TBS系 金曜ドラマ『聖者の行進』インプレッション
第4回「泣くな友達」
<インプレッション>

_直接出会って、永遠が知的障害者だと知ったありすは、学校などですれ違っても避けて通り、「同情はするけど...」と、関係を持ちたくない気持ちで一杯だった。しかしももセンセから、彼が『星に願いを』を練習してることを聞き、自殺しようとした時助けてくれたことを思い返す。 永遠と再び出会った時、彼がありすを「最初の友達」と思ってることを聞き、下着泥棒の共犯として全校生にリンチされていた時、スプリンクラーを動かして永遠達を助ける。ありすと永遠とに友情(?)が芽生え、ありすは『友情のあかし』としてPHSを永遠に渡し、廃バスの上で永遠の演奏を聞く。
_辰雄は、「あること」が刺激となって、女子高生の制服・下着などを盗み始める。性的な興味をどうしたらわからないまま、欲求通りの行動をしたのだ。そして、犯人であることがばれ、全校生に取り囲まれ(永遠も巻き添え!)衣服をハギ取られ、俊輔に「お前らはサルだ、見世物のサルなんだよ〜っ!」と下着を脱ぐことを強要されたが、その場は助かった。しかし工場では”クビ切り”の対象とされ、社長の甥達にリンチを受けて追い出されかける。「おら、働きてぇだ...行くとこねぇし、ここで働きてぇだ。」と抵抗する。それまで社会と隔離されてきた彼にとって”社会との接点”である工場を失うことが怖かったのだろうか? 工場の仲間達の体を張った助け・親からの寄付金(ゆすりまがい?>社長)で、彼のクビは避けられた。
_障害を持つ者と持たない者との人間関係は、往々にして「一種の上下関係」になってしまいやすい。ももセンセが廉に厳しく指摘されたり、ありすは関係を持つことすら拒否的だった。これ書いてる私も、初めて障害を持つ人たちに出会った時は戸惑った。だけど、そこで関係を切ってしまえば、それで終わってしまう。ももセンセは音楽を教えてることで「偽善的な気持ちはあっても、何もしないよりはましだ。」と考えている。このことって、「私達への語り掛け」だと思うけど、どうなんだろうか?
 

ありすの独り言

_永遠と出会った時、「こんなヤツとは関わりたくない!」って思った。だから、永遠達が通ってても避けてたし、ももセンセから永遠があたしを好きだと聞いた時、「冗談じゃないよっ、キモチ悪い!」って思ってた。 確かにね、あーいう人達には同情するけどぉ、友達とか恋人とか...といった関係にはなれないなぁ...。ボランティア?あんなの「自分はいいことやってます!」って見せてる偽善だよぉ〜っ!ももセンセがやってることもさ、そうじゃないのかなぁ? 
_だけどね、再び永遠に会った時、悪気のなさそうなキレイな目してたしぃ、あたしのこと”最初のトモダチ”って言ってくれた。それにね、永遠、ピッチで話聞いてくれたし、命の恩人だから、全校生にリンチされてた時、スプリンクラー動かして助けてやったんだ!あいつ、パンツまで脱がされてて、情けないカッコしてたから、「風邪引くよっ!」って言ってやったよ。永遠とトモダチになったきっかけがピッチだったから、これからも会えるように”友情のあかし”として渡したよ。ももセンセから『星に願いを』練習してるって聞いて、弾くのを聞いたけど、ヘタクソだった。だけど、あたしのために一生懸命練習したんだってことを思ってたら、うれしかったなぁ...。


