soundtracks

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ryuichi sakamoto

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1992-Wild Palms
これは、アメリカで放映されたTVドラマのサントラ。 話題性としては、オリバー・ストーンが監督した、という点だろう。 未確認だが、日本では、放映されていないのではないかと思う。 ストーリーは、血気盛んな若者が、裏社会で頭角を表すが、 頂点を上り詰める途上で挫折していくというタイプの青春ギャング・ドラマ。 「光」ー大金と女と栄誉と、「影」ー虚飾の生活の空しさと死というやつだ。 そうした両面が巧みに音楽で表現されている。 「光」は、ハイテンポでノリのいい「ご機嫌な」楽曲で、 若きギャングの自信満々な振る舞いを表現。 「影」は、上から重くのしかかるような空虚なシンセ・ストリングスの響きで、 うつろな青年の心情を表現。

これは,想像だが,教授としては, 割と力をあまり入れず楽にこれらの曲を作ったのではないだろうか。 うまくできたサントラだが、 全体に、近年のこの種のドラマのBGMにありがちなスタイルと響きの音楽だと言うことが出来ると思う。 つまりは、優れた職人技の域を出ていない。 音楽の鉄人として、よく注文に応えたということだ。 ただ、「Tully Hooked」という曲には,一言触れておかないわけにはいかない。 アジア的なシャーマニズムの、「神秘」というより「悪魔的な」まがまがしさ。 しかもポップという怖い曲。

1993-Little Buddha
ベルトリッチ監督と坂本龍一コンビによる三作目の作品。 題名でもわかる通り非常に哲学的な内容の映画。 ストーリー。全体を、およそふたつの時間の流れが貫いている。 ひとつは、ブッダが出家して、解脱へむけて苦闘する様子を作者の解釈で描いていく。 平行して、しかし、舞台は、時空を越えて、一気に現代の、アメリカ(西洋!)に跳ぶ。 アメリカの平凡な市民生活を営んでいた少年が、 チベット仏教最高の僧侶の生まれ変わりであることを次第に自覚していく。 ベルトリッチは、「ラスト・エンペラー」といい、 「リトル・ブッダ」といい尋常ならざるアジアへの傾倒を示している。

坂本は、ここでは一層,響きの精神的な深さで音楽をつくっている。 くだけた言い方をすれば、旋律の輪郭がはっきりした(ラスト・エンペラーのような)曲とは違う音楽ということ。 旋律の振幅は、最小限に抑えられている。 しかし、耳を澄まして聴くと、内面の深いところでの実に豊かな、 あるいは、激しい変化を聞き取ることができる。 例えば、「Acceplance-End Credits」を聴くと、苦悩に打ちひしがれていたブッダが、堅い決心ととも敢然とに立ち上がり、 力強く前進を始めていく過程が切々と伝わってくる。 無論それは、軍人的な英雄が、勇気を奮い起こして、 華々しいファンファーレとともに起死回生の挙に出る, といったようなシーンとは全然違うニュアンスの曲調で表現される。

当初、この映画のMain Themeとしては、坂本龍一は、今では「Sweet Revenge」と言う曲名の楽曲を提示したらしいが、 ベルトリッチの方で作品のテーマに不適当ということで却下したそうだ。 坂本の方では、その曲に特に思い入れがあったからSolo Albumに収録。 「Sweet Revenge」というのは、ベルトリッチへのあてつけということらしい。仲のよろしいことで。


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