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page1 - 第 5期 第 70弾 1998年 7月 23日 発売 - 「テイク・ザ・トレーン」徳間ジャパン TKCB-71423 (アルカディア原盤)

"Thank You,John! : Our Tribute to John Coltrane / ARKADIA JAZZ ALL STARS 国内盤 TKCB- 71423 - 1998年7月23日発売

@ Syeeda's Song Flute A My Favorite Things B Moment's Notce C Naima D Touch Me Lightly E Giant Steps
F The Night Has a Thousand Eyes G I Want To Talk About You H Moment's Notice I Take The Trane

Benny Golson(ts) on track@D / David Liebman(ss) on trackAG / Nova Vossa Nova on trackBF
Billy Taylor Trio on trackCH / Ted Rosenthal Trio on trackE / Red Time on trackI

Produced by Bob Karcy
recorded in N.Y.City 1997


いよいよこの企画の第一弾がスタートしました。
この企画は参加委員による共通のページとして、各委員のサイトでもご覧になれます。
ページのデザインやレイアウトは各委員のサイトで異なると思いますが、
文章の内容は全く同一のものが紹介されます。

なお、当サイトではご意見の到着順に掲載しております。
現委員のメンバー及びリンク先はゴールド・ディスク品質向上委員会のページをご覧下さい。

b.b. July26,1998


【委員の声】 其の一

「遺産を受け継ぐ者達」

アルカディアが目指すのは新しい時代の新しいジャズという。
そのアルカディアの代表者ともいうべきエグゼクティヴ・プロデューサー、
ボブ・カーシーの言葉によれば、ジャズの栄光ある過去に対する尊敬の念と、
ジャズの輝かしい未来への期待と希望を具現化すべくレーベルを興したそうです。

そんな男のもとに集まったミュージシャン達の、これはトレーンに捧げる企画作品。
その意味で私は大いにこの作品に興味を持ちました。
過去の遺産を受け継いだ者達が今度は自分達自身の手で新しいレールを敷いていこうというのだから、
そのレールは栄光ある過去へ遡ることもできれば、一緒に未来へと旅することも出来るはずだ。
邦題の「テイク・ザ・トレーン」にはそんな意味合いも込められてるような気がします。

だからこの作品を聴きながら、トレーンの幻影を探すことは初めから無意味なこと。
各々のミュージシャンはトレーンの愛した曲をマテリアルにして、
自らの未来へと羽ばたこうとしているのだから。

モブレイのようにかなり忠実に雰囲気を再現したトラックもあったり、
随所にトレーンの残り香を嗅ぐ思いもするけれど、この作品は細かくどの曲がどうと言うのではなく、
アルカディアの目指すジャズというものをここから感じ取ればいいのだと結論しました。

聴いて納得ってやつで、駄盤ではないけれどこれを生涯の愛聴盤にしようとか、
すぐにもまた聴きたくなるというほどの感動は受けなかったです。

トレーンの没後30周年という冠や、今月の作品で他に優れたものが初めから候補にあれば、
SJ誌もこの作品をゴールド・ディスクには選定しなかったのではないかという気がすることを付け加えておきます。

始まったばかりの「ゴールドディスクを斬る」ですが、今回最初だからこそ書いておきたいことがあります。
いつも感じる疑問ですが、SJ誌には毎月必ず選定ゴールドディスク(以下 GD)が1-2枚選ばれているのです。
本当に素晴らしい作品に贈られるはずのGD、ピンと来るものがない月は「該当無し」でいいのではないでしょうか。
SJ誌がジャズ市場の活性化を担っているのは承知ですが、
なにも無理して横並びに選定する必要はないのでは、と思うのです。

10年経ってもGD選定という勲章が色褪せない、
時の流れを超えて聴き継がれるような作品と思われるものだけを選定して欲しいなと願っています。

b.b. - Web Site 【Blues PEOPLE】 【Jazz PEOPLE


【委員の声】 其の二

「現代流コルトレーンミュージックを楽しむアルバムこっそりあなただけに教えます。」

このアルバムはいいですよ。
コルトレーンの熱気を感じさせたり、コルトレーン解釈を聴かせるアルバムというよりも、
それぞれのミュージシャンの自由なスタンスでコルトレーンの曲を奏でているアルバムです。

ハートウォーミングな音色で低音中心シーツ・オブ・サウンドもやるベニー・ゴルソン、
知性的で鋭いフレーズながらも何となく空気感が漂うソプラノ・サックスのデイヴ・リーブマン、
明るくボサノヴァしまくっているノヴァ・ボサ・ノヴァ(テナー・サックスは何とボブ・ミンツァー)、
高齢なのに洗練されたピアノのビリー・テイラー、
「あの」曲を意表を突いたアレンジでピアノを弾くテッド・ローゼンンタール、
そして、ラップでコルトレーンその他の音楽を凝縮しているレッド・タイム。
レッド・タイムは好き嫌いが分かれそう。私は好きです。

個人的なひいきは、コルトレーン研究家としても知られるデイヴ・リーブマンの参加曲。
少なくともこのアルバムをBGMにしても、誰も咎めないと思います。 
このアルバムの参加者では、知る限りでは
"This Is For You, John/ Benny Golson" Recorded 1983.(Baystate)と
"Homage To John Coltrane/ Dave Liebman" Recorded 1987.(Owl)という
トリビュート・アルバムが過去に出ていて、
2人のスタンスは今回の演奏と割と近いと思うので、こちらも聴き比べてみるとおもしろいかも。
熱気を感じたいなら、 "Tribute To John Coltrane - Select Live Under The Sky '87"(Paddle Wheel)がマル。

