Page1 - Page2

2003/12/30

 朝食のあと「今日はどちらに行かれますか?」「南崎まで」「それじゃ、お送りしましょう」と民宿のおじさん。建物はきれいとは言えないし、食事も?だけど、こんなサービスがうれしい。公共の交通機関が無いこの島では本当にありがたい。
 軽ワンボックスを降りて南へ歩き出した。母島の南の端の南崎へは約1時間、アップダウンの少ない遊歩道の予定だ。しかし、道はどんどん下へ降りていく。緩く右にまわり込みながら増々下に降りていく。「あれっ? 海岸に出ちゃった」どうやら道を間違えたようだ。急な坂道を引き返す。スタート地点から50mも行かないうちに分岐点があり、そこを見逃していたのだ。1時間近くのタイムロス。昨日の下山で傷めた右膝が傷み出す。まだ、スタート地点なのに。
 正解の道はガイドブックどおり平坦な道が続く。明るいジャングルはとても快適だ。南崎のすぐ手前に広場があった。そこはメグロが非常に多い。群れているわけではないのに15羽近くいる。オガサワラカワラヒワも20羽くらい飛んできた。写真を撮っていると我々より1時間後に出発したはずの親子が追い付いてきた。
 南崎は大きめの石がゴロゴロした海岸だ。美しい海岸と紹介されてあったが、そうとは思わなかった。しかし、そこから登り20分の小富士から見下ろした南崎はエメラルドグリーンのとてもきれいな海岸だった。シュノーケリングしている人が見える。彼等はきっと美しいサンゴや熱帯魚を見ているのだろう。
 視線を水平方向に移すと、これまたすばらしい眺望が広がる。前日の乳房山からの眺望も良かったが、こちらはさらに美しい。ほぼ360度水平線が見渡せる。この感動をリアルに記録しようと魚眼レンズで時間をかけて丁寧に撮影した。


マルハチ


メグロ


小富士からの眺望


きれいな海

 夕方、港の近くの丘の上に行った。今の太陽の位置からすると向島の右の水平線に沈むだろう。太陽が沈むまで時間があるので、双眼鏡でクジラの姿を探した。前日にはジャンプする姿が見れたらしいが、今日はどこかにお出かけのようだ。太陽が水平線に近付くにつれ、小さな丘の上は日没を見る人であふれた。沈む夕日をカメラやビデオで撮影しながら喜びの声を上げ、日没後帰っていった。残ったのは我々だけ。「これからが美しいグラデーションの見れる時間なのに」
 夕食後、ひとりでこの丘へ再びやって来た。星の写真を撮影するためだ。西の空に月と火星が並んで見え、オリオン座が天頂近くに見える。2日前とは違い穏やかな海が広がり、月の明かりが怪しく照らしている。南の低い空にはカノープスが見える。この星は大阪周辺からでは南中高度が0〜2度程度なので、見ることが非常に難しい。しかし、緯度の低い小笠原では、南中高度が高いので簡単に見ることができるのだ。
 薄着でのんびりと座って見る冬の星座。これはとても不思議な感じだった。


きれいな夕日


さらに美しく


オリオン座

2003/12/31

 本日は15時のははじま丸で父島へ引き返す。それまでの時間、評議平・御幸之浜を散策する。この島での珍鳥の出現率が高い場所なのだそうだ。きれいな緑色が動いた。グリーンアノールというアメリカ産のトカゲだ。咽を広げれば風格十分でここのジャングルにとても似合っている。しかし、移入種ということでこれらも分布拡大が目まぐるしく、固有のオガサワラトカゲの生息に影響が出ているらしい。
 カラシラサギがアンテナの上にとまっていたが、後方から接近したオガサワラノスリに驚き飛んでいった。もう1羽ノスリが現れ、我々の頭上をぐるぐると旋回しながら高度を上げる。本州で見るノスリと違い、とても白い。
 ムナグロやキョウジョシギを観察し、港へ戻り出港の時を待った。港ではイソヒヨドリがさえずっている。とてもきれいな声だ。


グリーンアノール


オガサワラノスリ

 父島へ帰る船でもデッキで過す。行きがイマイチだったのでカメラもセットせず、ボーッと海を眺めていた。すると次から次へとカツオドリが飛んで来て船のまわりをぐるぐるとまわり出す。大慌てでカメラを用意し手持ちでシャッターを押した。カツオドリに必死になっていると、目の前にクジラが浮かび上がってきた。「うわぁ〜〜〜っ」シャッターを1度も押せず。最高のチャンスを逃してしまった。とても残念。

