機体



空から見た機体

 パラグライダーの本体のことです。単に「パラグライダー」と呼んでもOKですが、パイロットの間ではふつう機体とかキャノピーと呼ばれています。
 空中では空気中を滑空する翼の形になりますが、空気をはらませない状態では布のように柔軟です。地上に広げた時の大きさは長さ10数メートル、奥行き2〜3メートルはあろうかという巨大な楕円形をしています。

 あまりに大きいので写真を撮ろうと思っても、家の中で広げることができません。そこでフライトしている時に地面に広がっている機体を撮ってみたのが上の写真です。一緒に写っている人間や車などから、その大きさが想像できるかと思います。

畳んだパラの入ったザック
 その一方で、フライトしない時は小さく畳んで収納することができます。機体を買うと収納ザックが付属しているので、その中に収納したのが左の写真です。あららタバコの箱よりだいぶ大きいですねえ。 ...なんて、比較対象が良くないですね。 まあ大き目のリュックサック的に背負うことができる程度の大きさです。

パラザック  そして右の写真は機体を入れるザックのファスナーを開けたところです。ハーネスやヘルメット、フライトスーツなど(次項以降参照)も一緒に収納します。肝心の機体は、中央にある白い袋の中に入ってます。

 さて、次は最も重要な値段の話です。機体はパラグライダーの道具類の中で、最も高価だからです。
 その機体、いったい幾らするのかというと、メーカーや種類によって異なるものの、初級用の機体(新品)で25〜40万円程度です。「布とヒモだけで出来たパラシュートに40万は高い!」と、思われるかもしれません。

 確かにあくまで週末の趣味に使う道具、それも複雑な機械や高価な材料を使っているようには見えない機体が何十万円もすると聞けば、そう思うのも無理ないことかもしれません。実際問題、フツーのサラリーマンやOLの皆さんが1回のボーナスで払える限度一杯か、それを越える領域でありますからね。

 しかしパラグライダーが布とヒモから構成されているとはいえ、ただの布やヒモであるわけがありません。布(クロス)の部分は強度が抜群に高く、軽量であるように特別な編み方をしたナイロン繊維やポリエステル繊維を使用し、さらに空気の通過を遮断し劣化を防止するためのコーティングが施されています。
 ヒモ(ライン)の部分もケブラーやアラミド繊維といったハイテク素材が数百mも使われてるといった風に、けっこう材料代がかかっているものなのです。
 そしてパラグライダーはこれらの素材をもとに、翼としての機能を果たすために細かく裁断・縫製する必要があります。翼幅が10数mもあろうかという機体も、性能向上のために10数cm幅のクロスの組み合わせによって構成されているのです。 そして、その工程の多くは手作業です。

 ここで他の趣味に使う道具、例えば今この文を読んでいるアナタのパソコンの値段を見てみましょう。
 パソコンの価格破壊が進んできたとはいえ、個人の買い物としては相当に高い買い物であることは確かです。そして液晶CRT,DVD,カラープリンタなど、物欲をそそる周辺機器も目白押しです。
 で、その何十万円も出して買ったパソコンですが、1年もすると更に高性能になった型が主流になってしまい、すぐに陳腐化してしまいます。
 そこでパソコンはメールのやり取りやインターネットでの情報収集ができる程度の能力があれば良いと割り切り、新機種への買い替えや改造を我慢すれば、パラグライダーの道具を揃えてゆくことは不可能な話ではないと思います。


 お金の話はこれくらいにして、次は数ある機体の中で何を選べば良いのかという話です。
 こればっかりは何とも言えません。パラグライダーの機体はメーカーごとに特色も異なりますし、同じメーカーでも様々な種類が存在します。それにパイロットの体重に合うように大きさ(翼面積)も数種類用意されているのが普通です。
 ひとついえること、それは ”自分に合った機体を選ぶ” ことです。 例えば自動車であればディーラーに行って「一番高いやつをくれ」と言っても特に問題はないわけですが、パラグライダーは違います。初心者なのに、高くて性能が良さそうだからと上級者用の機体を選ぶことは絶対に避けなければなりません。

 しかしある程度の経験を積むまでは、いったい何を選んだらいいのかサッパリわからないことと思います。そこで頼りになるのがいつもスクールでお世話になっているインストラクターです。
 イントラは普段のあなたの飛びを観察し、指導してくれているわけですから、当然あなたに適した機体は何か、アドバイスをくれる筈です。


 なお、機体は上達に伴なって買い替えてゆくのが普通です。初級機→中級機→上級機といった具合に、安全性重視の機体から滑空性能重視の機体へと乗りかえてゆくわけですが、最近は機体の完成度も上がり、初級向きの安全性がありながら滑空性能も良い機体が主流になっています。このため上達に伴なう買い替えは、1〜2回で済んでしまう場合が殆どだと思います。(もちろんこれは、人によりますが)

 ただし機体には寿命があります。機体を構成しているクロス(布)やラインは、紫外線や水分等によって徐々に劣化していくし、フライトするたびに物理的なストレスも加わります。このため半永久的に使えるものではなく、2〜5年くらいで買い替える必要があります。(劣化の度合いは、当然ながらフライトする頻度や状況、機体の保存環境等によって大きく異なりますので、この年数はあくまで目安です。)
 以上を総合すると買い替え頻度は1〜5年かと思われます(車と同じ位?)が、まあ普通はそれだけ年月が経つ間にもっと安全でもっと性能が良くてもっとカッコイイ機体が登場して物欲をそそって自然に新しい機体が欲しくなってしまうので、心配は無用です... って違うか。(笑)





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