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page15 - 第 5期 第 98弾 1999年 11月 17日 発売

ステフォン・ハリス / ブラック・アクション・フィギュア
BLUENOTE 東芝EMI TOCJ-66070

ステフォン・ハリス / vib
グレッグ・オズビー / as
ゲイリー・トーマス / a-fl,ts
スティーブ・ターレ / tb
ジェイソン・モラン / p
タルス・マティーン / b
エリック・ハーランド / ds

1999年2月 ニューヨーク録音
プロデュース:グレッグ・オズビー

01.Club Madness (Stefon Harris)
02.Feline Blues (Stefon Harris)
03.There Is No Greater Love (Stefon Harris)
04.Of Things To Come (Isham Jones & Marty Symes)
05.After The Day Is Dawn (Stefon Harris)
06.Conversations At The Mess (Stefon Harris)
07.Black Action Figure (Stefon Harris)
08.Collage (Onaje Allen Gumbs)
09.You Stepped Out Of A Dream(Gus Kahn & Nacio Herb Brown)
10. ALOVI (Stefon Harris)
11.Bass Vives (Stefon Harris)
12.The Alchemist (Stefon Harris)
13.Chorale (Stefon Harris)
14.Faded Beauty (Stefon Harris)
15.Musical Silence (Stefon Harris)

ジャズ界で演奏者人口の少ないヴィヴラフォンにおいて
若手の後継者出現は、それだけでも注目を集めますが、
その人が名門といわれるマンハッタン・スクール・オブ・
ミュージックで修士号を取得した逸材ともなれば
益々のこと、今回のアルバムもシーン全体の期待を
担って世に出た作品と言えると思います。
早くもこれが2枚目のリーダー作品ですが、
これからの活躍がとても楽しみな人だと思います。

Nov.25.1999 bb白岩


各委員のご意見は原稿の到着順で掲載しております。

なお、この企画は参加委員による共通のページとして、各委員のサイトでもご覧になれます。
ページのデザインやレイアウトは各委員のサイトで異なると思いますが、
文章の内容は全く同一のものが紹介されます。

現委員のメンバー及びリンク先はゴールド・ディスク品質向上委員会のページをご覧下さい。

【委員の声】 其の一

「何かやってくれそうな期待感」

このステフォン・ハリスという、26才のヴァイヴ奏者は
ウイントン・マリサリス率いるリンカーン・センター・ジャズ・オーケストラの一員
としての活動以外にも、自身のコンボを持ちクラブ出演もしているそうですが
今回のリーダー作の発表はもとより、「ダウン・ビート」誌の新人賞を受賞するなど
今、脚光を浴びている存在だそうです。

どんな人なんだろうという期待で針を(CDじゃないか・・)落としてみたところ、
プレイからはハジけるような躍動感、生命力、歌心が溢れていて、確かに逸材の
証は音を聞いただけで充分だと思いました。ほぼ全曲をオリジナルで構成し、
ソング・ライティングの才能も存分に発揮しています。

特に誰にも似ていないそのスタイルは、バピッシュなアップ・テンポの曲で
バド・パウエルのように聞こえましたが、それがごく自然な音の連なりで
きっと彼自身の中にバドがリスペクトの対象として消化吸収されているのかと
感じます。

最も気に入った曲は(4)Of Things To Come、(7)Black Action Figureと
(14)Faded Beautyの3曲。

(4)は個性的なリズムに乗って縦横無尽にステフォンのヴァイブが舞う感じ、
全体的にはコンボイが隊列をなして突き進む中、先陣を切ってひた走る
一台の大型トラックをイメージしてしまいました。

(7)は冒頭のピアノとヴァイヴの絡みだけで充分に魅惑的なのに
それに続くジェイソン・モランのソロが益々曲に深みを与えています。
一気にスピード感を増して展開されるステフォンのソロも文句無しです。

(14)は一転して叙情的なテーマを持つ曲ですが、言葉少なで
リリカルなヴァイヴが切ない感じ。私はこういうのに弱いのです。
ソロへ入ってからもその雰囲気は持続され、まるでヨーロッパの
小さな町に居て川の畔を歩いてるような気分。
ガーシュイン・メロディそのままの感じです。
でもミルト・ジャクソンとはタッチが違っていて
それがこの人の持ち味なんでしょうね。

