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page26 - 第 6期 第 19弾 2000年 11月 22日 発売

ヨーロピアン・ジャズ・トリオ / 哀秋のヨーロッパ

M & I カンパニー MYCJ-30065

マーク・ヴァン・ローン(p)
フランス・ホーヴァン (b)
ロイ・ダッカス(ds)

ゲスト:ジェシ・ヴァンルーラー (g)

2000年 9月 オランダ録音



01.Europa
02.Zingaro
03.Maria(West Side Story)
04.Thank you for The Music
05.Concierto De Aranjuez
06.Both Side Now
07.Phase Dance
08.Tell Him
09.Blackbird
10.Tears in Heaven
11.I Say a Little Prayer
12.What a Wonderful World

とことんお洒落でなおかつ気品も漂わせた
ライトなジャズ、そんな音を美麗にパッケー
ジングして市場に投入すると売れるのでは?
まさにそんなコンセプトが伺えそうなグルー
プですが、色んなジャズがあって良いと思う
のと、実際にこういった音が幅広く求められ
ていることも確かです。途中でピアノがメン
バー・チェンジしながらもかれこれ16年間も
活動をしているという実績がそれを裏付けて
いる気がします。


各委員のご意見は原稿の到着順で掲載しております。

なお、この企画は参加委員による共通のページとして、各委員のサイトでもご覧になれます。
ページのデザインやレイアウトは各委員のサイトで異なると思いますが、
文章の内容は全く同一のものが紹介されます。

現委員のメンバー及びリンク先はゴールド・ディスク品質向上委員会のページをご覧下さい。

【委員の声】 其の一

「サラダ感覚は生活の中の潤い」

いきなり「哀秋のヨーロッパ」を頭に持ってくる辺り、関係者の確信犯的な
制作意図が伝わってきて笑っちゃうしかありませんでした。これでもか!
というくらいスイートにテーマをなぞるジェシのギターにはサンタナの原曲
を相当聴いたに違いないと思わせるタイム感が滲み出ています。一方、
クラプトンの「ティアーズ・イン・ヘヴン」の場合は元が歌モノだけに情感を
出来るだけ込めようと努力してる部分が見えました。本体のトリオだけで
演奏している8曲で最も光ってるなと感じたのは#2のジョビンのナンバー。
哀秋味たっぷりのメロディをややクールに弾くマークのピアノが良い味わい
です。#11なんかはレス・マッキャンで聴きたいようなバカラック・ナンバー
ですが、彼らの味付けはちょっと淡泊過ぎるかなと感じます。ラストの曲は
明らかにD・ジョーダンの「フライト・トゥ・デンマーク」の手法を取り込んで
演奏したようで、ここまで成りきってるとかえって拍手したくなりました。

全体に、もうひとひねり欲しいなと思わせるものの、あっさりしてるこの
サラダ感覚がこのグループのキャラクターなのかも知れません。

評点:★★★☆

bb (bluesboy).
E-Mail bluesboy@pluto.dti.ne.jp
Web Site 【Blues PEOPLE & Jazz PEOPLE】 / 【apple Jam


【委員の声】 其の二

「ジャズの魅力に乏しい没個性盤」

またもや国内制作によるガチガチの企画モノ登場。ヨーロピアン・ジャズ・トリオ
といえばデビュー作を所有しているがどんな内容かほとんど思い出せない。それだけ
個性が希薄だということだろう。それは本作でも変わっていないようだ。聴きやすい
といえばイメージは良いが、要するに毒にも薬にもならない、無色透明で無味無臭の
ピアノトリオである。ルーラーをゲストに迎えてアクセントをつけようとしているが
ルーラー自身もさほど個性が強くないギタリストなので大した効果は上がっていない。
単なる話題作り程度だろう。クラブやおしゃれなバーでひっそりと流れてる、或いは
耳障りにならないようなBGMとしては最適かもしれないが、ジャズとしてのスリルや
彼らならではという独自の解釈のようなものはほとんど聴き取ることができない。
 一聴すると美しく馴染み易いアルバムであるが、結局この作品の魅力の多くは良く
知られた原曲の素晴らしさに負うものであり、誰がやっても一緒なのではないか。売上
第一という国内制作盤の悪い部分が露骨に表れた凡作だと思う。


