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page37 - 第 6期 第 42弾 2001年 11月 21日 発売

ベニー・ウォレス - イン・ベルリン

徳間ジャパン TKCB-72269

ベニー・ウォレス (ts)
ジョージ・ケイブルス (p)
ピーター・ワシントン(b)
ハーリン・ライリー(ds)

1999年 ベルリン・ジャズ・フェスティバルにて収録





01.It Ain't Necessarily So
02.I Loves You,Porgy
03.It Has Happened to Me
04.It's Only a Paper Moon
05.Someone Watch Over Me
06.Thangs
07.At Lulu White's

1946年テネシー州チャタヌガ生まれ
71年までは地元で活躍していたが
71年にNYに進出。個人的には86年の
新生ブルーノートに吹き込んだ「トワイ
ライトタイム」のイメージが鮮烈ですが
その後93年までは映画音楽を制作す
る仕事に専念、ジャズシーンにカムバ
ック後は98年に引き続き今度が2回目
のSJ誌GoldDiscの受賞となりました。
もともとR&Bなんかもやっていたとは
思えないフリーキーさも魅力の一面。




*プロフィールはSJ誌2001年12月号を参考にさせて頂きました。


各委員のご意見は原稿の到着順で掲載しております。

なお、この企画は参加委員による共通のページとして、各委員のサイトでもご覧になれます。
ページのデザインやレイアウトは各委員のサイトで異なると思いますが、
文章の内容は全く同一のものが紹介されます。

現委員のメンバー及びリンク先はゴールド・ディスク品質向上委員会のページをご覧下さい。

【委員の声】 其の一

「彼の個性は健在なり」

 実はベニー・ウォレスの前アルバム「やさしき伴侶を」もゴールド・ディスク
に選定されていて、しかも録音時期が1年強しか違わずに、曲も3曲がダブって
いる、ということで、少々困ってしまいました。今まで2巡目のミュージシャン
は評価がけっこう厳しくなる、ということが多かったからです。
 そんな心配をよそに、相変わらずマイペースで吹きまくる彼の姿があったとき
は、正直ホッとしました。ライヴ録音ということもあってか、音は少々暖かめ。
1曲目は14分台の大曲ですが、彼のフレーズがけっこう効いています。そして
5曲目を聴いた時は、彼の唄の世界はけっこう心地よいものだ、という感想。
 個人的には彼の本質はオリジナルにあると思います。今回はオリジナルが3曲
ありますが、うち3、6曲目は「ザ・トーク・オブ・ザ・タウン」('93年録音)
にも登場。例えば3曲目の豪快でアグレッシヴに吹きまくる姿がいい感じ。その
引っかかりのあるフレーズが連続するあたりが特徴。6曲目は徐々に盛り上がり、
後半沸騰する部分があります。7曲目は彼らしいブルース。やっぱりフレーズで
聴く感じ。彼はフリー・ジャズの出身ではありませんが、そのような方向性をも
メロディアスさとともに内包している感じがします。
 4曲目は南洋を思わせるような陽気な「ペーパー・ムーン」。新生ブルーノート
の「ボーダータウン」('87年録音)のボーナストラックでも登場していました。
 けっこう聴きやすいアルバムだろうと思いますが、ただ聴きやすさだけでなく、
彼の個性あふれるフレーズもあちこちに出てくるので、個人的に好きなアルバム
のひとつとなりました。オリジナルばかりでないというのは丸くなった証拠かも。

評点:★★★★ 四つ星

工藤 一幸
E-mail: kudukazu@mtf.biglobe.ne.jp kudo.kazuyuki@pep.ne.jp
URL: (事務所) http://www2s.biglobe.ne.jp/~kudotax/
(ジャズ) http://club.pep.ne.jp/~kudo.kazuyuki/


【委員の声】 其の二

「完全復調を期待させる中傑作」

本作はEnja復帰第3作。George Cables(p)、Peter Washington(b)、Herlin Riley
(ds)と出演したジャズ祭でのライヴ。自作3曲にスタンダード4曲。一聴してすぐ
傑作と知れる。屈折し跳躍する節はそのままに、気負いは覇気に、異形は個性に
好転している。ロフトの心意気ここにあり。以前の音量とパワーが戻れば万全だ。
Cablesがいい。主役を脅かす熱演を見せる。前作を見限った方もお聴きあれ。

