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page25 - 第 6期 第 17弾 2000年 10月 25日 発売

ウォレス・ルーニー / ノー・ルーム・フォー・アーギュメント

ユニバーサル・クラシックス&ジャズ UCCJ-3006

ウォレス・ルーニー(tp)
スティーヴ・ホール,アントワーヌ・ルーニー (ts,ss,bcl)
ジェリ・アレン,アダム・ホルツマン,(p,syn)
バスター・ウイリアムス(b)
レニー・ホワイト(ds)
バル"ゲルダー"ジーンティ(samples,celectronia)

2000年 ニューイングランド、パワーステーションにて録音
プロデューサー:ウォレス・ルーニー
エグゼクティヴ・プロデューサー:チック・コリア,ロン・モス

01.No Room For Augument
02.Homage&Acknowledgement (Love Supreme/Filles De Kilimanjaro)
03.Strate No Nothing
04.Metropolis
05.Christina
06.Neubeungs
07.Cygroove
08.He Who Knows
09.Virtual Chocolate Cherry
10.Midnight Blue
11.Portia

1960年5月25日、フィラデルフィア生まれ。
高校時代からジャズを学びハワード大を経て
バークリーに学ぶ。在学中からジャズ・メッセ
ンジャーズに参加。新生ブルーノート、ワーナ
ーブラザーズからアルバムを出し2000年にス
トレッチに移籍。マイルス自身からルーニーを
後継者として愛用のペットを譲られた話は有名。

注) 以上の経歴はSJ誌2000年10月号の記事からの抜粋です。


各委員のご意見は原稿の到着順で掲載しております。

なお、この企画は参加委員による共通のページとして、各委員のサイトでもご覧になれます。
ページのデザインやレイアウトは各委員のサイトで異なると思いますが、
文章の内容は全く同一のものが紹介されます。

現委員のメンバー及びリンク先はゴールド・ディスク品質向上委員会のページをご覧下さい。

【委員の声】 其の一

「ミレニアム版ビッチェズ・ブリューなのか」

マイルスの全時代を大好きな私はルーニーをどう自分の中で
位置づけるかがまず難題のひとつでした。今回のアルバムも
至る所でマイルスがまだ生きてたのかみたいな、瓜二つの
音がぽんぽん飛び出します。しかも音が似てるだけでなくフ
レーズの組み立てまでが生き写しで、どうしてもルーニーの
顔が見えてこないのです。69年当時レニー・ホワイトやチック・
コリアとやってた頃のマイルスの未発表テイク集かと思ってし
まいそうな曲から「死刑台のエレベーター」を思わせる曲まで
もしかしたらルーニー自身、マイルスになりきって吹いている
のかも知れません。確信犯的にやってるのだとしたらそれは
大成功だと思うのですが、プロのミュージシャンが例えそれが
偉大な存在であってもその生まれ変わりを演じることに疑問
を感じてしまいました。アルバムの一曲だけそういうのがある
とか、そいうのなら気持ちも判るのですが。

さらにそれらの曲がマイルス程には惹き付けられる彩や華に
はちょっと乏しい感じがするのが余計寂しさを助長します。
次作ではルーニー自身の顔を見せて欲しいと願うばかりです。

評点:★★★

bb (bluesboy).
E-Mail bluesboy@pluto.dti.ne.jp
Web Site 【Blues PEOPLE & Jazz PEOPLE】 / 【Store apple Jam


【委員の声】 其の二

「遂に来た!」

デビュー当時からウォレスの音楽を追いかけてきた方ならば、
この感覚がおわかりいただけると思う。これまでのリーダー作も新主流派路線を
ベースとした優れた作品ばかりであったが、ここ数作は息苦しさや中途半端さを
感じたのも事実だ。しかしメジャーレーベルの足枷が外れた本作品ではウォレス
自身が本当にやりたい音楽を一気に炸裂させている。70年代マイルスの音楽を
踏襲しながら、モーダルな60年代(4)、リリカルな50年代(5)、コンテンポラリー
な80年代(9)までフォローする。マイルスという歴史の上を軽やかに行き来する
ウォレスが実に活き活きとしている。
 恐らくこのアルバムを聴いて"マイルスのコピー"或いは"マイルスの物まね"と
評する人もいるだろう。しかし単なるコピーや物まねのレベルではここまで充実
したアルバムにはならないはずだ。これはマイルスの意志を受け継いだウォレス
自身の音楽として立派に成立していると思う。共演者たちもそんなウォレスに
力の限りのプレイで応えている。
 無論、本作が完全無欠のアルバムというつもりはない。70分を超える長丁場の
中、ダレる部分もある。しかしそんなネガティブな要素を吹き飛ばす程のパワーを
持ったアルバムなのだ。
 本音は5星だが、今後更なる傑作を生み出すことを期待して半星減じておく。
ウォレス・ルーニーという存在を再認識させるに十分な記念碑的力作である。

