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page33 - 第 6期 第 34弾 2001年 7月 25日 発売

ワン・フォー・オール / 情事の終わり

ヴィーナス・レコード TKCV-35095

ジム・ロトンディ (tp)
スティーヴ・デイヴィス(tb)
エリック・アレグザンダー(ts)
デイヴィッド・ヘイゼルタイン(p)
ピーター・ワシントン(b)
ジョー・ファンズワース(ds)

2001年3月12日 NY録音



01.The End of Love Affair
02.Stolen Moments
03.Corcovado
04.How are You?
05.Shinjuku Walts
06.Skylark
07.The Eyes Have it
08.Street of Dreams

97年のデビュー作以来今回が5作目になる
ワン・フォー・オール。普段は個々に活動を
している6人が時にこうして集まってはひとつ
のユニットとしてレコーディングをする。恐らく
このバンドでの活動は彼ら自身にとって一種
の軸というものを再認識する場所なんだと思
います。オリジナルもスタンダードも非常に
バピッシュなスタイルで演奏され、そこに如
何に自分の色を落とし込むかを競っている
ように感じ取れます。



各委員のご意見は原稿の到着順で掲載しております。

なお、この企画は参加委員による共通のページとして、各委員のサイトでもご覧になれます。
ページのデザインやレイアウトは各委員のサイトで異なると思いますが、
文章の内容は全く同一のものが紹介されます。

現委員のメンバー及びリンク先はゴールド・ディスク品質向上委員会のページをご覧下さい。

【委員の声】 其の一

「ジャズ・スピリットの集合体」

三菅のハードバップ、それだけでゾクゾクしてしまう私にとって
誰がリーダーでもないこの6人の織りなす音の塊が、非常に心
地よくシャワーのように降り注いできます。50年代のジャズその
ままのバピッシュなスタイルの中に、今の時代を生きるメンバー
のセンスが光る、それが新しいハードバップの醍醐味のひとつ
でもあります。

流して聴いているとどれがオリジナルなのか区別が付かないくら
い、いずれの曲も同じ時代の香りがする佳曲ですが、楽想の良さ
で特に#5、#7が印象的です。#5はアレクザンダーの曲で、テーマ
部分で人の心をくすぐるハーモニーとそれに続くピーター・ワシント
ンのベースソロが素晴らしいです。#7は身体が横揺れしてくるよう
なシャッフルでテーマ部分もファンタスティック、ちょっとしたアクセ
ントを挟んで、まるで「モーニン」と「ブルースマーチ」が合体したか
のような印象を残します。

スタンダードの方も実に良く考えて構成してあって、いずれも素晴
らしいのですが、個人的に #3が特に気に入りました。何でもない
アレグザンダーのソロが妙に心に残ります。

大上段から「GD」と振りかざすのは気恥ずかしいですが、永遠不滅
かつ不変のジャズ・スピリットに改めて触れた気分でとてもHappyに
なれました。

評点:★★★★★ 五つ星

bb (bluesboy). 現GD委員会 委員長
E-Mail bluesboy@pluto.dti.ne.jp
Web-Site Blues PEOPLE & Jazz PEOPLE / apple Jam


【委員の声】 其の二

「ゴリゴリとしたジャズらしい音」

1曲目の大きい音のドラムスの出だしで、おっと思わせる部分があったりして
ワクワクさせてくれます。個人的に言うならば、そのゴリゴリしたジャズの音を
出すヴィーナスはピアノ・トリオかワン・ホーンのアルバムの方が良いのでは。
もちろんここでの3管編成の演奏が悪いわけではありませんけれど。オリジナル
も全8曲中3曲あって、自然な感じでスタンダードなどと並んでいます。4回、
5回と聴き返しているうちにだんだん気に入ってきました。
 元気印で飛び出してくる1曲目、テーマのハーモニーが印象的で渋めな2曲目、
スマートなジョビン作の3曲目、現代的なラテンタッチの雰囲気のオリジナルの
4曲目、これまたゴリゴリくる3拍子(8分の6拍子?)のオリジナルの5曲目、
しっとりと入って4ビートに展開する6曲目、ファンキーなオリジナルの7曲目、
メロディアスに歌っている8曲目。ソロについても聴きどころは比較的多い気が
します。
 いかにも、これがジャズだぜ(3管のハーモニーは現代的ですが)という感じ
なのですが、こういう熱いジャズは私との相性があまり良くなかったりします。
まあ、そこがねらいだったと言われれば、それまでなのですが。きっと大部分の
方は気に入ると思うので、聴いてみても損はないと思います。
 
