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 奄美・沖縄本島・石垣・西表と南下していった我々の探鳥旅行の次の目的地は、これもまた憧れの小笠原だ! 世界中でここにだけにしかいないメグロ。間近で見れるザトウクジラ。一緒に泳いでくれるイルカ。頭の中は楽しいことでいっぱいだ。
 ただアクセスがたいへん。家からバス・電車を乗り継ぎ大阪駅へ。そこから夜行バスで東京まで8時間。山手線でおがさわら丸の出港する浜松町へ行き、やっと旅のスタート地点に立つことができる。ここから父島までなんと25時間-約1000Kmの船旅。
 現地での滞在日数・往復の時間を合計すると7日間必要だ。カレンダーを見ると2003/04の年末年始は土日がいい位置にあり9連休。来年はもう少し短そうだ。2005年の春から「おがさわら丸」が高速艇に変わるらしいが、それでは船の上からの海鳥の観察ができないかもしれない。GWや盆休みに7日以上連休をとるのが難しいので、今年の年末年始が最後のチャンスと判断した。
 11月上旬に小笠原海運のHPから2等の予約をしようとしたところ、満席で予約できない。あ〜っ、憧れの小笠原がさらに遠のいていく。ところがなぜかパックツアーは予約を受け付けていて、まだ空きがあるそうだ。これは怪しい。直接予約センターにTELしてみた。「2等なら、まだ空いていますよ〜」 あとでHPをよく見ると「インターネット予約とは別に枠がある」みたいな事が書いてあった。いつもながらホントお間抜けな話である。
 ということで船・宿の確保ができ、出発までの約2ヶ月の間はガイドブックやHPでの下調べの時間だ。いつもなら調べていくうちに気分が高まっていくのだが、今回は逆だ。「小笠原の森は戦争中にほとんどが刈られ、現在の森は二次林であること」「メジロは人間が持ち込んだものであること」「1月1日が海開きとはいえ、泳ぐには肌寒いこと」「冬の間は鳥やその他の夏に見れる生物が少ないこと」等々。ガイドブックを読めば読むほど残念な気持ちが膨れてくる。やはり無理矢理、夏に休暇をとればよかったかなぁ〜。

 

2003/12/27

 あっという間に今日は12月27日。昨夜は強い冬型の気圧配置でところどころ雪が降っていたが、夜行バスは時間どおりに東京に到着した。乗船手続きも手際よく済ませ、おがさわら丸はレインボーブリッジをくぐり、静かな東京湾をスムーズに南下した。左のデッキから房総半島、右のデッキから富士山が見え、時々カモメ、ウミネコが横切った。しかし、快適な船旅はここまでだった。太平洋に出た瞬間から白波が立ち始め、船は大きく上下に揺れはじめた。それまでたくさんの人がデッキにいたが、ひとりそしてまたひとりと減っていった。
 その頃から波間に鳥の姿が見えはじめた。黒-白-黒-白といった感じに背と腹を交互に見せながら飛ぶのはコアホウドリ。翼の先が黒い小さなカモメはミツユビカモメ。ミツユビカモメの若鳥は背中の模様が美しい。ふと周りを見渡すと、デッキにいるのはウォッチャーだけになっていた。その後クロアシアホウドリが数回登場した程度で夕方になった。前線通過後で空には厚い雲が広がっており、夕日を見ることができなかった。
 揺れる船内に戻ったとたん気分が悪くなってきた。デッキで鳥を見ている間は元気だったが、緊張感がなくなったためか頭がふらふらする。夕食は咽を通らなかったので部屋へ戻り毛布にくるまった。


コアホウドリ


ミツユビカモメ


荒れる海

 

2003/12/28

 昨夜寝たのが18時頃で今朝起きたのが6時半。あ〜よく寝た。船の揺れは昨夜よりましになっているが、船内にいると気分が悪いので、すぐにデッキへ出た。海の色が違う。空気が冷たくない。南下しているのが肌でわかった。昨日たくさん見たコアホウドリの姿はなかったが、オーストンウミツバメを見ることができた。
 昨夜の大揺れで父島の到着予定時間が1時間遅れるとアナウンスがあった。青空と雲が半分くらいで時々陽が射した。とても眩しい。青い空、蒼い海、白い雲、そしておがさわら丸。見えるのはそれだけ。大平洋のど真ん中って感じだ。
 到着1時間前、父島が見え始めた。思っていたよりも岩が多く急峻だ。サンゴできれいな海の色の港にゆっくりと接岸した。民宿の人が旗をもって待っていてくれる。こちら船の人は冬の格好だが、島の人のなかには短パンTシャツの人がいる。


今回の荷物

 午後から予約してある「ドルフィンスイム&ホエールウォッチング&南島上陸」へ参加する。タイトルどおりイルカと泳ぎ、クジラを見、入島制限のある南島に上陸するというツアーだ。ウエットスーツを着込み、いつでも海に飛び込める格好で小さな船に乗った。参加者11名と船長とガイドの合計13名。
 港を出るとまだ海は荒れていて大揺れ。さっきまで乗っていたおがさわら丸とは桁違いの大揺れだ。小さな船は木の葉のように波にもてあそばれている。そんな揺れの中、船長は冷静にザトウクジラを見つけた。「前方1時から2時の方向!」海面から5mくらい潮を吹き上げ、背ビレを少し見せた。わずか4〜5秒。半数の人が見れなかったようだ。ザトウクジラは10〜15分に一度呼吸しに上がってくるということで、そのまま待機。船長の言うとおり10分後に再び潮が上がった。2頭の姿が見える。親子らしい。背ビレを2・3回見せた後、きれいに尾ビレを見せ深く潜っていった。 
 次は南島上陸。この島は環境保全のため入島制限があるのだが、年末年始は除外されている。船の先を高さの同じ岩に押し付け、そこから全員が上陸した。歩いてもいい場所が決められており並んで歩いた。美しい砂浜にはヒロベソカタマイマイの化石がたくさん落ちている。ガイドが拾って見せてくれたのはアオウミガメの卵の殻だ。今までこのようなオプションツアーに参加したことがなかったが、知識豊富なガイドと一緒に歩けるのはとてもいいことだと思った。丘の上で記念写真を撮っていると後方をカツオドリが飛んでいった。
 船に戻り次はイルカ探しだ。9割の確率で見れるというイルカは今日に限って姿を見せない。ツアーの終了時間が近付いた時「みなさ〜ん、港へ帰るのが遅くなってもいいですか〜」 ありがたい船長のご配慮。しかし、いくつかの入り江をまわったがとうとうイルカの姿を見つけることはできなかった。あ〜イルカと一緒に泳ぎたかった〜。


