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page32 - 第 6期 第 38弾 2001年 9月 21日 発売

フライド・プライド - S/T

ビクター・エンターテインメント VICJ-60820

SHIHO (vo)
横田明紀男 (g)
パーカッション・ストリング・カルテト

2001年録音






01.Love for Sale
02.If
03Lately
04.The Man I Love
05.'Round Midnight
06.Morning Must Come
07.Louisiana Sunday Afternoon
08.'S Wonderful
09.Jampin' Jack Flash
10.Calling You
11.Paradise .

新感覚ヴォーカル&ギター・デュオというふれこみで
登場した男女二人のユニット。ヴォーカルのSHIHO
(金沢志保)は東京・荻窪生まれで子供時代はクラシ
ックのピアノを学んだ。高校時代からジャズにアプロー
チして短大卒業後にプロ・デビューした。ギターの横田
明紀男は1959年東京・蒲田生まれで中学時代にジャ
ズに目覚めその後潮先郁男に師事、すでにリーダー
作を86年にリリースしている。今までにないジャズを
求めていた二人が遭遇したのがユニット結成の発端と
思えます。


各委員のご意見は原稿の到着順で掲載しております。

なお、この企画は参加委員による共通のページとして、各委員のサイトでもご覧になれます。
ページのデザインやレイアウトは各委員のサイトで異なると思いますが、
文章の内容は全く同一のものが紹介されます。

現委員のメンバー及びリンク先はゴールド・ディスク品質向上委員会のページをご覧下さい。

【委員の声】 其の一

「痛快かつ爽快な歌もの」

記憶では何となくジャズ・ヴォーカルというものを別の目で、というか
別の耳で聴くようになったのは、ホリー・コールやハリー・コニックJr.
がシーンに登場した頃だったと思います。今回新たに登場したフライ
ド・プライドを聴いたとき、そんな記憶が蘇ってきました。従来の形式
にとらわれず自分たちのやりたいスタイルでやって、それをジャズに
してしまうには根底にかなりの技術とセンスを要すると思うのですが
その点はこの二人の場合軽くクリアしています。

ジャズファンでなくともおなじみの曲が多いのは、恐らく二人に共通し
てやってみたかった素材なんだと思いますが、ここでは何の無理もな
く素直に歌い切っていて清々しいものを感じました。曲によってストリ
ングスがやや絡みすぎでそれだけが不満として残りましたけど、こと
二人の歌と演奏に関しては何らの文句の付けようがありません。

日本からもこのようなユニットが登場したことを何となく誇りに思える
そんな作品でした。CDだけでは勿体ないので、ミュージック・フェアの
ような番組にどんどん出演して、多くの人に本当の音楽の楽しさを
伝えて欲しいなと感じました。個々の曲について書くより彼らの存在
そのものが日本の音楽シーンの未来を明るくする、その手応え充分
だということを強調したいです。一部の過剰なストリングスがなければ
五つ星!

評点:★★★★☆ 四つ星半

bb (bluesboy). 現GD委員会 委員長
E-Mail bluesboy@pluto.dti.ne.jp
Web-Site Blues PEOPLE & Jazz PEOPLE / apple Jam


【委員の声】 其の二

「上質のポップス盤に似た愉しさに溢れる快唱集」

本作はConcord第1作。パーカッション、2曲にセロ、2曲に弦楽四重奏団が加わる。
容姿も声質も妖精系だが歌唱は非凡。快活なファスト、ソウルフルなミディアム、
繊細なバラードと、何れも魅力的だ。スタンダード、ポップス、自作と多彩だが、
「何を歌っても巧い」人で、何よりも立派に彼女の歌になっている。横田の強力で
壷を押えたサポートも聞き物だ。ヴォーカル一般のファンなら聴き逃せまい。

評点:★★★★ 四つ星

HAYASHI Tatsunori
email:infotec@themis.ocn.ne.jp
site :JAZZ DISC SELECTION  http://www.ai.wakwak.com/~tatsu/


