鳥になった時

2.飛行機搭乗



 さて、一通りの説明が終わると次にオプションのビデオ・カメラ撮影を希望するかどうか尋ねられた。
 これはジャンプ中の一連の様子を撮影してくれるもので、120ドルの追加料金となっている。安い値段ではないが、専門のカメラマンが一緒にジャンプして、落下中のビデオ撮影をしてくれるという。もちろん一緒に飛行機に乗り込むわけだから離陸する前から始まって飛行機の中の様子も撮ってくれるそうだ。ただ、落下中の映像は被写体である我々4人のうち一人しか撮ることはできないのは仕方ないところだが、その分料金を割り勘にできるので良しとしよう。
 というわけで、このオプションも申し込むことにした。落下中の映像は私ではなく女の子の一人にしてもらった。

ハーネスを付ける  続いて隣の部屋に移動し、待っていたインストラクターの指示でジャンプのための装備を付ける。

 まずはジャンプ用のツナギを貸してもらう。強烈な風圧を受けるため、ヒラヒラした服ではダメなのだ。もちろん浴衣姿も論外だ。(そんな奴、いねーって?)
 次は靴。当然ながら雪駄やハイヒールはダメ。我々は最初から運動靴を履いて行ったのでこのままでOKだった。
 そしてインストラクターとがっちり固定するためのハーネスを体に装着する。
 最後にゴーグル。これは透明なプラスチックにゴム紐を取り付けただけの、シンプルなものだった。

 さあ、いよいよ飛行機へと向かう。
今回は人数が多い(我々4人+インストラクター4人+カメラマン+パイロット)ため、単発のセスナ機ではなく、双発の低翼機を使うとのことだ。
 事務所の裏側はそのまま空港の滑走路へつながっている駐機場になっていて、そこに飛行機が待機していた。

飛行機をバックに集合  こ、これだあ。この小さい飛行機がいいんだよなあ。ぐるりと機体の周囲を回りながら眺めてみる。いかにも飛行機だな、という感じがする。
 しかしゆっくりと見てる時間もない。全員集合して最終のチェックだ。とはいえインストラクターは全員オーストラリア人なので日本語で冗談を交えながら談笑という展開にはならず、苦手な英語での説明だったが。

 飛び降りる時の姿勢をみんなでとってみる。イグジットの瞬間の動作を真似てみる。
 「レディ・セット・ゴー!」
一連を動作をインストラクターがにこにこしながらやっている。だんだん、緊張してきた...。

 機体後部にある搭乗口から飛行機に乗り込む。内部は縦にタタミを1+0.5畳ほど並べた位の広さ。椅子等は取り払ってあるが、9人が乗り込むには結構狭い空間だ。「体育座り」の姿勢で前後の人とぴったりくっつくように座ってゆく。ちょっとこれは窮屈。 ま、いっか。

カメラマン  一番後ろ、搭乗口に近い所に乗り込むのはカメラマン。彼のヘルメットにはビデオカメラと一眼レフが取り付けられている。私も趣味のパラグライダーで時々空からの写真を撮ったりすることもあって、ヘルメット上にあるそれらの機材が興味深かった。
 ビデオはコンパクトな8ミリ、一眼レフは私の使っているカメラと同じ、ペンタックスのMZ-5だった。
 ビデオはともかく、落下中は両手とも使えないのでどうやってカメラのシャッターを切るのかと思って良く見ていたら、30cm程の短いレリーズをくわえようとしていた。そうか、口でシャッターを切るんだぁ! 

 さて、搭乗が終わった。次は搭乗口のドアが閉めるのかなと思っていたが、閉まらない。というよりドア自体が無い。開きっぱなしだ。

 そういや昔、私の家の近くを走っていた国鉄のとある列車なんかはドアを開けて走行中に直接外を見ることができたようなことを聞いた気がするし、「コーヒーカップ」みたいな遊園地の乗り物だってモロそのまま座るだけだ。

 しかし今回はそれらとはかなり違う。なんといっても飛行機だ。何かこう、「ウィ〜ン・バタンッ!・ガチャッ」てな感じで何があっても絶対開きそうもない金庫の扉みたいなものが付いてるだと思っていた…わけではないが、ドアがなくて開きっぱなしといういきなりな展開に少し面食らってしまったのだった。

 ま、どうせ最後はその搭乗口から「落ちる」ことになるんだから別に無くったって大した違いはないなと気づいたら、全然気にならなくなった。それに、自分の付けてるハーネスはしっかりと飛行機に固定してくれるので、飛行機が揺れたりしても途中で転げ落ちたりすることもない。心配は無用のようだ。


PHOTO: SKYDIVE SAIPAN INC. STEVE V/S


ページ最終更新:1998/3


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