10.日本歌謡界のヒットメーカーとして
〜 produced by YMO 〜
日本歌謡界のヒットメーカーってほどじゃなかったけど、ほら、こういうのはノリだから(笑)
2度にわたるワールド・ツアーの大成功やレコード・セールスにおいて名実共に売れっ子ミュージシャンの仲間入りを果したYMOのメンバー。そんな彼らを日本の芸能界が放っておくわけがない。だってそれが、地球にエンターテイメントが誕生して以来のお決まりのコースなのだから。アイドルなどにテクノ・ポップを加味した曲を提供するという機会が増え、巷には「made
by YMO」の歌謡曲が広く浸透していくようになる(”巷にあふれる”というほどではないよ)。「BGM」や「Technodelic」では、すっかりファンに肩透かしをくらわせたYMOだが、同時期、当時の日本の聴衆の望む音楽と彼らのポップのセンスはちゃんと噛み合っていた。90年代でいえば、さながらパッパラー河合か、奥田民雄状態といったところか。
このフィールドで最もヒットメーカーとしての才能を発揮し、レコード・セールスをかせいだのは、まだ正統派アイドルだった松田聖子や中森明菜に曲を提供した細野晴臣であろう。のみならず、「はぴいえんどOB」大いに活躍す、という感じで、松本隆がこれまた売れっこ作詞家として引く手あまただった。(ベースの後藤次利の作曲家としての活躍はもうちょっと後。)一方、坂本龍一の場合は、どうしても”ある非日本的なもの”を捨て切れないところがあって、歌謡曲らしい歌謡曲は作らなかったし、作ったところで売れやしない。で、どうやらアイドルの所属事務所やレコード会社もその辺をちゃんと心得ていて、細野晴臣に依頼したほうが期待に沿った商品を作ってもらえると見極めたらしいきらいがある。(とは、僕の勝手な推測。)
ヒット曲「めだかの兄弟」は坂本龍一作曲で、呆れるほど軽薄な歌謡曲だったが、かなり無理してるな、という感じで、細野晴臣の板についたヒットメーカー振りには遠く及ばない。坂本龍一は、やはり矢野顕子や大貫妙子など玄人ミュージシャン向けのプロデュースで本領を発揮していた。ともかく、YMOから離れて、ひたすらわかりやすくおいしい歌謡曲が量産されたこの時期は、気楽で楽しいテクノ歌謡の穴場である。(その多くが今や廃盤となってしまったのは、実に惜しいことだ。)今でもこの頃のサウンドに特別な愛着をもつYMOファンは少なくない。ある意味その残照のみを追っているフリークすらいる。
代表的なものをあげるとなると、やっぱりイモ欽トリオのために書かれた一連の曲(作曲は、細野晴臣)ということになるんだろうが、まーだまだいろいろありましたぞ。坂本龍一がクールファイブの前川清に提供したなんだか中途半端なテクノ演歌とか。(これが、また売れないんだなぁ〜)ちなみにNHKの歌番組「みんなの歌」で人気だった「コンピューターおばあちゃん」は、作曲者は別の人(名前は失念。)で、YMOは編曲者である。今でも出し抜けに「みんなの歌」でかかってたりして、NHKさん、ギョッとさせてくれる。
それでは、「Technodelic」発表までのYMOの音楽活動の一端を時系列的に軽く触れてみよう!(みよう!て、もしかして手抜き?・・・・・(笑))
●2/20「BGM」波乱のレコーディング終了。
犀は投げられた!再び言わせてもらうけど、YMOkidsとしては、おおいにとまどった、キツかった〜。 聴き終わった後、「何これ?」が正直な感想・・・・。だが、しかーし!我々は、YMOによって据えられた高ーいハードルを越えてきたのだ。ところがである。最近、一部にその頃の柔軟な感受性を失っている人がいることは、実に残念なことだ。一角の音楽通という妙なプライドが、彼らの頭脳を硬直させているのだ。一生勉強だってばさ。
●2/21大村憲司アルバム「春がいっぱい」発表。<高橋、坂本参加。
●同日。スネークマン・ショーアルバム「急いで口で吸え」発表。<細野参加。
●3/10写真集「OMIYAGE」発売。
宝物!第2回ワールド・ツアー、全世界行脚の模様をおさめた写真集。かっこいい写真満載。巻末の文書も内容が濃い。入手できない人のためにアップしたいところだが、スキャナ持ってないし。あっても写真集の画像を転載する度胸なし。
●4/2 春咲小紅ヒット。「ザ・ベストテン」に坂本、高橋出演。
司会が、久米宏、黒柳徹子。最近この手の歌番組って流行らないみたいだけど、この頃は「今週の第1は!」(パネルのカウンターがパラパラパラ・・・・・)ちゅうセリフに無闇やたらとぞくぞくしたもの。一応教授はキーボード弾いてるフリしてましたな。カメラ意識しまくり。
●4/7坂本龍一のサウンドストリートの放送スタート。キャ〜!
