フジTV系 月曜ドラマ

『リップスティック』

〜藍のキモチ〜

教誨師エルピスの訪問日誌

第11話 『さよなら私の先生』


[藍の独白]

_「君を愛してるからさ・・・」と先生が言った時、「そんなのわかってるさ」って答えたら、先生は泣き崩れた。あたしは、やっと先生が素直に言えるようになったのかなぁ・・・って思ってた。
_「あたしは、死ぬのは恐くない。」って言ってた。先生はあたしが「不治の病」にかかって死にたくなったら「『そんなこというなよ。』って言って励ますよ」って言った。「先生がそうだったら、あたしは、死ぬのを助けてあげる。そして、ずーっと先生のことを思い続けてあげる。」と言ってあげたら、先生は「君の言うことは、極端なんだよ。」って、笑って答えた。
_部屋で、みんながそろそろお別れの時期を迎える頃だった。まずぽっぽの裁判の結果が出てから、みんなの結果が出るみたい。恵里子は「おれはわかんねけぇどな・・・」って不安に思ってるみたい。みんな色々なことを言ってたけど、「みんな友達で居続けようね。」って、言ってた。
_夜、ぽっぽの帰りが遅かった。「ぽっぽ、帰り遅いなぁ」って恵里子が言ってたけど、どうしてかな?真白は明日帰れるみたいだけど、どうもうれしくないみたい。何かあったのかなぁ?
後で、先生に聞いたらぽっぽは情緒不安定になって担当教官をパイプ椅子で殴ってしまった。真白もお母さんとの面談で何かあって不安を感じてるみたい。そんなこと言ったら「みんな外に出るから、ナーバスになってるんだ。」あたしは、先生がいてくれる・・・だけど、こんなお芝居はもうできない!「うそつき。千尋の目は見えないんでしょ?ずっと千尋のそばにいるんでしょ?・・・だけど、やっぱりあたしだめ。好き同士なのになぜだめなの?」「ごめん・・・」同情で千尋のところいたって、先生のためにならないよ。あたしは「どうして・・・?」と情けなくなって泣いてしまったよ。
_真白が出所する時、思わず走りよってみた。真白は「あたし、行くとこない・・・」って泣きそうな顔をしていた。きっと家で心配事があるに違いない。だけど、教官に連れ戻されて、これ以上のことは聞けなかった。
_ぽっぽと真白がいなくなって、部屋は広く感じるようになった。「うめぇもん食ってるだろうなぁ」って恵里子は言うけど、あたしは「行くところがない。」って真白が言ったことは気になるんだよなぁ。
_「君の絵が完成したよ。・・・・なんか不思議な感じがした。僕が赤ちゃんでお腹の中にいて、中からお母さんの絵を描いているような感じだった」と言ってた。「先生があたしの赤ちゃんなら、さびしいでしょ・・・」と言ったら、先生はオウム返しに返事するだけだから「冗談で言ってるんじゃないだよ。」と言い返した。「僕は君だけのものだから・・・」先生の目を見た。とってもすっきりした顔だった。あたしが首を絞めた時も、先生は全然抵抗しなかった。だけど、先生をあたしは殺せなかった。あたしは崩れて先生を抱きしめた。先生はやさしく受け止めてくれた。
 

[訪問日誌]

