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page3 - 第 5期 第 75弾 1998年 9月 23日 発売

スウィート・ジョージア・ピーチ / ラッセル・マローン Impulse 原盤 MVCI-24011ユニバーサル・ビクター

@ Mugshot (Malone) A To Benny Golson (Malone)
B Strange Little Smile / With You I'm Born Again (Malone / Shire-Connors)
C Sweet Geogia Peach (Malone) D Rise (Armer-Badazz) E Mean What You Say (Janes)
F Song For Darius (Malone) G Bright Mississippi (Monk) H Someone's Rocking My Dreamboat (Rene-Scott-Rene)
I For Toddlers Only (Carter) J Swing Low,Sweet Chariot (Traditional) *K Yesterdays (Kern-Harbach)

*K Yesterdays was extra track for International only

Russell Malone - guitar / Kenny Barron - piano
Ron Carter- bass / Lews Nush - drums
Steve Kroon - percussion on track@&

Produced by Tommy Lipuma / recorded and mixed by Al Schmitt
Recorded at Avatar Studios,NYC Feb.17-19,1998

大雨に台風と、列島は災難続きでしたけど、
非日常の経験をされてしまった方には心からお見舞い申し上げます。
普段は普通に暮らせてることの有り難みを忘れがちですが、
それはとても幸せな事なんだなと、改めて痛感しました。

さて早いもので、またひと月が経ちました。
今月は地味ながらも、ひとりのミュージシャンの作品という姿勢の
アルバムが対象になってなんとなく心が落ち着いてます。

なお、この企画は参加委員による共通のページとして、各委員のサイトでもご覧になれます。
ページのデザインやレイアウトは各委員のサイトで異なると思いますが、
文章の内容は全く同一のものが紹介されます。

なお、当サイトではご意見の到着順に掲載しております。
現委員のメンバー及びリンク先はゴールド・ディスク品質向上委員会のページをご覧下さい。

b.b. Sep.28,1998

【委員の声】 其の一

「自分をさらけ出せばもっと良かったのに・・」

サックスのような菅楽器とか弓で弾くヴァイオリン等なら、
肉声に近いニュアンスでメロディを唄わせることも技術さえ
あれば簡単ですが、ピアノやギターのような減衰系の楽器で、
ヴォーカルのように弾くのは至難の技。

いったん弾かれた弦はどうビブラートをかけても音は減衰していく
宿命ですから、発声でいうコブシはかけようがない。
そんなギターの弱点をうち消すコード弾きといったテクニックさえも
一切使わずに弾き通したDには、このアルバムにかけるマローンの
根性を感じてしまいました。

そんなプレイ・スタイルにも象徴されるように、
ギター弾きマローンの全身全霊が6本の弦に
注ぎ込まれた入魂のアルバムとなってます。

唯一の不満は、渋く、渋くと意識しすぎたせいか、
アルバム全体にキレが乏しいのと、
マローンの強烈な個性がガツンとこない点でしょうか。
しかし次回作は相当に期待していいものと思います。

そう言うわけで、充分に秀作ではありますが、
ゴールド・ディスクにするには、まだちょっと薄味です。

評点:★★★★

b.b. - Web Site 【Blues PEOPLE】 【Jazz PEOPLE


【委員の声】 其の二

「けっこう売れそうなアルバム。でも私の好みとはちょっとズレる。」

インパルスへの移籍第一弾。
トミー・リピューマのプロデュースであれば、
かなり気合が入っているアルバムです。
参加メンバーもすごい。歌心はあるしピッキングも正確で
フレーズもいいので、そういう意味では聴いてて安心。

基本的にクァルテットで勝負していて、むやみに早弾きを
しないでリラックスして弾いています。
ただ、いろいろなギタリストの影響を感じさせ、
器用に自分の演奏に取り入れているようですが、
器用すぎて、ギターに個性とスリルを求める私の好みとは
ちょっとズレてしまいます。 

1、4、7曲目の彼の作曲とギターのフレーズ、3、9曲目の
ギターでバラードを弾くうまさ。5曲目のハーブ・アルバートで
有名な曲の渋さ、11曲目のソロ・ギター。でも一番印象に残ったのは
日本盤ボーナストラックの12曲目ギターでの「イエスタデイズ」。
買うべきか買わざるべきか。
いつもならこのアルバムは候補からはハズれているような気も。 

