「游バス」で郊外観光に出かけよう |
北京の郊外には、万里の長城や明十三陵など中国へ来たからにはとりあえずは抑えておきたい有名な観光地がいくつもある。 路線バスや近郊列車を利用して自力で行くこともできるのだが、有名な観光地の割には本数が少なくてかなり交通の便が悪い。 また日本人向けの日本語ガイド付きツアーはなんと500元以上はざらという異常な高さである。 そこで、中国人観光客向けの日帰り観光バスである「游バス」をお勧めする。 北京中心部の前門駅から発着しており、客が満員になり次第出発するというシステムである。 価格はすべて入場料や食事が含まれていないバス移動の料金のみであり、行き先によっても異なるが、だいたい50元(750円)位。 行き先によっていくつもの系統がある。 ツアーは自分のペースで時間を使うことができないので不自由だが、自力で行った時よりはるかに効率的に回ることができる。 |
これが今回参加した「游1路」系統の游バス。 居庸関長城、八達嶺長城、明十三陵、九龍游楽園をまわる最もメジャーなコースだ。 バスは思ったより豪華で新しいバスである。 中国人用観光バスなのでもちろん乗客はほとんど中国人、バスガイドも中国語以外は話せない。 ガイドさんはバス内で次に行く目的地の説明をしてくれる(引率はしない)が、中国語が分からない外国人にとっては用を成さない。 だが、中国語でアナウンスされているはずの集合時間だけは我々も把握していないとならないので、目的に到着したらガイドさんに紙に集合時間を書いてもらうようにしよう。 |
前門を出発したバスは1時間あまりで最初の目的地である居庸関長城に到着する。
ただ万里の長城のメインは次の目的地である八達嶺長城なので、ここでは1時間ほどしか時間をとらない。
関所になっている居庸関の見学と、ちょっと急いで写真に見える嶺の頂上まで行くのが精一杯である。
入場料は40元(600円)。 万里の長城とは・・・ 北京の北部から東北部にかけての山岳地帯に設けられている万里の長城は、中国の悠久の歴史を実感できるところのひとつである。 そもそも万里の長城は、紀元前数世紀頃の中国各地に分立していた国々が、北方の騎馬民族や他国の侵入に対し造った防壁を、中国を統一した秦の始皇帝がつなぎ合わせたものである。 その後、小国が分立した南北朝時代に北朝のいくつかの王朝が国境近くに造ったものも残っている。 しかし、中国が勢力をもっていた唐代はあまり重視されず、修理もされなかったようだ。 14世紀に蒙古の元を北方に追いはらった明は、蒙古の再侵入を恐れ、長城の拡張強化につとめた。 八達嶺など現存の北京周辺の長城の多くは明代のもので、近年修復された。 明代の長城でも北京周辺は石とレンガで築かれがっしりしている。 高さは平均7.8m、幅は6.5m、上幅は5.8m、数匹の馬が並んで通行できるほど広い。 城壁のふちは2mほど高く、ここに銃眼があいている。 また、一定距離ごとにある2階建ての城楼の下層は兵十数人の住居になり、上層が見張り台と戦闘台を兼ねていた。 数千kmにもおよぶ長城の大部分は、ここのように磚造りではなく、単に土を突き固めた版築法によって造られた土の壁で、高さもせいぜい3〜5mであった。 しかし、東は渤海湾の山海関から山を越え野を横切り、西は遥か遠く甘粛の嘉峪関まで続く長い城壁であった。 (「地球の歩き方」より) |
居庸関を出発して30分弱、バスは八達嶺長城に到着する。 ここでは2時間近く時間があるので、思う存分長城を踏破しよう。 入場料は45元(675円)+保険1元。 入場ゲートの向かって右側に連なっているのが通称女坂、左側に連なっている方が男坂である。 女坂の方は比較的なだらかで、多くの人がこちらを選択しているようである。 一方男坂は急な坂が多いが、そこから眺める景色は女坂のそれより良いといわれている。 写真は男坂より女坂方向を望んだもの。 遥か遠く、見えなくなるまで壁が続いている。 |
男坂は、ゲートから片道約30分くらい登ると、それ以上先は未修復で進めなくなっている。 ところどころ風化が進んで崩れている。 だが観光客が来る長城はあまりにきれいに修復されているので、歴史の重みを感じにくい。 かえってこうした未修復部分を眺めていた方がノスタルジックな気分には浸れる。 |
次の目的地までバスで1時間弱、明十三陵のひとつ、定陵に到着する。 これは文字通り明代の13人の皇帝の陵墓であり、1409年から約200年にわたり造り続けられた。 定陵は皇帝が実際に埋葬された地下宮殿と、出土品を展示してある定陵博物館に分かれていて、入場料50元(750円)でどちらも入場できる仕組みになっている。 だがまずは駐車場近くにある宝石の加工工場を見学させられる。 すると最後はお約束の即売所に繋がっているので、加工の現場だけ堪能したらさっさと定陵に行こう。 見学時間は2時間位取ってくれるので、ゆっくり見て回ることができる。 |
博物館の方はきらびやかな展示物が並んでいてとても興味深いが、地下宮殿はトンネルのような、防空壕のような、そんな空間があるだけで(一応大理石らしいが色がくすんでいる)、これといった感動はなかった。 同じ地下関係でも、トルコ・カッパドキアの地下都市の方がよっぽど興味深かった。 内部には大理石でできた台座が置かれ、競馬の外れ馬券が積もっているのを思わせるように紙幣が積もっている。 1箇所あいている穴にうまく投げ入れられると良いことがあると言い伝えられているらしい。 |
時刻は夕方、次はもう行くところはないだろうと思っていると、15分位でバスが停車してしまう。 そこが十三陵水庫と遊園地である。 だがそこにはただのダム湖と陳腐さで絶句するほどの遊園地があるだけだ。 なぜここが観光コースに入っているのはよく分からないが、なんとここで1時間半も停車する。 中国の人たちもさすがにここには入場しようとはせずに、ベンチでお茶を飲んでいる人が多い。 こうして4箇所、全行程10時間のツアーが終了する。 郊外で交通の便が悪いだけに、非常に効率の良い観光ができた。 |