機体



 ハンググライダーの機体は、ワイヤーで構造補強された航空用アルミ合金製の骨組みと、セールで出来ています。 骨組みは直径4〜5cm程度の中空丸パイプで、主に7075材(超々ジュラルミン)のアルミ合金を使用していて、非常に軽く丈夫にできています。 基本的な構造は、まず下図をご覧ください。

 ハングの骨組みは、大きく分けて3つの部分から成っています。機体中心にある「キール」、翼の前縁を形成する「スパー」、そしてスパーを広げた形に支えるための「クロスバー」です。
 保管時は小さく畳まれており、使用時は傘のように広げるだけです。広げ切ったら、クロスバー中央に取り付けられたテンションワイヤーを後方に引きながらキールに固定し、広がった翼が戻らないように固定します。
 この骨組みを基本として、他の部品を見ていきましょう。下の真横・正面から見た図をご覧ください。

 スイングライン…キールの中央付近に巻きつけられているナイロンベルトです。人間はこのスイングライン1本で機体からぶら下がります。
 コントロールバー…キールに取り付けられている、三角形構造のアルミパイプです。三つの部分から成り、底辺をベースバー、両側の辺をアップライトといいます。スイングラインからぶら下がった人間は、コントロールバーを持って体重移動して機体をコントロールします。
 キングポスト…機体の上に突き出ている支柱のことで、先端から機体を支えるための鋼鉄製のワイヤーが出ていて、地上や空中で機体にかかる様々な力を支える役目を持っています。
 トップワイヤー…キングポストから翼上面に張ってあるワイヤーで、地上で翼を支えています。また飛行中にマイナスGが掛かった時にも翼を支える役目を持っています。
 ボトムワイヤー…ベースバー両端から翼下面に張ってあるワイヤーで、飛行中に揚力によって上に反ろうとする翼を支えています。
 セール…骨組みにセールという合成繊維の布が張られていて、これが空気をとらえて揚力を発生させます。パラグライダーに使用されている布よりも厚手のため、丈夫で長持ちします。(そのぶん重く嵩張りますが、骨組みのパイプの方がもっと嵩張るので相対的にあまり影響ありません) 初級機のセールは上面のみ張ってあり、これをシングルサーフェスと言います。中級機からは翼の下面まですっぽりセールで覆われていて、これをダブルサーフェスと呼びます。
 バテン…セールに通す、直径1cm程のアルミ製の小骨です。翼の形状を作るための部品です。

 これ以外にも、機体を安定させるためにラフラインやリミッター等の部品が取り付けられていますが、ここでは省略します。


 ハングの機体は、同じメーカーでも初級機→中級機→上級機→高性能競技機といったようにパイロットのレベルに応じて、いくつかに機種が分かれています。初級機は安全性を重視して作られていて、組み立ても短時間でできます。一方、上級機は高速飛行時の性能が特に重視されていて、翼はより綺麗に成型され細長くなっていたり、使われているパーツも流線型のものだったり、いろいろ凝っています。

 そして比較的簡単な構造の初級機は軽くて安く、構造の複雑な上級機は重くて高価です。なお同じ機種でも体重によって大きさが2〜4サイズに分かれていますが、機種が同じであればサイズ毎の価格差がないのが普通です。

 その一方でこれが意外と重要な点ですが、ハンググライダーの場合は初級機でも十分な性能を持っていて、競技大会に出たり、どこまでも遠くへ飛んでいくクロスカントリー飛行をするのでなければ、上達しても初級機のままで十分楽しめる点です。同じスカイスポーツ仲間のパラグライダーの場合、初級機にはそこまでの性能はなく寿命も短いため、実際問題として初級機に乗り続けられません。一方ハングの場合、マイペースで楽しむサンデーフライヤーはずっと最初に買った初級機に乗っていられるわけです。

 なお機体はスクールに入校して講習を受けている段階では必要ありませんが、B級を取得して初めて一人で山の上から飛ぶ「初ソロフライト」の頃には、自分の機体を購入する必要があります。初めて買うことになる初級機の価格は、新品で40〜50万円といったところです。パラグライダーに比べて多少高めですが、そのぶん長く使えて、中級機にステップアップする際にはスクールを通じて中古で売ることもできる場合があります。

 ハンググライダーの機体は、畳むとコンパクトになりますが、それでも4〜6mの電柱状の長さがあります。だから機体を買うと、その運搬・保管方法も考えなければなりません。自宅に置く場合は、エリアまで自家用車のルーフキャリアに載せて運ぶことになりますが、道路交通法上、積めるのは車両の長さの1.1倍までです。全長の長い1BOX車とかステーションワゴンなら良いのですが、全長の短い車、例えば軽自動車では積むことができないことに注意してください。(出発地警察署長に許可申請した場合を除く)
 ※ただし、大抵のハングはショートパックと言って、更に小さく分解することが可能で、2〜3m程度までに短くなります。少々手間と時間がかかるので、海外など遠くに発送する場合に使われます。

 自家用車で運ばない場合は、ハンググライダーのスクールには機体を置く倉庫がありますので、そこに置かせてもらうことになります。そこから山の上のテイクオフまではスクールの車に載せて運んでもらいます。駐機料として年間2万円程度のお金は必要になりますが、その代わりエリアまで電車等で行くこともできます。





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