バリオメーター



バリオ1  パラグライダーのフライトに必要な、高度計(アルチメーター)」昇降計(バリオメーター)」の機能を持つ計器です。正確に言えば「アルチ・バリオメーター」ですが、巷では省略して「バリオメーター」またはバリオと呼ぶことが多いです。
 その機能として、高度計は現在の高度を表示し、昇降計とは1秒間に何mの割合で上昇または下降しているかを表示します。(昇降計は垂直方向の速度計と考えればわかりやすいと思います)

 ところでバリオはどういう原理で現在の高度を判定しているのでしょうか? パラグライダーを始めたばかりの頃、まだバリオを持っていない私はどういう仕組みになっているのかいろいろ想像をめぐらせていました。超音波か何かで地面までの距離を計測しているのか、はたまた何かの電波を受信して計測しているのかなどと...

 しかし答えは意外と簡単なところにありました。それは大気圧です。
 空気は標高が高くなればなるほど薄くなり、大気圧は低くなるのは皆さんも知っていることと思います。バリオは、高度が変わったことによるその微小な気圧の変化をメートルに換算して表示しているのです。
 その感度の高さは驚くほどで、バリオを手に持って床から上に持ち上げただけでも反応し、1m単位でその変化を表示します。たった1mの差による大気圧の変化なんて微々たるもののハズですが、それを高度に変換して表示してしまうこの機械のすごさに呆れたものでした。

 気圧を元にして高度を表示しているわけですから、高気圧に覆われた日は大気圧が高くなるので同じ場所でも高度は低く表示され、低気圧の日はその逆になります。その他、気温など誤差を生じさせる要素はたくさんあります。従って海抜高度が何mかを知るには、使うたびにバリオの高度計を補正してやる必要があります。ただし高度計としての役割は、地上の目標(例えばランディング地点)からの高度が何mか判ればいいわけですから、当日のフライト前に0mに合わせればOKです。

 ところでなぜパラグライダーのフライトにおいて、バリオメーターが必要とされるのでしょうか?
 まずは高度計としての機能について。 パラグライダーは空を飛ぶ乗り物なのですから、高度を示す計器を付けるのは当たり前の装備と言えるでしょう。もちろんスピードメーターやタコメーターが付いていない車やバイクでも運転できるのと同じように、バリオを持たなくてもパラグライダーのフライトはできます。
 しかし車のエンジンパワーを効率良く引き出すにはタコメーターがあった方が有利なように、また背後を走る覆面パトカーの魔の手をかわすのにスピードメーターがあった方が無難なように、バリオもまたパラグライダーのフライトに有用な情報をパイロットに与えてくれるのです。

バリオ2  そうそう、もうひとつの機能「昇降計」ですが、これは前述したように上昇or下降速度を表示する機能です。何でそんなものが必要なのかというと、例えば上昇気流帯に入った時に、その強さ(上昇の度合い)を定量的に数字で把握することができるからです。果たして今、上昇しているのか、それとも高度を維持しているのか、はたまた降下して行ってるのかがひと目で判るのです。
 人間の感覚というのはアテにできない面もあって、上昇・下降を始めた瞬間は体にかかる重力の変化でそれを感じることができますが、等速度で上昇または下降が続いている場合は加速度の変化がないために高度変化はしていないと感じてしまうのです。

 これはエレベーターでそれを疑似体験できます。例えばエレベーターが上の階に向って動き始めるとグッと体に重力を感じ、ああ上昇しているんだなということが判ります。逆に停止する時は重力はフワリと軽くなることで感じられます。しかしその間、つまり目的の階に向って一定速度で上昇を続けている時は、階数表示等を見なければどのくらいの速度で上昇しているのかがサッパリわかりません。
 これはパラグライダーのフライトでも同じことが言えるわけで、それを数字で表示してくれることによって、より確実に上昇気流を探すことができ、またその逆に下降気流帯から素早く待避することができるのです。

 さて、バリオの値段ですが、一番安いやつで4万円程度、いちばん高いやつで30万円弱です。どわー高い!と思うかもしれませんが、この価格の差はバリオ表示の記録ができてそれをパソコンに出力できたり、GPS機能が内蔵されているなどの付加機能の違いによるものです。肝心の高度計・昇降計としての機能は安いやつでも十分ですので、そんなに無理して奮発することはありません。
 車に喩えればカローラとフェラーリの価格差は平気で10倍以上ありますが、タイヤが4つ付いててハンドルで方向を変えられて人や荷物を運ぶという機能は同じです。その中で何を選ぶかはさらに細かい個人の使用目的や好み、経済状態によるもので、安いものを選んでも車として必要以上のものを求めなければ不満は生じないはずです。
 バリオも同じです。シンプルイズベストの考え方で小型計量安価なタイプを選ぶのもいいし、様々な機能を持ちフライトコンピューターと言えるような高機能をもつタイプを買って頭脳的にフライトを分析するのも楽しいと思います。

 まあバリオは水没させたり、強い衝撃を与えたりして壊しさえしなければ長く使えるものですから、実際に使っているパイロットの意見を聞きながら自分で納得できる一品を買うとよいと思います。ちなみに私はシンプルかつ安価なタイプを使ってます。本当は高いやつが欲しいのですが、資金不足なのです。





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