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page32 - 第 6期 第 32弾 2001年 6月 20日 発売

ジュニア・マンス・トリオ+1 / イエスタデイズ

M&Iカンパニー MYCJ-30102

ジュニア・マンス (p)
チップ・ジャクソン (b)
ジャッキー・ウイリアムス(ds)
エリック・アレグザンダー(ts)

2000年12月NY録音





01.Willow Weep For Me
02.Yesterdays
03.Geogia on My Mind
04.C Jam Blues
05.Summertime
06.Something
07.Cry Me a River
08.Blue Monk
09.What are You Doing The Rest of Your Life

1928年イリノイ州生まれ。メインストリーム
・シーンではジーン・アモンズ、レスター・ヤ
ング、キャノンボール・アダレイ等のバンド
で活躍するが、主にシカゴ周辺のブルース
マンとの共演でも知られる。何を弾いても
マンス節になるという強烈な個性がファンの
心を捉え、今もってシーンの第一線に君臨し
ている。良い意味でアーティストというよりは
芸人というべき、芸風のはっきりしたミュージ
シャン。大変に貴重な存在です。


注)プロフィールはSJ誌2001年7月号を参考にしました。


各委員のご意見は原稿の到着順で掲載しております。

なお、この企画は参加委員による共通のページとして、各委員のサイトでもご覧になれます。
ページのデザインやレイアウトは各委員のサイトで異なると思いますが、
文章の内容は全く同一のものが紹介されます。

現委員のメンバー及びリンク先はゴールド・ディスク品質向上委員会のページをご覧下さい。

【委員の声】 其の一

「トリオだけで聴きたかった」

ブルースが飯より好きな私はジャズとブルースとソウルの間に
明快な線引きを持っていません。そういった区別をしようという
意識があると、かえって邪魔になるだけだということに気付いた
のは20代前半の頃、時代にして70年代中期です。音楽の中に
溶け込んでるスピリチュアルなものを魂から魂への伝言と思っ
て楽しめるようになったのはそれ以来です。

逆に言うとそういう気持ちでプレイしている人と、そうでない人の
区別は音を聴くだけで直ぐ明らかになりますが、このアルバム
で言えばマンスはすべての楽曲をマンス・ミュージックの素材と
して心の赴くまま演奏しているのに対し、アレグザンダーは自ら
がジャズマンという意識下にあるせいか、せっかくのマンスとの
共演に大事なことを学びそこなった感じを受けます。

アルバムの最大のハイライトはトリオでやってる#2.Yesterdays、
よくもまぁ今更この曲を、と思っては本質を見落とします。マンス
はこれを自分のオリジナルのつもりで演じた感がする程濃厚に
弾き倒してくれました。#4.C Jam Bluesは今まで誰もやらなかっ
たシャッフルに近い三連8ビートでの解釈が非常に斬新かつ印
象的です。これだけチープな演奏を堂々と今出来るのはマンスを
置いて他に居ないでしょう。共演が成功した#7.Cry Me a River
も曲自体がアレグザンダーに合ってるせいか、まるで彼のリーダ
ー・アルバムのような瑞々しさを感じました。ここでは全員がベス
トのプレイを聴かせます。

結論は、マンスにアレグザンダーは相性が良くない。

評点:★★★★

bb (bluesboy). 現GD委員会 委員長
E-Mail bluesboy@pluto.dti.ne.jp
Web-Site Blues PEOPLE & Jazz PEOPLE / apple Jam


