一般に、他人との連絡、コミュニケーションの方法をどうするかは、かなり悩ましい、または難しい判断を必要とするものですね。
私の提案の1つは、電話による会話は、事前に電話番号を与え合った人同士に限り、それ以外は、郵便、FAX、Eメールによる、というものです。これは今では、多くの方々に納得していただける区別ではないでしょうか。
電話というメディアの特質は、発信者の都合の良いときにかけるものであり、受信者は呼び出し音によってそれまでしていたこと(あるいは、眠っていたり、ただぼんやりとしているだけの状態)を中断して、誰からの電話か、またどんな用件か
などを分からないまま、突然外の社会に向かい合わざるを得ないという意味で、「
発信者優先主義」です。
(詳しくは、舟田「ネットワーク社会における個人情報の保護」・『高度情報社会』(ジャパン・タイムズ社、1988年)221頁以下参照)
もちろん、電話端末機が自由化された1984年からは、端末側から「呼び出し音を切る」、などの機能が付くようになってからは、受信者側でかなりコントロールできるようになって、事情は変わりました。(実は、私は、家でテレビを見ているとき、あるいは研究室で勉強しているとき、呼び出し音を切って、留守番電話モードにしていることがあります。)
今年末から、NTTは発信者番号表示サービスを開始する予定ですが、私がこれに賛成したのは、発信者は事前に自分の電話番号を相手に示すことを礼儀にすべきでは
ないか、という考慮と、番号表示によって受信者が受信するかどうかの個別的選択の幅を広げる可能性があるからです(ただし、プライバシー侵害のおそれもあり、これも複雑な問題です)。
それでも、人間の意識はそう簡単に変わるものではなく、例えば、私に対する原
稿や研究会などへの参加の依頼のために「何度かお電話したのですが」というクレ
ームに近い言葉をよく聞かされますし、「ご連絡がつきませんでしたので、大変失礼に存じますが、書状(あるいはFAX)でお願いいたします」などという文章を拝見することがあります。電話で直接お願いする方が丁寧なのでしょうか、人によって
礼儀感覚が違う、という例でしょう。
また、次の連絡のため「こちらからお電話いたします」と申し出ると、「いえ、それでは申し訳ありませんので、こちらからおかけします」とご返事なさる方がお
られます。
これは、電話が希少価値をもっていて、また電話代がかなり高かった時の礼儀を持ち続けている方でしょう。しかし、上に述べた理由から、「こちらからお電話いたします」との申し出に対しては、また留守番電話には、どこへいつ返事をしてくれ、と言って頂いた方が有り難いし、お互い手間が省けると思います。これが、第二の提案です。
また、提案の第三として、私の名刺には、大学の住所と電話番号、Eメールだけ記載しています。ビジネス・カードですから、まず大学宛お願いしたいという趣旨です。したがって、仕事のお電話、ご連絡は、原則として大学宛お願いいたします。
当然のようですが、最近、何かの住所録で自宅の電話を調べて、直接支度に仕事の依頼の電話が来て、ビックリしたことがあります。その方は、全く悪意はなく、直接お電話でまずお願いするべきだと考えたとのことです。なお、私は学会などの住所録には、なるべく大学の住所と電話を載せ、他の方とのバランスからやむを得ないときは、自宅の住所だけ載せるようにしています。
これらについてはいろいろ議論があるでしょうが、ともあれ以上により、このホームページをご覧になられた方からのご連絡は、できれば下記のEメールでお願いします(第四の提案)。
最後の第五の提案。
学生諸君には、もちろん私の自宅の電話番号を教えてありますから、場合によっては(例えば、急を要する場合)電話もOKです。ただし、緊急でなければ、朝10時前と夜10時半以降は遠慮し
て下さい。また、通常は、学生諸君が私ども大学の先生にアクセスするには、講義やゼミの前後に直接話しかけるか、法学部受付や各研究室のドアに付けられている
メール・ボックスにメモ等をいれる方がいいでしょう。もちろん、郵便で手紙や葉書を出すことは、上の例にあげた方と意見が違いますが、全く失礼には当たらない
と思います。ただし、伝統的な手段だけに、礼儀がうるさいので、何をどう書くか
は私自身もいつも悩みます。これに対し、Eメールの場合は、礼儀の考慮よりも、簡単明瞭が一番という了解が何となくありますので、こちらが多用されるようになりつつあるのは当然でしょうね。
1997/8/31 (同12/21追記) 舟田正之
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