満点の五つ星をためらったのは単に個人的なスィート・スポットには
少しだけはずれたという理由、それだけです。
凄く良い作品だと感じています。

評点:★★★★☆

bb (bluesboy).
E-Mail bluesboy@pluto.dti.ne.jp
Web Site 【Blues PEOPLE & Jazz PEOPLE】 / 【Store apple Jam


【委員の声】 其の二

「個性的な演奏で今後が楽しみ」

大好きなグレッグ・オズビー、ゲイリー・トーマス、ジェイソン・モランらが
参加しているアルバムなので、すぐコメントを書けるハズだったのですけれど、
逆に先入観が入ってしまい10回以上聴いてもなかなか文章になりませんでした。
 大部分の曲がステフォン・ハリス中心の演奏。彼のヴァイブラホンは、誰風か
予測させないところが良いと思います。冒頭22秒の短い曲。2曲目は変拍子の
複雑なテーマでヴァイブラホンが全開。ジェイソン・モランのピアノも個性的。
意外にスティーヴ・ターレがオーソドックスか。ヴァイブ・トリオでの3曲目の
スタンダードもスピーディーでスリルがあり良いと感じました。ゆったり聴ける
4ビートでない5曲目も現代的でなかなか。7曲目のタイトル曲はノリも良く、
渋めで聴いていてグッとくるものがあります。途中に入るピアノも渋い。10曲
目はホーンがハービー・ハンコックの「スピーク・ライク・ア・チャイルド」を
なぜか連想。アルトのソロは入っていますけれど。8、14曲目などはまさしく
大人の世界。分かります?こういうヴァイブラホンもいいなあと思います。
 ホーン・セクションは複雑なアンサンブルをこなせるという器用さで選ばれた
ような気がします。もちろん4曲目のように、グレッグ・オズビー、ゲイリー・
トーマスらの旋律転換法(メロディアスな旋律になるのを意識的に避ける奏法。
フリーではないです。)のソロも聴けて個人的に楽しみの部分もありますけれど、
何曲かで聴けるホーン・アンサンブルはけっこうまとまって、かつ斬新で面白い
部分。作曲者・編曲者としてのステフォン・ハリスもけっこう素晴らしいです。
1曲あたりの演奏時間を短くして内容を引き締めている点も良いところ。好みは
4、7、10、12曲目。あえて難を言えば聴き流せてしまって印象をまとめる
のに時間がかかったところ。一発でガツンといって欲しかった。とにかく今後が
楽しみなミュージシャン。ピアノのジェイソン・モランも良かったので、同時に
発売された彼のアルバムも聴いてみようと思います。

 
評点:★★★★

現GD委員会長 :工藤 一幸
E-mail: kudukazu@mtf.biglobe.ne.jp kudo.kazuyuki@pep.ne.jp
URL: (事務所) http://www2s.biglobe.ne.jp/~kudotax/
(ジャズ) http://club.pep.ne.jp/~kudo.kazuyuki/


【委員の声】 其の三

「60年代新主流派を彷彿とさせるクールなサウンド」

最近、閉塞気味だったこの楽器に久々の若手プレーヤー登場だ。初リーダー作は
未聴である。一聴してすぐ思い浮かべたのはボビー・ハッチャーソンであったが、
メタリックなボビハチよりもマイルドな音色が特徴。本作では共演者が興味深い。
オズビー、トーマス、トゥーレという超重力級ホーン陣がフロントである。彼らが
もっとバリバリ飛ばすのかと思いきや、聴いた後で一番印象に残ったのはハリスの
ヴィブラフォンであった。上手く彼にスポットが当たるように作られている。
ベストトラックは(2)か。オープニングに相応しく勢いのある快演である。オズビー、
トーマスのうねるソロが聴ける(4)も躍動感に満ちているし、カルテットの(7)も
なかなか熱い。(12)はホーンアンサンブルはがカッコ良く、その間を縫うような
ハリスのソロも見事だ。
 やや残念なのはホーンの連中が随分と控えめな点くらい。ゴリゴリと暴れまくる
ホーン陣、それに対抗するように弾けまくるハリス、そんな部分がもっとあっても
良かった。楽器の性格上、やむを得ない部分もあるがアルバム全体しての温度がやや
低い気がしたのと、グッと来る迫力にやや欠けたのが惜しまれる。もちろん曲単位で
みれば十分に熱いものもあるし、フルート中心のトーマスも悪くない。