工 藤 一 幸

メールアドレス(1) kudokazu@mtf.biglobe.ne.jp  メールアドレス(2) kudo.kazuyuki@pep.ne.jp
■事務所ホームページ http://www2s.biglobe.ne.jp/~kudotax/ ■個人ホームページ http://club.pep.ne.jp/~kudo.kazuyuki/


【委員の声】 其の三

「オムニバスの利点を生かした異種(?)格闘技戦」

元来、オムニバス嫌いの私だがコルトレーンという共通の素材を、
それぞれかなりタイプの異なる奏者達がどう料理するか、とういう点で興味深く聴いた。
トレーンの友人であったゴルソンだが@Dとも相変わらずくすんだトーンで
ウネウネと進む独特のソロを聴かせていて個性的だ。
ルドンのちょっと抽象的なソロも面白い。

迫真的という意味では、やはりリーブマンの手が挙がるだろう。
Aは力強くGは優しい。どちらもトレーンの持ち味だった。
ノヴァ・ボサ・ノヴァはとても楽しく聴けた。
ミンツァーの太いテナーも心地良いが久々にJ・フォードのソロが聴けたことが個人的には嬉しい。

ビリー・テイラーはアッサりとした演奏で、
アルバムのちょっとしたアクセントになっているが聴いた後の印象は薄い。
Eで長く屈折したソロピアノから一気に名曲を弾ききるローゼンタールには
恐いもの知らずの若さが感じられる。

しかしいくらオムニバスとはいえIは不要だったのではないか。
演奏自体は楽しめるものだが、このアルバムに収録することには無理がある。
全体的には、リーブマンの気概とノヴァ・ボサ・ノヴァの楽しさが印象に残る一枚だ。

増間 伸一 (Masuma's Homepage) http://www.asahi-net.or.jp/~kd5s-msm/


【委員の声】 其の四

「良くも悪くもARKADIAレーベルのサンプラー」

コルトレーン没後30周年企画ということで、ジャケットはなかなか良い出来だ。
私は普段「バラード」「ソウルトレーン」「ブルー・トレーン」しか聴かないので、
いわゆる"神がかり"状態の好きな信奉者ではない。

しかしそんな私でも、トレーンに捧げる音楽には高い精神性を期待したが、
各グループ毎にスタジオもエンジニアも異なり、やや統一感に欠ける印象。
通して聴いて一番良かったのはやはりデイヴ・リーブマンのソプラノ。
ベニー・ゴルソンもワンホーンだとアレンジに凝りすぎないようで、
独特の音色(コルトレーンとは対照的)が楽しめた。
ノヴァ・ボサ・ノヴァは私にはピンとくるものがない。
最後のラップは文字通り"蛇足"といった印象。

蛇足ついでに、ビリー・テイラーの演奏はオーソドックスなピアノトリオで
結構良かったが、ライナー・ノーツに1906年生まれとあってビックリ。
これはピアニストでない同姓同名のビリー・テイラーの生年だろう。
 
結論、このアルバムにコルトレーンへの思い入れを期待すると、
やや肩すかしを食ってしまうおそれあり。
ARKADIA所属アーティストの顔見せとしてとらえたい。

Sound Space Step片桐 俊英) July 1998


【委員の声】 其の五

「トリビュート作? コルトレーン曲集だろうが」

解説に" それぞれが(中略)個性を充分に発揮した演奏の中に、コルトレーンの
精神、コルトレーン・ミュージックの本質といったものがくっきりと浮かびあが
ってくる "とあるが、もとよりそんなことを期待するディスクではあるまい。

 @Dはごく普通のモダン・ジャズ。Golsonのソロは閃きに欠け垂れ流しに堕し
易いのが難点。好演だが印象は薄い。 AはLiebmanの実力からすれば物足りない。
4ビートという設定に説得力はない。一見熱演だが熱情が制御され凄みに欠ける。

GはJoe Pass紛いのギターがイメージを損った。BはHard Bop+Bossa Novaとも
いうべき清新なサウンドで新たな命が吹き込まれている。FはColtraneらしさで
一歩を譲るが出来は上々。 ともにMintzerが太く固い音で存在感を誇示している。
Cは一服の清涼剤の趣だが、彼にこんな曲を弾かせてはいけない。静謐な佳曲が
古びて聴こえる。相変らずだと呆れていたら、Hでアグレッシヴな快演を見せた。
筆者が好きな最もTaylorらしくないTaylorだ。Eは仕掛けが過ぎた。待ちわびた
イン・テンポになり、オー来た来たとノリ始めたらさっさと店仕舞い。知能犯だ。
Iくらいデフォルメされると却って痛快だが勿論ジャズの楽しさとは別物だ。

 本作が筆者のようなColtraneから決定的な影響を受けた世代を納得させるのは
難しいだろう。それ以前に、概ね好演止りで快演がABHでは推薦しかねる。

林 建紀 (現GD品質向上委員会長)

tatsunori hayashi web site : http://www.netq.or.jp/~user/tatsu/ email : tatsu@netq.or.jp


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