決意

 

ファロンの行方が分からなくなってから半月がすぎた。
シェイが先日、わざわざグレッグミンスターにあるマクドール家に迎えに行ったようだが、どうやらそこには戻っていないらしく、グレミオがすまなさそうに謝っていたと聞いた。
シェイの話によると、おそらく彼はどこに居るのか分かっているだろうけれども、謝るばかりでその居場所をとうとう言わなかったという。
シェイとしてもファロンに無理強いをするのは本意ではないということと、彼女に何かあったことでトランとの協定が反故になるのはまずいという思惑から、引き下がってはきたけれど、おかげでシェイの俺に対する態度が格別に厳しいものになっていた。
ただでさえここの連中はファロンが絡むとなるとすぐ俺に当たる。幹部連中のほとんどがファロン中毒だからいたしかたないと言えばそれまでかもしれないが、自分だってこの状態を打破したく、なんとか誤解を解きたかった。
もうオデッサのことは考えなくていいのだと理解して欲しかったし、どれだけ俺が大切に思っているかも分かってもらいたかった。
「それってよぉ、ヤキモチなのかなぁ?」
ビクトールがテーブルの向こうで、空になったビールのジョッキを掲げてお替わりの合図をした後で、腑に落ちないような顔をして首をひねりながら言う。
「…どうだろう。…ファロンは最初から自分をオデッサよりも低く考えているから。」
「…ヤキモチにはあたらないか…。」
ファロンがオデッサにやきもちをやくということはあまり考えることはできない。どちらかというとオデッサのことをとても尊敬していた。
ただ、尊敬のあまり、その命を奪うことになった自分を許せないで居るのかもしれない。 一体、何をどういえば俺の気持ちがちゃんと伝わるのだろうか。
「…とりあえずは、ファロンを見つけないとだよなぁ…。」
ため息をつくと後ろからくすりという含み笑いが聞こえた。
「なんだ?カミュか?」
振り返ると爽やかな笑顔の赤騎士団長がかたりと俺たちのテーブルにある余った椅子を引いて座りながら答える。
「ええ。…その様子だと、まだファロンを発見できていないようですね?」
「…生憎な…、昔からかくれんぼは苦手だったからな。」
おそらく彼は見張り当番から解放されたところで、俺はそれならとカミュのビールを注文するために片手を挙げて店の人間を呼ぶ。
俺の挙げた片手をカミュがちょっと見て、おや?とばかりに目を止める。
「そうですか…。で、その包帯は、かくれんぼでの名誉の負傷で?」
「いや、これはさっき…。」
俺はここ1週間ほど、どういうわけかシドに嫌がらせを受けている。
先ほど、頭上にサボテンの小さな鉢植えが降ってきた。
気づくのが早くて、なんとか頭に直撃は免れたものの、それでも手でかばったために針が何本か刺さっていくつかの傷ができてしまった。
それだけではない。
シドはわざと牧場で飼っている牛を俺に向けて突進させたり、増築のために調達して、そのまま壁に立てかけてあった木材(とはいっても小さなものだが)をこちらに向けて倒してきたり。
どれも命にどうこうということはないが、それでも酷い目には違いない。
「なるほどね…。」
カミュはつくづく気の毒な、という表情を浮かべる。
俺は別にウイングホーン族に対して何かやらかした覚えはない。以前までのトゥリバーのように、彼らに対して偏見を持っているつもりもない。また、別にシドに何かやった覚えも、言った覚えもない。だからこうした仕打ちを受ける理由がまったく分からないのだ。 それも、わざわざ彼はこれから悪戯をするということが分かるように、俺に声をかけてから行う。普通、悪戯というのは誰がやったかわからないようにするものではないだろうか?これからするよ、だなんて宣言をしてから行う悪戯に何の意味があるんだろう?だから幸い大したことにはならないで済んでいるため、彼を糾弾するようなことはしないでいるが、だんだんとたちが悪くなってきたから、それも何とかしなくてはならない。
ただでさえファロンのことで悩んでいるのに、迷惑である。
「それ、もしかしたら…。」
