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page21 - 第 6期 第 13弾 2000年 6月 16日 発売

チック・コリア
ソロ・ピアノ・パート1〜オリジナル
+ ソロ・ピアノ・パート2〜スタンダード

ユニバーサル・ビクターMVCL-24023

チック・コリア(p)



1999年11月17日〜28日

横浜、大阪、スイス、スウェーデン、
ノルウェイ等で収録



注)この写真と録音データは Part1 MVCL-24023 のものです。

Part1. "Originals"

01.Brasilia (Chick Corea)
02.Yellow Nimbus(Chick Corea)
03.Prelude #4 (Alexander Scriabin)
04.Prelude #2(Alexander Scriabin)
05.Children's Song #6(Chick Corea)
06.Children's Song #10(Chick Corea)
07.Armand's Rhumba (Chick Corea)
08.April Snow (Chick Corea)
09.The Chace (Chick Corea)
10.The Falcon (Chick Corea)
11.Swedish Landscape(Chick Corea)
12.Spain(Chick Corea)
13.What Game Shall We Play Today(Chick Corea)
14.Children's Song #12 (Chick Corea)

Part2."Standards"

01. Monk's Dream
02. But Beautiful
03. Blue Monk
04. Ask Me Now
05. Thinking Of You
06. Yesterdays
07. Dusk In Sandi
08 It Could Happen To You
09. 'Round Midnight
10. So In Love
11. How Deep Is The Ocean
12. Oblivion
13. Brazil
14. Trinkle Tinkle  

5月の「GDを斬る」が当初このチックの2枚のアルバムを対象に
していたのですが、2度にわたる発売延期で6月に繰り越してしまいました。
しかしこのようにPART 1&2 とうたって分売するのなら、始めから2枚組に
して安く出すのが筋と思いました。しかも中のライナーノーツにはご丁寧にも
2枚買うと抽選で特典が貰えることまで書いてあり、さらにはその2枚買いを
即すようなコメントまで書き添えてあります。何だか業界+批評家ぐるみで
売らんかなの姿勢が見え見えで聴く前から冷めてしましました。
お買い上げ特典の紹介は帯に書けば充分だと思います。

今回は各委員で担当を分けましたので、私はPART1の
「オリジナル集」の方をレビューさせて頂きました。


各委員のご意見は原稿の到着順で掲載しております。

なお、この企画は参加委員による共通のページとして、各委員のサイトでもご覧になれます。
ページのデザインやレイアウトは各委員のサイトで異なると思いますが、
文章の内容は全く同一のものが紹介されます。

現委員のメンバー及びリンク先はゴールド・ディスク品質向上委員会のページをご覧下さい。

【委員の声】 其の一

「チックは何処に居るのか・・?」 オリジナル

冒頭で瞼に浮かんだのがなんと、チック・コリア本人ではなく
キース・エマースンの顔でした。いきなりカール・パーマーの
ドラムが絡んできそうな錯覚を覚え集中するのに苦労しました。
原因は恐らくたまたま私のイメージの中にあるドビュッシー似の
キース・エマースンのピアノに今回のチックの音が近かったから
だと思います。チックはこのPART1でスクリャービンの作品も
取り上げていますが、全体的にはどうにも「二つのアラベスク」を
始めとしたドビュッシーの作品集を聴いてるような気分になりました。
何度聴いてもチック・コリア自身の顔が全く見えてこないのです。

今までの21回の「GDを斬る」の中で最もとまどった1枚になって
しまいましたが、それでも一言だけ感想を述べるとすればチック
らしい楽想を感じる"Armando's Rumba"での力強さや
お馴染みの"Spain"のメロディを聴いて初めてほっと出来たこと。
明らかに今回の他のオリジナルとは雰囲気が異だと感じるのは
単に私が未熟なだけかも知れませんが。
いずれにしてもソロ作品をずらっと並べただけの散漫な印象が
拭えませんでした。よって星みっつです。

評点:★★★

bb (bluesboy).
E-Mail bluesboy@pluto.dti.ne.jp
Web Site 【Blues PEOPLE & Jazz PEOPLE】 / 【Store apple Jam


【委員の声】 其の二

「情景が浮かんでくる1枚」 オリジナル

もともとチック・コリアのピアノはジャストなタイミング。この「オリジナル」
では、どの曲もスイングさせているわけではないので、しかも彼の好みもあって
(スクリャービンの曲も2曲混ざっています)、クラシックのような響きを持って
しまうのです。ここが好き嫌いの分かれるところかもしれません。例えば往年の
彼のECMのアルバム(「リターン・トゥ・フォーエヴァー」を除く)を、好きか
どうかが踏絵となってしまうような。当然のことですがノリつつ聞こうとしても
無理で、たゆたう音の流れに身をまかせて情景を浮かべながら聴くのが良い方法
かも。以前に一度は録音された曲が多いところから、印象に残るメロディが多い
のも事実。私は好きなのですけれどね。
 ある意味でゴールドディスクでありながら敷居が高く、聴く人を選んでしまう
アルバムがこの「オリジナル」。そんな中で、リターン・トゥ・フォーエヴァーで
お馴染みの12−13曲目(13曲目はボーナストラック)や、7曲目を聴くと
ホッとするのでは。どの曲も水準以上だとは思いますが、個人的な好みは13分
台のラスト。ライヴならではのドラマチックな展開しかもフリー好み。全体的に
寒色系の味わいのある情景が現れては消え、また現れては消え、という、ジャズ
らしからぬジャズ(そう、これもインプロヴィゼーションと言う意味ではジャズ
です)。このアルバムも現在進行形だと思うので、そういう世界に出会ってみても
いいのかな、という気はします。


