旅のミニ情報局 〜 中国分室 〜



長距離移動について
中国は日本の約26倍もの面積をもつ大国。 他の都市へちょっと足を伸ばそうものなら、他の国以上の長距離移動をすることになる。 主な交通手段としては、飛行機、鉄道、長距離バスの3種類があるが、費用や所要時間が全く異なるので、自分の旅のスタイルを考慮しながら使用する交通手段を決めていこう。
飛行機《飛机》は最も所要時間が少なく、広大な中国大陸を効率よく移動するには最も適している。 しかし、費用は他の交通手段に比べるとかなり高い。 長距離バス《長途汽車》は最も値段が安いが、所要時間が一番かかり内陸部では悪路が延々と続くこともある。 寝台バスもあるが列車に比べると乗り心地が相当悪い。 列車《火車》は両者の中間である。 意外に清潔だし寝台車が充実しているので快適で効率よく移動することができる。 ただし混雑期や途中駅から乗車する場合は切符を確保するのが難しい。 これらを考えると、個人的には、沿岸部の都市から内陸部やチベット自治区といった超長距離を一気に移動したい場合は飛行機、 隣の都市などの比較的近い距離では長距離バス、 それ以外のケースではすべて列車を利用するのが良いと思う(選択の余地がなくバスしか走っていない地域もあるけど)。

■参考 所要時間・運賃の比較
  飛行機
所要時間
飛行機
運賃
列車
所要時間
列車
運賃
バス
所要時間
バス
運賃
北京〜天津
直線距離:約100km
路線距離:137km
1時間30分 22元
76元
109元
2時間00分 30元
大同〜フフホト
直線距離:約120km
路線距離:285km
4時間00分 42元
104元
155元
5時間00分 40元
北京〜フフホト
直線距離:444km
路線距離:659km
1時間00分 400元 11時間00分 92元
170元
254元
不明 60元
北京〜西安
直線距離:1034km
路線距離:1200km
1時間30分 840元 13時間30分 150元
274元
417元
北京〜上海
直線距離:1178km
路線距離:1463km
1時間50分 900元 14時間00分 179元
327元
499元
北京〜ウルムチ
直線距離:2842km
路線距離:3768km
3時間30分 1930元 47時間30分 363元
652元
1006元
※列車・バスはその区間で最も速いものを掲載。列車運賃の上段:硬座、中段:硬臥、下段:軟臥。


中国鉄路の切符
中国国鉄《中国鉄路》に乗車するまでの流れを説明しよう。 まずは切符《票:ピャオ》を購入する。 切符売場《售票処》はもちろん駅構内にもあるし、小さな都市以外では市内にもチケットセンターが設置されている場合が多い。 大都市には外国人専用窓口もある。 都市によって発売開始は異なるが、だいたい出発の3〜5日前から購入できる。 切符はコンピュータ発券だが、まだ他の駅から出発する切符は買えないと思った方がよい。 時刻表については、駅の構内にも車次と発車時間、終着駅が表示された掲示板が設置されている場合が多い。 しかしそれだけでは不案内だし、威勢のいい窓口のおばちゃんと少しは対等に渡り合うためには、やはりなるべく多くの情報で武装して挑んだ方がよい。 駅の売店や書店には時刻表が売られているので、利用しよう。 またはネット上で検索できるサイトがいくつもあるので、出国する前にチェックしておくといいだろう(リンクページ参照)。
次に、希望の列車が決まったら窓口に買いに行こう。 切符売場は混雑している場合が多いし、窓口の係員はほぼ間違いなく中国語しか話せないので、紙に「出発日、車次、目的地、座席クラス(寝台の場合は段の位置も)、枚数」を書いて示すとスムーズだ。 また出発まで3〜5日以上余裕のある場合は、数十元の手数料を支払って市内の旅行代理店で手配してもらうこともできる。 中国の鉄道は概して混雑していることが多く、特に旧正月は民族大移動といった様相で切符の確保は至難の業である。 それでなくても途中駅から乗車する場合は全席満席であることが多く、窓口で「無いよ!」《没有:めいよ〜》と言われる可能性が高い。 それでも乗車したい場合は、硬座車両の無座《无座》(自由席のこと)であれば必ず買える。 ただ、デッキや通路にうずくまって何時間も耐えないといけないので、所要時間と体力を考慮して決めよう。 また始発駅であっても寝台車、特に硬臥は人気が高いので、前日に窓口に行っても売切であることも多い。 可能な限り発売開始日に合わせて買いに行った方がいいかもしれない。
中国の列車種別はスピードと停車する駅の多寡により、「特別快速(特快)」「快速」「普通特快」「普通」の4種類に分かれている。 また座席クラスは日本でいうと一般車両にあたる「硬座」、グリーン車にあたる「軟座」、B寝台にあたる「硬臥」、A寝台にあたる「軟臥」の4種類である。 運賃は基本的に列車種別と座席クラスごとに分かれていて、距離に応じて算出される。 さらに空調が付いている車両の場合は空調料金が加算されるし、機材が新型車両の場合は「新空調特快」等と称して料金体系も別扱いになっている。 (運賃一覧表はこちら
なお、写真の「K90次」というのが車次、つまり列車番号にあたる。 車次がTやKで始まるものの一部が特快、Kで始まるものが快速、1000番〜5000番台が普通快速、6000番以降が普通である。 切符の見方は写真上部から順番に「フフホト駅発売、フフホト駅→北京西駅行き、車次K90、2002年9月8日 20:56発、13号車、13番目の寝台の下段、運賃254元、新空調特快軟臥」である。