カミュが何かを思いついたらしく、そこまで言いかけたと同時に今度はマイクロトフが店の中にどかどかという荒い足音を立てて入ってきた。きょろきょろと店内を見回して、俺たちがいることを発見すると急いでこちらにやってくる。後ろに誰かを引き連れているようで、その影がちらちらと見え隠れしていた。
「ほら、座れ。」
目の前までやってくると、後ろから引っ張り出すようにして俺の前に座らせたのは件のウイングホーンのシド。
普段は中庭をはさんだところにある小さな塔に暮らしていてあまり賑やかな場所に出ることはない。
少しふてくされた表情でマイクロトフと俺を交互に見比べながら大人しく座る。
ちょろちょろと店の入り口あたりに野次馬よろしく、チャコがうろうろとしているのが視界の片隅に入った。
「…なんだ、またおまえか?」
ビクトールの質問にマイクロトフは大きく頷くと、シドの肩を軽く突付く。
「…さきほどの悪戯の現行犯で捕らえました。丁度通りかかったもので。」
マイクロトフはシドが逃げないようにしっかりと腕を掴んでいる。本人は掴まれていることで多少痛いらしく、顔を少ししかめていたが、そのほかに俺に悪びれる様子もない。
「シド。俺、何かおまえに恨まれるようなことしたか…?」
尋ねる俺に、当然シドは黙秘権を行使する。
どう考えても俺はシドに恨まれるようなことをした覚えはないし、ウイングホーン自体にも危害を及ぼした覚えもない。
一体、何が気に入らないのだろう。
「シド…?」
責めるような口調はさけ、できるだけ優しく、話してもらえるように促すが、それでもシドは首を横に振る。
「…このままですと、ウイングホーンとの協定にも支障をきたしかねません。」
マイクロトフの言葉にフリックは困った顔をして首を振る。
「いや、できれば大事にはしたくないんだ。…俺が彼の気に触るようなことを知らずにしてしまったのならば、謝るし。でも、原因が分からなければ、どうにも対処しようがないからな。」
それでも当の本人のシドは頑として口を割らず、その場にいた人間が困惑しているところへ、不意に声がした。
「俺、知ってるよ。」
突如として後ろから聞こえたのは、シドと同じウイングホーンのチャコだった。さきほど入り口あたりをちょろちょろしていたようだったが、いつの間にやら中に入り込んできたようだ。
「…どうしてだ?」
尋ねて見るとチャコは得意げに胸をそらしながら答える。
「嫉妬、だよ。シド、最近好きな人ができたんだ。」
「おまえ…!」
シドの恨めしそうな声にチャコは慌ててビクトールの後ろに隠れる。
「シドの好きな人は、毎日フリックさんのことを見てるんだ。だからシドは悔しくてフリックさんに嫌がらせしたんだよ。」
「…へぇ…。」
ビクトールが面白そうにチャコとシド、そして俺を見る。
「シド、本当なのか?」
マイクロトフの問いかけに、シドは俯いてしまう。
「…フリックさんの人気は確かに高いですからね。そういうことも、確かにあるかもしれない。」
カミュの言葉に俺はやれやれとばかりに肩を落とす。人気があるのかないのか分からないが、今の俺にとってそれはどうでもいいことだった。
「悪いが、俺は…。」
「分かってる。」
言いかけた俺をシドの言葉がさえぎった。顔は俯いたままで表情はよくわからなかったが、それでも声が少し悲しそうである。
「…だから、そいつは、いつもおまえを見てるだけだ。…中庭で訓練してるおまえを、嬉しそうに、ただ、見てるだけなんだ。」
シドは悔しそうに、ぎゅうっと膝の上で手を握り締める。
「そんなに好きなら話しかけたりすりゃいいのに、迷惑になるってさ。…自分が好きなだけならおまえに迷惑かかんないからって、あんな、俺みたいなのがいるような塔の中に、毎日のように女一人で来て、おまえのこと、ばかみたいに幸せそうに見てんだよ。いっくら脅かしたって聞きやしねぇで、ただおまえのこと見てて。」
「それで、悔しくて、か?」
ビクトールの言葉にシドは何も語らなかった。
「フリック殿に悪さをしたら、その人に嫌われるんじゃないのか?」
マイクロトフの言葉にシドがふぅ、と小さく息を吐く。体中に入っていた力を少し緩めたようだ。
「…かまわねーよ…どうせ、元から俺なんて…。」
そういった背中が、悲しげに震えている。本当は嫌われてもいいなんて、思ってもいないんじゃないだろうか?