 どんなタイプの曲にも柔軟に対応できるバーサタイルなプレーヤーだと思われる。
深遠な響きを聴かせるvibのサウンドも好みだ。ミルトが鬼籍に入ったばかりだが、
今後しばらくはハリスがこの楽器の中心人物として大躍進するのではないだろうか。
60年代ブルーノート新主流派のサウンドをお好みの方にはオススメできる一枚。

評点:★★★★

増間 伸一(MASUMA SHINICHI)
E-MAIL JZB03622@nifty.ne.jp
HOMAPAGE http://www.asahi-net.or.jp/~kd5s-msm/
http://www.asahi-net.or.jp/~kd5s-msm/pats.htm
http://member.nifty.ne.jp/MASUM


【委員の声】 其の四

「新しい感性の躍動」

今年二月のGDカサンドラ・ウィルソンのアルバムでも光るプレイを聴かせてくれた
ステフォン・ハリスのBNリーダー第二作である。
一枚目は未聴だが、絶対数の少ないヴァイブ奏者として期待は大きい。
まず2(実質的な一曲目)の快調な滑り出しに拍手。
ところが聴き進んでいくうちに、どうも耳障りはよいのだがインパクトに欠ける
感じがしてきた。ソロよりもアンサンブル重視の構成がその原因かもしれない。
多くの楽器体験とクラシックの勉強が作編曲に大いに役立っているのは
確かだが、せっかくの強力フロント陣が今ひとつ生かされていない。
むしろわずか39秒の6はドラムとの掛け合いのシンプルな曲だが、もっと
長く聴いてみたいと思った。
一曲ずつ聞き込めばどれも完成度が高くあまり文句の付けようもないのだが、
後半に同じような曲想が続きやや変化に乏しいのが難点か。
演奏だけの評価なら四つ星と思ったが、アルバムとしての構成に一工夫が
足らない気がするので三つ星半にとどめる。
しかし次回作品には大いに期待が持てる逸材なことは間違いなし。


評点:★★★☆

(STEP 片桐俊英)
e-mail:step@awa.or.jp
HomePage:http://www.awa.or.jp/home/step/)


【委員の声】 其の五

「90年代の掉尾を飾るに相応しい傑作  」

年末近くになって、ようやくGDの名に値する作品が出てきた。只者ではない。
楽想は新主流派の流れを汲むがメカニックで冷徹な感はなくマイルドでウォーム、
耳に心地よい。剛の者を揃えたホーン陣の出番が少ないことに不満を抱く向きも
あろうが、そもそも白熱のソロの応酬を期待すべき作品ではないし、1曲々々を
云々すべき作品でもない。全体の構成に意を砕いたコンセプト・アルバムとして
聴くべきである。3つのパートに別れ、夫々のパートの曲同士が、パート同士が、
有機的に絡み合い一つの流れを作る。曲毎に採点すれば4つ星になりかねないが、
通しで聴くと星半分以上は確実に上回る。しかも尻上りによくなる、というより
そのように意図した結果だ。高い音楽性とヴァーサタリティはあらゆる黒人音楽、
先達の成果を貪欲に吸収した賜物だろう。三豪傑を抑え込んだリーダーシップも
及第点。奏者としての力量はもとより、早くもサウンド・クリエイターとしての
傑出した才を見せた。現代的な感覚に溢れ90年代の掉尾を飾るに相応しい傑作だ。
感動度と史的位置に鑑みて半星減じたが思いは5ツ星。迷わずお聴きなさい。


評点:★★★★☆

HAYASHI Tatsunori
site :JAZZ DISC SELECTION http://www.netq.or.jp/~user/tatsu/ email:tatsu@netq.or.jp 


■ ご意見お待ちしております。

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