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page23 - 第 6期 第 15弾 2000年 9月 1日 発売

チャールス・ロイド / ザ・ウォーター・イズ・ワイド

ユニバーサル クラシックス&ジャズ(ECM原盤) UCCE-1001

チャールス・ロイド (ts)
ブラッド・メルドー (p)
ジョン・アバークロンビー (g)
ラリー・グレナディア (b)
ビリー・ヒギンズ (ds)
ダレク・オレス (b) on 12

1999年12月 ロス・アンジェルス、チェロ・スタジオにて録音

プリデューサー:チャールス・ロイド & ドロシー・ダー

01.Georgia
02.The Water is Wide
03.Black Butterfly
04.Ballade and Allegro
05.Figure in Blue
06.Lotus Blossom
07.The MOnk and The Mermaid
08.Song of Her
09.Lady Day
10.Heaven
11.There is a Balm in Gilead
12.Prayer

1938年テネシー州メンフィス生まれ。
10代でサックスを始め、56年から
南カリフォルニア大で作曲を学び
卒業後はしばらく教職に就き、その後
61年にチコ・ハミルトンのバンドに入る。

64〜65年にはキャノン・ボール・アダレイの
バンドに移籍、66年に自己のカルテットを
結成。キース・ジャレットを擁した「フォレスト
フラワー」の大ヒットでスターの座を掴む。

69年にいったん活動を縮小するも、80年代末
からはECMに移り第一線で活躍中。


注) 以上の経歴はSJ誌2000年9月号の記事からの抜粋です。


各委員のご意見は原稿の到着順で掲載しております。

なお、この企画は参加委員による共通のページとして、各委員のサイトでもご覧になれます。
ページのデザインやレイアウトは各委員のサイトで異なると思いますが、
文章の内容は全く同一のものが紹介されます。

現委員のメンバー及びリンク先はゴールド・ディスク品質向上委員会のページをご覧下さい。

【委員の声】 其の一

「入魂のバラード集」

ロイドの持つ仄かにスピリチュアルな面が私は好きなのですが
今回のバラード集でもやはりそれを感じました。
最初は無意識にコルトレーンの「バラード」と比較するような聴き方を
してしまったのですが、何度か聴くうちにロイドの向いている方向が
違うことに気が付きました。トレーンの場合は内向きというか自らの
心の深淵に向かって沈み込んでいく感じですがロイドの場合は
あくまで曲のもつ艶やかさやエンターテインメント性を残した演奏
になっているような気がしました。

この作品でのメルドーは全面的にロイドに付き従うと決めたようで
対話しながら曲を進めています。それは他の共演者にも共通した
スタンスでヒギンズのドラムもかなり大人しい。アバークロンビー
も楽想を大切にしたサポートぶりを見せています。但し#11では
ヒギンズの奔放なプレイがロイドを鼓舞し、#12ではアバークロンビー
が水先案内人を引き受けている感じの展開で印象に残りました。

かなり気に入った1枚となりましたが、とはいえトレーンの
「バラード」の存在が余りにも大きい気がして評点は四つ星。
今後トレーンの「バラード」を超えるのは一体誰なのでしょう。

評点:★★★★

bb (bluesboy).
E-Mail bluesboy@pluto.dti.ne.jp
Web Site 【Blues PEOPLE & Jazz PEOPLE】 / 【Store apple Jam


【委員の声】 其の二

「暖かみのあるECMサウンド」

ECMというとオリジナルが中心で静かで研ぎ澄まされていて、冷たい感じの
するサウンドが一般的なイメージなのでしょうけれど、このアルバムに関しては
ほんのりと暖かく、包まれるようなサウンドに聞こえます。チャールス・ロイド
のオリジナルは12曲中わずかに5曲で、トラディショナルやエリントンの曲も
あったりします。暖かく感じるロイドのサックスが奏でる1−3曲目の展開が、
印象的。全体を通してロイドのサックスが思索的かつ禁欲的でもあって、分かり
やすさの中に内面にこもる感じも少々あります。ドラムスのマレットが織り成す
ビートの上を比較的淡々と泳ぐ11曲目は個性的。
 ブラッド・メルドーの参加が興味を引きますが、ここではアクロバティックな
ソロはあまりなく、寄り添うようなピアノも淡々とした感じです。サックスとの
デュオの4曲目、5曲目の出だしやソロ、あるいは9曲目のソロ。美しいです。
いつもの思索的な彼路線を求めるならばサックスとのデュオの7曲目。やっぱり
彼の参加の影響は大きかったのでは、と思えます。
 好みとしてはジョン・アバークロンビーのソロもあって少々元気な5、6曲目
あたりでしょうか。バラード中心のアルバムで派手さはなく、通常の4ビートを
刻むジャズではないので、このアルバムの好感度は人それぞれかもしれません。
消え入るような牧歌的な12曲目で幕を閉じます。
 ロイドとしてはECM7枚目のアルバムですが、今までで一番分かりやすくて
暖かみのあるアルバムに仕上がったのではないかと思います。