同時に、悔しくていたずらしたというのには少しひっかかるものを感じていた。もしシドの動機が悔しくてならばわざわざ宣言をしてから悪戯するようなことはせず、本当に俺が怪我をするような悪戯を不意打ちでやっただろう。
わざわざ俺に声をかけてから行うというのは逆に怪我をさせないためではなかったか。
「わざと悪戯して、塔まで追いかけさせて、彼女が側でフリック殿を見られるように、もしくは話す機会を作ってあげようとしたのでしょう?」
俺の心の中を読んだようにカミュは無言で居たシドに言う。図星だったのか、シドは弾かれたように顔をあげ、ついで俺の顔をみて、それからまた力なくうなだれてしまった。
「そうだよ。」
「なんだって…、そんな…。」
マイクロトフの呟きに、シドがぴくりと反応する。
「…そいつが、喜んでるのが嬉しいんだ。…こいつのちょっとした動きで幸せそうに笑ってんだ。自分がそんな顔をさせられるんだったら…。」
シドは観念したように寂しそうにポツリと呟き、続いてマイクロトフに向かって掴まれていないもう片方の腕を差し出した。
「牢屋にでもなんでもいれればいい。…俺は、もう、どうでもいい。…でも、彼女は…。」
そうしてシドはまた黙り込んでしまった。
「その彼女とやらは無関係ですから、何のお咎めもないでしょう。…なぁ、マイク?」 カミュの言葉にマイクロトフが頷き、俺のほうを見た。
「…フリック殿、彼の処遇はどうなさいますか?」
「…これ以上、俺に何もしなければ大事にするつもりはないさ。…ただ、そうだな…。」
俺は少し考える。
シドは好きな人を幸せにするため、やり方はまずかったが、必死でがんばっていたのだ。その気持ちには共感するところがある。
「…さっきのサボテン。入れていた小さな鉢が割れてしまったぞ。さっきのところの脇にサボテンはよけておいたからおまえは新しい鉢を準備してサボテンを元通りにしておけ。明日、訓練の後おまえのねぐらの塔に取りに行く。…俺から持ち主に返しておいてやる。」
するとシドはびっくりしたように顔を上げて、目を丸くして俺を凝視していた。
「…いいか、訓練のすぐ後だ。わかったな?」
「…あ、ああ…わかった…。」
放心したようなシドはそう呟いて、かくかくと壊れた人形のようにうなづいていた。
マイクロトフが腕を放してやると、まさに飛ぶように、外へ出ていった。
「…いいんですか?」
カミュは意味ありげな微笑を浮かべながら尋ねてくる。
「ああ、まぁな。…挨拶ぐらいだったら、いいだろ?」
そういって俺はビールを煽った。
あのシドが惚れた女、ということでビクトールが大層見たがっていたが、カミュがにっこりと微笑をたたえながら、半ば脅してそれをけん制した。
普段から俺のことを見ているだけで幸せな人間が、いきなりビクトールほどの俺に近い人間に出会ってしまったらもう塔には行かないかもしれない。シドに恨まれますよ、といって半分黒いオーラを出しながらいうとビクトールもそれは思いとどまったようだった。
「軽く会釈ぐらいでいいんじゃないでしょうか?」
カミュが俺にアドバイスをしてくれる。
「あんまり親しげに挨拶をすると、気があると勘違いされても困るでしょう?」
「なるほど…。」
さすが、デュナン軍の王子だけある。俺は感心しながら聞いていると横でビクトールがげらげらと笑っている。
「そうだな、フリックは前科があるからなぁ。」
