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page38 - 第 6期 第 44弾 2002年 1月 11日 発売

アキコ・グレース - フロム・ニューヨーク

日本コロムビア/Savoy COCB-53003

アキコ・グレース (p)
ロン・カーター (b)
ビル・スチュワート(ds)







01.Never Let Me Go
02.Delancey Street Blues
03.I've Seen it All
04.You Don't Know What Love is
05.You Must Believe in Spring
06.The Last Smile of You
07.Voice of The Sphere
08.Inner Conflict
09.Texture
10.My Favorite Things
11.Never Let Me Go

1974年神奈川県生まれ(本名岩瀬晶子)
ピアノ教師であった母親の下、3才からピア
ノを始め東京芸大入学後、休学してバーク
リーに留学。98年からはNYでレギュラーと
してクラブで活躍、その後2001年には東京
芸大も無事卒業した。オスカー・ピーターソン
に強く影響を受けたとされ、確かにCDでは
あの力強いタッチを再現しようとしているか
のようです。


*プロフィールはSJ誌2002年1月号を参考にさせて頂きました。


各委員のご意見は原稿の到着順で掲載しております。

なお、この企画は参加委員による共通のページとして、各委員のサイトでもご覧になれます。
ページのデザインやレイアウトは各委員のサイトで異なると思いますが、
文章の内容は全く同一のものが紹介されます。

現委員のメンバー及びリンク先はゴールド・ディスク品質向上委員会のページをご覧下さい。

【委員の声】 其の一

「美人に見えたり十人並に見えたり」

本作はJp-Savoy第1作。Ron Carter(b)、Bill Stewart(ds)を迎えた初リーダー作。
自作5曲、スタンダード等6曲。ポートレイトと同様に、アングルによって美人に
見えたり十人並に見えたり。ファストは弾き流しに響きガツンとくるものはない。
バラードはその名の通り優雅だがグッとまでこない。落ち着き払い過ぎたのでは。
決定的な吸引力を欠く。名手達(Carterもそうか?)は「お仕事」しているだけだ。
ショップをにぎわす十人並のピアノ・トリオに満足できる方ならお求めあれ。

評点:★★★ 三つ星

HAYASHI Tatsunori
email:infotec@themis.ocn.ne.jp
site :JAZZ DISC SELECTION  http://www.ai.wakwak.com/~tatsu/


【委員の声】 其の二

「研ぎ澄まされたフレージング」

アキコ・グレースという日本人ピアニストのデビュー・アルバム。彼女のオリジナルは
全11曲中5曲もあって、けっこう楽しめそうです。さてどんな感じかなとCDをトレイ
に入れると、1曲目の1分ほどのネヴァー・レット・ミー・ゴーから、2曲目のハードな
オリジナルに突入。そして目が覚める。鋭いピアノのフレージングと言ってもいいのか、
あるいはクラシックの修行時代が長かったからこうなったのか、まあタダモノではないと
思いました。しばらく、この曲を繰り返し聴く。スピーディーでメロディアスなテーマの
8曲目もなかなか。本当ならこういう路線で行って欲しかったのですが、叙情路線の曲の
方が多いです。静かながら映像的にせまってくる6曲目、耽美的で都会的なクールさとを
あわせ持って、フツフツと情感がわいてくる7曲目、しっとりとしたバラードの9曲目。
 3曲目はビョークの曲で、哀愁感覚が何とも言えない雰囲気。4曲目はスタンダードを
自然体で。5曲目はミシェル・ルグランの曲。しっとり感が良い感じ。特に後半のピアノ・
ソロがジーンときました。10曲目は有名ですがその色彩感は淡く、渋い。そして、1曲
目をフル・ヴァージョンにした11曲目で静かに幕を閉じます。
 プロデュースの関係か、控えめな演奏が多いですが、バップのフレーズが出て来ないで
メロディアスな独自路線で勝負をしているなあ、という気もしています。なぜか視覚的に
映像が浮かび上がるような音。彼女のピアノならばジャズファン以外にももっと広く受け
入れられそう。ベースとドラムスも意外な取り合わせですが、でしゃばる事なく、全体的
にうまくまとまっています。ただ、曲もフレーズもあまり「ジャズ」らしさがない統制の
とれたサウンドなので、好みの問題はあるかもしれません。澤野工房での叙情的な一部の
アルバムに近いような感触がありますが、甘口でもないと思います。