評点:★★☆

増間 伸一(Shinichi Masuma)
E-mail:shin@masuma.nu
WebSite:http://www.masuma.nu/


【委員の声】 其の三

「ポップス的なメロディを感じるアルバム」

さて、1曲目をかけると、「おっ、哀愁のヨーロッパじゃん。」と、思わず頬が
ニコニコと。メロディが印象に残る曲が多く、これはむしろジャズ的と言うより
も、ポップス的。ディープなジャズファン泣かせのアルバムかも。むしろジャズ
をあまり聴かない女性といっしょに聴くか、あるいはこのCDをプレゼントする、
など、そちら方面の需要が多そう。メロディという点では泣かせますが。
 それではそんなに大甘なアルバムかと言うと、そういう訳でもなさそうで、1、
5、7、10曲目にゲストで参加するジェシ・ヴァン・ルーラーも魅力的。ただ、
5曲目の「アランフェス協奏曲」は昔から他で名演も多いので、少々荷が重いの
ではないかとの印象も。どの曲も良いとは思いますが、何回聴いても聴いている
うちに他の方に興味が移ってしまい、がさごそやっているうちに、全曲終わって
しまったこともしばしば。
 このトリオは10年以上続いていて、ピアノが交代しながらもアルバムを出し
続けているということは、やはりこういうジャズに対する需要はあるのだな、と
思えます。ジャズからの曲はほとんどないのですが、7曲目のライル・メイズと
パット・メセニーの曲があるのは嬉しいところ。残念なのは私の中ではBGM化
してしまうので、綺麗な印象しか残らないところです。個人的な好みの問題です
けれど、もう少しアクが強くても良いのかな、という気はします。皮肉にもBGM
としてはへヴィー・ローテーションとなってしまいました。

評点:★★★☆

工藤 一幸
E-mail: kudukazu@mtf.biglobe.ne.jp kudo.kazuyuki@pep.ne.jp
URL: (事務所) http://www2s.biglobe.ne.jp/~kudotax/
(ジャズ) http://club.pep.ne.jp/~kudo.kazuyuki/


【委員の声】 其の四

「選曲と美しさは申し分なしだが」

「哀愁のヨーロッパ」「青春の光と影」「小さな願い」など、個人的にも大好き
な名曲ばかりで録音も素晴らしい。特にピアノの音はクリスタルな響きが最高に
美しく、もう夢の世界へでも入ったような気持ちよさを感じました。
ただどの曲もあまりに有名でメロディーも美しいが故に、大胆なアレンジなどは望め
ないのでしょう。JAZZに不可欠なスリルという要素が全く感じられません。
ことに冒頭のタイトル曲などギターがサンタナのまんまといったフレーズを奏で
るので、オリジナルの官能的なサウンドを無性に聴きたくなりました。
他の曲でもジェシ・ヴァン・ルーラーは抑制されたプレイに徹していて、全体の
ムードを壊さないように意識しているのでしょうが、やや物足りなさを覚えました。
読書やデートのお供には最高なんでしょうが...

評点:★★★☆

(STEP 片桐俊英) 現GD委員会 委員長
e-mail:step@awa.or.jp
HomePage:http://www.awa.or.jp/home/step/)


【委員の声】 其の五

「初心者注意のお気楽盤」

本作はM&I第3作。4曲にJesse Van Rullerが参加。ジャズ曲と呼べるのは1曲だけ、
持ち味に沿った多彩な選曲のジャジー&クラシカル・ポップス集。しっとり優美、
肩凝らずに聴けるお気楽盤だ。ジャズ・トリオで聴く青春ポップス・シリーズと
変わりないとも思えるが。Rullerが一皮むけた。半星プラス。分別あるファンが
グラス片手に悦に入るのは構わないが、この辺りから入ると道は険しくなる。

評点:★★★☆

HAYASHI Tatsunori
email:tatsu@ai.wakwak.com
site :JAZZ DISC SELECTION  http://www.ai.wakwak.com/~tatsu/


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