TBS系 金曜ドラマ『聖者の行進』インプレッション
第7話「星になったありす」

<インプレッション>
(今回は、感傷的になって、うまく書けません。社会派インプレ期待してた方々には、ごめんなさい。今回の演技はみんなすごかったわぁ!)

_永遠を助けるために、ありすは踏み切りに飛び込み、彼は助かったが、自分自身は重傷を負う。病院にありすの両親が駆けつけた時、父は永遠を殴って追い払い、義母は父の「離婚の約束がウソ」であることをばらし、夫の中央政界進出しか眼中になく、「個人的には、あなたがいない方がいいけど...」と、本音が出てしまう。
父と義母との仕打ちにショックを受けたありすは、激しい頭痛を起こし、ICU(集中治療室)に入る。
この両親、本当に娘のこと理解し、愛情を注ぐ気があるのだろうか?権力の道具に利用できるとこは、娘をも利用し、自分の都合に合わないと思ったら、ばっさり切ってしまうような夫婦だと思うんだけどな....?
_ももセンセに連れられてICUに入ってきた永遠に、ありすは謝る。彼がとても優しく、真摯に愛してくれたのはわかっていたのに、彼が知的障害者である故に、彼の愛を受け止められなかったことを...。出会って少しの間で、互いに分かり合えつつあったのに、ありすには、もう時間は残されていなかった。
永遠は、ありすの亡骸を病院のベンチに連れ出し、彼女の好きだった『星に願いを』をお別れのために弾く。彼にとって最善の贈り物として...
・・・永遠クン、私もそう思うよ。市長夫妻、竹上父子といった「大ウソツキ達」のド派手な告別式よりも、ありすは喜んでるよ、きっとね。
_永遠は、ありすの死を「不思議の国へ行った」と理解していた。しかし、廃バスの中で、二度と会えないことがわかって泣き崩れる。誰よりも「近くにいた存在」であった、ありすを失って悲しむ永遠の前に、「いつも、そばにいるよ!」と語りかける”ありすの幻”。彼は「ありすが、自分の心の中に生きている」ことがわかっただろうか?
_工場では、「血染めの角材」をももセンセへ届けた犯人探しで、リンチが行われ、廉が名乗り出て罰を受ける。そこへ帰ってきた永遠が、自分が届けたと言ったため、熱湯シャワーを背中に浴びせかけられる罰を受ける。
永遠は、三郎に対し「ボクは犬さんじゃないでしょ、人間でしょ・・・。」と抵抗し、廉は「人間じゃなくなるくらいだったら、死んだ方がましだ。」と仲間たちに言う。それまで、社会で誰にも認められず、卑屈な姿でしか生きられなかった彼らが、「人間としてのプライド」に目覚めつつあるのだ。私たちの周囲に、「卑屈になること」を強要されて、「人間としてのプライド」を持てなくされてしまった人たちは、いないだろうか?
_ももセンセの紹介で、楽団に招かれた宇野弁護士は、彼らの「新しい友達」として、入ってくる。ももセンセは、「永遠の背中見て...永遠を助けたげて...」という、ありすの「言葉のバトン」を思い出し、永遠の背中を見ようとする。思わず凍ってしまった工場の仲間たち、背中の傷痕を見て驚くももセンセと宇野弁護士...これから、どういう展開になっていくのか?彼らに「救いの手」は、差し伸べられるのだろうか?
 

ありすの独り言

_永遠が、列車に轢かれそうだったから、あたしは踏切に飛び込んで、永遠を助けたの。そのせいで、あたしは大ケガをして、死にそうな目にあった。 
パパは、永遠を疫病神みたいに扱って、追い払ったみたいだけど、やっぱ、永遠のこと事故もあったから、よっぽど嫌なんだな...って、思ったよ。 
_あの女、パパと別れるはずだったのに病院に来たのは、どうしてかな?って思ったけど、パパ嘘ついてたんだ。それに中央政界進出のことばかりで、あたしがいない方がいいって...とってもショックで、激しい頭痛がして、とってもつらかったよ...。 
_あたし、もうダメだな,,,と思って、ももセンセに頼んで、永遠連れてきてもらったの。どうしても会いたかったし、謝っておきたいことがあったんだ。 
永遠には、ママのネックレスなくなった時、責めちゃったし、パパ達の目を気にして置いてきぼりにしようとしたこと、謝らなくちゃいけなかったしね。 
_でも、何よりも永遠に謝らなきゃいけなかったことは...。あたし、永遠を、どっか違う目で見ちゃってるとこがあって、永遠と一緒にいると、とっても楽しくて、永遠は優しいのに...どっか寂しかった。心の中に「別のあたし」がいて、永遠のこと、普通の男の子として見られなかったの。もっとちゃんと好きになればよかったのに...ごめんね。愛してあげられなくてごめんね...それを言いたかったの。 
_ママの形見のネックレス、あたしのこと覚えていて欲しいから、永遠にあげたの。 
ももセンセには、永遠の背中の傷が気になってたから、見て欲しくて、永遠を助けて欲しくて、お願いしたの...。あたしは、もう永遠には何もできなくなったから...。 
_永遠、愛してあげられなくて、ごめんね。もっと一緒にいたかったよ...。