北京駅構内
切符が買えたら後は当日に鉄道駅《火車站》に行くだけだ。 中国の駅にはなぜか入口にX線検査機があるので、荷物はそのコンベアに載せつつ構内に入ろう。 すると、発車する列車ごとに待合室《候車室》が割り当てられているので、掲示板で自分の待合室を確認してその部屋に入る。 この待合室の奥が改札になっていて、だいたい30分前に改札が始まる。 なので、出発の当日は発車時刻の30分以上前には駅に着いているようにしよう。 写真は北京駅構内の様子。


中国鉄路の車両
改札が始まったら、その人の流れにのって乗車する列車に向かおう。 大都市の場合にはどの列車に乗ればよいか一瞬戸惑うかもしれないが、こうすれば迷うことなく辿り着けるだろう。 列車には車次の表示は無いが、行き先が「 北京←→蘭州 」のように表示されている。 またプラットフォームの電光掲示板に車次と発車時刻が表示されていることもある。 さて乗車の際には、車両にきちんと車両番号が表示されており、迷うことはまずないだろう。 各車両に1箇所ずつある乗り込み口ごとに車掌が必ずいるので、切符を見せて車両に乗り込もう。 余談だが、中国の切符売場の係員や車掌は決まって女性である。 女性のタクシードライバーも多い。 中国は意外と女性の社会進出が進んでいることが分かる。


硬座車両
最も運賃が安い硬座車両。 外国人が多く利用するであろう長距離の快速列車にはこのタイプの車両数は少ないが、普通列車は多くが硬座車両である。 写真は新空調車両なので、リクライニングはできないが硬座でも非常にきれいである。 ただ、旧タイプの硬座車両は本当に木製や金属製の固いシートになっているらしい。 しかも4人ずつのボックスシートになっている場合が多い。 また硬座車両は24時間明かりが煌々と点いている。そしてなぜか有線放送みたいな音楽がずっと鳴り響いているのだ。 硬座で一昼夜を過ごしたりするのは疲れるから、長時間乗車する場合は寝台にしたほうが賢明だろう。 ちなみに、青い制服を着たお姉さんはこの車両の車掌さん。 車両ごとに乗務員室があり、他の車両にも行かなかったところをみると、中国では1つの車両ごとに専属の車掌がいるらしい。 彼女たちは駅に到着した時のドアの開け閉めや検札、また車両の掃除をもやっている。 中国人は乗車中にヒマワリの種や落花生などをよく食べており、決まって床に殻を捨てるので、すぐに汚くなるからだ。 写真では見えないが、無座の人たちは通路やデッキ付近で自分の居場所を確保している。 インドとかだとなりふり構わず床に転がっているが、中国人は携帯電話でおしゃべりをしたりしながら気丈にも何時間もデッキで立って過ごす人もいる。 中国は東南アジアのように後進国ではない。


硬臥車両
硬臥車両。 写真のように車両の片側に2つ向かい合わせの3段寝台が連なっている。 インドの3段寝台のように中段は取り外し式ではなく、3段とも常時固定されている。 昼間は下段にみんな座ることができるし、通路側の壁にも折りたたみ式の椅子がある。 各寝台にはシーツと枕、毛布が備わっている。 また6寝台に1つずつお湯の入ったポットが準備されている。 中国の人は円筒形のガラス瓶を水筒として、自分でお茶を入れて飲んでいる人が多い。 また車内販売でカップラーメンを食べる人も多いので、このお湯はとても使い出がある。
なお硬臥と軟臥の場合は、乗車後しばらくすると車掌が検札にやって来て、差し出した切符と引き換えにプラスチック製の座席票をくれる。 そして目的に到着する少し前になると、今度は座席票と引き換えに切符を返してくれるのだ。 寝ていても起こしてくれるので到着時間を気にする必要はなく、寝台車の人は便利である。


軟臥車両
軟臥車両。 4人ずつのコンパートメントで、2段の寝台が2つ設置されている。 コンパートメント内にはお湯の入ったポットはもちろん、読書灯、車掌の呼び鈴まである。 硬臥車よりしっかりしていてきれいなシーツや枕、毛布があり、コンパートメントの施錠もできるので安全で快適に過ごせる。 また車両には1箇所に洗面台が設置されており、トイレも硬臥車のものより数段良い物である。 硬臥車のトイレは途中から水切れで水洗できず、穴の斜面をブツが自然の法則にしたがってゆっくり降りてゆくに任せている状態(おいおい(^^;;)になっていたが、軟臥車両のトイレはこんなことはないだろう。 あまりに快適、あまりに贅沢である。 v(^o^)v


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