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"私は遺跡を破壊させる!"
急激に覚醒した自我の中で、心にあふれる暖かいものが、キスリィンになすべき事を思い出させた。
"あの人の・・・上杉さんのために、私の命をかけて !!"
彼女のその強い思いが、ドクターによる呪縛を吹き飛ばした。
そして、反応するかのように動き出した方陣が、 今まさに遺跡破壊の配列 『昂鬼房参伍鍵壊列』を形作ろうとしていた。
最後のパーツがロックされた瞬間、その場にある全ての物が輝く黄金の光に包み込まれた。
それは一瞬のことであったのか、それとも・・・。
自分の中から「自分の何か」が開放され、放出される感覚。
何もかもがすべて遠くに感じられ、彼女はそのまま深い闇の中へ落ちていった・・・。
トン、トン、トン・・・
キスリィンは、暖かなぬくもりと小気味よいリズムを感じていた。
(ずっと、このまま・・・)
しばらく夢現でそのリズムを体全体で感じていたが、不意にそのリズムが止まった。
(何・・・?私どうしたの?)
急に止まってしまった事への不安が、彼女の意識を引き戻していく。
身体に感じるぬくもりは以前変わらない物であったが、リズムは既に無くなっていた。
いや正確には、かすかにだが先程とはまた違うリズムを感じる。
まるで、母親の腕の中のような・・・安心できる鼓動の音。
ホッとして、そのまま落ちようとする意識を必死で引き止め、彼女はようやく目を開けることが出来た。
目の前でおぼろげながら光が輝いている。
(なんだろう・・・)
何度か目を瞬かせ、ようやく目の前の光るモノが何であるのかはっきり分かってくると共に、急激に意識が覚醒してきた。
(−−−−な、な、何で上杉さんが、私の事抱き上げてるの!!!)
遺跡から少し離れた場所で、自分の置かれている信じられない状況に半分パニックになりかける。
冷静に考えようとしても混乱は深まるばかりであった。
その動きに気づいたのか、それまで遠くに向けられていた視線が落とされた。
−−− どきん! −−−
心臓が飛び跳ねる。
「あ、あの、その・・・」
見つめられ、みるみる顔が真っ赤になるのを感じながら、必死で言葉を探す。
キスリィンの混乱など気づいていないのだろう。上杉は不意にやさしく微笑んだ。
(あっ・・・)
少佐が首を傾けた瞬間、その顔にかかっていた前髪が重力に従い、はらりと掻き分けられた。
(綺麗な・・・金色の・・・目・・・)
いつもは隠されている、黄金色の瞳 。その美しさに、一瞬にして心を奪われた。
「気が付いたか?」
呆然としている彼女に向けられた言葉。
何気ない一言なのだが、ただ一人、キスリィンにとってその声だけが心に響く旋律となる。
以前と変わらない暖かい眼差しで自分を心配してくれる・・・そんな上杉に対する嬉しさが込上げ、知らずに笑みがこぼれる。
「はい、ご心配おかけました」
あの時と同じあたたかい瞳。それがまた自分に向けられている。それだけですごく幸せだった。
それから・・・
少佐の口から出た、彼女をいたわる言葉の数々を聞きながら、信じられない思いでその美しい双眸を見つめた。聞きながら、一筋、また一筋と込上げてくる涙が、止めどなくキスリィンの頬を濡らしていく。
----言葉がでない。
ただ、口元を押さえその話にうなずくだけが、いまの彼女に出来る精一杯だった。
"傍にいてほしい"
どれだけ自分が望んでいた言葉だっただろうか。
小さい頃から望んでも得られず、あきらめ、否定する事しか知らなかった自分。
それが、いま最も傍にいたいと思っている人から望まれている
・・・天にも登る気持ちというのは、こういうことをいうのだろう。 聞きながら、夢なら覚めないでと願う。
この想いをどうやって伝えたらいいのだろう。
とりあえずもう少し落ち着いたら、真っ先に伝えたい事がある。
5年前、私に気が付いてくれてありがとう。
ドクターに心を捕らえられた私に、呼びかけてくれてありがとう。
そして・・・いま私を想ってくれてありがとう・・・と。
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