評点:★★★★☆ 四つ星半

HAYASHI Tatsunori
email:infotec@themis.ocn.ne.jp
site :JAZZ DISC SELECTION  http://www.ai.wakwak.com/~tatsu/


【委員の声】 其の三

「久々に直球勝負のGDが登場」

 くだらない企画物の連続だったGDに久々の直球勝負作品登場という感じだ。
前回のGD同様、ガーシュインの曲を多く取り上げているが、前作のような妙な
企画臭はない。アップではデヴィッド・マレイ顔負けの野太いトーンで咆哮し、
バラードではシェップばりの円熟味を感じさせる。但し近年のシェップのような
あざとさがないのが嬉しい。やはりウォレスのようなプレイヤーにはスタジオで
こじんまりとやるよりもライブで自由奔放に吹きまくる姿がお似合いだ。そして
忘れてはならないのがピアノのケイブルスである。凄みを漂わせる彼のピアノが
本作の肝であることは疑いようがない。1のイントロで聴ける70年代風の熱気
あふれるサウンドが最高。彼の演奏で半星評価が上がった。惜しむらくは優れた
コンポーザーであるケイブルスの曲が収録されていないこと(ステージでは演奏
されたのかも知れないが)。
 凡作が続きGDに辟易していた方もきっと溜飲を下げるであろう力作である。
ただ99年録音のアルバムを今頃GDにするのはどうかと思うが...

評点:★★★★☆ 四つ星半

増間 伸一(Shinichi Masuma)
E-mail:shin@masuma.nu
WebSite:http://www.masuma.nu/


【委員の声】 其の四

「Jazzの楽しさ溢れる盤」

 二年前の前作もこの企画で取り上げたので、今ひとつ乗り気ではなかった
このライブ盤ですが、最初の音を聴いただけで杞憂は吹っ飛びました。
ウォーレスのテナーが出てくるまでのトリオ演奏の活きの良さ、そして艶と
陰影感のある彼独特の音が鳴り響いた瞬間の驚きと喜び、久しぶりに何度
も繰り返して聴いてしまいました。それも自然にヴォリュームを上げたくなる
躍動感とエネルギーを持った演奏故のことです。また緩急自在といった選曲
もこのアルバムの完成度に貢献しています。バラードでの深々とした表現や
時折炸裂するフリーキーなトーン、全く飽きる間もなく一気に最後まで聴いて
しまいました。どの曲も良いのですが中でも特に気に入ったのはロリンズの
お株を奪うようなカリプソのリズムが楽しい「ペーパー・ムーン」でした。
前作に四つ星を付けていたので、今回は躊躇なくプラス半星の評価です。

評点:★★★★☆ 四つ星半

(STEP 片桐俊英)
e-mail:step@awa.or.jp
HomePage:http://www.awa.or.jp/home/step/


【委員の声】 其の五

「真芯にヒットした快感」

私の場合ジャズに何を期待するかといえば、それはやはり
何をおいてもその躍動感、生命力とクリエイティヴなエネル
ギーなのですが、今回のウォレスの作品はそれらすべての
要素を完全に満たしてくれています。やはりSJ誌のGDにな
った前作「やさしき伴侶を」に諸手をあげて五つ星を付けた私
は今困っています。なぜなら本人の出来はもとより、共演の
ピアニスト、ジョージ・ケイブルスが前作のマルグリューより
遙かにマッチしていて星を六個付けたい心境です。ケイブルス
の、#1辺りでのモーダルなトリオ部分でのうねるようなフレー
ジングは77年のペッパーとのヴィレッジヴァンガード盤以来の
感激と興奮です。

ウォレス自体も水を得た魚のように活き活きとしていて、全編
にわたって非常にアグレッシブなプレイをしていますが、個人
的にはあたかもドルフィーのバスクラが(吹いてるのはテナー
ですが)炸裂したかと思わせるオリジナル曲#3にK.O.されまし
た。ウォレスがこのように露骨に誰かに似ているスタイルをとる
ことは希なのでこれはとても新鮮に響きました。

とにかく全曲、隅から隅まで濃い仕上がりで感動しました。

評点:★★★★★ 五つ星

bb (bluesboy). 現GD委員会 委員長
E-Mail bluesboy@pluto.dti.ne.jp
Web-Site Blues PEOPLE & Jazz PEOPLE / apple Jam


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