back to ゴールド・ディスクを斬る top page Jazz PEOPLE index mail to bluesboy




page16 - 第 6期 第 1弾 1999年 12月 22日 発売

リッチー・バイラーク / 恋とは何でしょう
Venus 徳間ジャパンI TKCV-35084

リッチー・バイラーク (p)
ジョージ・ムラツ (b)
ビリー・ハート (ds)





1999年6月 18、19日ニューヨーク録音
プロデュース:ハラ・テツオ&トッド・バルカン

01.What is This Thing Called Love?(C.Poter)
02.Leaving (R.Beirach)
03.Night And Day (C.Poter)
04.Goodbye (G.Jenkins)
05.Autumn Leaves (J.Kosma)
06.All The Things You Are (J.Kern)
07.Pinocchio (W.Sherter)
08.Collage (Onaje Allen Gumbs)
09.Oh,What A Beautiful Morning (R.Rodgers)
10. On Green Dolphin Street (B.Kaper)

1947年NY.ブルックリン生まれ。
6才からピアノを始め、レニー・トリスターノの
元で学んだあとバークリー音楽院等で学ぶ。
ビル・エバンスの流れを汲む耽美派のピアニスト。
(以上SJ誌の記事を参考にしました。)

エヴァンス系を素通りしてきた私は、バイラークを
ちゃんと聴くのも初めてのことでしたが、なかなか
力強いタッチで描線がはっきりしてるので好きになりました。

Dec.27.1999 bb白岩


各委員のご意見は原稿の到着順で掲載しております。

なお、この企画は参加委員による共通のページとして、各委員のサイトでもご覧になれます。
ページのデザインやレイアウトは各委員のサイトで異なると思いますが、
文章の内容は全く同一のものが紹介されます。

現委員のメンバー及びリンク先はゴールド・ディスク品質向上委員会のページをご覧下さい。

【委員の声】 其の一

「絵画展に行った気分」

ファンキーかつグルーヴィーなものが好きな私は
この手のジャズをほとんど聴いたことがなかったので
とても新鮮に聴くことが出来ました。
滅多に行かない、街の美術館に身を置いて
世界の名画展を鑑賞している気分です。

お馴染みの大スタンダードがずらりと並んでいるにも関わらず、
テーマを思い切り崩してあるので、耳に慣れたメロディはちらっとしか聞けない。
さながら印象派の絵画を観ているかのようで、名画展というよりは
これはあくまでバイラークの個展であることを再認識した次第です。
彼にとって、描写する対象物は何だってよかったかも知れない。

彼だけが持つ特別な絵の具がムラツとハートによって作られた
生地の細かいキャンバスの目に染み込んでいくように拡がります。
この作品で、個々の曲を分析する力量は私には無いことに気付く。
部分、部分が印象に残りはするのですが、なんとなく展示場を
一周して出てきて、あ〜良いものを鑑賞した、という気分が残る、
そういう余韻が心地よかったです。

そんな訳で、今回は「どうだった?」と聞かれたら
「うん、良かった」と答えるあのパターンしかない。
その友人を引っ張ってでも、もう一回観に行くとしたら
(6)All The Things You Are と (10)On Green Dolphin Street
の2枚をじっくり鑑賞したいかな・・。
この2枚は風景と絵の具のタッチが非常に自分好みでした。

評点:★★★★☆

bb (bluesboy).
E-Mail bluesboy@pluto.dti.ne.jp
Web Site 【Blues PEOPLE & Jazz PEOPLE】 / 【Store apple Jam


