。
 そこでこの項では何回かに分けて、パラグライダーパイロットの皆さんが空撮をするにあたり、知っておいた方がいいと思われるカメラの基礎知識について書いてみようと思います。
 もしここに書いてあることに間違いがあったり、わからないことがあったら、ぜひお知らせください。




 一眼レフとは?

 独り言3(パイロットのカメラ選び)ではカメラの種類について簡単に書きました。そこでまず、ここを読んでくださっている多くの方が持っている、または購入を検討していると思われる、一眼レフについて書いてみたいと思います。

 さて、「一眼レフ」という呼び名ですが、これってどういう意味なんでしょう?
 一眼レフカメラは英語では「 Single-Lens Reflex Camera 」と書きます。
 文字どおりレンズをひとつ付けて、それで結んだ像をフィルムに感光させて撮影します。ただしそれだけではレンズを通った像を目視することができないので、鏡で反射して(ここが Reflex の意味です)ファインダーに導いておいてやります。

 撮影者はその鏡で反射した像を見ているわけですが、シャッターボタンが押されるとこの鏡がハネ上がり、レンズを通った光がそのままフィルム面に到達することにより撮影できるわけです。


一眼レフ断面図1  一眼レフカメラの仕組みを簡単に示したのが右の図です。*1
 撮影前の通常の状態では光軸に対して45°の向きに置かれた鏡により、光は上方に曲げられています。その先の、レンズを通った光が結像する位置に スクリーンが置かれています。 これをそのまま上から覗けば、撮影される像を確認できます。
 今でもプロカメラマンが使うような大型のカメラでは、この形式のカメラがあります。(このように腰の位置に置いたカメラを、上から覗き込むように見るものをウエストレベルファインダーと呼びます)

 ただしこの方式では撮影したい方向と別の方向に顔を向けなければなりませんし、スクリーンに写った像は左右が逆さになっていますので、扱いが大変です。
 そこでこれを自然に被写体の方向を向いたまま見ることができるように(これをアイレベルファインダーと呼びます)、スクリーンに写った像をファインダーに導いてやる必要があります。
 一見スクリーンの上にさらに45°の鏡を置くだけで良さそうに思えますが、これだと上下左右が逆になってしまいます。 そこで必要なのが図のペンタプリズムです。 「ペンタ」とは pentagonal 、つまり五角形の、という意味。断面が5角形をしたプリズムの内部の反射で像の天地左右が入替り、向きを正しくしているのです。
 図で明らかなようにペンタプリズムは構造上、カメラ上部に設置されます。このため一眼レフカメラは上部中央が盛り上がった、あの独特の外観をしているというわけです。

 *1なお例外として過去には、鏡の角度が光軸に対して45°ではないもの(例:西独ZeissのContarex…鏡に合わせてペンタプリズムやスクリーンも「前傾」している)や、ペンタプリズムではなくポロプリズム(例:オリンパスのペンF)やポロミラー(例:ニコンのニコレックスズーム35)を使用しているものもあります。 しかし現在 一般的に使用されている一眼レフのほとんどが、上図のような仕組みになっています。


一眼レフ断面図2  では次に、シャッターボタンが押された時の状況を示します。
 シャッターボタンが押されると、まずレンズ光路上に45°の角度で置かれた鏡がハネ上がります。同時にレンズに内蔵された絞り機構により所定の位置まで絞られ、その後フィルム直前にあるシャッターが開きます。

 シャッターが開いているとき、レンズを通った光をファインダーに導いていた鏡はハネ上がったままになっているので、この間はファインダーは真っ暗になります。一眼レフカメラのシャッターを押したとき、ファインダーが一瞬暗くなるのはこのためです。
 シャッターは定められた時間開いた後、閉まります。その後、絞りは再び開放状態に戻り(完全自動絞り機構)、上がっていた鏡も元の場所に下がるため再びファインダーの視界が得られます。(クイックリターンミラー機構)

 このような複雑な動きをシャッターが押されるたびに、一眼レフは繰り返しているわけです。

 でもコンパクトカメラや使い捨てカメラにはこのような仕組みはありません。一眼レフはなぜわざわざ、こんな大変なことをしているのでしょうか?
 それはすべて、撮影レンズを通った、フィルムに結像されるのと同じ像を見るためなのです。このため一眼レフカメラには他の形式のカメラにはない、以下のような利点があります。

  • レンズを取り替えても、ファインダー光学系を変更する必要がない。超望遠レンズから超広角レンズまで、レンズを交換するだけでフィルムに写るのと同じ像をファインダーで確認できる。(ボケ具合など、厳密には異なる点もあるが)
  • よって、厳密な構図決定をすることができる。コンパクトカメラ等で近距離のものを写すとき、ファインダーで見える範囲と実際に写る範囲の差が大きくなったりするが、一眼レフはそのような問題は全くない。
  • ピントが合っているかどうか、ファインダーで確認できる。被写界深度の浅い望遠レンズや大口径レンズも安心して使うことができる。
 ただしその裏目の欠点もあります。
  • 機構が複雑になるため、一般的にカメラが大きく重くなる。
  • レンズ後端からフィルムまでの間に、45°の角度に置かれた鏡が可動するためのスペースが必要なので、レンズによっては設計に工夫が必要である。
  • シャッターが開いている間、ファインダーは真っ暗になる。このため一部の特殊な一眼レフを除き、写した瞬間をファインダーで見ることができない。
  • 鏡など可動箇所が多いので、撮影時の音や振動が大きくなる傾向がある。
 このような欠点があるものの、それを上回る大きな利点があるため、一眼レフカメラは広く普及しているのです。(2000.12)




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