 父島の民宿で年越しそばを食べたあと、港の近くの大村海岸へ行った。このあたりは父島の繁華街のようできれいなペンションや飲み屋がたくさんある。海岸ではカウントダウンパーティーが行われており、シャンパンを飲ましてもらえると聞いていたのだがまだのようだ。きっとカウントダウンの頃に配って乾杯するのだろう。この時間は年越しそば、コーヒー、ラムが振る舞われており後者2つをいただいた。
 カウントダウンまで待てないので、千鳥足で宿まで帰りそのままおやすみなさい。今年の年越しも夢の中だった。


カツオドリ

2004/01/01

 本日は14時のおがさわら丸でこの島から離れる。それまでの時間、三日月山展望台からクジラウォッチング。大村海岸から舗装道路を歩いて約25分。標高は200mくらいだろうか。海からほぼ垂直の崖の上にある展望台で、西の海が広く見渡せる。
 到着してすぐに岸から150m位の場所から潮が上がった。初日に見た2頭のようだ。この展望台からは見下ろすような感じ。頭のコブと白く大きな胸ビレが見える。とても大きい。山の上からの観察では水面下も見えるので、なかなかいい。距離が遠いが、双眼鏡・望遠レンズという鳥見道具の活躍でばっちり観察できる。
 ザトウクジラ親子は何回か姿を見せたあと遠くへ離れていった。


ザトウクジラ

 大村海岸では昨夜のカウントダウンパーティーの続きで、海開きのイベント中だ。大急ぎで展望台から下だり、海岸へ向かった。人垣をかき分け水際のいい場所を確保した。係りの人が大きなプラスチックのケースを運んできた。その中にはアオウミガメの子供が入っている。そしてここから放流するのだ。係りの人から最前列の子供達にアオウミガメが手渡された。とても大きく育っている。自然状態では8〜10月に孵化し、海に泳ぎ出す。
 子供達が砂浜の上にそっとアオウミガメを放した。海に向かってまっすぐに進みだす。途中で休むものもいれば、方向を間違えるものもいるが、ほとんどは大急ぎで海に入っていく。TVでよく見る映像だ。ただし、小ガメの体はかなり大きい。泳ぎだしてしばらく進むと呼吸をするために頭を出す。その時にまわりの風景を覚えているという。本当かどうかはカメに聞かなければわからない。


アオウミガメ


風景を確認?

 おがさわら丸は定刻から少し遅れて岸壁を離れた。見送りの人がたくさんいる。デッキにもたくさんの人が出てきてお世話になった人や、この島で仲良くなった人に手をふっている。「いってらっしゃい〜」帰る人に送る言葉だ。また来てね、という事だろう。そういえば到着した時に「おかえりなさい〜」と迎えられたような気がする。僕の隣で手をふっていた女の子がハイビスカスの花を投げ、エメラルドグリーンの海に落ちた。ずいぶん昔に見たドラマのワンシーンのようだ。
 シーカヤックが3艇登場し、エスキモーロールのパフォーマンスを披露。クジラウォッチングの船やダイビングの船が小笠原丸と並走し、手をふる。ウエットスーツを着てダイビングの船の2階にいた男女5人が海に飛び込んだ。こんな「お見送り」を見たのは初めてだ。先頭の船が「地上の星」を大きな音量で流す。「風の中のすばる〜」曲の内容がこの場面に合っているとは思わないが、 中島みゆきの声がとてもいい雰囲気だ。僕には思い残すことは何もないが、なぜか熱いものが込み上げてきた。眼に涙を浮かべ「さよ〜なら〜、また来るよ〜」心の中で叫んだ。

 陽が沈むころ小笠原丸は大きく揺れ始めた。また食事が咽を通らない。船が揺れ始めて僕はこう思うのだ、「二度と来るもんか」と。


さよ〜なら〜

 ほんとうに長い旅だった。でも楽しくてあっという間に時間が過ぎていったようにも感じる。見れなかった動物やできなかった事など宿題が残っているので、ぜひまた行きたい。しかし、、、、、、問題が。とにかく船がつらかった。島で遊んでいる時は「あ〜時間が足りない。絶対また来よう」って考えているのだけれど、船が揺れはじめ気分が悪くなると、後ろ向きな考えになってしまうのだ。それと関西からでは東京までの往復の時間と費用が大変。東京に住んでる人がちょっとうらやましく思えた。
 次回、行く決心がついたら絶対夏にしたいと思う。そして、カツオドリの子供を見て、オカヤドカリを捕まえ、そしてイルカと一緒に泳ぐのだ。

 

 

最後まで読んでくれた方 ほんとうにありがとうございます