第8話「ひとかけらの希望」

<インプレッション>

_永遠の背中の傷痕を見た、ももセンセと宇野弁護士は、工場の中で起こっていることを予感し、工場の仲間たちの診断書を取る。しかし、宇野弁護士は、地方の名士である社長を告発しようというわけだから、こわいのだ。実際ももセンセが診断書を持って、竹上社長に詰め寄った時、彼は「やれるものなら、やってみなさいよっ!」と開き直る。地方の名士の自分と「あいつら」とでは、自分の方を絶対に信じるという安心があるのだ。
_「とうとう、本性を見せてくれました。」と、ももセンセは、工場の子供たちの親たちを訪ね、工場を告訴するための「懇談会」へと誘うが、どの親たちも拒んでしまう。「障害者である」ということは、家族には重い「お荷物」であり、せっかく「厄介払い」できたのに、関わりを持たされるのは嫌なのだ。妙子の母親が典型的なものだろう。自分の子であっても、いなくなった方がいいぐらい「障害を持つ家族」は、社会的に不利な方向へ落ち込ませる爆弾なのだ。ももセンセは誰も来ない懇談会の場所で、「投げ出したくなりました。」と弱音が出るが、宇野弁護士の「強くなることはないんです。・・・弱い自分に向き合うことが大事なんです。」と励ます。そこへ、永遠の母親がやってくる。
_永遠は、工場の仲間たちと「ストライキ?」して、「何もしないと、ずっとぶたれるでしょ・・・。」と、廃バスに立てこもる。社長達は「罰を与えないから・・・。」と言うのだが、彼らは、「この手」にはもう引っかからない。仲間たちで演奏する『聖者の行進』を聞いて、社長は「うまいじゃないかぁ・・・。」と言うが、彼にはただの曲であっても、仲間達にとっては、「人間としてのプライド」を起こそうとする宣言に近いものではないのだろうか?
_そして、工場では、社長が三郎を「スケープゴート」にするために、廉に「一生生活の面倒を見てやる。・・・妹の目を治したいんだろ?」と言って、三郎を殺させる。他に身寄りのない廉にとって、妹はかけがいのない肉親であり、そして、生きていくためには社長にすがるしかなかったのだ。三郎は「あ・・・、助けてくれ・・・。てめぇっ、やれるもんならやってみろっ!」と恫喝するが、自分と妹の人生がかかっているのだから、殺すしかなかったのだ。ただ、三郎は「当然の報い」だとは思うが・・・。
_ももセンセ・宇野弁護士は、社長のところへ行き、刑事告発することを申し入れる。しかし社長は「自分の知らない範囲で起こったこと」とすっとぼける。そして「知的障害者には証言能力がない・・・。俺は、行き場のなかったあいつらを引き受けた神様みてぇなものだって、親には感謝されてるんだよっ!」と、全く相手にしない。補助金横領の方も、経営難でも雇用確保のためにやりくりしている・・・と言えばいいんだ!と、うそぶく。ホントに障害者を雇用して経営をすることは、本当に困難なのか?松下電器系の企業(枚方松下電器?マイクロカセット作ってる会社)で、障害者雇用でうまくいってるとこあるけどね。ただ、人件費搾取だけで儲けようってハラだからじゃないの?
_永遠たちが立てこもる廃バスへ「説得」しに行った、ももセンセ・宇野弁護士は、永遠の母が「永遠、がんばんなさいっ!・・・自分の意見を言えるようになったのね。」という言葉に驚く。彼女にとっては「体を悪くするぐらい苦労」しても、自分の子なのだ。その成長した姿を素直に見たのだろう。永遠が「人間として真摯に向き合った」相手・ありすはいなくなったけれども、その経験が成長へと導いたのだろうと思う。障害を持つ人々への偏見は根強い。しかし、彼らを社会から排除し、「社会的経験」の機会を奪っておいて、私たちは、彼らを低く見てはいないだろうか?
 