_訪問を始めて、かなり時間が過ぎたような気がする(3ヶ月くらいに感じる)が、実は1ヶ月足らずだ。そんな中で色々なことが起きた。私も戸惑いながらも訪問を続けて、色々な子たちの色々な姿を見た。だけど、彼らは現代社会の「炭坑のカナリア」である部分ことを考えると、何も言えない。淡々と訪問を続けているのが私の仕事である。
_「この間の心中騒ぎ、今の子達は、こうも簡単に死のうと思うのかなぁ?」って、有明さんは葛西さんに言ったのを私は後で聞いた。え、心中騒ぎ・・・?どうも、安奈さんが紘毅君に迫られて、首吊り自殺を図ったらしい。それいて紘毅君の方は、ぐっすり寝ていたらしい。それで葛西さんが激情して、彼を派手に殴り飛ばして、謹慎処分になった。
_葛西さんが謹慎状態になって担当でなくなって、小鳩さんはちょっとショックだったらしい。どうも新しい担当さんは、どうも無骨な感じでフケだらけで、何もしゃべらない小鳩さんに色々感情に触ることを言ったらしい。彼女は繊細過ぎて耐えられなくなって、「あ〜っ!」って叫びながらパイプ椅子を持ち上げて教官を殴ってしまったらしい。余りにも情緒不安定な状態なので、自宅には帰れず教護院送りになる可能性が高くなったらしい。ふぅ・・・葛西さんのせっかくの努力が無になったみたいだ。私も色々と話し掛けてみても不安定な状態なので返事できないと思ったので、ゆっくりと「あなたは繊細過ぎて、困った状態に陥るとパニック状態になりやすいね。私も時々なってしまう。その時には、いつも見守っていてくれて、決して見捨てない方がいるんだ!と思ってごらん。そうしたら心は落ち着くよ。」って言ってたら、小鳩さんは落ち着いてきた。彼女に取っては葛西さんだろうが、いないと不安だろうなぁ。
_真白さんは、義父と性的関係を持たされて妊娠したことを知られたらしくて、お母さんから「知らないと思ってたの?・・・泥棒猫」と言われてショックだったらしい。今まで母親を支えていこうというのが、「唯一の心の支え」だったのに、その母親から罵倒されるなんてショックだろうなぁ。彼女は「あたし、行くとこないの」って言ってたけど、保護観察処分になった場合、彼女の自宅からいえば、保護司は○○さんで私の知り合いだった。「もし、困ったことになったら、うちに遊びにいらっしゃい。うちは色々な人が来て助けを求めてくるから、遠慮しなくていいよ。」と言ったが・・・。よほど自宅に戻った後に不安が残るらしい様子だった。
_小鳩さんの判決の日、葛西さんは裁判所へ行って小鳩さんに会ったようだ。「僕がついていれば、施設じゃなくて家に帰してあげられたのに・・・」と葛西さんが謝った時、「先生のせいじゃない・・・・あたし、まだ人にやさしくできないから・・・あたしの名前はぽっぽ。忘れないでね。」と答えたそうだ。彼女はこれからゆっくりとした歩みだけど、周囲と自分との関係づくりをしていくことができると思う。

_「牧村は告訴しない。自分から先に殴ったんだって言ってた」ということで、葛西さんは免職を免れたみたいだ。これでひとまず安心と、思って鑑別所を後にした。しかし、翌日の朝、悲しい知らせが知り合いの保護司から私のところに電話でやってきた。真白さんがマンションの工事現場で飛び降り自殺をしたそうだ。出所した翌日だったから、家庭で何か起こったのが引き金となり、彼女は希望が見出せなくなったのだろうか?両親が彼女の葬式を出したがらない可能性もあるので、「告別式を教会でやるかもしれないので、準備しておいてください」と、伝道師に言って私は出かけることにした。
 


第12話『21世紀の恋人へ』


_小鳩さんの判決の日、葛西さんは裁判所へ行って小鳩さんに会ったようだ。「僕がついていれば、施設じゃなくて家に帰してあげられたのに・・・」と葛西さんが謝った時、「先生のせいじゃない・・・・あたし、まだ人にやさしくできないから・・・あたしの名前はぽっぽ。忘れないでね。」と答えたそうだ。彼女はこれからゆっくりとした歩みだけど、周囲と自分との関係づくりをしていくことができると思う。

_「牧村は告訴しない。自分から先に殴ったんだって言ってた」ということで、葛西さんは免職を免れたみたいだ。これでひとまず安心と、思って鑑別所を後にした。しかし、翌日の朝、悲しい知らせが知り合いの保護司から私のところに電話でやってきた。真白さんがマンションの工事現場で飛び降り自殺をしたそうだ。出所した翌日だったから、家庭で何か起こったのが引き金となり、彼女は希望が見出せなくなったのだろうか?両親が彼女の葬式を出したがらない可能性もあるので、「告別式を教会でやるかもしれないので、準備しておいてください」と、伝道師に言って私は出かけることにした。
 


