がじゅまる2003

最終訂正日03年12月31日


歌を詠む


    11.14

    ウォーキングを詠む13首

  1. 波止場にて車を停めて踏み出せり慣れ親しみし八キロの路

  2. 赤き橋乗合バスは客もなく家路を急ぐ船のエンジン

  3. 蒼き水波ひとつなく坂道に聞こえるものは靴音のみか

  4. 久方に山を歩けり晩秋のうらら陽気につわの花咲く

  5. 廃屋は日に日に朽ちて営みの思いでつれて土に戻らん

  6. 人ひとり見えぬ集落過ぎ行けば我が行程も半ばとなりぬ

  7. 鳥の声遠くに聞こゆ杉林黄色の花のみ季節を告げる

  8. 幾たびも見上げつ過ぎぬ杉の群我のみぞ知る名前を刻む

  9. 初めての紙とペンもてウォーキング時も長さも忘れしごとし

  10. 静止画の世界をひとり歩きおり小さき蝶ひらひらと舞う

  11. 紅葉の季節はなけど山坂の落ち葉を歩く島の秋かな

  12. 大橋が遠くに見ゆる戸岐湾を周るひととき終わりに近し

  13. ウォーキング終えし波止場も静かなリ女ひとりの釣りは珍し

    11.16

  14. 図書館にみすず戻しまた借りるすべての詩をばネットで読みたし

    ウォーキング15首

  15. 堂崎の赤き教会遠目にて時計回りのコースを選ばん

  16. ススキゆれ山はざわめく侵入者拒むがごとく負けじと進む

  17. 急峻の山道下り隠れ家海辺の牧場(まきば)牛草を食(は)む

  18. 陸より海から近し点在す集落ありて歴史を語る

  19. 雨に濡れ足が食い込む落ち葉道山に隠れて風は静まる

  20. 草木も鳥も知らざる我なれど高くそびゆる杉は気高し

  21. 奥深き入り江開けて外海の波は届かじ人も見えず

  22. 濃淡の緑の中に山柿が見捨てられしか萎んでありき

  23. 眼前に山を崩せし石切り場色はかつての赤茶にあらず

  24. つかのまに風も和らぎ波光る青き作業船クレーンを寝かす

  25. 榊枝取りたる老婆歩きおり海山の幸あまねくありて

  26. かんころの棚に網かく風物詩香り漂い年の瀬思う

  27. 平日の朝と同じく静けきか子供も見えず戸岐小学校

  28. 白き波吹き付ける風戸岐の橋いつもの姿取り戻せしか

  29. 台風で崩れし崖の丘に立つ慈恵院そば信号を待つ

    11.17

    三井楽賛歌 十七首

  30. みみらくは近くなりけるはじめてのトンネル二つ漣(さざなみ)見えず

  31. 白良ヶ浜砂に佇み貝掘りてきすごを釣りし少年を想う

  32. 遠浅の浜に白波蒼色は濃くなりいきて天空に消ゆ

  33. 万葉の里に寝転ぶ空高く青一面を背にとんび舞う

  34. その昔遊び場なる砂山は古(いにしえ)偲ぶ公園となれり

  35. 観音の見下ろす果てに嵯峨島若き男女の群れ華やげり

  36. 高浜は今日も静かに打ち寄せる波音のみが遠くにきこゆ

  37. 大型のバス続きたり雄大な自然が魅する島巡りかな

  38. 蜻蛉の歌人が歌ひしみみらくは高浜なりか我のみ思えど

  39. みみらくで会わむと云ひし人ありし深き静寂に何を思わん

  40. 突然に人影の散る白浜やかすかに見ゆる駐車場

  41. 時を超え今も波砂間に眠りおる平安の恋悲しく伝ふ

  42. すけ網に寄す波やさし小春日というを過ぎて汗ばみたるか

  43. 白柱の灯台照らす荒岩や遠く離れる島影二つ

  44. 赤き路十字の墓地に続きおり沈む陽(ひ)を見つ大海に臨む

  45. 姫島は哀しからずや荒れ果てし教会のみが人の証か

  46. 辞本涯黒き海原荒れる波異国の地へと覚悟を決めて

    11.18

  47. 夜明け前船のエンジン止みもせで音引きずりつ遠くなりけり

    11.20

  48. ひととせの時を隔てつ更新す我に起きししにあらざる如し

    11.22

  49. 激しき風吹ける波止場に老夫婦手を貸しつつの朝の日課かな

  50. 小春日の明けし朝にはなくなりてこがらしぞ吹く霜月の朝

  51. 木霊の住みし林は風拒む冷気はあれど今朝はやさしき

