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page5 - 第 5期 第 79弾 1998年 11月 21日 発売

ユナイテッド / 椎名 豊 NOVUS-J原盤 BVCJ-31005 BMG

@ Pent-Up House (Sonny Rollins) A Inner Flame (Yutaka Shiina)
B Indigo Blue (Yutaka Shiina) C A Foggy Day (Ira & George Gershwin)
D Crisscross (Thelonious Monk) E Reminiscence (Yutaka Shiina)
F Giants Steps (John Coltrane) G April In Paris (E.Y.Harburg-Venon Duke)
H Tristep (Yutaka Shiina)



Yutaka Shiina - piano
Christian McBride - bass
Clarence Penn - drums

Produced by Yutaka Shiina & Ikuyoshi Hirakawa
Recording Engneer : Jim Czak
Recorded on July 26&27,1998,at NOLA Recording Studios,NYC

かつて邦人ジャズに何となくつきまとっていた『B級』というイメージ。
そういったものを何時しか感じなくなっているのに
気付いたのはいつ頃からだろう。

椎名豊を聴いて、一体何処の誰がB級だと感じるだろう。
恐らく地球規模でそんな人は一人も居ないと思います。
お互いがお互いを触発してプレイを盛り上げていくという、
ジャズ本来の醍醐味がふんだんにキャッチされていて
とてもスリリングでさえありました。

なお、この企画は参加委員による共通のページとして、各委員のサイトでもご覧になれます。
ページのデザインやレイアウトは各委員のサイトで異なると思いますが、
文章の内容は全く同一のものが紹介されます。

なお、当サイトではご意見の到着順に掲載しております。
現委員のメンバー及びリンク先はゴールド・ディスク品質向上委員会のページをご覧下さい。

b.b. Nov.27,1998

【委員の声】 其の一

「手応え充分!」

共演者に今をときめくマクブライドとクラレンス・ペン、
この組み合わせは椎名にとって勝負だったに違いない。
ピアノ・トリオという究極の編成で、頼りになるのはやはり
自分自身。ここで椎名自身があとの二人を触発して自ら
かつてない領域へ踏み込んでいくことが出来るのか。

答えは一曲目の"Pent-Up House"ですでに明瞭だと
感じました。プリティな感じのイントロから一転してエネ
ルギッシュなソロの展開を見た後、マクブライドのアルコ
・ソロを挟んでペンとのフォーバース部分。この一体感、
このスピード感、きた、きたっ!という手応え充分です。

オリジナルの"Indigo Blue"でのイマジネイションに
富んだリリカルなタッチは絶妙。表情も豊かにシンプルに
歌われるピアノは艶やかのひとこと。
さらっとテーマが演奏される"Giant Steps"では
ペンのブリリアントなドラム・ワークにサポートされて
流れるように展開していく椎名のソロ。
非常に冒険的なアプローチをしたラストの
"Tristep"はダイナミズムに溢れた、瀑布のような
イントロから次々曲調が変化するという展開を見せ
ますが、2番目の展開へ移った際に醸し出される
妖しさには脱帽です。

なのに四星なのは、何故にペンのドラム
を全面に押し出すようなミキシングにしたのか、
なんです。場面、場面でシンバルばかりが
強調されていて、手数王のペンをこうまで
くっきり押し出してしまうと、どうしたって
椎名のピアノが奥まって聞こえてしまいます。
しかもそのシンバル、紙を舐めたときのような
味気ない音になっちまって。

エンジニアの好みで椎名のせいでは
ないのでしょうけど、これは痛い・・。
マスターテープを別な人が
ミキシングすれば格段に良くなる
可能性を感じますが。

評点:★★★★

b.b. - Web Site 【apple Jam /Jazz PEOPLE】 / 【Blues PEOPLE


【委員の声】 其の二

「椎名豊はスゴいかもしれない」

今回はけっこう難しい。
好きな邦人ジャズピアニストを3人あげて、と言われると、
今なら佐藤允彦、大西順子(フュージョンだと国府弘子)、
クリヤマコトをあげてしまうのだから、自分でも好みがちょっと
偏っているかな、という気がします。 

椎名豊のこのアルバム、腕のほどは他のプロのピアニストが
認めるくらいというのもうなずけるし、クリスチャン・マクブライドの
ベースは言わずもがな、クラレンス・ペンの、何だか聴いていて
やたら鼓舞されるドラムのプレイもいいなあ、と思ってしまいます。

ただ、オリジナルもいいのだけれど、曲によってはどこかで聴いた
ような印象があり、個性的な部分をもっと聴いてみたい、と言う気も。
その中で、9曲目は変拍子(5拍子?)でもあってかなり自由奔放な
ピアノを聴けました。また、既成の曲ではモンク作品の5曲目は
けっこうスリルがあって、しかも新鮮。