ありすの独り言(in『不思議の国』編)

_あたし、不思議の国に来て、あったかいココアもあるし、何よりもあたしをホントに大事にしてくれたママが、いつもそばにいるから寂しくないよ。(永遠の方を、いつも見ているよ。) 
_パパ、国会議員選挙には出ないみたいだけど、あたしがいなくなって、やっぱショックだったのかな?あの女は、「いなくなってせいせいしてる」みたいだけど、パパが中央政界に出馬しないんだったら、見当はずれだったみたいね。いい気味だ。 
_ホント、永遠達の様子見てたら・・・、めっちゃくちゃびっくりした。あの工場の社長や三郎達には、めっさムカツク!永遠の背中の傷、ももセンセ達も見たみたいだけど、永遠だけじゃなかったんだぁ〜っ!ももセンセ、宇野さんと相談して裁判するみたいだけど、社長は「市長や警察は知り合いなんだ!」って、開き直ってる。パパってこんな「人でなし」と親しいの? 
_永遠、仲間たちとあたしの「隠れ家(バス)」に立てこもって、「社長さんが謝ったら、帰るでしょ。・・・工場も仕事も好きでしょ・・・。」って言ってたけど、いくら工場や仕事が好きでも、あれじゃいくらなんでも、ひどすぎるよ。だけどさ、あのコワイ三郎ってヤクザまがいの奴から、身を守るのにあたしの「隠れ家」が役に立ってうれしいよ。 
_だけど、ももセンセが親の家回って断られる姿見てると、大変だと思ったよ。ホント親たちって、子供があーいう状態だったら、簡単に捨てられるものなのかなぁ?だけど、永遠のママが、一人だけ出てきたってのは驚いたな。「もし、ご家族の一人でも立ち上がるなら、私は弁護を引き受けてもいい。」って、宇野さん言ってたけど、ホントちゃんとやってよぉ〜っ!永遠たちを助けてほしい。あたしは何もできないけど、見守ってるからねっ!