この場でやはり9月に発売されたアル・ディメオラの
「インフィニット・デザイア」(Telarc) の方が好き!
と言ったら袋叩きにあいそうなのですが...。
でも本当。  

評点:★★★☆

工 藤 一 幸

メールアドレス(1) kudokazu@mtf.biglobe.ne.jp メールアドレス(2) kudo.kazuyuki@pep.ne.jp
事務所ホームページ http://www2s.biglobe.ne.jp/~kudotax/ 個人ホームページ http://club.pep.ne.jp/~kudo.kazuyuki/


【委員の声】 其の三

「ウォームなサウンドに身をゆだねて...」

本企画3弾目にして初めてゴールドディスクの名に値するアルバムの登場だ。
ラッセル・マローンのリーダー作は92年のデビュー盤も結構好きで聴いているが、
本作はそれよりももっと気持ち良く聴けた。

ハリー・コニックJr.には余り食指が動かないが、
マローンのオーソドックスなギターは安心してくつろげるサウンドだ。
最初から最後まで、暖かい音色に包み込まれるような快感に浸ってしまう。
ケニー・バロンのピアノも美しい音で、ギターをより引き立てている。
ルイス・ナッシュの軽快なドラミングもスカッとさわやかだ。(コーラよりも)

マローンのオリジナル曲はどれも水準以上の出来で、
作曲家としての才能もますます期待が持てる。
曲順もかなり工夫されているようで、12曲(64分余り)を通して聴いても飽きることがない。
全曲ハズレはないが、あえて選べば6曲目の「MEAN WHAT YOU SAY」か
7曲目の「SONG FOR DARIUS」あたりがマイ・ベスト。
いずれにせよ、私の愛聴盤の一枚に加わることは確実である。  

評点:★★★★☆


片桐 俊英

(ホームページ連日更新中 HomePage:http://www.awa.or.jp/home/step/)


【委員の声】 其の四

「よく出来た優等生的秀作」

本企画も、ようやくノーマルなジャズアルバムのレビューになり少し安心している。
で、ラッセル・マローンである。ギターのように音に表情をつけにくい楽器がメインとして60分以上、
聴き手を飽きさせないのは至難の技だと思うが、本作は選曲の良さでその点をカバーしている。

アップテンポの曲で聴かせる早弾きも聴いていて気持ちが良い。
この人の場合近い世代の黒人ジャズギタリスト(M・ホイットフィールド、K・ユーバンクスら)に比べ
ギターの音がまろやかで太い感じがする。録音の関係もあると思うが、アルバムを聴き通しても
疲れないのはそんな理由もあるのだろう。

曲単位みると@、Cあたりはアップテンポでカッコイイ曲。
A、E、Fはゆったりとしたメロディアスな曲で本作ではもっとも光っている。
いかにもジャズらしいIは、軽快そのもの。
H・アルパートのカヴァーDは、はっきりいって成功しているとは思えないが、
そのチャレンジ精神は評価しておこう。

アルバム全体の評価としては、いかにも優等生的な作りである。
バックのメンバーも堅実なプレイを聴かせているし、ジャズギター入門アルバムとしても勧められる。
逆に少々スリルや若さが足りないかな、という感じもした。
いろいろ書いたが、よく出来た秀作であることは間違いない。

評点 :★★★★

増間 伸一 (Masuma's Homepage) http://www.asahi-net.or.jp/~kd5s-msm/


【委員の声】 其の五

「正統派ジャズ・ギターを堪能」

Russell Maloneである。大物に相応しい名前だ。
筆者は第3作の"Wholly Cats('95 Venus)"しか知らないが、
技巧に走った嫌いがあり余り評価していなかった。

彼を見直したのは諸兄と同様 Diana Krall Trioでのプレイであった。
Christian McBride(b)とのコンビは、Barney Kessel(g)とRay Brown(b)に迫る見事なものだ。
旧作は彼も不満だったらしく、"音楽を聴かせる"本作のコンセプトが理解できる。

快調に飛ばすアップ物も鮮やかだが聞き物はバラードとメディアムで、明らかに勝負に出ている。
この手のプレイはごまかしがきかない。
楽器のコントロールが余程堅固でないと様にならない。
5曲で見せた作曲のセンスも非凡で須く合格点。

評点:★★★★

林 建紀 (現GD品質向上委員会長)

tatsunori hayashi web site : http://www.netq.or.jp/~user/tatsu/
email : tatsu@netq.or.jp


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