評点:★★★★

工藤 一幸
E-mail: kudukazu@mtf.biglobe.ne.jp kudo.kazuyuki@pep.ne.jp
URL: (事務所) http://www2s.biglobe.ne.jp/~kudotax/
(ジャズ) http://club.pep.ne.jp/~kudo.kazuyuki/


【委員の声】 其の三

「辛口のスタンダード」 スタンダード

最初に白状すると、ソロ・ピアノは苦手なのであります。
キースのファンを自認しながらも、かの「ケルン・コンサート」を聴き通した
ことがないという情けない男であります。
さてこのチックのスタンダード編ですが、やはり14曲を最後まで聴くのは
かなりしんどい作業でした。スタンダードといってもモンクの曲が多く、
全体に甘さを排除した「やや辛口」の印象を受けました。
チックのピアノは、期待通り粒立ちの良い音色で淀みのないフレーズが
紡ぎ出され、快調そのものといった感じです。
特に斬新さは感じ取れないのですが、イマジネーションの広がりが伝わります。
ところがライブからセレクトされた演奏を集めた故にか、聴く側の集中力が
大いに要求されます。漫然と聴いていると、いつの間にか演奏が終わって
いました。スピーカーと対決する覚悟がないと跳ね返されてしまいます。
一曲ずつはどれも緩みのない演奏ですが、78分も緊張を持続するのは
なかなか大変なことです。もう少し変化のある構成を工夫すれば、ずっと
楽しめるアルバムになったのではと惜しまれます。

評点:★★★☆

(STEP 片桐俊英)
e-mail:step@awa.or.jp
HomePage:http://www.awa.or.jp/home/step/)


【委員の声】 其の四

「For Fans Only」
スタンダード

これほどポピュラリテイのある大物ジャズメンのGD選定も珍しいのではないか。
しかもピアノソロ2枚とは大胆。今回私はスタンダード編担当だが実際に聴いて
みると流石にチックだ。一曲一曲の演奏はレベルが高く、無論駄作凡作の類では
ない。寧ろ演奏内容自体に疑問符のつくことが多い最近のGDにおいては良心的な
一枚といえる。ライブということで全体的にややラフな印象を受けるが(2)などは
なかなか美しい演奏だと思う
 しかし、今更チックのソロピアノに何を期待して聞けば良いのだろうか。最早
新たな局面や展開は望めまい。では過去の名演、名盤を超えるようなすばらしい
パフォーマンスなのか。残念ながら私にはそう思えない。「チックのピアノソロ
だからまあ、こんな感じだろうなあ。」と聴く前に予想した通りの内容であり、
それ以上でも以下でない。ECMに残した傑作「Piano Improvisations」を聴いたとき
のように美しさにハッと耳を奪われるような瞬間も無い。曲単位では優れていても
78分間ピアノの音しか聞こえてこないわけで、強烈に惹きつけるものがない限り
中盤から飽きてしまうのも致し方ないと思える。ライブのベストテイクを集めて
いるが、曲により拍手が入っていたりいなかったりというのも中途半端な印象を
強める。スタンダード編といいつつモンクが5曲というのも多すぎやしないか。
 個人的な不平不満を書いてしまったが、私自身あまりこのアルバムを繰り返し
聴く気が起きない。ピアノ好きやチックの大ファンには楽しめるのだろうが特別
チックに強い関心を寄せていない私のような者にはやや苦痛であった。
 ただし今回はスタンダード編しか聴いていないので、オリジナル編も合わせて
聴けば印象も変わるかもしれない。そこは他の委員の評を参考にして頂きたい。

評点:★★★☆

増間 伸一(Shinichi Masuma)
E-mail:masuma@jazz.interq.or.jp
WebSite:http://www.interq.or.jp/jazz/masuma


【委員の声】 其の五

「譜面と即興の融和に挑むソロ作」 オリジナル&スタンダード

Part1:2曲はAlexander Scriabin作。 半数は印象派風の佳演、半数は即興演奏、
といっても概ねクラシック寄り。本作をジャズと認めない方もあろう。たしかに
ジャズ度は薄目だが、想像的で創造的、音楽としての完成度は高く吸引力も強い。
既存の様式から解放され伸び伸び演奏している様が伝わる。公演ではこちらが後。
ジャンルにこだわらず、全方位ピアニスト・音楽家としてのCoreaを聴く1枚。
 Part2:所謂スタンダードとジャズ曲が半々。「解体と再構築」風のアプローチは
採っていない。原曲の精髄はそのままに自らの音楽に昇華すべく意を砕いている。
自家薬籠中のMonk、Powell作は上々の出来だが、後は窮屈な印象で吸引力は弱い。
頭デッカチでも冗長でもない。演奏の輪郭が掴み辛いせいだろう。気が逸れ易く
集中力の維持に意を払うべし。ジャズ・ピアニストとしてのCoreaを聴く1枚。
 総合:必携度は高いとはいえないが必聴度は高い。ジャズ度ではPart2、音楽の
完成度ではPart1をお奨めする。 Originの旗印−書かれたものと即興の融和−は
共通する。彼の現在にご関心の向きは何れも(公演順に)お聴きいただきたい。

評点:Part.1(オリジナル) ★★★★ Part.2(スタンダード)★★★☆

HAYASHI Tatsunori
email:tatsu@netq.or.jp
site :JAZZ DISC SELECTION http://www.netq.or.jp/~tatsu/ 


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