第9話「命の重さに泣いた日」

<インプレッション>

_工場の仲間たちと「ストライキ?」に入っていた永遠達の結束は、社長の「親による切り崩し工作」で破れ、永遠は工場を去ることになる。永遠に取っては、唯一の「社会との連結点」であった工場を去る時、仲間たち・ありすとの出会いを思い起こしながら、「・・・ボクはずっとおうちにいるでしょ。きっともう友達に会えねぇでしょ。」と、感じ取っていた。障害を持つ人々の社会参加の場が制限されている現状では、一度職を失えば、再就職は難しい。仕事の場が提供されないのは、ホントにできる仕事がないのか、それとも排除しているのか?考えていく必要があると思う。
家に戻った永遠に対して、父は母親に詰め寄り、弟は「なんで戻ってきたんだよぉ〜っ、ちきしょう〜っ!」と荒れる。弟とその友達によるイジメに不甲斐なく耐えている永遠に、鈴がやってきて吹く「聖者の行進」の音楽に、工場の日々で培われてきた「人間としてのプライド」を取り戻していく。
_社長によるレイプで妊娠してしまった妙子にももセンセは、親に話に行くが、「そんなこたぁ、知ったことじゃねぇんだよぉ!」と逆上するだけで、何の進展も見られない。妙子は母親が父親に捨てられた過去を知っていたために、「ママもパパに捨てられたの・・・。だから妙子のこと嫌いなの!」と泣きじゃくるばかりであった。家庭崩壊による様々な悲劇が繰り返されているこの時代に、彼女もその被害者なのだ。だから、社長によるレイプで出来てしまった子供だが、「大事な命を持つ存在」として、いとおしく思ったのではなかったのだろうか?
_妙子の妊娠を知った社長は、市長の紹介で弁護士(安西)を雇って、宇野弁護士に対抗しようとする。かつての同僚の登場に「手強い相手が現れました。」とぼやく宇野弁護士、「・・・彼(竹上社長)と話していると、時々恐くなるんですよ。・・・感情が感じられない。・・・でも彼は無罪ですよ。」と言い張る安西弁護士。この対決はどうなっていくのだろうか?今後の展開では、大きなキーポイントである。
_三郎を殺した廉は、社長に「もう、お前は血に染まっている。もう一人、そいつで終わりだ。」と言われて、妙子を殺そうとする。社長にとっては、自分のレイプ行為で子供を宿している妙子の存在は、非常に危険な存在なのだ。廉は、妹・鈴の失明以来、真実を語れない状況、三郎を殺した罪悪感で、「太陽は見えますか?・・・僕は鈴が失明してからは、ずっと暗闇と砂漠の中です。・・・僕を救ってください。」と、ももセンセにノミを自分の喉に刺させようとする程苦しんでいた。しかし、自分が生き残っていくためには、やむをえないこととして、妙子を殺そうとする。歩道橋へおびき出し、殺そうとする廉に、止めようとする永遠。「お前のお腹の子供が邪魔なんだ。・・・社長の子供だ。いらない子供だ。」「俺は魂を売ったんだ、悪魔に・・・。」と叫びながら殺そうとする廉を必死で止めようとする永遠。廉のノミが永遠の手に刺さりながらも、「いらねぇわけはないでしょ。みんな生きてるでしょ。・・・みんな真っ赤な血が流れてるでしょ。」と、言い続ける永遠。妊娠中絶やちょっとしたきっかけで殺人が行われやすい現代では、「命の重み」は軽いものとして考えられている。しかし、私たちは本当に「命の重み」をわかっているだろうか?
_今回は、様々な流れの中で「妙子の妊娠」を通して、命とは何なのか?、また、不本意な形で生を受けようとしている状態で、どう向き合っていくのか?を巡って、様々なことを考えさせられる。果たして、私たちは「誰でも、他に取り換えの効かない、かけがえのない存在なんだ。」ってことを、どれだけわかっているのだろうか?
 

ありすの独り言(in『不思議の国』編)

_永遠、精いっぱい頑張っていたのに、友達は「親の説得」で、脱落しちゃって、クビになっちゃったんだね。かわいそうだよ。家へ帰っていくバスの中で、永遠があたしを初めて見た時を思い出して泣いていたね。だけど、あたしは永遠といつも一緒にいるから、くじけないでね。だけど、永遠のパパと弟、帰ってきたことを責めるなんてひどいよ。特に弟には、めっさむかついた。友達と一緒になって、兄をいじめるか〜っ!あたしがいたら、あいつら殴ってやるっ!
だけど、永遠、工場の仲間たちも寂しいって言ってたよ。だから、戻れるようになったらいいね。
_妙子ちゃん、社長のレイプで妊娠しちゃったんだぁ!だから、ももセンセがかくまったみたいだけど、あの母親のキモチあたしはわかんない。「ママ・・・、妙子のこと嫌いなの!」って泣いてたけど、あたしもママがいなくなって、パパが再婚したでしょ。あの女にはひどい目にあったしさ、妙子ちゃんのキモチわかるんだ。
_だけど、いっちばんムカツいたのは、社長だよっ!妙子ちゃんの妊娠知って、パパに紹介してもらった弁護士を使って無罪で逃げ切ろうってしてるだけじゃなくて、廉クン使って殺そうとしたんだからね。ももセンセを自宅へ呼んでいるスキに、殺そうとしてるんだから、ホントめっさムカツクよ。それでももセンセには「無事に生まれるのならね。それで疑いが晴れるなら、いいんですがね。」って、言うんだからさ、ホント、ひどい奴だよっ!
_廉クンが妙子ちゃん殺そうとした時、永遠気が付いて止めようとしたよね。コワカッタだろうね。だけどあたしの形見のネックレス持って頑張ってたよね。あたし、永遠が「単に優しいだけの男の子」だと思ってたけど、ホントは正しいことを貫き通す「強い男」だったんだね。あたし見直したよ。刺された手から血を流しながら、「みんな生きてるでしょ。・・・みんな真っ赤な血が流れてるでしょ」って、廉クンに言ってた姿見た時、あたし泣いちゃったよ。

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