評点:★★★★

工藤 一幸
E-mail: kudukazu@mtf.biglobe.ne.jp kudo.kazuyuki@pep.ne.jp
URL: (事務所) http://www2s.biglobe.ne.jp/~kudotax/
(ジャズ) http://club.pep.ne.jp/~kudo.kazuyuki/


【委員の声】 其の三

「秘められし情熱」

「セイ・イット」かと錯覚しそうなスタートはまさに「バラード」そのもの、
しかし気がつくと最後はしっかりECMの世界に引きずり込まれていました。
BGMとして心地よく聞き流しても十分美しいのですが、もう一歩踏み込んで
スピーカーと対峙してみると、穏やかな外見の内側に秘められた熱いエモーション
が伝わってきました。話題のメルドーは比較的おとなしく弾いているようですが、
アバークロンビーのギターとも相性が良くて耽美的な色合いを漂わせています。
ヒギンズのドラムとグレナディアのベースも決して出しゃばることなく、しかし
ロイドの音世界を的確にサポートしていて痛快です。
また録音の良さも見逃せないポイントです。楽器の音はもちろんのことですが
プレイヤーの息づかいや唸り声がハッとするほどリアルです。
そしてこのアルバムはどの曲も素晴らしくハズレがないのですが、強いて上げれば
タイトル曲の2,ベースの響きが印象的な8,そしてラストの12が個人的な
お気に入りナンバーと言えるでしょう。今回は全く斬れませんでした。

評点:★★★★☆

(STEP 片桐俊英) 現GD委員会 委員長
e-mail:step@awa.or.jp
HomePage:http://www.awa.or.jp/home/step/)


【委員の声】 其の四

「天上天下唯我独尊」

今回から筆者のサイトの標準書式に改める。書換えの手間が省けるというものだ。

本作はECM第7作。編成はデュオ〜クインテット、Brad Mehldauの参加が目を引く。
選曲は自作5曲、Ellington系3曲、トラッド等4曲。優しさ溢れる序盤、時として
激する中盤、静謐な終盤、意を凝らした構成だ。Coltraneの精神を継承しつつも
峻厳に走らず温和で枯淡、独自の境地を示す。抑えた演奏に徹するメンバーでは
John Abercrombieが好演。12曲68分で星を下げたが好調持続を証明する秀作。

評点:★★★★

HAYASHI Tatsunori
email:tatsu@netq.or.jp
site :JAZZ DISC SELECTION http://www.netq.or.jp/~tatsu/ 


【委員の声】 其の五

「秋の夜長に良く合いそうな快作」

ロイドのECM盤といえば、どれも力作ばかりであったが今回の作品もそれらに全く
ひけを取らない見事な出来栄えである。これまでは全てカルテット作品でピアノは
B・ステンソンが不動だったが、本作はギター入りクインテットや各楽器とのデュオ
もあり、しかもピアノは注目度NO.1のブラッド・メルドーということで興味深々だ。
 肝心の内容であるが、ECMサウンドと絶妙にマッチするロイドのフニャフニャした
テナーサウンドは健在、さらにECM盤ではおそらく初めてであろうソプラノも淡々と
しながら訴えてくる力は強い。郷愁を誘うような(1)(2)など落涙ものだ。バラード調
ナンバーを中心にしながらアブストラクトな(7)やコルトレーンの影が濃い瞑想的な
C・マクビー作(8)、ロリンズばりに吹きまくる(11)なども交え最後まで飽きさせない。
リーダー作にはあまり感心しないメルドーもサポートに徹するとこれだけ素晴らしい
演奏ができる。実に美しいピアノだ。ジョンアバのギターも程よいスパイスになって
いるし、病魔から復活したヒギンズのドラミングなどなど聴きどころには事欠かない。
 無理に探さない限り本作にこれといった欠点は見当たらない。クインテット演奏が
もう少し聴きたかった、という程度だ。繰り返し聴きたくなったGDは実に久しぶり。

評点:★★★★☆

増間 伸一(Shinichi Masuma)
E-mail:shin@masuma.nu
WebSite:http://www.masuma.nu/


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