  52. 風強く枝がかぶりし山道は嵐の名残を残せしままに

  53. 大犬を放して歩く山道よ若き女は見ざりしものを

  54. 冬近くダイダイはまだ色つかず椿も咲ける晩秋の島

  55. 坂上り光のはしごかかる空写真にとりて残り三キロ

  56. ぴゅうぴゅうと耳を響かす海の風波はくだけて想いを散らす

    11.23

  57. もの想ひあまりて忘るコース変えてひととせぶりに鬼岳歩く

  58. 遠く見ゆ島々眺め下り坂陽(ひ)の隠るれば薄着に寒し

  59. 鬼岳は広葉樹に黄色あり開放感の混じる清(すが)しさ

  60. リスを獲る籠は同じくかかりおる勾配きつき坂にもひとつ

  61. 空港と天文台と市街地と島と海とがパノラマ作る

    11.25

  62. 眼鏡はずし山道を歩くおぼろげにかすむ世界を瞬時楽しむ

  63. よどみたる浮き草ありて夜の間に流れていきぬ無我にて歩く

  64. 透明の碧たたえて小船あり小川と海の交じりあうとこ

  65. 小春日戻る波戸場に釣り人がのどかに競う休みの日かな

  66. 老女問う歩け歩けをしおるかと我ものんびり答えておれり

    12.2

  67. 小嵐に幟(のぼり)傾きつ葬列は山裾にある墓地へと向かう

  68. 読経音風に消さるる地蔵堂昔ながらの野辺送りかな

    12.18

  69. いつしかに五百の歌ぞ作りたる君を詠えば泉は枯れじ

    12.19

  70. ふたつきに書きし文をば刷り終えぬ百枚のページ姿あらわす

    12.21

  71. 晴れ渡る冷気の中を歩き出す温まるまでしばしかからん

  72. コンクリの斜面の隙間つらぬきて茂れる命冬も変わらじ

  73. 今は冬緑の山を従えて海の碧はさらに深きか

  74. 汗だくで歩き行きつつ気づきしは時速くして心おだやか

  75. 牛糞の形崩れずよついつつ人の通らぬ山道にあり

    12..24

  76. 次々としたきことなど起こり来て楽しきことを見捨ててありし

  77. 傍目には無智と見えなむ言動を楽しみおりて我は嬉しき

  78. 歳末にサイレン響き大型の車斜めに道をさえぎる

    12.25

  79. 餅つきの時が来るたび駈けずりて最後にせんと今年も言えり

  80. 太古丸乗船客は少なくて島の正月まだ渡海せず

  81. 若々し声の加わり華やげる成人となる年の正月

  82. 郊外のセルフサービスの給油所夜も煌煌道を照らしぬ

    12.26

  83. 六升の餅を終わりて正月を迎える準備始まりたりし

    12.27

  84. 紫の色をもちたるかんころも新たに餅で正月を迎ゆ

  85. あいそよく説明しおる薬剤師待ちおる客もふと和みおり

  86. 自家製の三日遅れのケーキを食ぶこの賑わいの再びありや

  87. イギリスに旅せんと云う君がいて島の正月これが最後か

    12.30

  88. 昼下がり師走の港静かにて岸壁より真紀丸に渡る

  89. 凍(し)められて赤き氷に悶えおる魚なれども静かになりぬ

  90. 正月を前に不漁続きおり五キロのアカバナ貰いきたれり

    12.31

  91. 悩みおり生き延びしとぞ思ひける時もありしが遥かに覚ゆ

  92. やるせなき思いのもとは我なりて明と暗とは紙一重なり

  93. 言の葉の虚実を知りて歌詠めど言霊に逢うときもありしか

  94. 悔いしこと多き年なりけじめをばつけうることのありがたきかな

  95. 揺れ動く心にあれど時にては定まりしとぞ覚ゆときありて

  96. はかなきはメル友なりか死すまでも続けんと云ひし人もいたりき

  97. 突然に途切れしメールに悩みたるひと月前の我ぞなつかし

  98. 言の葉の真意も問わず去る人の饒舌読みて苦笑ぞしたり

  99. 見も知らぬ掲示板にて我が書きしメールを読みたることもありたり

  100. デイトレにストレスたまり歌詠みに慰め見つけ今年は過ぎ行く





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