評点:★★★★ 四つ星

工藤 一幸
E-mail: kudukazu@mtf.biglobe.ne.jp kudo.kazuyuki@pep.ne.jp
URL: (事務所) http://www2s.biglobe.ne.jp/~kudotax/
(ジャズ) http://club.pep.ne.jp/~kudo.kazuyuki/


【委員の声】 其の三

「カチッとした現代ハード・バップ」

たまたま先月に続いてエリック・アレキサンダーが参加しています。
中堅クラスの気心が知れた仲間だけあって、ジュニア・マンス盤より
伸び伸びとしたプレイと感じました。ブッカー・リトルを彷彿とさせる
ジム・ロトンディのトランペット、今や貫禄すら漂うスティーブ・デイビス
のトロンボーンと、三人の管楽器はまとまったアンサンブルを聴かせ
ます。リズムも売れっ子のピーター・ワシントンをはじめ、派手さを
抑えた堅実なプレイで応えています。
 あえて物足りなさを感じるのは、もう一つ爆発力に欠ける点です。
これはリーダーのいない集団ゆえのことかも知れません。
またワシントン以外は全員が白人というメンバー構成からも当然ですが、
個人的にはもう少し「黒っぽさ」があればもっと良かったと思います。


評点:★★★★ 四つ星

(STEP 片桐俊英)
e-mail:step@awa.or.jp
HomePage:http://www.awa.or.jp/home/step/


【委員の声】 其の四

「覇気と予定調和の相克」

"One For All"は Jim Rotondi(tp)、Steve Davis(tb)、Eric Alexander(ts)、David
Hazeltine(p)、Peter Washington(b)、Joe Farnsworth(ds)。 発起人はFarnsworth。
Ericファンの(だった?)私が初体験とは怠慢。なあに、この面々だ。見当はつく。
シャープでタイトでソリッド、凡そ脂っ気のない演奏だろう。リーダー不在なら
サウンドの独自性は薄れ、主張と統一感は弱まるだろう。とまあ、こうなる。

本作は第5作。スタンダード4曲、ジャズマン作1曲、メンバーズ・オリジナル3曲。
見当違いでも見当通りでもあった。覇気漲る快演と予定調和的な好演が半ばする。
タイトル曲とオリジナルは快演。Rotondi が珍しくファイトを剥き出しにすれば、
近頃冴えないEricも豪快に迫る。後は、選曲もあるが、展開が読め刺激に乏しい。
理屈抜きに聴けば楽しからずや。本質は中腹の演奏を先端と喧伝しては困る。

評点:★★★★ 四つ星

HAYASHI Tatsunori
email:infotec@themis.ocn.ne.jp
site :JAZZ DISC SELECTION  http://www.ai.wakwak.com/~tatsu/


【委員の声】 其の五

「現代ハードバップファン向けの作品」

ノンリーダーのユニットだがメンバーを見ても個人的には殆ど興味のない人達
ばかり。音は快活なハードバップでありこの手のストレートアヘッドなジャズが
好きな人なら十分に楽しめる内容だろう。スタンダード、ボサノバ、メンバーの
オリジナルまで取り上げているがその中ではヘイゼルタインのオリジナルである
4がずば抜けて良い。また7のハーモニーはゴルソン時代のJMを彷彿とさせる。
その他の曲も皆平均点以上の出来だ。プレーヤーではやはりエリアレの存在感が
他を圧倒しているように感じた。
 ただ言い方を変えれば何の変哲も目新しさも無いハードバップという事であり
この程度のアルバムであれば他にも掃いて捨てるほどあるだろう。わざわざこの
アルバムを買わずとも個々のリーダー作や過去の参加作品を聴いていればそれで
済む気がしてしまう。あくまで現代ハードバップファン向けの作品だと思う。

評点:★★★☆ 三つ星半

増間 伸一(Shinichi Masuma)
E-mail:shin@masuma.nu
WebSite:http://www.masuma.nu/


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