7曲目は何と「ジャイアント・ステップス」。
アレンジでコードチェンジがのびているところがありますが、
難曲をメロディアスに弾きこなしています。ここのマクブライドの
ベースソロがまたすごい。8曲目の「パリの四月」も意表をついています。
1曲目からして非常に元気印。アルバムは出だしが勝負です。 
買うか買わないか、ということになると、私にはちょっとオーソドックスかな、
という気も最初はしていましたが、何回か聴いているうちに、
上記の曲だけでも買い、ということで。 星4つ半。

評点:★★★★☆


工藤 一幸 

(9月1日インフォペッパーのドメイン名が変わりました。)
電子メール(1)   kudokazu@mtf.biglobe.ne.jp (2) kudo.kazuyuki@pep.ne.jp

ホームページ事務所 http://www2s.biglobe.ne.jp/~kudotax/          ジャズ http://club.pep.ne.jp/~kudo.kazuyuki/



【委員の声】 其の三

「ピアノ・トリオの王道を行く中傑作」

今月も素晴らしい。
筆者の知らないところで凄い人達が育っていたのだなぁー。
1曲として凡演がない。勢い(@F)、緊張感(ADH)、うねり(B)、
小気味よいスイング感(CG)、優しさ(E)等、ピアノ・トリオを聴く
歓びを充たしてくれる。

気合は入っているが力は入っていない。
無駄フレイズは見られないし観念性とも無縁だ。
心の赴くまま弾いた伸びやかさを感じさせる。
オリジナルは勿論のこと、いつか聴いたような
スタンダード(CG)も異彩を放ち、ジャズメン・オリジナル
(@DF)もオリジナルと同じレベルまで昇華している。
ピアノ・トリオの伝統を踏まえつつ独自の表現を獲得しているからだ。

あえて注文すれば、世界の小さなプレイが散見されることで、
大きなうねりで聴かせる場面がもっと欲しい。
また、 Pennは黒豹の俊敏性と獰猛性を備えたドラマーだと思ったが、
些か切れ味が鈍い。ともあれ、会心作だろう。
筆者も心地よい満腹感に浸っている。

1/4星おまけ。

評点:★★★★☆

林 建紀 (現GD品質向上委員会長)
tatsunori hayashi web site : JAZZ DISC SELECTION
tatsunori hayashi web site : http://www.netq.or.jp/~user/tatsu/
email : tatsu@netq.or.jp



【委員の声】 其の四

「ピアノトリオ・ファンなら是非買いの一枚」

2回連続でJ−JAZZを斬ることとなったが
ハッキリ申し上げて今月のGDは良い。
比較して申し訳ないが先月の大坂がいろいろと
考えすぎだった(と感じた)のに対して椎名は純粋に
一ピアニストとしての姿を届けてくれた。

特に奇を衒った演奏でもなく素直すぎるほどだが、
その分集中して聴けたし彼の力量も十分伝わる
アルバムである。特に素晴らしいのがスタンダード
&ジャズメンオリジナルで、@など勢いが凄く
スリリングな快演だ。Cもしっとりとした仕上がりで良。
Dは私の苦手なモンクだが上手く料理してあり聴きやすい。
Gは原曲のイメージを損なわないように考えられている。
逆にFは正攻法で行きすぎ?もうひとヒネリ欲しかった。
残念なのは椎名のオリジナル曲が今一つ魅力的でないこと。
A、Bあたり悪くはないけど、ちょっと気取りすぎている感じで
のめり込めなかった。

あと曲によって、あるいは部分的にベース、ドラムがウルサすぎて
ピアノが霞んでしまう部分があること。その分マクブライトとペンの
快活な演奏が楽しめるのだけれど...
ともあれ、これまで5回のGDの中では最も優れたアルバムであり
ピアノトリオファンなら是非聴いておきたい一作だと思う。
ただしGDという冠がついている以上、評点はやや辛く4点。

評点 :★★★★

増間 伸一

E-MAIL:JZB03622@niftyserve.or.jp
HOMEPAGE1:http://www.asahi-net.or.jp/~kd5s-msm/
HOMEPAGE2:http://www.asahi-net.or.jp/~kd5s-msm/pats.htm


【委員の声】 其の五

「あえて難癖をつければ」

正直5回目の今回が一番書きにくかった。
テクニック及び音楽理論のわからない私と
しては、唯一の評価基準である聴いて気持
ちが良いかに従うしかない。

しかも今回は(今回も?)原稿が一番遅く、
他のメンバーの意見をすべて読んでしまった
ので余計難しくなってしまった。まずアルバム
を通して聴いてみて、これといった不満はない。

それどころか、聴いている間は快感さえ覚える。
思い切ってヴォリュームを上げてみると、マクブラ
イドのベースが力強い。その反面、ドラム特にシン
バルの音にキレがない。

椎名のピアノはスピード感もあり、顔に似合わない
優しいタッチ(失礼)も素晴らしい。しかし、聴き終わ
るとすぐにまた聴きたくなるという気が起きてこない。
この点が自分でもなぜだかわからないで困っている。
愛聴盤になるかどうかはもう少し聴き込んでから..

評点:★★★☆  

from : STEP 片桐 俊英  

e-mail:step@awa.or.jp

HomePage:http://www.awa.or.jp/home/step/)


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