評点:★★★★☆

増間 伸一(Shinichi Masuma)
E-mail:shin@masuma.nu
WebSite:http://www.masuma.nu/


【委員の声】 其の三

「それでも昔懐かしいアルバムか」

実は家族でこのアルバムを聴く機会があって、2曲目の、ウォレス・ルーニー
がギリギリのテンションのところで発する第一声を、うちの奥さんは、「この人、
トランペット音痴?」ですと。大爆笑でした。個々のミュージシャンのソロだけ
を聴くと、けっこう皆鋭いものを持っていて、文句なしかな、とは思います。
 完全なラップの曲ではないにしても、1曲目は今ふうのサウンドなので期待は
高まります。2曲目は、一発もののリズムの上に複雑なハーモニーがかぶさって
いい感じ。3曲目も自由度の高い演奏。ただセルフ・プロデュースということも
あってか、4−5曲目は時代がさかのぼるので焦点が絞り込めず、余計だったん
ではないかとの印象。その曲のみ聴くと良いのですが。6曲目は複雑なテーマで
すが、変化に富んでいてノッています。ドコドコいうビートが心地よい7曲目、
リズミカルで進行の印象的な9曲目。8曲目も渋いところを見せてくれます。
 奥の方でドコドコと鳴っているドラムスを前面に出して、どうだ、ミレニアム
ファンクで勝負するぜ、という部分も欲しいかなあと。それでも類似のサウンド
を演出しているアルバムが今の時代あまりないので、そういう意味では貴重かも。
本来ラストの10曲目が美しく響いてきます。こういう曲はなかなかいいです。
11曲目のボーナス・トラックは、ラストゆえ少々バランスを崩しているような
気も。
 どうだ、マイルスという言葉を使わないで書いてみました、と思ったらここで
出てきてしまった。というくらい影響はあるんだろうな、やっぱり。マイルスも
ウォレスもひと通り聴いてきましたが、そういう知識をなくしたところで聴こう
と思っても、できなかったところが反省点。全体としてはもう少し焦点を絞った
方が良かったと思います。

評点:★★★★

工藤 一幸
E-mail: kudukazu@mtf.biglobe.ne.jp kudo.kazuyuki@pep.ne.jp
URL: (事務所) http://www2s.biglobe.ne.jp/~kudotax/
(ジャズ) http://club.pep.ne.jp/~kudo.kazuyuki/


【委員の声】 其の四

「大いなる意欲作ではあるが...」

電化マイルスや新主流派が苦手な私にとって、かなり手強い作品でした。
まずラップ風の呪文?に馴染めず、緊張感を強いる曲が続く展開に思わず
身構えてしまいました。4曲目でようやくオーソドックスな曲想に出会い、
だんだんと体内に音楽が入り込んできました。6はオルガンやバスクラが
実に効果的に入り、多彩な音色で飽きさせません。後半はメロディーの
美しい曲ばかりで、トランペットのリリカルな表現が聴けました。
ただ77分という長さに聴き手の集中力が持続しない面もありそうです。
曲単位ではそれぞれかなり魅力的なのですが、全体を通して聴いたときの
印象が今ひとつなのは、その辺に問題があるのではないでしょうか。

評点:★★★☆

(STEP 片桐俊英) 現GD委員会 委員長
e-mail:step@awa.or.jp
HomePage:http://www.awa.or.jp/home/step/)


【委員の声】 其の五

「四十にして立つも惑いあり」

本作はStretch第1作。ついにエレクトリック路線。これまでの路線ならともかく、
クリエイターとしての確たるヴィジョンなくして出来やしない。四十にして立つ、
結構ではないかと思いきや、後期黄金のクインテットを想わせる演奏が混在する。
志が高いのか低いのか解らん。これだから誰かに引き寄せて語られることになる。
尤も、前者にしても斬新度は低く、これを21世紀のジャズといわれても困る。

評点:★★★3/4

HAYASHI Tatsunori
email:tatsu@ai.wakwak.com
site :JAZZ DISC SELECTION  http://www.ai.wakwak.com/~tatsu/


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