第12話『21世紀の恋人へ』


「あたし、行くところがない」って言ってたのが忘れられない。恵里子はペンを取り出して、真白のお父さんを襲おうとしたけど、止めた。あたしは傘を持って、真白のお父さんを追っかけて、足を刺した。先生が取り押さえた。真白のお母さんがつっかかって来た時、先生が「あんた、女になる前に母親でいろよぉ〜!」と、怒鳴りつけた。あたしは呆然として聞いてた。あたしはとんでもないことをしてしまった。夜、先生はあたしのところへ来て、「大丈夫かい?」と見舞いに来た。
_裁判所の審判「僕は教官を辞める。そして千尋さんに謝る。そして、君を探しに行くよ」と言った。裁判官の判決は「・・・中等少年院送致とします。」だった。振り向いてみたら、先生はがっくりしてたけど、あたしは先生を慰めるつもりでニコッと微笑みかけた。
_あたしは少年院に入った。もう待ってくれている先生に会わない方がいいな・・・と思った時、手紙を書いてパパを通して先生に渡してもらうことにした。
『全然食べられない。・・・でも、あたしは寂しくないよ。・・・もうすぐあたしはシュウや真白のいるところへ行くんだから・・・あたしは宇宙で一等先生のことが好きだよ。だけど、あたしは太陽だよ。周囲を焼き尽くしてしまう太陽だよ。だから、あたしは先生から離れた方ががいいの。あしたは曇りだ。もう先生に会えないね。あたしが死んだ時、パパに『焼かないで埋めてね』ってお願いしたの。食物連鎖の中に入りたいの。・・・そうして一杯酸素を出して・・・
先生、先生、あたしの先生、一杯いっぱいあたしを吸ってね。』
あたしは、先生のためを思ったら、あたしを忘れて欲しいと思った。だから手紙を書いて死んだってウソついて、わすれてもらうためだったの。
_あたしは少年院で過ごしている間、夜には先生の幻が見回りに来て、真白が会いに来てくれていた。だけど出所の近くなったある日の晩、いつものように夜には先生の幻が見回りに来て、その後真白が黄色いカーテンを羽織って出てきた。
「真白また来てくれたんだ。え、もう最後、来てくれないの?」真白は何も言わなかった。もう少年院という世界から出て行かなくてはいけない頃になったんだなぁ。もう現実の世界に戻らなくてはいけなくなったんだ・・・。

_少年院から出た日、バイクから降りた人が立っていた。あ、安奈の彼だった紘毅だ。「一緒においで、彼を救うんだ。そして君も救われる。」って言われて、バイクに乗せられてどこかの古い教会に連れていってもらった。去り際に「さようなら、もう一人の本当の僕」と彼は言って去っていった。入ってみたらシュウがいた。後ろを見ると天使が男の人を連れていって飛んでいる様子を見た。あ、これはあたしが先生を連れて飛んでいっている姿だ。あわてて外へ出ていった。あたしを待ち続けてくれていたのに驚いたけど、うれしかった。走っていったら浜辺で先生が立っていた。
「あたしが会いに来ると思った?どうして生きていると思ったの?どうしてそう思ったの?」と聞いた時、「僕も生きてるから・・・」と答えた。そして、先生は中身が空っぽの砂時計を見せてくれた。それは永遠を意味してるのだと思った。「あたしは早川藍。あなたは?」「悠、有明悠」遂に、先生の名前を聞くことができた。これから先生とずっと一緒だね。
 

[訪問日誌]

_今回で、私の鑑別所訪問が終わる。なぜなら、後任が見つかったからだ。やはりカトリック御台場教会の人事異動で司祭が代ったらしい。木村神父はどうやら他の教会に転任になったようだ。今度の司祭さん曰く「エルピス先生には、かなり無理をお願いして、ピンチヒッターでやって頂きまして感謝いたします。今後は御台場で行きますので、ご苦労様でした。」ってことで、今日が最後の訪問になる。色々あったけど、私にはよい学びの時であった気がする。今の社会の様々な側面を見せてもらった。

