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page22 - 第 6期 第 14弾 2000年 8月 2日 発売

小曽根真 The Trio
パンドラ

ユニバーサル・ミュージック POCJ-1490

小曽根真 (p)
ジェームス・ジーナス (b)
クラレンス・ペン (ds)


2000年5月8日〜10日

ニューヨーク、アバター・スタジオにて録音



01.You Never Tell Me Anything!
02.Lullaby for Rabbit
03.Reunion
04.Sofi
05.If I Had Known...
06.Brazillian Sketch
07.Pennillium
08.Blessing the World
09.Pandra
10.Tiffany's Waltz
11.Around the Corner

1961年神戸生まれ。幼い頃から、
ジャズピアノ〜オルガン奏者だった父親の
影響でオルガンを弾いていた。高校卒業後
バークリーに留学、83年には同学院の
ジャズ作・編曲コースを主席で卒業、同年の
クール・ジャズ祭りでデビューを飾る。
84年に初リーダー作「OZONE」発表、94年に
ヴァーヴに移籍後「日本ジャズ大賞」を
連続受賞等大活躍している。


各委員のご意見は原稿の到着順で掲載しております。

なお、この企画は参加委員による共通のページとして、各委員のサイトでもご覧になれます。
ページのデザインやレイアウトは各委員のサイトで異なると思いますが、
文章の内容は全く同一のものが紹介されます。

現委員のメンバー及びリンク先はゴールド・ディスク品質向上委員会のページをご覧下さい。

【委員の声】 其の一

「瑞々しい感性そのままに」

三日間、スタジオ内で集中的にこのアルバム作りに専念したと思える
レコーディング・スケジュールですが、その成果が充分にあったのか、
とても調和のとれた作品に仕上がっていると感じました。
リーダーは小曽根ではあるものの、演奏は三者均整の取れたもので
スリリングな仕掛けも随所に散りばめてあり、聴き応え充分です。

色んなものを吸収してきた人らしく、ボサノバからラテン・タッチのもの、
中には明らかにモンクを意識した感じの曲まで非常に豊富なバラエティ
の中で思う存分羽を伸ばして遊んでる感じが心地よいです。

左手の使い方に特徴があって、ここに彼の表現におけるポイントがあるのか、
リズムの切り方にも小曽根自身の個性が充分に発揮されています。
何よりも一音、一音が瑞々しい響きをしているのが良いです。

トリオ物のなかに少し(#3.9)混じるブランフォードのテナーとソプラノが
程良いアクセントになって、ピリッとした緊張感を与えているのも
構成として大成功していると思いました。

評点:★★★★☆

bb (bluesboy).
E-Mail bluesboy@pluto.dti.ne.jp
Web Site 【Blues PEOPLE & Jazz PEOPLE】 / 【Store apple Jam


【委員の声】 其の二

「美しさが際立つ佳作」

私個人としてはあまり馴染みも興味も無いピアニストである。アルバムを聴く
のもこれが2作目だ。何度も聴き通してみたが随所で美しいメロディに思わず耳を
奪われる好作だと感じた。特に(2)のようなメロウな曲ではより魅力を発揮する
ピアニストだと思う。エバンスを思わせるバラード(5)やボサノバ風が楽しい(6)、
明るさの中に70年代の雰囲気を感じさせる(8)なども上々の出来だ。
 残念なのはブランフォードの参加したナンバーが他曲とあまりにもギャップが
あり、アルバム全体の雰囲気を損ねているところである。コルトレーン風に迫る
ブランフォードに拮抗するトリオのアグレッシブさがカッコイイ(3)などは曲単位
では良いのだが。タイトル曲に至ってはややアブストラクトで聴くのが疲れる。
どうせやるならこの手の曲も(7)のようにトリオで勝負して欲しかった気がする。
アルバム全体で印象的なプレイを展開したクラレンス・ペンに対し、期待して
いたジェームズ・ジナスにやや元気が感じられなかったのも不満である。
 これらのマイナス点を除けば、完成度が高く安心して聴けるピアノトリオでは
あるが、カルテットのナンバーが浮いてしまっているのが惜しまれる。

評点:★★★★

増間 伸一(Shinichi Masuma)
E-mail:masuma@jazz.interq.or.jp
WebSite:http://www.interq.or.jp/jazz/masuma