第5回「おにいちゃんの秘密」
<インプレッション>

_音楽室で楽譜を黒板に書き起こす廉の姿を見たももセンセは、特別な能力があると思い、同僚の向センセに学力検査を頼み、そして大検を受けるように勧める。しかし、廉は妹・鈴が知的障害者であることがわかった時から、自分もそのふりをしていた”健常者”であった。身寄りのない彼にとっては、妹と離れ離れにならないためには、そうするしかなかった。しかし長く”障害を持つ人たちの世界”で暮らしていたため、「今更どこにも行けないんだ・・・・。健常者の世界に入って行くことがコワイんだ!」と泣き崩れる姿は、いかに障害を持った人々が社会から隔離され、溶け込めなくされているかを示しているのだ。
_辰雄の事件で、練習場所を失った楽団の練習場所を求めて、ありすは市長の父に頼み、公民館を借りることになった。父と社長との”秘密の相談”で、市長の後継者に社長が推薦されることに・・・。社会福祉をスローガンとする父なら理解できるだろうと、ありすは自宅へ永遠を招く。しかし永遠の”ふとした失敗”で、父母は彼を家から追い出し、ありすに「あいつらは普通じゃないんだ!」とホンネを叫ぶ父の姿に失望する。ありすは、選挙の「票集めのための手段」としてしか、福祉を見ていなかった父に失望し、ももセンセに電話して家出する。障害者へも含めて社会福祉をスローガンに掲げる政治家は多いし、「差別はいけない。普通に接して行きましょう!」なんて言ってる人も多い。しかし、実際に接してる人はいるんだろうか?また平常に接することができるんだろうか?そんなことを考えさせられてしまう。
_社長や甥の三郎などとは違って、工場に働く障害者達に優しく接していた工場長は、社長の妙子に対するレイプを知り、社長に問い掛けるが、背負ってる借金を盾にされ、非常に苦しい立場に追い込まれる。そして、社長達に永遠に対する”愛のムチ(ホントはリンチ)”を強要され、角材で殴らされるが、永遠をかばおうとした鈴の顔に当たり、鈴は目に大怪我を負わされる。これは工場長の責任ではない。それを強要した社長達の責任である。人間とは、自分が「無価値でどうしたって構わない」と思った相手には、こうも冷酷になれるんだ・・・ということを表現しているようにしか、思えない。(この工場長役の人、あれだけ複雑な立場に置かれる役どころを、表情も含めて、じわっと伝わる演技で、すごいと思ったな。)
 

ありすの独り言

_あたし、永遠と一緒にパパのところへ行って、ガッコの代わりの練習場所を探してもらうようにお願いしたの。そしたら、パパはちゃんと公民館を探してきてくれて、仕事で忙しいのに練習してる様子を見に来てくれた。さすが、「社会福祉をスローガンに掲げてる」市長だって思ったよ。あたし、パパのそういうとこが好きなんだ。 
_永遠とのデートは、とっても楽しかったよ。ジェットコースターでキャーキャー言いながら楽しんでたし、お化け屋敷では、「コワイよぉ〜っ!」なーんて言いながら、しっかり永遠の手を握ってたりしてたんだよ。あたしにとっては夢みたいだったな。 
_それで、おうちに帰って、パパと永遠とで一緒にご飯食べようと思って、一生懸命料理の本を見ながら、作ったんだよ。だけど、永遠がおもちゃだと間違えて、日本刀を持ち出した時、パパのホンネが分かったよ。パパは「票集め」のために社会福祉を言ってるだけで、ホントにあーいった人たちに対しての愛情なんてホンのかけらもない人だってことがわかったよ。 
_だから、あたしホントにパパのことが嫌になった。その相手が、あたしのトモダチの永遠だったでしょ。だからとってもショックだった。あたし永遠のこと、悪く言う奴はキライ、大ッキライ!だから、ももセンセに駅で電話して、ガッコ辞めること言って、列車に乗って家出したの。


