site
ZTY
ryuichi sakamoto
back to the top page |

1983-戦場のメリークリスマス
(英名)Merry Chistmas Mr,Lawrence
ストーリー。恐ろしく簡単に言ってしまえば,「愛」は国境を越え,あらゆる立場を越え,性別すら超克するといった種類のテーマの映画。坂本龍一扮する日本人将校が,デビット・ボウイ扮するイギリス人捕虜に次第に抗い難く愛慕の念を抱き,天皇の国家と神道にストイックに我が身を捧げてきた己の信念との間で激しく葛藤する。
坂本龍一,初めての本格的な映画音楽。坂本龍一としては,映画の善し悪しの半分は音楽で決まるものであるのに,日本の映画は,映像や脚本や演技に比して「音楽」の存在があまりに軽んじられているという認識があったという。そんな坂本の主張に違わぬ,漠然としたムードを醸し出すだけの音楽とは一線を画した,
力強く深い映画音楽が誕生した。
Main Themeの「Merry Chistmas Mr,Lawrence」のピアノヴァージョンは教授ファンに特に人気があり,コンサートでも度々弾かれてきた。映画のなかでは演奏されないものの,Main
Themeにデビット・シルビアンの Vocalが入った「Forbidden Colors」は絶品。彼にしかできないあの独特の美しい歌唱法!何度も聴きながら
こんな風に歌えたらさぞ幸福だろうな,と思ったものだ。「Forbidden Colors」は,後にVirsion2としてリテイクされたが,これが一層情熱的に熱唱されていて,さらにいい。
余談だが,西欧の映画関係者の間で,国家神道に則った坂本龍一の日本人将校の姿や振る舞いが,共演者のデビット・ボウイより美しいと評判になり,やたらと軍服姿の役での映画出演要請があったそうだ。教授はといえば,かたっぱしから断ったそうである。そのなかには三島由紀夫役もあったという。
1986-子猫物語
ムツゴロウこと畑正憲原作・監督の動物映画。一説には坂本龍一は,この仕事を”好きでやったのではない”と言っているそうだが,なかなかどうして佳作ぞろいだ。僕はMain
Themeを初め結構はまった曲が数曲ある。清涼感のあるストリングスが美しい。それに僕はムツゴロウシリーズを愛読していたことがあるのだ。教授よ,畑氏の仕事を馬鹿にしないでくれ(笑)
まあ、映画としてどうなの?ということなんだろう。
1987-オネアミスの翼
アニメ映画のために書かれたSoundtrack。映像は,隅から隅まで,見ているこちらの方が気が遠くなってしまうくらい細密な描線で,借り物でない独自の世界が描かれている。アニメファンには伝説の映画となっているらしい。
坂本龍一は次のように語っている。
「さっそくコンテを見せて貰い,まず、そのディテールの緻密さに驚かされ,たぶんこの人達は自分と同じようなものが好きなんだろうなという確信を持ちました。アニメーションの緻密な作業と,ふだん僕たちがやっている音楽の作業とがとてもよく似ていた
− これがこの仕事を引き受けた大きな理由のひとつでした。」
映画の最後,オネアミスという架空の国の,暗黒の未来像のような殺伐とした人混みのなかで, リイクニという可憐な少女が,誰も耳をかたむけない神の言葉を説いていると、夜空から雪が落ちてくる。
そのシーンで教授の「Fade」という曲が次第にFaid-inするかたちでながれる。 あれはなかなか耳からはなれない。 ノスタルジックで、オネアミスという舞台で繰り広げられる救いのない悲劇を優しくカタルシスへ導き、しかもカッコイイときている。
next >
|