「うるさい!」
やれやれ、とんでもないことに巻き込まれたものだ。半ば癖になりつつあるため息をついた。

翌日、俺たちの部隊は朝から夕方にわたる歩哨当番を終えると中庭に集合して点呼を取ったり、装備の点検をしてから解散する。
いつもはそのまま自室に戻ったり、厩に馬の様子を見に行ったり、場合によっては風呂屋飲み屋に足を運ぶが、今日は昨日の約束を果たすために足早に件の塔に向かった。
シドの話によると彼女は俺が中庭から消えるまで見つめて、姿が消えてからほうっと一息ついてから塔をでるらしい。そうはいえどもこちらに向かっていると知られると逃げられる恐れもあるので彼女が塔から出てしまわないうちに、と急いで物見塔に向かった。
半分、物置になっているここは普段は誰も来ることがない。静かで薄暗いところだからシドがこの場所を好んで、とうとう住み着いてしまっていた。
入口の重い木の扉をぎいっと大きくきしませてゆっくりと開けると薄暗い塔の中にわずかに光がさす。埃がいっきに立ち上って、光の中、もうもうと舞っている。
シドが言うように、よくこんなところに女が一人で来るもんだと思いながらすぐ脇にある階段を上る。件の彼女に会うのは多少気が重いが仕方がない。挨拶一つで気がすんでくれるなら早く済ませてしまおうと、急ぎ足で登っていくと、ちょうど、中庭を眺めることのできる窓の所にその女が硬直したように立っていた。どうやら、年のころは15、6といったところだろうか。青を基調としたごく一般的な服を着ていて、白いエプロンをしている。これはきっとサナエあたりの洗濯担当の少女だろう。そして、挨拶をしようと、ふと顔を見て俺は死ぬほど驚いた。
まだ短いおさげ髪をなんとか結んで、前髪もぱちりとピンで留めてある。でも、その顔はまぎれもなくファロンだった。
「ファ、ファロン!?」

「まさか、こんな格好だとは、ね…。」
あれから俺はファロンを塔から連れ出して、そのまま部屋に強引に引っ張りこんだ。あそこで話すにはあまりにもシドのすすり泣きの声が気の毒であったから。
シドは惚れた彼女がファロンであるということは知らなかったらしい。覚悟はしていたらしいが、いきなり失恋というのはちょっとへこむ。そっとしておいてやるためにも、おれは場所を移したのだった。
「…探しても見つからないはずだよね。…ははは…。」
間の抜けた笑い声をあげながら、どうしてファロンがこんなことをしたか考えていた。俺が嫌いになったのならばトランに帰ってしまえばよかったものを、こんな真似までしてここにいるとは。
悲しそうにうつむいている姿は痛々しいけれど、こういった格好自体はやっぱりかわいらしくて似合うと思う。
「こういう格好もかわいいね。」
でも、本人はかすかに首を振るだけだった。
それからしばらく沈黙が流れる。何をどう言ったらいいのかもよくわからない。姿を消していたこと自体はとても悲しかったが、それを怒る気にはなれないし、だからといって疑問は消えたわけではない。
「ファロン…俺のそばにいるのは…いやか…?」
ぴく、とファロンの体が動く。
どんなに些細な反応も見過ごさないように、眼を凝らして、おれはファロンに尋ねた。ファロンは体をすくめたままじっと息を殺しているように、それから身動き一つしない。 ファロンがあの時、最後に言った言葉を思い出す。
一人でも大丈夫だなんて、本気で思っているのだろうか?