評点:★★★★ 四つ星

工藤 一幸
E-mail: kudukazu@mtf.biglobe.ne.jp kudo.kazuyuki@pep.ne.jp
URL: (事務所) http://www2s.biglobe.ne.jp/~kudotax/
(ジャズ) http://club.pep.ne.jp/~kudo.kazuyuki/


【委員の声】 其の三

「イメージを裏切る硬派なピアノ」

 失礼ながらダサいジャケがサヴォイの特徴かと思っていたら、
本作のアイドル顔負けの美しいアートワークに驚かされました。
何しろ本当に間違えて買いそうになったお客様がいるほどです。
ところが見ると聴くでは大違い、BGM風の作品かという先入観
をいきなりそのタッチの力強さに覆されました。
さすがにグレースの芸名通りに、パワーだけでなく気品を漂わす
プレイが聴かれます。やはりクラシックのバックグラウンドがある
からなのでしょう。それが日本人らしい生真面目さとともに緊張感
を強いる面も否定できません。そのあたりが好みの分かれるとこ
ろでしょうが、個人的にはこの方向性で個性を確立してもらいたい
と思います。

評点:★★★★ 四つ星

(STEP 片桐俊英)
e-mail:step@awa.or.jp
HomePage:http://www.awa.or.jp/home/step/


【委員の声】 其の四

「意外に硬派な女性ピアニスト」

 日本人の女性ピアニストというと大西順子や木住野佳子が思い浮かぶのだが、
このアキコ・グレースなるピアニストは大西ほどパワフルでもなく、木住野ほど
わかりやすくもないという感じで、やや中途半端な印象を受けた。自作の2や8
あたりの疾走感はなかなか心地よいが、その他は抽象的なミドルテンポの演奏が
大半を占めておりアルバムとしては退屈なものに感じられてしまう。個々の曲の
出来は悪くないと思うが。初心者には少々とっつきにくい作品かもしれないが、
最近のGDに氾濫する有名曲やスタンダードを適当に料理して並べただけという
所謂商売アルバムにはなっていないと思う。そこは評価したい。

評点:★★★☆ 三つ星半

増間 伸一(Shinichi Masuma)
E-mail:shin@masuma.nu
WebSite:http://www.masuma.nu/


【委員の声】 其の五

「ネオ・スタンダードのヒロイン」

何の予備知識もなく最初に耳に残ったのが#3 I've Seen It All 。
不勉強でこれがビョークの曲だと言うことは、CDを聴きながらSJ
誌を読んでいて気が付いた次第ですが、若干の力みは感じられ
るものの、アルバム全体を通してもハイライトだなと思いました。

そう思って改めて聞き直しましたが、やはり耳馴染んだスタンダー
ドよりも、良くできたオリジナル曲よりも印象は強烈です。オリジナ
ルの中では腰の入ったバネのある#8 Inner Conflict が変幻自在
の構成で一番力強く感じました。

録音のせいもあるのか鍵盤を強打する部分でブライト過ぎるのが
気になりましたけど、ピアノをこんなに明るく堅めに録音した作品
も私は久しぶりです。次回はもっとナチュラルに録ってもいいように
感じました。

今後の期待は是非ネオ・スタンダーにチャレンジして欲しいです。
"Akikoがやってたあの曲"なんて言われるようになればしめたもの
です。実力の伴った期待度大の新人ですね。

評点:★★★★ 四つ星

bb (bluesboy). 現GD委員会 委員長
E-Mail bluesboy@pluto.dti.ne.jp
Web-Site Blues PEOPLE & Jazz PEOPLE / apple Jam


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