これはもう語り尽くせない。当時の僕にとっては、週に一度の真の意味での教科書。この番組のおかげで、YMOと僕らの距離が急激に近くなったような思いだった。本当に声ってすごいね。メンバーの人柄が直に伝わってくる。YMO関連の情報が、間隙をおかずに逐一入ってくるのがどれだけありがたかったことか。直接メンバーの口から自作についての思いや音楽観なんかも聴けた。教授のかけてくれた曲で、世界の最先端の音楽の動向を知ることができた。
ところで、教授の語り口がモソモソしていたからか、ハナから日本の音楽シーンを無視してるのが反感を買ったのか、雑誌企画の投票で、見事ワーストDJ第2位に輝いたのは有名な話(笑)んーそれはともかく、やっぱり声で語りかけてくるメディアって大事だね。RealAudioはいつでも聴けるところがいいんだけど、ちょっと違うんだよな〜。サンストのことを想うと胸がいっぱいだ。
●5/21矢野顕子アルバム「ただいま」発表>坂本参加。
●同日。大貫妙子アルバム「アヴァンチュール」発表>YMO参加。
これらは単にYMOが演奏者として参加したというより、「いわゆるひとつのプロデュース」に近いと思う。そりゃクレジットみると、作詞や作曲はほとんど彼女達によるものだ。でも、教授やYMOがプロデュースした時と、しない時ではサウンドがまるっきり違う。これは、実際に聞き比べてみれば、すぐわかる。初期のテクノ・ポップのテイストをもっと味わいたいよぉ〜と願っている人は、このへんをあたれば、それが叶うだろうと思う。実際、僕なども矢野顕子や大貫妙子のアルバムは、教授が参加してるケースでは、ほとんど教授のソロ・アルバムでも聴いているような意識だったし。
●6/5高橋幸宏 アルバム「ニウロマンチック」発表。
このアルバムのプロモーションために高橋幸宏が奥さんと一緒にサンストにゲスト出演した時のテープを、どういうわけか、僕は今でも無くさずに持っている。このアルバムは、全編バリバリのハード・コア・テクノ。高橋幸宏のソロ・アルバムの中でも異色な存在ということができるかもしれない。タイトルの「ニウロマッチック」は、「NewRomantics」と神経を意味する「neuron」をかけてるそうだ。←放送の中で本人がそう言ってたのら〜
(ん?ちょっと待てぃ!) 。
さて、そろそろこのあたりからソロ活動が活発化してくる。
●同日。松武秀樹ソロユニット”ロジックシステム”「ロジック」発表。
知る人ぞ、知る名盤。YMOの音楽とは全然違うけれど、好き。(どちらかといえば、ジョルジオ・モロダーやヴァンゲリ系かな。)プログラミングが舌を巻くほど緻密。超一流でしょう。スラップ・ベースの弦を指ではじいた瞬間のwaveもプログラミングしたという。今じゃDTM用音源モジュールにもありますが
、当時はそれ自体が打ち込み技術のひとつの革新だったのだ。松武秀樹 =日本のシンセの歴史と断言しても過言ではないと思う。そこの旦那、window95なんてなかったんですよ!
クラッシックの「純器楽的」という言葉にならっていえば、僕は、彼の「純シンセサイザー的」な直截な音楽が好きだ。
●8/5 イモ欽トリオ シングル「ハイスクール・ララバイ」発売。
細野晴臣作曲。 説明不要。ベスト・アルバムに含まれる形でCDも再販されてるし。 フリは今見るとかなり恥ずかしいじょ・・・・・・・
●8/10 坂本龍一の電気的音楽講座。
これも今でもエアチェックしたテープを大事に保管している。(もっともテープが伸びるといけないので、二年に一回ぐらい新しいテープへのダビングを繰り返してきた。)サンストのテーマ曲となった「フォトムジーク」という曲を制作していく過程のドキュメント。普段、完成品から坂本龍一独特の重厚な和声を聞き分けていたわけだけれど、文字どおり、ひとつひとつのパートを重ねていく様子を目のあたりにして(耳あたりだけど)、ただただ圧倒されるばかりだった。教授がサビの部分へ「ちょっとヨーロッパっぽいフレーズいれようか?」と即興的な伴奏をさりげなく弾いた時、僕の全身に電撃が走った!しかも、このフォトムジークという曲、教授の曲のなかでは、それほどポリフォニーが厚いほうではない。いやぁ〜参った、参った・・・
●9/21 スーザン「恋せよおとめ」。
高橋プロデュース。 これも穴場だ。またしても、おいしいテクノポップあり。スマイルっ!
●10/5 坂本龍一「左うでの夢」発表。
詳細は、当サイトの教授のコーナーの「solo
works」をご覧あれ。教授の歌は、今日に到るまで、お世辞にも、うまいとは言い難い。実は、僕は、なるべく歌わないでって内心思ってる(笑)あれだけサウンドに厳格な坂本龍一が、なぜやたらに歌うのか?これも坂本龍一にまつわる大きな謎のひとつか(^^;;
一時期、サンストで問題になったこもある。確か上智大の学生の批判だったと記憶している。
●10/13 「テクノデリック」のレコーディング終了。
●10/21スネークマンショー「死ぬのは嫌だ、恐い。戦争反対。」<坂本、高橋参加。
[註]
あまりにも淡白すぎたので、さずがに心苦しく(^^;;、YMOのメンバーが手がけたテクノ歌謡に関する非コンプリートな補足を作成して、追加する予定。
( 第一稿 )
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