back to ゴールド・ディスクを斬る top page Jazz PEOPLE index mail to bluesboy




page36 - 第 6期 第 40弾 2001年 10月 17日 発売

マンハッタン・トリニティ - ラヴ・レターズ

エム アンド アイ カンパニー MYCJ-30121

サイラス・チェスナット (p)
ジョージ・ムラーツ (b)
ルイス・ナッシュ(ds)

2001年6月録音






01.Love Letters
02.Django
03.Taxi Driver Theme
04.NTB
05.So Many Stars
06.Till There Was You
07.Wisteria
08.Ebb Tide
09.Blame it On My Youth
10.9:45 AM

サイラス・チェスナット(p)
1963年ボルチモア生まれ。80年代前半、
当時新緑ジャズのリリースに積極的だった
日本のアルファ・レコードからデビュー作を
発表、それが好評を博してアトランティック
と契約を交わすに至りその後の作品で
さらなる成功を見る。一躍人気・実力の
伴った若き新人として世界に知られるよう
になった。

*プロフィールはCDのライナーを参考にさせて頂きました。


各委員のご意見は原稿の到着順で掲載しております。

なお、この企画は参加委員による共通のページとして、各委員のサイトでもご覧になれます。
ページのデザインやレイアウトは各委員のサイトで異なると思いますが、
文章の内容は全く同一のものが紹介されます。

現委員のメンバー及びリンク先はゴールド・ディスク品質向上委員会のページをご覧下さい。

【委員の声】 其の一

「個性で勝負する時期かも」

このアルバムのライナーに書かれていた中条晋平氏の言葉に、
今回の作品の主役であるチェスナットをここまでにしたのは、彼に
世界デビューとなったリーダー作品を作るチャンスを与えた日本の
レコード会社であること、またそれは日本の誇りだと書いてありま
した。

確かに最初にその機会がなければ彼がこのように世界的に有名
な存在になりコンスタントにアルバムをリリースすることはなかった
かも知れません。今回のアルバムを含め今までの路線が、チェス
ナット自身が本気でやってみたかった作品群であり、それで成功
したことを祈るばかりです。でもこのアルバムに限っていうとどこに
もチェスナットの顔が見えてきません。

もし今度日本側で彼にアルバム制作の機会を与えるなら、最初に
作品のイメージやターゲットを提示せず、全部好きにやらせてみて
欲しいです。一体彼から何が出てくるか、何かを生み出してこその
ジャズだと思いますので是非そこにチャレンジしてみて欲しいなと
感じます。そうすれば日本はもっと世界に誇れると思います。

今回の作品自体はお洒落路線のジャズとして良く出来ていると
思いましたが、GDマークが恥ずかしいような気もしました。

評点:★★★☆ 三つ星半

bb (bluesboy). 現GD委員会 委員長
E-Mail bluesboy@pluto.dti.ne.jp
Web-Site Blues PEOPLE & Jazz PEOPLE / apple Jam


【委員の声】 其の二

「メロディアスなアルバムではあるけれど」

 まず、アルバムを聴いてみる。メロディアスで素直なジャズという印象があり
ます。演奏はそれなりに素晴らしいし、これはこれで良いのですが、数回聴いて
みて残った印象というと、はて何だったっけ、という感じが無きにしもあらず。
スタンダードや映画音楽、ジャズメン・オリジナルに、彼らトリオのメンバーの
オリジナルが1曲ずつと、曲の構成も変化に富んでいます。ただ私が欲しいなあ、
と思うのは、彼らのもっと個性的な演奏。それと、ジャズの屈折した部分や影。
こういうものが希薄なのかなあ、という気もしています。自分の価値観をミュー
ジシャンに押し付けるのは酷だと思うので、こういう時はアルバムに入っている
3曲のオリジナルに目がいきます。リズミカルかつダイナミックにせまってくる
ルイス・ナッシュ作の4曲目、静かに複雑なメロディで浮遊感が漂うジョージ・
ムラーツ作の7曲目、ノリは良いけれど少々複雑な構造を持つサイラス・チェス
ナット作の10曲目。おお、この3曲はけっこう個性的ではないですか。どうせ
ならオリジナルをもっと増やしても、と思います。
 メロディのきれいな曲がちりばめられているので、その方面のピアノトリオが
好きな方にはけっこう良いかもしれません。ただ、私にはもう少し後に残る何か
が欲しい、という点では食い足りなさが残ってしまいました。