_紘毅君には、非常に大きな心のトラウマがあったようで、自分の子孫が残ることに嫌悪感を感じて、安奈さんに援助交際をさせながらも、自分は手を触れていなかったようだ。
そして、沢村教官は、病気で乳房を手術で除去したという「つらい過去」があったとは知らなかった。彼女は自分の彼になった人には見せていたようだ。恐らく何人かの男性が彼女の元を去っていっただろう。だけど彼女は「女である前に、人間だから・・・・いつか本当の人がいる。」と、信じているって彼に言ったらしい。彼は「もしみつからなかったら?」と、聞いた時「少なくとも、この地球上にいたってことを信じている。」と言ったようだ。彼はこの言葉で目を覚ましたようだ。やはり自分のすべてをさらけ出した時、どんなに心を閉ざしていても開かれることもあるみたいだ。少なくとも、彼には大きなインパクトであっただろう。

Sonnar:沢村さんの「乳房がない」ってのは、まさか同じフジ系でやってたドラマ『セミダブル』の美咲さん(稲森いずみ)のパクリではないでしょうねぇ??>野島さん

_私が訪問した時には保護観察処分で出る時、安奈さんはどんな話をして出ていったのですか?って聞いた時、葛西さんはこんな状況でしたよ・・・って教えてくれた。
処置内容について話した後、「なんか事務的。」と言われ、「僕はただ単に教官として、君と接していただけだ。・・・ここのことは忘れるんだ。牧村紘毅のことも、僕のことも。」って返事したそうだ。そんな時、「本当に、あたしでなくても画鋲を握るの?」って聞かれ、「あぁ・・・。多少数は減らすけど・・・。さようなら」と返事してあげたそうだ。そして立ち去る時、「フレーフレー、安奈。」とエールを送ったそうだ。葛西さんにとって「初めて担当した生徒」だから色々と一生懸命になってやっていたに違いない。だけど生徒に取っては往々にして「恋愛感情?」と勘違いされるようだ。まぁ、私も「チャプレンとして教職についていた」経験から、こんな錯覚話をよく聞いていた。
_恵里子さんは、少年院に行かずに済んで保護観察処分になったようだ。「よかったねぇ・・・」と喜んでいると「藍って年少送りになっちまったんだぜ。オレ素直に喜べねぇんだ」と返事した。「あれ、どうして?」と私が聞くと、どうやら真白さんの葬式の時、恵里子さんが真白さんの義父をペンで刺そうとしたのを藍さんが止めて、自分が傘で刺してしまったらしい。私はお通夜にしか行かなかった(一応牧師だから、他宗教の儀式には出られないので、お通夜だけ行った。)ので、驚いてしまった。確かに思い出したら、真白さんの両親は娘が死んだのを思ったより悲しむ度合いが少ないな・・・と思った。それに義父の様子も変だったし・・・・。出所した日の晩に何かあったのではなかったんだろうか?
_色々と話を聞いていたら、有明さんは鑑別所を退職してしまうらしい。葬式現場での藍さんが起こした傷害事件の問題で責任を取るという感じであった。「これから先はどうするんですか?」と聞いた時、有明さんは「絵で生活していきます。死んだ兄の縁で画商の方と契約してどうにかなりそうです。」ということだった。私も去る身だけど、有明さんも新しい所へ飛び立つようだ。「またおりがあったら、私の勤務する教会へ遊びに来てください。そして、展覧会を開く時には、案内してくださいね。」と話して、私は鑑別所を後にした。

_数年後、有明さんの個展が開かれる・・・という案内を受け取った。出かけてみて一枚の絵に心引かれる思いがした。天使が太陽に向かって飛び立つ絵であった。私には、「もしかして、この絵のモデルは藍さんかなぁ?」と思ってのだが、有明さん本人は療養中だったので、会えなかった。

・・・さらに数年後、今度は有明さんと藍さんとが二人で私の所に訪問して来てくれた。何の用事で、私の所に来たのかって?
それは、みんなには「ナイショ!」ってことにしとこうかな・・・。
ただ、接待で出したリンゴに、藍さんは手を出さなかった。「リンゴお嫌いなんですか?」と聞いたら、『新世紀のイブは、決して赤いリンゴには、手を出さないだろう』この意味、エルピス先生わかりますか?」と、逆に聞かれてしまった。私にはわからなかったが、二人にはわかることの様だった。誰か、この『謎解き』の答え、私に教えてください(冷や汗)。


<訪問日誌:その7>ヘ行く

『リップスティック』訪問日誌に戻る