第6回「永遠の結婚」
<インプレッション>

_工場でのリンチ事故で、鈴は入院して手術を受ける。しかし、彼女は失明してしまう。ももセンセは「事故の真相」を知ろうと、工場の人達に問い掛けるが、「事故だと言え!」と社長達に強要された彼らには、答えようがなかった。しかし、永遠が隠しておいた血のついた角材をももセンセ宅の前に置いたことで様子は急変する。ももセンセは、その角材を「私に回された正義のバトン」と思い、工場長に再び問い掛ける。工場長を通して、「リンチ事故がバレた」ことを知った社長たちは、従業員の片瀬に罪を負わせ、自分たちの責任逃れをする。こうも人間が持つエゴイズムとは恐ろしいものなんだろうか?しかも、ももセンセへ社長が謝罪する姿と、社長夫人の片瀬へ引導を渡す姿は、これだけ相矛盾するようなことができるものだと、あきれてしまう。そして、妹の目を奪われた廉が社長に復讐をしようとした時、「お前はブタ箱行き、妹は施設をたらい回しにされるぞ!」と因果を含める社長は、彼らの弱みに付け込んだ鬼の姿にしか思えない。
_父の心無い言葉に失望し、母の墓のある新潟に家出したありすは、そこへ永遠を呼び出す。彼らはそこで楽しい日々を過ごし、母の眠る新潟で生活しようと考え、永遠を誘う。しかしありすは、父の「義母との離婚と謝罪」の言葉に心を揺るがして、最終列車で帰ろうとするが、永遠の「愛の告白」で思い返し、帰って来る途中で、永遠が母の形見を見つけて来る。踏切でそれを落としてしまった永遠の前に貨物列車がやってきた。必死で拾おうとする永遠、戻れと叫ぶありす...この先どうなるのだろうか?気になる。
_ももセンセは、最初工場の中で「リンチが行われ、鈴が失明した」と考えたが、社長の謝罪の姿に疑うことをやめる。さらに彼女を思う向センセの「いつまでも続ける気?ボランティア...彼らとの付き合いは程々にして欲しいんだ。」という言葉に、揺さぶられてしまう。ボランティア活動に対する理解がまだ乏しい日本では、ボランティアに対しての目は、まだまだ冷たく、「社会的に余裕のある人が好きでやってる。」っていうイメージが強い。どうしても自分のことで精一杯で、他者への視点が欠けてしまうのだろうか?
_バス停と居酒屋で出会ったハーモニカおじさん(実は弁護士)と知り合いになる。なーんか、野島脚本にいかりや長介さんは、意外だねぇ。後半戦では訴訟になる(モデルにした話では、そうなる。)らしいけど、弁護士役は意外なキャスティング!だな...と、思ったのは私だけではないはずだ!

ありすの独り言

_あたしね、パパの言葉に失望して、ママのお墓がある新潟へ家出したの。それでさ、永遠を呼んできちゃった。ママのお墓へ行って、ママに永遠を紹介して、海辺で色々遊んだよっ!あたしさぁ、ママのいるここ(新潟)で暮らそうと思ってた。そして永遠も一緒にいて欲しいな...と思った。永遠と一緒にいると幸せなキモチになれるし、永遠もいいよって言ってくれたしね。だけど、永遠が着替えで服を脱いだ時、背中に一杯傷痕が付いてたのを見た時、びっくりしたよ。なんでかなぁ...?
_最初は全くパパの所へ帰るつもりはなかったんだけど、パパからの電話にはびっくりしたよ。「パパは離婚するよ...寂しい思いさせて、つらい思いさせて悪かった...帰っておいで!」って言われて、ちょっと迷った。だけど、パパは永遠が一緒にいないかどうか聞いたから、やっぱり永遠のことが嫌なんだなって思ったよ。
_ママの形見の十字架のネックレス、どっかになくしちゃって永遠と探したけど、見つからなかった。結局見つからなくて、あたしはパパの所に帰ることにした。永遠と一緒だったら、またパパに悪く言われて、永遠が傷つくから、別々に帰ることにしたの。永遠、あたしのこと本気で好きみたいで、「好きな者同士だったら結婚するでしょ...」って言った時、あたし冗談で言ってるのかと思って、軽く「うん」って返事したよ、確かに。あたし、永遠のことスキ...でも愛とは違う気がするの。でも永遠の「ありすのこと、愛でしょ(愛している)...」って言葉、列車待ちで駅で考えてるうちに列車に乗らないで帰ってきたら、永遠が形見のネックレス持って、走ってきた。だけど、踏切で落としちゃって必死で拾ってたら、貨物列車が走って来たの。
「戻って、戻って!永遠ぁ〜っ!」って、あたし叫んだよ。だけど聞こえなくて、ネックレス拾い上げて、あたしに見せるんだもん...どうしよぉ〜っ!!

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