【委員の声】 其の二

「これぞリッチー・バイラークのサウンド」

リッチー・バイラークは静かなクラシックっぽいサウンド、というイメージが
強いと思いますが、ここでは違います。かって'87年のライヴ・アンダー・ザ・
スカイの「トリビュート・トゥ・ジョン・コルトレーン」で全開のピアノを体感
しているので、今回も、と期待していたら案の定やってくれました。1曲目から
いきなりガツンときました。ヴィーナスはこうでなくちゃ。しかも、彼お得意の
和音の再構築が随所で行なわれていて、そのセンスの冴えも見せつけています。
ガンガンきますが、音の選び方やタイミングなど原曲にとらわれない思いきりの
良さは見事。あるいは彼流の原曲の生かしかたかも。3、5曲目もガッツ系の曲
です。特に「枯葉」は何の曲?と思うほどのアレンジで、こうなりゃヤケだ、と
拍手喝采。7曲目で何と「ピノキオ」を演奏。9曲目は激しくもドラマチックな
展開。非常に個性的な「ナーディス」。
 2曲目は何度も録音されたオリジナル。哀愁漂う美しいメロディで、ピアノの
タッチはいつもの彼に近い感触。やや暖かめなのはレーベルカラーか。4曲目の
ピアノがソロになる部分の美しさは格別。6曲目はやはり和音が再構築された、
沈んだサウンド。新しい響きがあります。8曲目もやや暖かめ。きれいですが、
感傷に流されない響き。10曲目もフレーズをどんどん煮つめていきます。
 何度も共演していて息の合ったこのメンバーだからこそのサウンドが全体的に
展開されていて、うれしい。そして、この満足感の半分は「ハイパー・マグナム・
サウンド」によるものと思います。ほとんどの曲がスタンダードやジャズメン・
オリジナルですが、表現する題材は何でも良かったのではないかと思えるのです。
良くも悪くもリッチー・バイラークのサウンド。両手で紡ぎ出されるマジック。
個人的には「買い」のアルバムです。
 
評点:★★★★☆

現GD委員会長 :工藤 一幸
E-mail: kudukazu@mtf.biglobe.ne.jp kudo.kazuyuki@pep.ne.jp
URL: (事務所) http://www2s.biglobe.ne.jp/~kudotax/
(ジャズ) http://club.pep.ne.jp/~kudo.kazuyuki/

【委員の声】 其の三

「『エルム街の悪夢』から覚める快作」

11月26日このメンバーのギグ(George Mraz & Richie Beirach Quartet)を観た。
「転向」は体験済みで衝撃はないが、ギグと違い彼の音楽になっているのが嬉しい。
思わず「転向」と書いたが「成熟」に改める。ここにいるのは彼以外の何者でもない。
独自の美意識はそのままに、より直截な情感表出が見られ、血肉を備えた表現に
なっている。スピード感とエッヂの鋭さは薄れたが、知と情、緊張と寛ぎが巧く
バランス、スケール感を加えている。アップ(#1.#7.#9) とミディアム(#3.#5.#8.#10) は
スピード感からドライヴ感とスイング感を、バラード(#2.#4.#6) は透徹から体温を
感じさせる演奏に成熟している。大胆なリハーモニゼーションに居心地の悪さを
覚える演奏もあるが、総じてより広範な層の共感を得るだろう。孤高の世界から
脱し普遍性を獲得したといえよう。後半にハイライトが連続、圧巻は十八番のH。
Mrazの正確無比なラインが気持ちよく、影の司令塔Hartの頭脳的プレイも聞き物。
傑作とまではいえないが良い演奏に違いなく代表作に入る。彼の音楽に氷河期を
イメージしている方は一聴の価値あり。「エルム街の悪夢」から覚めるだろう。

評点:★★★★

HAYASHI Tatsunori
site :JAZZ DISC SELECTION http://www.netq.or.jp/~user/tatsu/ email:tatsu@netq.or.jp 


【委員の声】 其の四

「ハードボイルドだど!」

ちょうど一年前、千倉・バードランドでのスティーブ・キューンと同様の
VENUS企画盤であり、ついそれと比較して聴いてしまった。
 冒頭、思わずヴォリュームを下げたくなるハード・パンチを食らった。
粒立ちの良い硬質なピアノのタッチはイメージ通りだが、大胆に飛躍する
音使いは以前よりも奔放さを増しているようだ。
線の細さなど微塵も感じさせない、まさにハードボイルドな演奏だ。
有名なスタンダードが独自の解釈で新鮮に響いてくる。
ムラーツとハートのバックも強力で、躍動感に溢れるアルバム作りに
大いに貢献している。この点が昨年のキューン盤より優れるだろう。
 それにしてもVENUSの録音は好調続きだ。
個人的にはもう少し繊細感のあるピアノも聴いてみたい気がするが、
ベースの引き締まった力強さには敬服する。
あとはタイトルのセンスアップに期待するくらいのものだ。
評点はキューン盤の四つ星がやや甘い気がしてきたので、
同じ四つ星ながらこちらを半星上に評価したい。


評点:★★★★

(STEP 片桐俊英)
e-mail:step@awa.or.jp
HomePage:http://www.awa.or.jp/home/step/)


お詫び

今月は増間氏がご多忙のため四人になりました。
後日増間氏からの原稿が届きましたら
追加でupしたいと思います。

■ ご意見お待ちしております。

如何でしたか?
なにかお感じになりましたら是非貴方の声をお聞かせ下さい。 → Blues PEOPLEらくがき帳