【委員の声】 其の三

「ジャズを飛び越えたユニット」

 インパクト、という言葉があります。このユニットの1曲目を聴いたとたん、
この文字が浮かびました。超絶技巧のギターと、ヴォーカルの2人組。シンプル
な編成で、けっこうスリリングな演奏を展開しています。ギターの間奏部分や、
ヴォーカルのスキャットする部分など、魅力的。この曲で決まりかな。
 曲によってパーカッションが加わったり、チェロや弦楽四重奏団が加わったり、
変わった編成の録音ですが、かえってこの編成がこのアルバムの印象を強くした、
と言えます。2−3、9−10曲目あたりはポップスや映画音楽がルーツの曲。
特にジャズにこだわっていない姿勢が今っぽくていい感じ。素直にヴォーカルと
して聴けます。これに対して4−5曲目などのジャズの曲は、ギターもけっこう
前面に出ているし、8曲目のヴォーカルのスキャットもけっこうスゴいかも。6、
11曲目はオリジナル。不思議と他の曲とマッチしています。
 アルバム全体の雰囲気から、ジャズと真っ向から勝負している、というよりは
ジャズにこだわっていない、あるいは飛び越えてしまっている、という感じです。
もちろんジャズスピリットもけっこうあるように思いますけれど。たぶん既成の
概念に捕らわれていないリスナーの方が、好感度が高いのではないかな。9曲目
のローリング・ストーンズの曲なんてノリが最高。私はこれ、好きです。10−
11曲目あたりはシットリ感も。先入観なしに聴きたいアルバム。

評点:★★★★☆ 四つ星半

工藤 一幸
E-mail: kudukazu@mtf.biglobe.ne.jp kudo.kazuyuki@pep.ne.jp
URL: (事務所) http://www2s.biglobe.ne.jp/~kudotax/
(ジャズ) http://club.pep.ne.jp/~kudo.kazuyuki/


【委員の声】 其の四

「日本ジャズの意識改革」

 まずはヴォーカルとギターのデュオというユニットの存在に驚きました。
保守派?の私でも認めざるを得ない説得力を持っています。
まったくごまかしの利かない編成で、自分たちのやりたいことを伸び伸びと
表現しているではないですか。それはジャケットに象徴されるように従来の
ジャズという枠を軽々と乗り越えてしまったようです。
先頃Verveからデビューしたakikoとかこのフライド・プライドを
聴いていると、アメリカに追いつこうと必死に努力していた世代の音楽とは
まるっきり出発点が違うのだと思わざるを得ません。
 これからはテレビ番組等にも引っ張り出されることでしょうが、一般の
音楽ファンがジャズに興味を持つきっかけとなってくれれば幸いです。

評点:★★☆★ 四つ星

(STEP 片桐俊英)
e-mail:step@awa.or.jp
HomePage:http://www.awa.or.jp/home/step/


【委員の声】 其の五

「新世代の邦人デュオ」

 今回は私が大の苦手とするジャズボーカル。女性ボーカルとギタリストによる
日本人デュオだが、良いのか悪いのかさっぱりわからない。ボーカルはハスキー
ボイスが個性的だ。ギターはアコースティックでしっとりとした印象を与える。
ただどの曲を聴いてもあんまり面白くないし、せっかくスティービー・ワンダー
やローリング・ストーンズの曲を取り上げているのに、原曲の良さが活かされて
いるとは思えない。8などで聴かせるスキャットも、先達の物まねの域を脱して
いないという印象が残るし、後ろでチャカポコと鳴るパーカッションははっきり
言って耳障りでさえある。スローテンポでじっくりと仕上げたナンバーのほうが
出来が良く、思い切って全編そんな雰囲気でまとめてしまったほうがこれからの
季節にピッタリのアルバムになったのでは、と思う。
 いずれにしても初物好きのジャズボーカルファンならともかく、私にとっては
3000円も出して買う価値はないアルバムであった。

評点:★★★ 三つ星

増間 伸一(Shinichi Masuma)
E-mail:shin@masuma.nu
WebSite:http://www.masuma.nu/


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