【委員の声】 其の三

「思わず拍手したくなる爽快なプレイ」

 FM番組DJとしても大活躍中の小曽根の新作は期待通りの快作でした。
(蛇足ですが、彼の声としゃべりはDJとしてトップクラスだと思います)
まず最初の音が出た瞬間に、「これはイケル」と直感しました。
瞬発力や躍動感に溢れ、生き生きとした音楽が迫ってきました。
パンドラのタイトル通りにいろんな曲想が次々飛び出し、飽きることなく
11曲が最後まで楽しめる構成でした。大半が小曽根自身の作曲であり
コンポーザーとしての才能も再認識させられました。特にブランフォードが
加わったタイトル曲は、ECM的和風?とでもいったユニークな雰囲気で
他のトリオ作とは一線を画しています。このあたりは好き嫌いが分かれ
そうなところですが、”ジャパニーズ・イン・ニューヨ−ク”としての
アイデンティティを感じさせてくれました。
 全体を通してバランス良くまとまっていますが、良い意味での破天荒
さが加われば更にスケールの大きな作品となったでしょう。

評点:★★★★

(STEP 片桐俊英)
e-mail:step@awa.or.jp
HomePage:http://www.awa.or.jp/home/step/)


【委員の声】 其の四

「まさにパンドラの箱」

1曲目を聴いて、やっぱりカッコエエなあという印象。全曲彼か、クラレンス・
ペン(共作1曲あり)のオリジナルで勝負しているのですが、あまりオリジナル
をやっているという感じはせず、けっこうすんなり聴き流せてしまいます。それ
でも、よく聴いてみるとけっこう難しそうな曲も。フレーズは、冒険はあっても
当然ながら妖しげでなく、メロディアス。ここまで聴かせてしまうテクニックは
立派かも。例えばブランフォード・マルサリスをゲストに迎えた3曲目などは、
ピアノソロもスリリングでスピーディーで光っています。やはり彼がゲストの、
タイトル曲である9曲目は空間表現が見事。空気感漂うサックスと幽玄なピアノ
の応酬。個人的には少々異端?なこの曲が好み。なぜこの曲をタイトル曲にした
のか分かるような気がします。もっとサックスの出番をと思っても、契約の関係
で無理なのでしょうけれども。4、5曲目はスタンダード、という雰囲気すら。
メロディアスなら8曲目も負けていません。7曲目は豪快。軽くキメる10曲目。
ラストは渋めやや複雑系しかもメロディアスといった曲で幕を閉じます。
 何回聴いても安定していてアルバムのタイトル通りバラエティに富んでいます。
ピアノももちろん主役ですが、メンバーが絡み合いながら進んでいくという感じ、
と言えば良いのでしょうか。まさにジャズの現在進行形。変な言い方ですけれど、
日本人のミュージシャンという先入観は損をします。オススメ盤。

評点:★★★★☆

工藤 一幸
E-mail: kudukazu@mtf.biglobe.ne.jp kudo.kazuyuki@pep.ne.jp
URL: (事務所) http://www2s.biglobe.ne.jp/~kudotax/
(ジャズ) http://club.pep.ne.jp/~kudo.kazuyuki/


【委員の声】 其の五

「完成度>吸引力」

 なにしろ定冠詞付きだ。聴かねばなるまいと思う内に第5作となってしまった。
小曽根真についても初心者も同然。粒立ちのいいタッチ、淀みないフレージング、
スイング感、グルーヴ感、一聴直ちに第一級のピアニストであり音楽家と知れる。
ユニットの方向性は現代的トリオの常道、三位一体にして三者対等。アルバムは
カッチリした仕上りで落ち着いたたたずまい。目鼻立ちの整った美人、ないしは
微塵の瑕もない高級品のように固い。自由度が抑えられているわけでもないのに
予定調和の感は拭えず今一つ乗り切れない。完成度と吸引力は必ずしも比例せず。
イン・テンポ、「オオー!来るぞ!来るぞ!」という予兆は随所で見られるものの
終に完全燃焼するに至らず。愛聴盤とするには新鮮な驚きと胸踊る激震力を欠く。
Genusは堅実だが華がない。 Pennは黒豹の敏捷さと獰猛さが薄れて堅実なだけに
成り果てた。Marsalisは納得の存在感を示すが、とくに傑出したプレイではない。
あるいは本作は新生面を見せた一作で、筆者の理想は旧作にあるのかもしれない。
チェックする必要がありそうだ。ともあれ、高水準のトリオ作には違いない。

評点:★★★★

HAYASHI Tatsunori
email:tatsu@netq.or.jp
site :JAZZ DISC SELECTION http://www.netq.or.jp/~tatsu/ 


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