ザトウクジラの尾ビレ


卵の殻


ヒロベソカタマイマイの化石

2003/12/29

 今日は早朝から「ははじま丸」に乗り込み母島へ向かう。わずか2時間ほどなので船内には入らず、デッキで過ごす。出港してすぐにクジラの潮吹きがふたつ見えた。きっと昨日見た親子だろう。その後はカツオドリが遠くを何回か飛んだくらいでとくに変化もなく母島に到着した。
 民宿のおじさんが軽ワンボックスで迎えに来てくれていた。港の上でオガサワラノスリが旋回する。父島よりはるかに自然が多そうだ。
 民宿に着くまでの車内での会話「ようこそ、何をしにこられました?」「メグロを見に来ました」「それじゃ、うちの民宿におるからゆっくり見なさい」「はぁ?」まさか捕まえてカゴで飼っているんじゃないだろうな。が、民宿に到着して不安はすぐに消えた。裏庭にパイナップルが置いてあり、そこへメグロ・メジロが次々にやってくるのだ。ハイ、ノルマ達成! あとはゆっくりと自然観察をしよう。


メグロ


オガサワラトカゲ

 まだ昼前なのでおにぎりとお茶を持って乳房山へ登ることにする。ガイドブックによるとメグロとの遭遇率が高く、アカガシラカラスバトも見れるかもしれないとのこと。せっかくなので重い三脚と大きなレンズを持って行くことにした。
 今回の旅行は往が夜行バス、復が新幹線、現地では徒歩ということで機材を極力減らした。通常ならば1台目のカメラがダウンした時のためにサブにもう1台持ってくるのだが、今回はデジタル一眼レフが1台、コンパクトデジカメ1台。レンズも300mm、24-85mm、20mm、コンパクト用の魚眼レンズ。300mmを200mmに変更すれば三脚も小型の物に変更でき軽量化できるのでずいぶんと悩んだ。しかし、これが最初で最後の小笠原旅行になるかもしれないので、できるだけいい機材を使いたいと思い、重い方を選んだ。
 急な坂を登っていく。メジロの群れが目の前にいる。ほんとに目の前。1mくらいだろうか。いや、もっと近いかもしれない。我々の存在をまったく気にせず採餌している。登山道の前方にヒヨドリがいるがこちらも本気で逃げない。
 山の中腹の東屋の下で休憩することに。おにぎりを頬張っているとオガサワラハシナガウグイスが近付いてきた。手が届くほどの距離の枝先にとまって我々の顔をじっと見ている。ダーウィンのようにコップの水を飲むかもしれないが、残念ながら我々が持ってきたのはペットボトルのお茶だった。
 次はメグロが近付いてきた。そっと立ち上がり三脚の上のカメラを構えた。近い近い。近すぎてピントが合わない。もう少し離れるのを待っていると三脚の下をくぐり僕の足もとへ。ウエストバッグに入れておいたコンパクトデジカメでハイ、パチリ。次は東屋の屋根の下へ飛び上がった。つまり我々の頭の上へ。またまた短いレンズでハイ、パチリ。こんなに鳥が近いのにどうしてこんなに重いレンズと三脚を持ってきたんだろう。


大きなガジュマル


オガサワラハシナガウグイス


足元へ

 ヘゴやタコノキなど亜熱帯らしい植物を見ながら頂上に着いた。標高463m。すばらしい眺望だ。母島全体が見渡せる。明日トレッキングする予定の母島最南端の南崎周辺もよく見える。
 地面を小さな生き物が動いた。ハツカネズミだ。どういった経路でこの島へやって来たかしらないが、天然の植物を食べている姿はとてもかわいい。
 登って来た方向とは反対の道から下り始めた。登って来た道とは違いとても急な坂道だ。トラツグミが前方を横切って飛んでいった。後方からハトが我々の頭上を越えて林の中へ消えて行った。この島にはキジバトやアオバトがいないはずなので、アカガシラカラスバトだったかもしれない。う〜ん、残念。
 急な下り坂は暗い林の中に入っていった。時々メグロの姿を見かけるが暗くて写真撮影できないので黙々と下山する。ひさしぶりの山登りに重い機材のため膝が笑う。右の膝がとても痛い。やっぱり軽い機材にすればよかった。


タコノキ1


タコノキ2


ハツカネズミ

 へとへとに疲れて民宿にたどり着いた。楽しみにしていた夕食。刺身がとてもおいしい。しかし、その刺身は東京から船で運ばれてきた物だそうだ。民宿のおじさんが言うには、この近辺の魚はおいしくないそうだ。
 夕食の後、階段の網戸にヤモリがいるのを見つけた。オガサワラヤモリだ。背中の複雑な模様が美しい。フラッシュの光に驚き逃げていった。ゴメンナサイ。


オガサワラヤモリ

 

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