無線機・GPS



無線機

 パラグライダーは空を飛びます。地上からの高度は何百メートルにもなりますし、インストラクターのいる場所からも相当離れた距離で一人で操縦することになります。当然、人間の声は届きませんから、操縦に関してのアドバイスを受けるために無線機(トランシーバー)を使う必要が出てきます。 操縦に慣れて、パイロットの技能証を取った後でも、仲間との連絡やランディングの風の状態を聞いたりするために無線機は必需品です。

FT-41 and P71  パラグライダーで使用されている無線機の中で代表的なものが、資格の要らない「特定小電力トランシーバー(写真右)」と、国家資格と無線局免状の必要な「アマチュア無線機(写真左)」です。

 スクールでの講習の段階においては、スカイスポーツ専用の無線機や、安価な特定小電力トランシーバーが使われる場合が多いようです。スクールで無線機を貸してくれるところもありますし、特定小電力トランシーバーは1万円程度で購入できます。
 特定小電力トランシーバーは電波の出力が弱く、アンテナも貧弱である機種が多いため通話可能距離が短いという欠点もあります。ただしパラグライダーは何の障害物のない空中で無線機を運用するので通話可能な距離は意外と長く、講習段階では実用上支障のないレベルであることが多いようです。

 とはいえ、もっと確実に交信したいと思う場面もありますし、遠距離フライトなど特定小電力トランシーバーでは通話が困難な状況になる場合も考えられます。そこで使用されるのがアマチュア無線です。
 これは前述したように資格が必要です。
 まず国家試験を受け、「無線従事者免許証」を取得します。(パラグライダーでの運用では、下位の資格である”第4級アマチュア無線技士”でOKです。)
 次に自分の使用する無線機を決定し、その無線機の型式等を元に電波の利用許可を申請して「無線局免許状」の交付を受け、はじめて利用が可能となります。この免許状にはアルファベットと数字の組み合わせからなる「コールサイン」が記入されており、無線機で交信を行う際にはこのコールサインをコールする決まりになっています。 こう書くとなんか難しそうですが、試験自体の難易度もそれほどではありません。今のところパラグライダーを楽しんでゆくにあたって、取得しておいた方が良い資格ではあります。
(ただ最近ではパラグライダーのエリアがある山間部でも携帯電話が使えたりすることがあるので、そういうエリアでは非常用の連絡手段として携帯電話も有効だと思います。)

 なおアマチュア無線は様々な電波帯で交信することができますが、パラグライダーで利用される電波帯としては430MHz帯がほとんどですので、それが使用できるハンディ型の無線機を選びます。
 大きさは小さいほど携行に便利なのですが、そのぶん送信できる電波の出力が小さくなるのは仕方ないことです。目安としては出力2〜3W程度あれば十分だと思います。
 また、例えば出力が1Wのものは2Wの無線機に比べて電波が半分の距離しか届かないかといえばそんなことはありません。交信可能な距離は、多少の送信出力の大小にはあまり関係なく、それよりもアンテナの性能やその設置場所に左右されます。
 アマチュア無線用のハンディ型無線機の値段ですが、144MHzと430MHzの両方の電波帯が使えるタイプで3〜4万円程度、どちらか片方のタイプで2万円前後で買えます。

 なお無線機を空中で使用する場合は、無線機本体を取り出さなくて済むように、スピーカーマイクも別途購入した方がよいでしょう。そうすれば無線機はウェアの中やハーネスのポケットにでも収納しておいて、スピーカーマイク部のみ音の聞きやすい胸元などにくっつけておくことができますので。



GPS

 GPSとはGlobal Positioning Systemの略で、米国国防総省が運営する24個の人工衛星からの電波の到達時間の差をもとに計算を行い、自分の緯度・経度を特定するシステムです。そのGPSを利用したものとして、日本で最も一般的なのがカーナビです。
...なんてことは、ほとんどの人が知っていることと思いますが。

ハンディGPS表示部  そのGPSを、パラグライダーのフライトに利用しているパイロットもいます。
 もちろん、車に付けるカーナビを使うわけではありません。いや、べつに使ったっていいのですが、体ひとつで飛ぶパラグライダーにカーナビ本体やモニター、それらの電源である12Vバッテリーなどを装備するのはかなり大変というか無理があります。

 そこで登場するのが小型軽量、乾電池で駆動するハンディ型のGPSです。
 携帯電話をひとまわり大きくした程度のコンパクトさですから、カーナビのようにカラー地図が表示されるわけでもなく、電話番号検索や音声案内などの機能も、もちろんありません。 基本的には現在の緯度・経度、移動速度、移動軌跡の表示程度の機能しかないのです。(左の写真は、移動軌跡を表示する画面に切替えたところです。)

 しかし、パラグライダーのフライトではそれだけでも十分に役に立ちます。なぜなら空に道はないし、どうせ山の上空で飛ぶわけですからカーナビのように道路を表示する必要がないからです。それに現在の移動速度が表示されるというのは、周囲に目標物となるモノが存在しない空中においてとても便利なことだからです。

 まあ、GPSは最初のうちに揃える必要は全くなく、将来必要になってから購入しても構いません。値段は3〜4万円程度です。「ガーミン」という海外メーカーのGPSが最も一般的です。





もどる