俺は必要ないだろうか。
「ファロン…俺はどうしたらいい?」
ファロンみたいに頭がいいわけじゃないから、おれはファロンがどうしてほしいかがわからない。夫ならば、それぐらいわからなければならないんだろうが、あいにく、そういうことには疎い。
ファロンはそっと首を振る。
「何もないわけはないだろう?」
ファロンのことだから、意味もなく衝動的に姿を隠しただなんて到底思えない。
だとすると、やはり別れ際に交わした最後の会話、ファロンは俺のそばにいる資格はないと本気でそう思っているということだ。
馬鹿な。俺の隣にいるために資格がいるとするならば、それは俺がそうしてほしいと望んでいるということだけなはず。だから、本当に今その資格を必要とするならば、ファロンこそがその有資格者だというのに。
「オデッサはもういない。…だから俺の隣はあいている。もしファロンがおれの隣にはオデッサがふさわしいというならば、俺はのうのうとこうして生きているわけにはいかないな。」
「そ、そんなこと言ってないっ…!」
慌てて反論する彼女に俺は首を振る。
「おれがそうしてほしいと望んでいるファロンでさえその資格がないというなら、それしか方法はないだろう?」
「そうじゃない、生きて、他の人と…っ!」
「そして俺はまた伴侶を失うのか?」
「っ…!」
「そしたら、今度は坊主にでもなるかな。…もう誰かをなくすのは嫌だから。…そしたら、もう伴侶をなくすことだけはないだろう?」
やけ気味に言った言葉にファロンは言葉を失ってうつむいた。
いじめすぎたかとも思ったが半分は本心だった。
心の底から大事だと思える人を2人も失って平然としていられるほど俺は器や度量が大きいわけではない。
多くを望んでいるわけではない。
ただ、隣に、普通の夫婦としていたいだけだった。
普通の女性としては考えられないほどの困難を背負ってしまったからこそ、一緒にいるときだけはただの普通の女性として生きていけるように隣で寄り添って支えたいだけだったのだ。
高邁な精神も理想も何もいらない、ただ花が咲いたと喜び、夜空の星を楽しみ、ありきたりの小さな幸せをかみしめるような暮らしをしたかっただけだった。
ファロンが心の底から笑えるようになればいいと。そう思っていた。
「ただ、隣にいたいだけだ…。それすらも俺は…俺には許さないのか…?」
だとしたら、俺はこのあとどうすればいいのだろう。
「俺は戦いで死ぬのは怖いとは思わない。」
俺の言葉にぎょっととして顔をあげ、まじまじとこちらを見つめる。その眼は少し赤くなっていて涙ぐんでいる。
ああ、まただ俺はまたファロンを泣かしてしまっている。
「唯一、俺が怖いのはファロンを失うことだ。」
「そんなのっ!」
「この数日間、俺は…。」
ファロンを失うことがこんなに怖いことだなんて思いもしなかった。
もし、二度と会えなくなったらどうしようとか、そんなことはないと心の中で何回も煩悶しながら数日間をすごしてきた。
「もう、行くな。…俺の前からいなくなるな。…もう、嫌なんだ。」
あとから考えるとなんて自分勝手だったのだろうと赤面するが、このときの自分はこれしか考えられなかった。
困惑したファロンは2、3度視線をあちこちに彷徨わせて、逡巡したようだった。
「頼む。」
つかんでいる手を強く握りしめ、もう一度ファロンに願った。
「ファロンがいないと、戦場で安心して戦うことができない。…頼むから、そばにいてくれ。」
そういうことを言われるとファロンだって無碍に断れないことは分かっている。
案の定、溜息をひとつついてファロンはこくりと小さくうなづいた。
良かった。
俺は素直に安堵の息を漏らす。
ファロンを取り戻したという大きな安堵に、このときの彼女の表情に厳しい決意を見て取れたのを、さほど重大とは思わずに気のせいにできるほど俺は自分のことしか考えていなかった。






                                                END

 

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