【委員の声】 其の二

「ブルース・フィーリングのあふれる演奏」

実はジュニア・マンスをちゃんと聴くのははじめての経験。どちらかと言うと
神経質でどこか屈折しているジャズが好きな私にとっては、こういうアルバムの
ことを書くのは苦手でもあります。何で1曲目「柳よ泣いておくれ」でこれだけ
ブルースフィーリングがあるピアノの伴奏やソロになってしまうのか、不思議。
もともとブルースの得意なピアニストだそうですが、じゃあ、そのままイケイケ
で1枚終えてしまうかと思うと、さにあらず。例えば2曲目は渋めのバラード。
それでいて音のぬくもりが伝わってきます。ビートルズの6曲目もご愛嬌ですが、
なかなかいい味。
 やっぱり彼の本領発揮と思うのが、4、8曲目のような曲。8曲目は「ブルー・
モンク」とは言いながら、テーマ以外は彼のマイペース。5曲目「サマータイム」
もけっこう濃いピアノ。そして、1、3、5、7、9曲目にはテナーサックスの
エリック・アレキサンダーが参加。いつものパワー全開ではなく控えめな演奏。
特に7、9曲目は哀愁度が高いです。
 100パーセントピュアモルトでは濃すぎるので、サックスやプロデュースで
ブレンドして日本人好みの味に仕立て上げたサウンド、と言えばいいのかしら。
そんなわけで、聴きやすいアルバムには仕上がっていると思います。

評点:★★★☆

工藤 一幸
E-mail: kudukazu@mtf.biglobe.ne.jp kudo.kazuyuki@pep.ne.jp
URL: (事務所) http://www2s.biglobe.ne.jp/~kudotax/
(ジャズ) http://club.pep.ne.jp/~kudo.kazuyuki/


【委員の声】 其の三

「個性的なら傑作なのか?」

本作はM&I第1作。Chip Jackson(b)-Jackie Williams(ds)とのトリオで4曲、Eric
Alexander(ts)を加えて5曲。日本制作、思わず顔を赤らめる大スタンダード揃い。
紛れもないタッチとフィーリング。ただ、それをもって代表作だとか傑作だとか
吹聴するのはいかがか。この手のもののファンだけが悦に入っていればいい類だ。
Jacksonはまずまず、Williamsはいかにも芸がない。Ericは+1の域に止まる。

評点:★★★

HAYASHI Tatsunori
email:tatsu@ai.wakwak.com
site :JAZZ DISC SELECTION  http://www.ai.wakwak.com/~tatsu/


【委員の声】 其の四

「くつろぎのブルース感覚」

いかにも木全氏の企画といったお馴染みのナンバーが並び、やや警戒感を
持ちながら聴き始めました。有名盤「ジュニア」の雰囲気と大きく変わるはず
もないのですが、奇数曲に参加のエリック・アレキサンダーがスパイスとなり
楽しく聴き進めました。もちろん斬新さなどを期待しても仕方がないのですが
思いの外アレキサンダーがおとなしいのには驚きました。マンスに合わせたの
でしょうが、個人的にはもう少し豪快なブロウを期待していました。
このアルバムでのお気に入りナンバーは、サックス入りでは渋いムードが漂う
「クライ・ミー・ア・リヴァー」、トリオでは軽快な「ブルー・モンク」。
総じてスピーカーと対決して聴くのではなく、お酒でも飲みながら愉しみたい
そんな作品だと思います。


評点:★★★☆

(STEP 片桐俊英)
e-mail:step@awa.or.jp
HomePage:http://www.awa.or.jp/home/step/


【委員の声】 其の五

「レイドバックしたマンスの世界」

個人的にはジュニア・マンスが結構好きで、OJCなどで彼のアルバムが復刻される
と思わず買ってしまう。だがマンス自身は通好みのプレイヤーであり今回のGD選出
にはかなり無理があるように思う。本作もアルバム冒頭から彼の代名詞ともいえる
ソウルフル、ブルージーといった雰囲気のプレイが展開され、昔も今も変わらない
自分のスタイルを貫き通している。だから今更GDといわれてもピンとこないのだ。
有名曲のオンパレードをマンス流に料理しており、親しみやすい内容ではあるが、
マンスのオリジナル曲が全く無いという点には企画の圧力を感じる。ゲスト扱いの
エリアレも独特の世界を壊さぬようプレイしているようだが彼の本領が発揮される
のはもっとバリバリ吹きまくるセッションであり、ミスキャストの感は免れない。
どうせならエリアレ抜きでピアノトリオアルバムにした方が良かったのではないか。
それでは売れないのかもしれないが...
 昔からのマンスファン、もしくはレイドバックした雰囲気が好きな方なら聴いて
みても良いと思うが、今更GDといって奉るような作品でもないだろう。


評点:★★★☆

増間 伸一(Shinichi Masuma)
E-mail:shin@masuma.nu
WebSite:http://www.masuma.nu/


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