評点:★★★☆ 三つ星半

工藤 一幸
E-mail: kudukazu@mtf.biglobe.ne.jp kudo.kazuyuki@pep.ne.jp
URL: (事務所) http://www2s.biglobe.ne.jp/~kudotax/
(ジャズ) http://club.pep.ne.jp/~kudo.kazuyuki/


【委員の声】 其の三

「ラウンジ・ミッドナイト」

本作はM&I第2作。初のトリオ作。彼等の自作が1曲ずつで、7曲はスタンダードに
偏らない多彩な選曲です。ところが、後者がいけません。ゆったりした曲が多く
工夫が足りないものですから、夜更けのラウンジ・ピアノの様相を呈してきます。
快活なタイトル曲やNash作の好印象がそがれます。近頃の軟派のトリオ・ファン
向きでしょう。久々に本領を垣間見せたタイトル曲に免じて半星おまけです。 

評点:★★★ 三つ星

HAYASHI Tatsunori
email:infotec@themis.ocn.ne.jp
site :JAZZ DISC SELECTION  http://www.ai.wakwak.com/~tatsu/


【委員の声】 其の四

「期待が過剰だったか」

 ズバリ耳に優しく聴きやすいアルバムです。
快調なタイトル曲からスタートして最後10曲目の自作曲まで、全く安心して
身を委ねることが出来ます。まあこのメンバーなら当然のことでしょう。
これが未知のミュージシャンの演奏であれば、絶賛しているところです。
しかし三人ともまさに脂ののりきった売れっ子中の売れっ子揃い、こちらの
要求が高くなるのもやむを得ないでしょう。演奏自体にこれといった不満が
あるわけではないのですが、もう一つガツンとくる物が欲しいのです。
こちらに伝わってくる明瞭なコンセプトがあれば、もっと体内に染み込んで
印象深い作品になったでしょう。タイトル曲の他はメンバー自作曲の方が
生き生きとした演奏に思えたので、オリジナル主体の方が良かったかも..


評点:★★★☆ 三つ星半

(STEP 片桐俊英)
e-mail:step@awa.or.jp
HomePage:http://www.awa.or.jp/home/step/


【委員の声】 其の五

「メンバーの本気が伝わってこない」

 自己のリーダー作で既に評価と地位を確立しているにも関わらず、企画物や臨時
ユニット、プロジェクトでその評価を下げてしまうのは良くあることだが、本作の
チェスナットもそれに近いのではないか。そもそもトリオによる快作を何枚も発表
しているチェスナットがユニット名義でトリオ作をリリースすることに何の意味が
あるというのだろう。目先を変えて売り込もうとするレコード会社の浅はかな商魂
が垣間見えてほとほと嫌になる。
 とはいえ一流のメンバーによる演奏だけにクオリティ自体は低くない。BGMと
割り切ってしまえば心地よいピアノトリオだし、ナッシュのペンによる4のように
ハードな曲もあり聴かせどころがないわけではない。ただそのナッシュが大人しい
演奏に終始しているためか結果として全体的に盛り上がりに欠けるし、メンバーが
全力を出し切って本気でプレイしている感じがしないのだ。
 これならチェスナットのリーダーアルバムを聴く方がよっぽど有益だと思う。

評点:★★★ 三つ星

増間 伸一(Shinichi Masuma)
E-mail:shin@masuma.nu
WebSite:http://www.masuma.nu/


■ ご意見お待ちしております。

如何でしたか?
なにかお感じになりましたら是非貴方の声をお聞かせ下さい。 → らくがき帳