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「うーん、どうしましょ」
あきれた口調半分、滅多に見られない物を見たという口調半分で瀬戸は独り言のようにつぶやいた。
「きっと、ギャラリーがいることなんて気が付いてませんねぇ・・・二人とも」
楽しそうに、のんきそうに櫻井がそれに答える。
・・・場所は東亜遺跡より少し離れた見晴らしのよい高台。
皆、鍵であった責任を果たすかのように、崩れ落ちる遺跡を静かに見守っていたのだったが・・・
普段クールで滅多に表情を変えることが無い上杉の、あんなに熱い告白を聞いた面々は、様々な表情をしていた。
上杉を尊敬していたジュンは固まったまま、 伊南は唖然と、那生は顔を赤くして、眞生はニコニコと、熱く見つめあうふたりを見守っていた。
「まぁ、ここは、馬に蹴られて何とやらですから、私達はそろそろいきましょうか」
こうなる事を予想していたのだろうか。櫻井は相変わらずニコニコした表情を変えずに提案する。
「???なんだ?その馬に蹴られてって?なぁ、薫」
「おや、学校で習わなかったのかい?、ほんと、この子はお猿さんだねぇ。」
勉強に関する事は、頭の中からすっかり抜け落ちている眞生に向かって、瀬戸はあかるい緑色の髪をクシャリとかき混ぜて、楽しそう笑いながら言った。
「それはいいんだけどよ・・・車は一台しかないんだぜ」
瀬戸にからみつく眞生を横目に伊南は反論した。
そして、やっと思考停止状態から復活したジュンがそれに続く。
「二人とも置いていっちゃうんですか?それじゃ可哀想ですよ」
やはりこの質問もされる事が分かっていたのか 、櫻井はあせる気配もない。
「ご心配しなくても大丈夫ですよ。えぇ、きっと瀬戸さんが何とかしてくれます」
急に瀬戸の名前が出てきたので、皆、一様に視線を向けた。
「そういえば・・・何でここに瀬戸さんがいるんですか?」
「さっき俺達の前をこいつ抱えて走ってよな・・・ってことは遺跡の中にいたんじゃねぇのか?」
とっさに気が付いたジュンに続き、那生を指差しながら伊南が不思議そうに口を開く。
せっかく忘れていてくれたのに・・・瀬戸はちょと恨めしそうな目で一瞬櫻井を見てから視線を二人に戻し、相変わらず何を考えているのか分からない笑みを浮かべながら肩をすくめた。
「さぁ、なんでだろうねぇ・・・ま、確かに俺は車で来ているから、そっちのは置いていっても大丈夫でしょ」
「・・・だそうですから」
おかしそう櫻井が笑う。
「だけどよぉ、・・・俺はサテライトには帰れねぇから・・・」
「伊南・・・」
言葉を濁す伊南を、ジュンは心配そうな眼差しで見つめる。
------一瞬、沈黙が流れた------
「・・・それならとりあえず那生くんと一緒に家にいらっしゃればいいですよ」
皆はっとして、その声の主を見つめる。
「軍の方は、上杉さんとキスリィンさんに任せておけばいいんです。報告とか色々な事は彼らの方が適任ですから」
そう櫻井はにっこり笑う。
「そうそう、相手になるお子様もいることだし、伊南くんにはちょうどいいんじゃない?」
伊南は、茶化すような瀬戸の言葉を聞きながらしばらく考え込んでいたが、いきなり吹っ切ったように顔を上げた。
「ま、それなら今日だけでも休ませてくれよ。後は・・・また考えりゃ良いさ」
笑いながら答える伊南に、その場が和んだ。
「それでは、とりあえず私の家まで行きましょう」
そして、つづけてさらりと言った。
「そのあと、サテライトに戻ってこだまを連れて来てくださいね、瀬戸さん」
なんで俺が・・・と思いながらも櫻井にいろいろと弱点をつかまれていては、反論出来るはずもないので、仕方なく頷いた。
「・・・本当にいいのかなぁ・・・」
「ま、仕方ねぇんじゃねぇの?」
「・・・僕・・・やっぱり上杉さん達、待っていようかな・・・」
「だめだめ。そんなことしたら後で上杉さんに呪われちゃうよ」
「今のあの二人でしたら、怖いものなしですから、大丈夫ですよ」
「なぁ、俺もう腹減ったよー。早く帰ろうぜ〜」
気を使っているのかいないのか・・・とっととその場を立ち去った。
そして・・・その場には一組の影だけが、残されたのであった。
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